オリンパスPROレンズ 写真家インタビュー

【特別編】信頼できるシステムだからこそ過酷な環境でも積極的になれる…清水哲朗さん

M.ZUIKO PROレンズ in モンゴル その2

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO / 17mm(34mm相当) / 絞り優先AE(F1.8・1/2,000秒・-0.7EV) / ISO 200

オリンパスのM.ZUIKO PROレンズを使う写真家に話を聞く連載「オリンパスPROレンズ 写真家インタビュー」。

前回は清水哲朗さんと一緒にモンゴルを旅した斎藤巧一郎さんに、旅の合間に撮影した動画についてお聞きしました。

この旅は、デジタルカメラマガジン2018年9月号(8月20日発売)、10月号(9月20日発売)での企画として実施されたものです。異なるジャンルの写真家2名が連れ立って旅行するという、ちょっと珍しい企画です。

今回はその旅で一緒だった清水哲朗さんに、撮影環境や使用レンズについて聞いて見ました。モンゴルでの撮影経験が豊富な清水さん。オリンパスPROレンズについてどのような印象を持っているのでしょうか。

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清水哲朗
1975年横浜市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信事務所入社。23歳でフリーランスとして独立。独自の視点で自然風景からスナップ、ドキュメントまで幅広く撮影。2005年『路上少年』で第1回名取洋之助写真賞受賞。2007年にはNHK教育テレビ『趣味悠々』デジタル一眼レフ風景撮影術入門講師として出演。2012年夏に15年分のモンゴル取材をまとめた「CHANGE」を現地で上梓(500部限定)。「日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2013年」ピープル部門優秀賞受賞。2014年、日本写真協会賞新人賞受賞。2016年、写真集『New Type』で第16回さがみはら写真新人奨励賞受賞。公益社団法人日本写真家協会会員 日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師。


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写真家になったきっかけは?

祖父が通販で110カメラを買い、おまけについてきたプラスチックレンズの110カメラを幼少の僕にくれました。その後、家族で東京湾フェリーに乗船した際にそのカメラで撮影した夕日の写真を親に褒められたのがきっかけで夢中に。

決定的となったのは小中学校の時。大好きな中日ドラゴンズが横浜、神宮、後楽園に来た時に宿泊先(ホテル)を訪ねては入り待ち・出待ち。サインをもらうだけでなく、朝の散歩で選手や監督に声をかけては写真を撮らせてもらい、それを『月刊ドラゴンズ』に投稿。連続して賞をもらったり、掲載率の高さに写真の道に進むことを決意。

高校卒業後に写真学校へ進み、写真家の弟子を経て、23歳でフリーランスとして独立。現在に至ります。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 64mm(128mm相当) / 絞り優先AE(F4.5・1/800秒・-0.7EV) / ISO 200

影響を受けた写真家、写真集は?

師匠の竹内敏信はその1人です。カメラ誌の連載を読み、作品や撮影スタイル、生きかたに感銘を受けました。渋谷にある写真学校へ入ろうと思ったのも直接指導を受けたかったから。

写真学校へ入ってからは多くの写真家の存在と作品を知りましたので、それぞれ少しずつ影響を受けていると思います。アンリ・カルティエ・ブレッソン、ユージン・スミス、ロバート・キャパを知ったのも学生の頃ですね。

影響を受けた写真集はいろいろありますが、初期の頃で言えば、竹内敏信「天地聲聞」、ヤマグチゲン『PICTURES』、藤原新也『アメリカンルーレット』、鬼海弘雄『PERSONA』、宮崎学『アニマル黙示録』、奈良原一高『消滅した時間』などでしょうか。

モンゴルで撮影するようになったきっかけは?

「野生のユキヒョウを撮りたい」と思ったことがベースになっています。竹内敏信の助手時代に多摩動物公園のユキヒョウに一目惚れをし、檻の前で日がな1日眺めていたことが何度もあります。

通っているうちに動物園での撮影では物足りなくなり、実際に生息するフィールドを見てみたいという思いが募っていきました。生息地を調べるとモンゴルやチベット、カザフスタンなどの山岳地帯。そんな時に日本とモンゴル国の国交正常化25周年イベントがウランバートルであり、師匠の写真展を現地で開催するというまたとない機会が舞い込んできました。

助手として現地へ行けた喜びも大きかったのですが、その時にユキヒョウ情報を多く得ることができ、友人知人もできたことでモンゴルへ通うきっかけとなったのは間違いありません。

「ユキヒョウ?いるいる。たくさんいる。すぐに写真を撮れるよ」と言われてから21年。撮影テーマを広げてしまったことも要因にありますが、空振り続きで未だにまともなユキヒョウ写真を撮れていないのが長く通う原動力になっているのかもしれません。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 100mm(200mm相当) / 絞り優先AE(F4.0・1/1,600秒・±0.0EV) / ISO 200

