新製品レビュー

“高機能”レンズ一体型カメラ特集:キヤノン PowerShot V1

1.4型センサーと超広角ズームレンズの組み合わせの妙

「PowerShot V1」は、2025年4月に発売された、1.4型センサーを搭載したレンズ一体型デジタルカメラである。

この1.4型というセンサーサイズが特長のひとつで、同社の「PowerShot G7 X Mark III」が搭載する1型センサーよりも、面積にすると約2倍も大きい。マイクロフォーサーズシステム規格の4/3型センサーよりも一回り大きいといえば、ピンとくるのではないだろうか。センサーサイズが大きいということは、相対的に高画質で高感度ということを意味する。

仕様・装備

搭載するレンズは8.2-25.6mm(約16-50mm相当)F2.8-4.5のズームレンズである。テレ端まで伸ばしてもサイズ感を邪魔しないコンパクトながら、F2.8スタートと明るいのは嬉しいところだ。

ワイド端が約16mm相当とかなり広いが、これは動画撮影を考慮してのことだろう。静止画としても、広角に強いレンズ一体型カメラとして異彩を放っている。

動画撮影に強いのも特徴。冷却ファンを内蔵しており、カメラ内部で生じた熱を効率よく排出する仕組みが備えられている。

動画撮影時に風切り音などを防止する「ウィンドスクリーン」が同梱されている。

液晶モニターはバリアングル式で、静電容量式のタッチパネルとなっている。画面サイズは3.0型で、ドット数は約104万ドットと一般的な仕様だが、視認性も十分で扱いやすい。

電源をOFFにするとレンズがボディに収納され、保護のためのシャッターが閉じるタイプ。この収納性の良さと手軽さはありがたい。

作例

1.4型で約2,390万画素という撮像センサーの恩恵はやはり大きい。画質は上々で、コンパクトなレンズ一体型カメラとは思えないほど、描写性能に優れた画像を得ることができた。

比較的高感度といえるISO 1600で撮影したが、ノイズはほとんど感じられず、破綻のない階調で表現されている。

PowerShot V1/14.636mm/絞り優先AE(1/100秒、F10、±0.0EV)/ISO 1600

超広角といって良い約16mm相当、ワイド端の焦点距離8.2mmで撮影した。最短撮影距離が短いため、被写体にグッと近づいて撮れる。近くの被写体を大きく写しながら、背景を広く取り込んだ、いわゆるワイドマクロ撮影が楽しくなる。

PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/320秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 100

レンズ交換式カメラのEOSでも定評のある被写体検出機能により、子供やペットなど、動き回る被写体にも広範囲で粘り強くピントを合わせ続けてくれる。コントラストAFのみだった「PowerShot G7 X Mark III」と比べれば、AF性能は格段に進化。静止画撮影はもちろん、動画撮影でも信頼できるAF性能を備えていると言えるだろう。

PowerShot V1/12.067mm/絞り優先AE(1/80秒、F3.5、+0.7EV)/ISO 500

クリエイティブフィルターの「ラフモノクロ」で撮影してみた。ピクチャースタイルだけでなく、遊び心の効いたクリエイティブフィルターもEOS譲り。撮影にもう一味加えたいというときなどに、効果的な演出をしてくれるはずだ。

PowerShot V1/10.283mm/絞り優先AE(1/60秒、F3.2、±0.0EV)/ISO 125

まとめ

本格的な動画撮影機能を盛り込みながら、静止画撮影機能にも一切手を抜いていない。同シリーズのプレミアムモデル「PowerShot G7 X Mark III」と比較しても、明らかな進化がうかがえる。

ファインダーや光学式の手ブレ補正機能がないことを残念に感じるかもしれないが、必要な機能の向上に専念し、極力無駄を削ぎ落とした結果と考えれば納得がいくというもの。実際に使ってみても、高い機能をコンパクトにまとめ上げた設計に感心せずにはいられなかった。

PowerShot Gシリーズのコンセプトを受け継ぎ進化させながら、本格的な動画性能をも盛り込んだ本モデル。きっと「これ1台でいける!」と思わせてくれることは、間違いないと思う。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。