PROGRESSIVE PRO LENS − 写真家がプロレンズを選ぶ理由
アラスカの大地で被写体と向き合い、悠久の時の流れを感じる…動物写真家・佐藤大史さんインタビュー
2017年10月25日 07:00
プロが作品に求める品質と、プロが機材に求める品質は、どちらも不可分な関係にある。それだけにいつの時代も、プロ向けの機材には大きな期待が寄せられる。
この連載「PROGRESSIVE PRO LENS」では、若手写真家に写真に対する考え方や、オリンパスPROレンズを使用した感想を毎回インタビュー。作品も掲載しているので、写真家に与えるオリンパスPROレンズの作用を見て取ってほしい。
今回はアラスカやカナダで野生動物を撮影する写真家、佐藤大史さんに話をうかがった。雄大な大自然の中で、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」が作り出した作品とは。(編集部)
写真を撮り始めたきっかけは?
高校3年の時に兄に見せてもらったネイチャーフォトの写真集だったと思います。
自分の想像のつかない空間がこの世界にはあり、それを伝える手段がある。絵も描けない、音も奏でられない僕にとって、とても新鮮な驚きだったことを覚えています。それまでは飼っていた犬をレンズ付きフィルムで撮っている程度でした。
現在、どのような写真の仕事をされていますか。
地元での撮影や、写真雑誌やアウトドア雑誌への寄稿やカレンダー作成などをしています。
ここ数年はパートナーシップ企業や仲間を集め、「地球」を伝えるための大自然への長期遠征撮影をしています。1回の遠征にかかる多額の取材費をかき集めることに奔走する日々です。
それと並行して、日常の光の変化を捉えてもらうための写真講座や、撮影ツアーなども行なっています。
影響を受けた写真家、写真集、メディアは?
写真家で言えばウィン・バロック、師匠である白川義員など。学生の時にみた東松照明に衝撃を覚えたことも覚えています。最近で言えばアマゾンで撮影をしている山口大志さんの写真集『AMAZON』には感動を覚えました。
写真のテクニックの部分や見せ方より、写真との向き合い方や生き方そのものに影響を受けることが多いです。
アラスカで撮影することについて。
アラスカの、それも誰もいない原野を一人で歩いて撮影している時、写真撮影より目の前の自然の変化に対応しないといけないシーンも多いです。今までフィールドで得たノウハウをフルに使っても撤退を余儀なくされることもあります。また、雨がちな天気も手伝って、何日も良い風景に出会えないことも多く、モチベーションを保つのもスキルの一つだ、と実感しています。
そんな中で過ごす3〜4カ月にわたる長期間の撮影は今回で4度目。頭に描いている画に出会えることは月に1〜2回あるかないかという非効率なスタイルですが、いくつかの山や谷を乗り越え、素敵な瞬間に出会えるたびに、やはりこの世界を伝えたい、と深く再認識します。
数千年・数万年の遥かなタイムスケールで流れ行くこの世界は、自然に生きることへの示唆に富んでいると感じています。
野生動物を撮影するとき大事なことは?
彼らのパーソナルスペースを侵さないことです。そして、その大きさは一匹一匹、その時その時違うものなので、この種はこう、とか、この個体はこう、と決めつけずに接することも大事にしています。
可能な限り彼らの自然な姿を伝えたいと考えているので、私自身も自然の中でできるだけダイレクトに生活しながら彼らにアプローチし撮影するよう心がけています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの画質・使い勝手は?
広大なアラスカでは、野生生物に出会えないことも多いです。やっとのことで出会えても、地形的条件や動物の機嫌次第で距離を詰めることが難しいこともしばしば。その時は300mm相当の望遠端が力を発揮してくれます。
コンパクトで取り回しやすいので、長くて重いレンズを出したりしまったりの煩わしさがありません。それは撮影が長期になればなるほど助けとなってくれます。
また、短い春を謳歌する花たちや、白夜に架かる虹、刻々と形を変える氷河など、足元にも空にも被写体があります。その表情とバックグラウンドの両方を写しとりたい時、広角端の40mmはアラスカの大地にぴったりです。被写体を小さく配置しても、その表情が読み取れるほど細かく描写されているので、画質を心配する必要もありません。動物の写真だけでなく、花などを撮る方にもオススメできるレンズです。
今後取り組みたいシリーズやテーマは?
数千年や数万年の時を感じる世界をテーマに取り組んでいますので、アラスカなどの北米以外に、南極やアフリカ、アイスランドやブータンなどの大自然にも挑みたいと思っています。時間的にも、空間的にも広大な世界を、どのように皆さんにお伝えするか探求して行きたいです。
また、もう少し私たちの生活に近い生き物の撮影・発信にも取り組んで行きたいと考えています。
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デジタルカメラマガジンでも連動企画「PROGRESSIVE PRO LENS」が掲載中です。最新の2017年11月号では、佐藤さんが解説するレンズのテクニックを紹介しています。(編集部)