新製品レビュー
“高機能”レンズ一体型カメラ特集:ソニー RX1R III
ミラーレス全盛の今よみがえった「撮影技術の結晶」
2025年12月29日 13:00
ソニー「RX1R III」は、2025年8月に発売された35mm判フルサイズセンサー搭載のレンズ一体型デジタルカメラである。思えば初代「RX1」(2012年11月発売)は、ミラーレスカメラに先立って35mmフルサイズセンサーを搭載した初のレンズ一体型カメラだった。
前モデル「RX1R II」(2016年2月発売)から約9年を経て登場した後継機だが、外形寸法と質量がほとんどそのまま維持されている点は重要なポイントだ。
外観・仕様・装備
ただし外観にはいくつかの変更が見られる。例えばカメラ前面右下の「AFモードダイヤル」が廃されるとともに、マルチインターフェースシューとダイヤル類が天面に揃えられフラットトップとなった。前モデルのゴツゴツとしたメカメカしさはなくなり、全体的にシンプルでスマートになった印象だ。
搭載するレンズは焦点距離35mm、開放絞り値F2の「ゾナー35mm F2」。前モデルから変更はなく光学系も同じだが、それは本レンズが優秀で、変更の必要がないということだろう。
一方、撮像センサーは前モデルの有効約4,240万画素から約6,100万画素へと高画素化している。本レンズでも、十分な光学性能を発揮できるということだ。
レンズ先端には、マクロモードに切り換えるための「マクロリング」を搭載している。本レンズの最短撮影距離は30cmだが、マクロモードにすれば約20cmまで縮められる。あともう一歩寄りたいというときなどに便利だ。
背面のボタン類やダイヤルの配置は、基本的に前モデルを踏襲しており、変更点は「メニューボタン」と「再生ボタン」の位置が入れ替えられた程度に留まっている。「αシリーズ」との共通性も感じられる操作体系で、ソニーユーザーであれば迷うことはほとんどないだろう。
コンパクトながらEVF(電子ビューファインダー)を搭載しているのは「RX1シリーズ」の特徴のひとつだ。前モデルで採用されていたポップアップ式は固定式に変更された。
同時に、上下チルト式だった液晶モニターも固定式となっているが、コンパクトであることに利点を感じやすいレンズ一体型カメラの場合、むしろ扱いやすさに繋がっていると感じた。ある意味、英断だと言えるのではないだろうか。
作例
「α7R V」などと同じ有効約6,100万画素センサーが採用されているだけあって、画質は非常に優秀であることが実感できる。もちろんそれは、同じく高い評価を得てきた「ゾナー35mm F2」が固定搭載されているからこそだ。センサー前面ギリギリまで設計されたレンズ構成がミクロン単位で組み込まれており、レンズ一体型ならではの“良さ”がはっきりと現れている。
最新のαシリーズにも搭載されている「AIプロセッシングユニット」が本モデルにも採用されている。被写体の形状や瞳の位置を高精度に検出し、人物やペット、乗り物といった被写体のピント合わせは、ほぼカメラに任せても問題ない。撮影者は構図や露出に集中できる点が大きな魅力だ。
有効約6,100万画素センサーを活かした「ステップクロップ撮影機能」を搭載。「C1ボタン」(初期設定)を押すごとに、35mm→50mm相当(約2,900万画素)→70mm相当(約1,500万画素)へと切り換えられる。高画素モデルだからこそ実用性の高い機能であり、下の作例は50mm相当で撮影している。
上述の「マクロリング」をマクロモードに切り換え、最短撮影距離約20cmで撮影してみた。35mmフルサイズセンサーの焦点距離35mmでここまで寄れると、スナップ撮影とはまた違う表現の世界に踏み込めるような感覚がある。近接撮影でも描写が破綻していない。
まとめ
初代「RX1」は、35mmフルサイズセンサーと35mm F2の高性能レンズを固定搭載した初のレンズ一体型デジタルカメラとして2012年に登場した。登場当時、衝撃的だったそのコンセプトは、最新モデルの「RX1R III」においても変わることなく受け継がれている。
本モデルの特長を挙げるとすれば、シンプルに刷新された外観デザインと、有効約6,100万画素への高画素化だろう。固定式となったEVFと液晶モニターは、コンパクトなカメラを軽快に使うという点では理にかなっているし、高画素化によって成立する「ステップクロップ撮影機能」も実用的である。
固定搭載の35mm単焦点レンズを軸に表現を突き詰めていく本モデルは、写真と丁寧に向き合いたい人に応えてくれる1台といえるだろう。













