新製品レビュー
Lomo MC-A
独自の表現力を持つロモグラフィーの新しい世界 コンパクトなAF搭載フィルムカメラが新登場
2025年12月17日 07:00
ロモ初のAFカメラが登場!
ロモグラフィーは、「考えるな、写せ!」をモットーに、技術的な完璧さよりも、直感と自由な表現を重視する写真哲学で世界中で人気を博しています。
フィルムカメラの従来モデル「LOMO LC-A」(LC-A)はその思想を体現するロモグラフィーの元祖とも言えるカメラ。そんなLC-Aの伝統を受け継ぎつつ、現代の技術を取り入れた、AF搭載の35mmカメラ「Lomo MC-A」(Metal Compact Automat)が新登場です。これは、ロモグラファーにとっても、フィルムカメラファンにとっても、衝撃的な出来事ではないでしょうか。
すでにSNSでも多くのユーザーやフィルムカメラ好きの皆さんが熱い視線を注いでいる中、ロモグラフィーの新たなチャプターとなるLomo MC-Aで早速実写をしてきました。
MC-AとLC-Aの違いは?
言わずもがなですが、Lomo MC-Aの最大のポイントは、AFを搭載したことです。
前述のLC-Aは搭載されているMinitar Iレンズによる、強烈な発色と高いコントラストの効いた写りが特徴的。周辺光量落ち(ビネット)で写真の四隅が暗くなる効果や、ノスタルジックで印象的な雰囲気を生み出します。
MC-Aでは新開発となったレンズで、その効果が得られるのか気になるところです。
| Lomo MC-A | LOMO LC-A / LC-A+ | |
|---|---|---|
| フォーカス | ・オートフォーカス(AF) ・ゾーンフォーカス(0.4m/0.8m/1.5m/3m/無限遠) | ・ゾーンフォーカス |
| 撮影モード | ・プログラムオート ・絞り優先 ・フルマニュアルの3モード | ・プログラムオートが基本 |
| レンズ | ・Minitar II 32mm f/2.8マルチコートガラスレンズ(新開発) | ・Minitar I 32mm f/2.8 |
| デザイン | ・金属製でスタイリッシュ(ブラック/シルバー) | ・クラシック |
| その他 | ・撮影設定を表示するLCDディスプレイを搭載 |
パッケージもアクセサリー類も“ロモらしいコンテンツ”
製品の化粧箱は立派なもので、かなり重厚感があります。手にした瞬間「え、こんなに重たいカメラなの?!」と驚きました。
ひやひやしながら玉手箱を開けるかのように、その重みを感じつつ開封したところ、上蓋の裏面にハードカバー製本の作例写真集が入っておりました。これはロモユーザーやファンならゲットしたいアイテムなのではないでしょうか。MC-Aの世界観が凝縮されております。
アクセサリーは盛りだくさん。ラッピングクロス、レザーストラップ、レンズキャップ、MC-UVフィルター(30.5mm径)、多重露光用Splitzer、フラッシュ用カラーフィルターなどが同梱されています。使用説明書はQRコードからサイトでの閲覧・DL式です。
バッテリーはロモ純正かと思いきや、CR2型の充電池です。USB Type-Cケーブルで充電ができるので、外出先でもモバイルバッテリーなどで充電が可能になっています。途中で電池切れが気になる方は、予備に市販のCR2電池を持ち歩くと安心です。
外観やデザインのチェック
まずは、皆さんが注目している外観やデザインから。なんといっても手にした感触の良さが抜群です。
トップカバーと底面、各種ダイヤル類に金属を施したボディは、しっかりとした重みと、ひんやりとした金属の高級な質感を感じてうっとりすることでしょう。まさにプレミアムコンパクトカメラの佇まい。ボディカラーは黒とシルバーの2色ありますので、どちらにしようか思う存分悩んでみては?
天面に刻まれた文字は、“Everyday is equal. before the lens and behind it.”
