新製品レビュー
Tokina opera 16-28mm F2.8 FF
自然なトーン表現とクリアな描写が魅力の超広角ズームレンズ
2019年3月20日 07:00
CP+2019でもアナウンスされていた製品、opera 16-28mm F2.8 FFが正式に発売された。operaとはトキナーブランドの新シリーズで、同社によると「作品を撮るためのレンズ」としての位置付けされている。operaとしての第1弾は昨年秋にopera 50mm F1.4 FFが発売済みである。本レンズはそれに次ぐ第2弾となるものである。
仕様と特徴
焦点距離はワイド端16mmスタートだが、他の16mmスタートの超広角ズームレンズの多くが35mmまでであるのに比べるとテレ側で28mmまで、とズーム比を1.75倍に抑えた焦点距離となっている。標準ズームレンズの広角端が24mmや28mmスタートが多いことから焦点距離の重複を避け、これによって無理のない設計としたものと思われる。
新開発の56mm非球面レンズや低分散ガラスの使用によりゴースト・フレアの低減化、SD-MモデュールとGMRセンサー(高精度磁気センサー)の搭載によって静穏なAF駆動音と高精度かつ素早いAFスピードの実現を可能にした。
ニコンやキヤノンの純正レンズと同じ回転方向に設計されているのでMF時にも違和感なく操作が出来る。最短撮影距離は28cm。専用レンズキャップが付属する。メーカーの直販サイトでの販売価格は税込みで9万4,500円。
デザイン
operaシリーズはメーカーが「作品を撮るためのレンズ」と謳っているだけあり、過去の同社レンズの外観デザインとは一線を画す現代的かつシンプルなデザインに仕上がっていることも特徴だ。筐体は光沢を抑えた落ち着いたマット調のシックな仕上がりになっていて、今回の撮影に使用したカメラボディー、キヤノンEOS 5D Mark IVと似た雰囲気の仕上がりでとてもマッチしている。
レンズ構成は13群15枚で3枚の非球面レンズと3枚の異常低分散ガラスを使用。レンズ先端部は通称“出目金”レンズと呼ばれる前玉が大きく露出している構造なので先端部へのフィルターの装着は出来ない。鏡胴と一体型の花型フードが装着されている。
操作性
ズームリングは程良いトルクでの作動感なので不用意に動いたりすることを防げる。
フォーカスリングの回転方向も使用カメラメーカーの純正レンズと同じ方向となっているのでマニュアル使用時にも違和感なく自然な操作が可能で、またフォーカスリングを前後に動かすことによってAFとMFが切り替わるスイッチも兼ねているので直感的な操作をし易い構造に設計されていて便利だ。
AFについてはフロントインナーフォーカスだがGMRセンサー(高精度磁気センサー)とSD-Mモデュールの搭載による素早い合焦、そしてほとんど作動音もきこえないくらい静粛性も高い。
作品
夕暮れが近づいた街並みに流れる雲が印象的だった。街中で空の広がりを見せるには焦点距離16mmクラスの超広角レンズの存在が不可欠だ。
境内で自撮りをしている女性たちが樹の影と重なって面白かった。奥に建つ女性へピントを合わせて、絞りF5.6で撮影。半逆光状態だがフレアの問題もまったくなく、敷き詰められた砂利が手前に近づくにつれてボケるようにすることで奥行きも出せた。
観光名所でもある鶴ヶ岡八幡宮を訪れると神前結婚式が行われていることが多い。28mm側の開放絞りF2.8で髪飾りにフォーカス。背景の様子は、ピントはボケながらもディティールは克明に描かれている。
テレ端の28mm側でマーガレットを撮影。開放から半分絞ったF3.5だが後方の花びらや莟のボケ具合も自然な描写だ。
レンズを太陽方向へ向けた状態で中間絞り値のF5.6で木々の間から撮ってみたが光条の出方も美しくて、思ったほどフレアの影響もなかった。
参道沿いにあるオモチャ屋さんのショーウィンドーで見つけた昔懐かしいブリキのワーゲンバス。暗部から明るい外光まで自然なトーン表現だ。
都会のビル群の中に現れたのは皆さんご存じの怪獣モニュメント。こういったシチュエーションを画面に収めるにはやはり必要となってくるのが超広角レンズである。
F6.7まで絞ると被写体の持つ質感描写もグッと増してくる。
寝転んで地面スレスレのローアングルからのカットを開放絞り値F2.8で撮る。
鎌倉、鶴ヶ岡八幡の春。開放絞り値F2.8で桜の花に寄ってみたが超広角の16mm側でも背景も手前も充分にボケ味を楽しめる。
晴れた日の片瀬江ノ島海岸。レンタル着物の観光客の女性たちが海からの強風に向かって歩いていた。
湘南海岸。日没の後、遠くにくっきりと見える富士山をオレンジ色の残照が照らし出して美しい。暮れゆく空に浮かんだ三日月や江ノ島灯台や沿道を行くクルマのヘッドランプや外灯の明かりも滲みを感じさせないクリアな描写だ。
まとめ
いまや超広角ズームレンズはAPS-Cやマイクロフォーサーズを合わせるとキリがないが、35mm判フルサイズセンサー搭載カメラ対応のものだけでもカメラメーカーの純正レンズだけでなく、サードパーティー製品がレンズメーカー各社から明るさや焦点距離の違いなども含めて多種多様に出揃ってきた。
その中では後発となる本製品、トキナーoperaシリーズの16-28mm F2.8 FF。ズーム比を抑えたことで手に入れた素早く正確なAF性能と、比較的コンパクトなサイズでありながら実現したズーム全域での開放F値F2.8。これまでにはない隙間ポジションを埋める、個性が光るレンズだといえるのではないだろうか。