新製品レビュー

“高機能”レンズ一体型カメラ特集:パナソニック LUMIX TZ99

広角から超望遠まで、気負わずトライできるポケッタブルカメラ

「LUMIX TZ99」は、2025年2月に発売された、1/2.3型MOSセンサーを搭載するレンズ一体型デジタルカメラである。

特長はフラットタイプのコンパクトなデザインと、35mm換算で24-720mm相当となる光学30倍ズームレンズを固定搭載している点だ。かつて1ジャンルを築いた、薄型ボディ+高倍率ズームレンズの製品の2025年版ともいえる。

外観・仕様・装備

レンズ収納時の外形寸法は約112.0×67.8×43.1mmで、質量は約322g(カード、バッテリー含む)。携行性は良好で、バッグの隅に入れてもかさばりにくい。持ち歩いてみても重さが気になることはほとんどなく、日常的に携行できる印象だ。

前述の通り、搭載するレンズは4.3-129.0mm(35mm換算で24-720mm相当)F3.3-6.4の高倍率ズームレンズである。超広角から超望遠までを1本でカバーしているのだから、サイズ感を考えれば、これはもう超高倍率ズームと呼んで差し支えないだろう。

下の画像はテレ端までレンズを繰り出した状態だが、720mm相当であってもこの程度に収まっている点に注目したい。1/2.3型MOSセンサーという小型の撮像素子を生かしたパッケージングといえる。

液晶モニターはタッチパネル対応の3.2型、約184万ドットを搭載。EVF(電子ビューファインダー)非搭載の本モデルとしては、やや贅沢ながらも妥当な仕様といえるだろう。上下チルト式の可動モニターが採用されており、ハイアングルやローアングルの撮影も無理のない姿勢でこなすことが可能だ。

その液晶モニターは180°まで展開できるため、自撮りにも対応できる。

作例

ワイド端24mm相当で撮影。超高倍率ズーム機でありながら、あえて28mm相当ではなく24mm相当をワイド端とした点は、設計上かなり苦労した部分のはずだ。その選択によって、広角側の使い勝手が大きく向上し、コンパクトなレンズ一体型カメラとしての汎用性は、確実に広がっていると感じられた。

パナソニック LUMIX TZ99/4.3mm(24mm相当)/プログラムAE(1/60秒、F3.3、−0.7EV)/ISO 125

こちらはテレ端の720mm相当。35mm判換算で720mm相当という画角は、超望遠レンズの世界に属するものだろう。それを特別に意識させることなく、日常の延長線上で使えてしまう点こそが、本モデルの大きな魅力だ。野鳥のように遠く小さな被写体であっても、気負うことなく自然にとらえられる点は、このカメラならではの強みといえる。

パナソニック LUMIX TZ99/129mm(720mm相当)/プログラムAE(1/125秒、F6.4、−0.3EV)/ISO 160

最短撮影距離はワイド端のAF時に50cm、MF時で3cmまで寄ることができる。1/2.3型センサーを採用する本モデルならではの、特徴的な近接撮影性能といえるだろう。必ずしも3cmまで寄る必要がなくとも、撮りたい被写体に対して無理なく距離を詰められる点は、撮影の自由度という観点で有効だ。

パナソニック LUMIX TZ99/5.8mm(33mm相当)/プログラムAE(1/80秒、F3.6、±0.0EV)/ISO 125

本領はやはりスナップ撮影にある。奇をてらわず、距離に縛られることもなく、難しいことを考えずにシャッターを切る。そのシンプルな楽しさこそが最大の魅力だ。

パナソニック LUMIX TZ99/9mm(50mm相当)/プログラムAE(1/80秒、F4.1、+1EV)/ISO 125

まとめ

1/2.3型センサーと光学30倍ズームという構成から想像される以上に、撮影の自由度が高いレンズ一体型デジタルカメラだと実感した。

24mm相当の超広角から720mm相当の超望遠までを1台でカバーし、さらに近接撮影にも強い。撮影にまつわる難しいことを意識せず、被写体との距離に囚われることなくシャッターを切れる点が、飾ることのない魅力なのだと思う。

高画質を誇示するタイプのカメラではないが、携行性の良さと扱いやすさを武器に、日常から旅先での撮影までを軽快にこなしてくれる。撮りたいものが現れた瞬間に、距離や設定を考え込まずに済む。その気軽さと自由度をコンパクトなボディに凝縮した点こそが、本モデルの特長だといえるだろう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。