「何気ない1日も、レンズが捉えるその瞬間も、シャッターを押す撮り手の心も、すべてが平等に価値を持つ」の意。こういうデザインとしてのあしらい方もロモならではの発想ですね。
フィルムの巻き上げは電子制御です。カメラのグリップ性が高まる、サムレストスタイルのフィルム巻き上げレバーの操作感がとても心地良く、結構な快感を得られます。フィルムを装填しなくても巻き上げ操作を試すことができ、その心地よさを実感できます。
底面は電池室、三脚穴、巻き戻しボタンがあります。フィルムの巻き戻しは手動なので、レバーを持ち上げて矢印の方向へ回転させます。
各ボタンやダイヤルなどの操作
トップ部にある小さなレバーのついた電源スイッチで、MF/AFを切り替えます。
レンズはコンパクトカメラらしい沈胴式で、電源を入れるとレンズが繰り出され、電源OFF時は格納される仕組みです。5mm程度突出しますが、何かに引っかかるようなことはありませんでした。レンズ前には30.5mm径のフィルターが装着可能です。
左肩のLCDでは撮影設定の確認ができます。
DXコード付きのフィルムを装填するとISO感度は自動で設定されます。使用するフィルムによっては手動で、ISO 12からISO 3200まで設定可能です。
ファインダーはブライトフレーム。写真では黒く見えている枠の内側が撮影範囲になります。実際に肉眼でファインダーをのぞくと、撮影範囲の枠が黄金色に見えます。個人差はあるかもしれませんが、この黄金色のブライトフレームは、光の状況によっては視認性がわずかに低いと感じました。
撮影中の合焦ランプの点灯・点滅は確認しやすくなっています。ファインダー内で青の点滅が出るときはピントが合っていない、もしくは巻き上げていないとき。赤ランプがつくときは、シャッタースピードが遅い、という警告です。
新開発レンズの描写
MC-Aに搭載されたレンズは、新開発となったMinitar II 32mm F/2.8。マルチコートのガラスレンズを採用した5群5枚のレンズです。高性能を追求するよりも、実用的な性能と携帯性、コストのバランスを重視した設計となっています。
焦点距離が32mmと広角であるため、F2.8という絞り開放値でも一眼レフの標準レンズ(50mmなど)ほど背景が大きくボケることはありません。被写界深度は深く、全体的に切れ味の良いシャープな写りです。
撮影してみると、周辺減光、フレアやゴーストといった欠点を魅力に変える、唯一無二のロモの世界観がMC-Aにも息づいていました。
ロモグラファーがトンネル効果とか、トンネルエフェクトと呼ぶ、周辺光量不足によるビネット効果の描写は継承され、逆光時のフレアはなかなか盛大で、画面全体に柔らかく拡散されます。AFでピントは合わせやすく、シャープな描写なのに写りは予測不能でエモーショナル、というMC-Aならではの進化です。
いかに写真を幻想的に、ドラマチックに彩るか。フレアやゴーストといった欠点を魅力に変える描写の肯定もロモの世界観でしょう。
光を恐れず、むしろ楽しむ姿勢が求められていることは、MC-Aに搭載されたMinitar II 32mm F/2.8でも変わりはないという感じを受けました。
進化し続けるデジタルカメラや他のカメラが追求する完璧さからの解放でもあり、AFという確実性と、ロモらしい不確実性の融合です。
AF+Pモードで気兼ねなく撮影
LC-Aがピント合わせを気にせず瞬間を写すカメラだったのに対し、MC-AはLC-Aの持つ独特の描写を保ちつながら、AFを搭載することで、より確実にシャープな写真を撮りたいという現代のニーズに応えています。
シャッタースピードダイヤルを「A」に、レンズのリングを「P」にすれば、プログラムオートでの撮影が可能になり、直感的なスナップ撮影に最適です。
AFの精度はなかなかのもので、外さない印象。ロモの作風から「ピントが外れる楽しさ」も期待するユーザーもいるかもしれませんが、MC-AのAFはむしろ確実にシャープな描写を提供してくれる、現代的な完成度だと感じました。
コンパクトカメラなので、AF撮影時にはシャッターボタンを半押しにしてAFロックをかけておくのが撮影時のポイントです。
まず手始めに、何も気にせずAFのみで撮影した写真。ロモらしさを残しつつも、高級コンパクトカメラさながらのシャープさがスッキリと気持ちいい写り。
ガラス越しにどこまで写るかな? と思いつつ撮影してみましたが、ガラスの反射をいい感じで写し込めました。
カラフルな車の列に目が留まり、電車のホームから撮影した屋上駐車場の光景です。
駅前の花壇に咲いていた季節外れのブーゲンビリア。最短撮影距離40cmほどでの撮影です。露出補正もしていませんが、ハイキー目に写ったのは、Kodakフィルムを使ったからでしょうか。
ゾーンフォーカス(MF)+絞り優先で撮影
絞り優先AEやフルマニュアルモードが追加されたことで、ロモグラフィーの味を活かしながらも、撮影者が意図的に写真の設定をコントロールできるため、表現の幅が格段に広がったと言えます。
フルマニュアルモードの場合は、LCD表示で適正露出の上下▲▼表示を確認しながらの撮影を行うか、赤・青ランプの点灯を確認しながらの撮影となるので、撮影時のタイムラグが多少あります。ですので、絞り優先AEでの撮影が適切だと感じました。
ゾーンフォーカスは、電源スイッチをMFの位置に切り替え、レンズ横のレバーで撮影距離を固定します。
多重露光撮影も
多重露光撮影は、Lomo LC-Aシリーズの大きな魅力の1つでしたが、MC-Aでも同様に撮影ができます。今回、MX(Multiple Exposure)ボタンを使った撮影もテストしてみました。MXボタンを押すとシャッターを切ってもフィルムが巻き上がらない状態になります。
多重露光撮影向けに専用のSplitzerも同梱されています。撮影に慣れているロモグラファー上級者は、Splitzerを使って分割された画面構成の多重露光撮影も楽しめるでしょう。
まとめ:評価
気軽なフィルムカメラというよりも、一歩踏み込んで作品作りに取り組みたいユーザーの撮影意欲を満たしてくれるカメラだと感じました。所有する魅力はもちろん、テクニカルな完璧さを求めるのではなく、感情的なインパクトや瞬間的な雰囲気を楽しみたいユーザーにふさわしい1台です。
コンパクトカメラ、フィルムカメラは中古市場が活況ですが、プレミアムコンパクトカメラを手に取りやすい価格で登場させたロモには感服しました。Lomo MC-Aには2年間の初期不良保証が付帯している安心感も魅力の1つになっています。
皆さんもぜひ、MC-Aでロモグラフィーの新しい挑戦を堪能してみてください!


































