特別企画
「SIGMA Photo Pro」の“モノクロームモード”を試す
階調の幅が広くモノクロらしさは圧倒的
(2013/3/6 11:59)
フィルムではカラーとモノクロがあるのが当たり前だったが、デジタルの時代になってからはカラーばかりが注目され、モノクロが意識されることはとても少なくなった。というのも、かつてはいかにデジタル写真で美しい色調を得るか、またディスプレイをはじめとする機器とのカラーマッチングや色管理に重点が置かれていた点が大きいだろう。
しかしデジタルカメラやデジタル写真が当たり前の時代になり、再びモノクロも注目されてきた。例えばオリンパスのアートフィルターに搭載されたラフモノクロームや、Nik SoftwareのSilver Efex Proなどの登場により、デジタルでモノクロ写真を楽しむ人が増えてきた。さらに顔料インクプリンターやアート紙が充実してきたことも見逃せない。
モノクロ写真は、カラーとは異なる魅力がある。色彩で見せるのではなく、白から黒への階調で見せるため、カラーでは得られない深みのある写真が味わえる。また色がないことで、見る側のイメージが増幅される。そして光を意識しやすいのもモノクロの特徴だ。カラーよりアーティスティックな印象を受けるのも、モノクロの魅力といえるだろう。
モノクロ専用の操作パレットを新設
今回、「Foveon X3ダイレクトイメージセンサー」でお馴染みのシグマから提供されている、SD・DPシリーズ用のRAW現像ソフト「SIGMA Photo Pro」がアップデート。SIGMA Photo Pro 5.5(以下SPP5.5)になった。SPP5.5の最大の特徴は「モノクロームモード」を搭載したことだ。
これまでのSPPでもホワイトバランスのタブからモノクロを選ぶと、モノクロ写真にすることはできた。しかしそれはカラー化した画像をモノクロ化したもの。それに対しSPP5.5のモノクロームモードは、RAWデータそのものからモノクロ写真を作る。そのため三層構造のFoveon X3の各ピクセルに取り込む光を最大限に活かすことができ、高解像力で階調豊かなモノクロ写真に仕上がるのだ。
ただしモノクロームモードに対応しているのは、SD1、SD1 Merrill、DP1 Merrill、DP2 Merrill、DP3 Merrillのみ。またSPP5.5のモノクロームモードで編集すると、それ以前のバージョンのSPPでは編集できなくなる。
SPP5.5のモノクロームモードは、調整パレットの最上部のタブを「カラー」から「モノクローム」にするだけ。すると調整パレットもモノクロ用になり、表示画像もモノクロになる。
パラメーターは、露出、コントラスト、シャドウ、ハイライト、シャープネス、X3 Fill Lightと並んでいるのはカラーと同じ。しかしホワイトバランスはなく、カラーミキサーとフィルムグレインがある。またノイズリダクションもカラーノイズはなく、輝度ノイズとバンディングノイズのみだ。カラーのように倍率色収差やフリンジ除去もなく、調整パレットはシンプルだ。
カラーミキサーは、RGBの各感色特性の調整が行なえる。例えば赤を濃く、あるいは青空を明るく、などの調整が可能だ。カラーホイールの中にあるドットを動かすことで調整できる。するとホイール横のバーにもRGBの割合が表示されるので、どんな状態なのか把握しながら作業ができる。
フィルムグレインは、フィルムの粒状感だ。これを活用することで、フィルムライクな仕上がりが得られる。調整できるのは、大きさと粗さ。大きさは粒子の大きさ、粗さは粒子の密度が変化する。これまでもデジタルのモノクロ写真では、Photoshopなどでノイズを加えて粒状感を出す方法もあったが、よりフィルムに近い雰囲気に仕上げられる。
全く異なるトーンの仕上がり
ホワイトバランスからモノクロを選択した従来の“WBモノクロ”と、“モノクロームモード”では、どれだけ仕上がりに差が出るのだろうか? 結果は作例の通りで、WBモノクロとモノクロームモードでは、仕上がりのトーンが全く違うことがわかる。
WBモノクロは、明るめであっさりした仕上がり。モノクロームモードはどっしりと重さを感じる仕上がりだ。またWBモノクロは、カラー画像から色を抜いたような印象を受けてしまう。やはりモノクロらしさは圧倒的にモノクロームモードだ。
階調の幅がモノクロームモードの方が広く、そのためWBモノクロより立体感もある。解像力に関しては、極端な差が出ているとは思わなかったが、よく見比べてみるとモノクロモードの方がシャープに感じる。
まとめ
他社のRAW現像ソフトでも、モノクロにする機能を持つものもあるが、ここまで本格的なコントロールはできない。しかもFoveon X3の高画質を最大限に引き出しているので、尖鋭度が高く、深みのあるモノクロが味わえる。ただカラーミキサーは、慣れないと扱いがやや難しいように感じる。カラーホイールだけでなく、RGBを各スライダーで調整できると、使い勝手がより向上しそうだ。
フィルムグレインも、どの程度粒状感を出せばいいのか、最初難しいかもしれない。できればプリセットで、あらかじめいくつかのパターンが用意されているとわかりやすいだろう。とはいえFoveon X3の高画質と本格的なモノクロームのコントロールができるのは、実に魅力的だ。ぜひSPP5.5でファインアートとしての写真作品を作ってもらいたい。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・カラー、WBモノクロ、モノクロームモードの違い
・カラーミキサーの効果
・フィルムグレインの効果
・作例