特別企画
トキナー新ライン第1弾「opera 50mm F1.4 FF」実写レビュー
立体感ある描写を標準“50mm”の画角で
2018年10月26日 12:00
株式会社ケンコー・トキナーから、交換レンズ「opera 50mm F1.4 FF」が登場した。光学設計やコーティング、電装等で最新の技術が用いられている当レンズは、トキナーレンズの新プレミアムシリーズ「opera」の第1弾、という位置づけだ。
operaのロゴは製品でも存在感を放っている。
opera 50mm F1.4 FFでは、昨今の映像素子の高画素化に対応するため、最新の光学シミュレーションを用いて新しいレンズ構成を開発した。そのため、絞り開放近辺から高い解像力を実感できる。また、コントラスト重視の光学設計となっており、高コントラストな「立体感のある描写」も特徴のひとつだ。
ガラスモールド非球面レンズ1枚、異常低分散ガラス3枚を理想的に配置、最適化することにより、色収差を理想的に除去している。レンズ構成は9群15枚。絞り羽根は9枚。円形絞りを採用しており、絞り開放F1.4〜F2.0近辺で、ほぼ円形になるよう設計されている。
当レンズは、キヤノンEF、ニコンFマウントの2マウントで展開する。今回は、EOS 5D Mark IVに装着してポートレートとスナップ撮影を行なった。作例を見ながら、レンズの魅力を体感していただければと思う。
50mm単焦点レンズとは
焦点距離50mmのレンズは、寄れば望遠的に、引けば広角的に使える。1本でさまざまな撮影を可能にする「汎用性の高いレンズ」だ。また、パースもそこまでつかず、圧縮効果もあまり無い。ゆえに、レンズの効果が極めて少ない焦点距離だといえる。
しかし、裏を返すと、レンズの質が強く問われる焦点距離、ともいえる。
特に「50mm F1.4」は、カメラの歴史の中で「標準レンズ」と言われてきたスペックで、各メーカーがしのぎを削って開発を続けている。そこで、登場したのがこの「opera 50mm F1.4 FF」だ。
サイズ感/ボディとのバランス
鏡筒デザインは洗練されており、マットな質感が特徴的。手にしてみると、金属独特のひんやりとした感じはなく、しっとりとした気持ちの良い感触が得られる。
重さは約950g。EOS 5D Mark IV(890g)と組み合わせると約1,840gになり、いろいろな機材に慣れている筆者であっても、多少なりとも重さを気にする場面はあった。ただ、バランスは悪くなく、撮っている瞬間はストレスを感じない。
このくらいしっかりしたサイズのレンズの方が、安定したホールド感が得られる。
最大径×全長は80×107.5mm。鏡筒はわりと長め。付属のレンズフード(BH-726)を装着すると、レンズの存在感がより増して大柄な印象となる。
とはいえ、レンズフードは逆向きにつけることが可能。持ち運びに場所を取らない。
ちなみに、当レンズは、余裕のあるレンズ構成で無理なく光を屈折させ、高画質を実現する設計を施しているため、この大きさとなっている。後述するレンズの高い性能を考えると、納得のいくサイズだ。
操作性
フォーカスリングは固くもなく、ゆるくもなく、まさにちょうど良い具合だ。幅が少し広めなので、ファインダーを覗きながらでも回しやすい。
特筆すべきは、標準レンズとして撮影者が頻繁に使用することを考慮して、フォーカスリングの回転方向をニコン、キヤノン純正レンズの回転方向に合わせて設計してあることだ。「いつも通り」に操作可能なので、より撮影に集中できる。
省略されることのある距離指標もしっかりある。
AF速度/静音性
AF駆動用のモーターには、応答性が良く、作動音も小さいリング型超音波モーターを採用している。静かな室内で使用した際も、モーターが作動している感触はしたが、作動音はまったく気にならなかった。
リング型超音波モーターを採用しているので、AFでピントを合わせた後、フォーカスリングを回すだけでピントの微調整を可能にするフルタイムマニュアルが使える。したがって、接写時などにより素早く、正確にピント合わせができる。
合焦スピードは爆速とまではいかないが、十分に速く、正確だ。合焦のテンポ感が、人間の視点の動きに近いものがあり、目で見ているのと同じように、自然に被写体を捉えることができる。