これまでモンゴルへは何回渡航していますか? モンゴルのどこに惹かれているのでしょう。

約50回です。滞在期間は最長で2カ月。現在は2〜3週間の取材を年に3回程度しています。

ただモンゴルの国土面積は日本の約4倍あり、奥地まで入る時には移動時間に滞在日数の半分以上取られることもザラです。移動手段は飛行機、車、バイク、馬、ラクダ、トナカイ、徒歩など環境次第。果てしなく時間のかかる旅ですが、東西南北どこへ行くかで風景が大きく違いますし、そこに暮らす人々の文化、生活スタイルもそれぞれ違う。夏と冬の温度差が70度以上違うのは世界的にも珍しく興味深い。どの角度から攻めても被写体の宝庫と思えるからやめられないのでしょうね。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 73mm(146mm相当) / 絞り優先AE(F2.8・1/640秒・-0.3EV) / ISO 400

今回のロケの目的とルートを簡単に説明願います。

大きな撮影目標はロシア国境近くのタイガに住むヒグマ。春先だけに子熊とのショットが撮れたら最高だなと思って出かけました。行程は首都ウランバートルから900km超離れた最北部のツァガーンノールまで2日間かけて車で向かい、友人の遊牧民と合流。そこから乗馬で1〜2日間かけてトナカイ遊牧民の集落まで行き、トナカイ遊牧民の友人にも同行してもらい、時間の限りタイガの森の中を徘徊しながらクマを探す。

集落にいるときは遊牧民の手伝いをしながら日常風景やシャーマン祈祷などを撮影。前回訪問時に撮影させてもらった写真もプリントして届けてきました。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 13mm(26mm相当) / 絞り優先AE(F4.5・1/640秒・-0.7EV) / ISO 200

今回の使用機材は?

  • OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II × 2台
  • 予備バッテリー × 16個
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
  • MC-14
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
  • FL-900R

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO を装着したOM-D E-M1 Mark IIを首から下げて、それ以外をオリンパスのカメラバッグパックCBG-12に入れて(乗馬中も)背負って移動しています。バッグの中にはバンガード HAVANA21BL を入れて、集落でのスナップ撮影用に、必要機材を入れて活用しています。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 100mm(200mm相当) / 絞り優先AE(F4.5・1/800秒・-0.7EV) / ISO 200

頻繁に使用したPROレンズは?

旅全般で装着していたのは、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO。いつ何が起こるかわからないときには高倍率ズームレンズが有効です。レンズ先端から1.5cmの近接撮影もでき、レンズ内手ぶれ補正機構とボディー側の5軸シンクロ手ぶれ補正を協調させれば6.5段の補正効果も得られます。

集落にいる時には撮影距離がイメージできているので、単焦点のF1.2 PROシリーズを活用していました。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先AE(F5.0・1/125秒・-0.3EV) / ISO 200

ドキュメンタリーとOM-D E-M1 Mark IIの相性について。

撮影ジャンルを意識したことはありませんが、ボディーもレンズも防塵・防滴・耐低温であることで取材時に「機材が壊れるから」と消極的な考えにならないことが最も大きいですね。これまで雨、吹雪、砂嵐、洞窟、氷点下40度など過酷な環境で取材してきましたが、レインカバーのようなものをつけずに撮影しても一度も壊れたことがないので信頼しています。

「オリンパスならば何も問題ない。より臨場感あるイメージが撮れそう」と積極的な取材ができているのは確かです。ドキュメンタリーの撮影現場というか、そういうところで生活を余儀無くされている人たちの実像を伝えるにはやはり壊れない信頼のおける機材を選ばなければなりません。体力的にもきつくなりますが、壊れないオリンパスを使うことで自分が鼓舞されますし、写真集や写真展でも使える高画質に満足しております。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / 絞り優先AE(F1.2・1/200秒・-1.0EV) / ISO 200

今回のロケでの特徴的なエピソードがあればお聞かせください。

まずは写真家仲間の斎藤巧一郎さんが「またとない機会」とモンゴルの奥地まで来ていただいたことに感謝です。それと今回は遊牧民の引越シーズンに当たってしまい、最大目標である「クマ取材」の期間が予定よりも短くなってしまったのですが、引越の手伝いをしながら取材することで彼らとまた親交を深めることができたかなと思っています。こういう地道な交流を続けて行くことで僕の取材は成り立っていますので、クマの代わりに引越風景が撮れたと思えば結果オーライですね。

気候的には初夏だと思って衣類を準備をしていたのですが、氷点下12度になったり、ひざ下までの積雪があったり、雪解けで増水した川に行く手を阻まれたりと「1日に3つの季節がある」と言われるモンゴルにだいぶ振り回されました。おかげで今回もスリリングな乗馬をしながらの取材を存分に楽しめました。

撮影:清水哲朗
OLYMPUS E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO / 25mm(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2・1/1,000秒・-0.3EV) / ISO 200

告知などあればぜひ!

僕の取材に興味がある方はぜひ「うまたび-モンゴルを20年間取材した写真家の記録-」(玄光社)を読んでください。

旅の模様はデジタルカメラマガジンで!

斎藤さんと清水さんのモンゴル2人道中の様子は、デジタルカメラマガジン2018年9月号および10月号の連載「PRO's SIGHT—PROが見た風景—」の中でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部