AF/MF切り替えスイッチは側面にある。スイッチは大きくてシンプルな作りなので、ファインダーを覗いたまま左手で簡単に操作できる。
防塵・防滴構造
当レンズは防塵・防滴構造を採用している。マウント部のゴムシーリングの他に、鏡筒内にもシーリングを施しており、より水滴や埃がレンズ内部に入りづらい構造となっている。
作例
最短撮影距離は0.4m。絞り開放でバラの花に寄ってみたが、画面をほぼ花で埋められるくらい近づくことができた。50mmの焦点距離でここまで寄れるのは嬉しい。1本でバリエーション豊富な絵づくりができるレンズだと感じた。背景のボケもほぼ円形で気持ちが良い。
太陽を構図の中に入れ、強い逆光状態で撮影をしてみた。さまざまな角度から撮ってみたが、逆光耐性は極めて高く、フレアやゴーストはほとんど入らない。かろうじてフレアとゴーストを確認できたのがこのカットだが、よく見ないと気がつかないレベルだ。
絞り開放で草花に最短撮影距離まで寄った。背景のボケは綺麗な円形で、嫌味がない。レンズの色乗りも極めてよく、色鮮やかなものをたくさん撮りたくなる。
絞り開放で、池のほとりにある柵に腰掛けるモデルを撮影した。AFの精度が高いので、このくらい引いても、躊躇なく絞り開放を使おうと思える。コントラストの高い描写が、画面の中でモデルを立体的に浮き上がらせる。
道端にいた犬がこちらを見た瞬間にシャッターを切った。犬はちょこちょこ動き回っていたのだが、高速かつ正確なAFのおかげで、絞り開放でもシャッターチャンスを逃さず、しっかり瞳にフォーカスできた。
昼食に食べたパンケーキを俯瞰ぎみに撮影した。寄れるレンズなので、飲食店の中でも立ち上がらずに目の前の被写体をおさめられるのが嬉しい。画面の中で、ふわふわとしたパンケーキと、ソリッドな食器の質感が両立しているように感じた。これも、高い解像力と高コントラストを誇るレンズゆえの表現だろう。
枝で遊ぶモデルが、画面の中でバランスの良いと思う場所にきたのでシャッターを切った。高コントラストな描写が、光の当たる場所とそうでない場所の差を明確に描き出し、メリハリのある絵に仕上げてくれた。しかし、50mmという画角は、少し引けばすぐにモデルの全身をおさめられるので本当に使い勝手が良い。
上の作品と同じ場所で、モデルの前にまわりこみ、順光で撮影をした。力強く、こってりとした描写で、モデルの表情がより強調されたように思う。
川沿いを歩いていたところ、ちょうどいいところに自転車が通ったので、咄嗟にカメラを構えて撮影をした。精度の高いAFのおかげで、思い描いた通りの場所に自転車を配置できた。F8まで絞ったが、ヌケの良い描写が、この広くて気持ちの良い空間の雰囲気を正確に伝えてくれているように思う。
F8まで絞り、路地裏を撮影した。レンズの色乗りの良さやコントラストの高い描写力が、薄暗くて直線的な路地裏の雰囲気をあますところなく捉えている。このレンズは、こういった場所を撮るのに特に向いているように思う。
今度はF8で、光の降り注ぐ池を眺めるモデルを後ろから撮影した。非現実的なくらいにモデルが立体的に見える。実はこのとき池に鳥が着水して、水面がキラキラと光りとても綺麗だった。その状況が目で見たものと同じように写っていて驚いた。
絞り開放で、逆光で輝くねこじゃらしを撮影した。このような状況で発生しやすい二線ボケもほとんど出ておらず、レンズの性能の高さがうかがえる。
夜、バーで目の前の光景を切り取った。メリハリのある描写をする当レンズは、バーのように輝度差がある場所での撮影は得意だ。AFも迷っている様子はなかった。グラスの立体感、背景のぼんやりととろける感じが、心地よい大人の空間を演出している。
まとめ
opera 50mm F1.4 FFで撮った写真から感じることは、その高い解像力と、立体感のある描写だ。どのシーンでも、被写体が浮き上がってくるような力強さがあり、撮れば撮るほど写欲を刺激された。開放で寄っても、絞って引いても、ポートレートでも、スナップでも、気持ちの良い絵が撮れるので、さまざまなシチュエーションで使ってみたいと思えた。
汎用性の高い50mmという焦点距離。さらに、そこに信頼性が加われば、自身にとって最高の1本となる。opera 50mm F1.4 FFはそんな存在になり得るのではないかと思う。
モデル:川口紗弥加