新製品レビュー

キヤノン PowerShot V1【静止画レビュー】

フレキシブルな超広角表現をコンパクトなボディで

PowerShot V1

キヤノンが4月に発売したコンパクトデジタルカメラ「PowerShot V1」が販売好調なようだ。一部量販店では納期が6カ月との案内も出ている。ここでは先日公開した動画編に引き続いて、静止画の撮影に注目したレビューをお届けする。

特徴・機能

PowerShot V1は動画ユーザーに向けた”Vlogカメラ”というポジションの製品だ。ネーミングも動画向けラインである「PowerShot V」シリーズの1つとなっている。実勢価格は14万8,500円前後だ。

PowerShot Vシリーズはその第1弾が「PowerShot V10」で2023年の登場だった。単焦点の超広角レンズを搭載しており、どちらかというとアクションカムに近いパッケージングだった。

一方で今回のPowerShot V1は、カメラらしいデザインのいわゆる”高級コンパクト”然としたデザインに方向転換されている。動画機能を強化していて冷却ファンまで搭載するこだわりようだが、実は写真のカメラとしても面白みの大きなカメラとなっている。

その大きな理由が、35mm判換算16-50mm相当というズームレンズだ。こういったコンパクト機で16mm始まりというのはあまり例がなく、手軽に超広角撮影ができるカメラとして発表以来注目されていた。

もとのコンセプトがVlogカメラなので、そうした撮影に適したレンジのズームレンズ(動画時は17-52mm相当)ということだと思うが、超広角を生かしたスナップ写真はなかなか撮っていて楽しいものだった。

見慣れたモードダイヤルも
モニターはフリーアングル式
背面ボタンもキヤノンユーザーならすぐわかるおなじみのものだ

画角変化

まずはレンズの画角変化を見た。先に記したとおり広角端は16mmとかなり広い。望遠端は50mmなのであまり望遠感はないものの、ズーム全域で1.4倍クロップもできるのでその場合23-71mm相当となる。

広角端(16mm相当)
望遠端(50mm相当)
望遠端(1.4倍クロップ、71mm相当)

センサーサイズは1.4型と面積にして1型センサーの2倍で、APS-Cサイズにも迫る大きさだ。静止画撮影時の画素数は最大約2,230万画素ということで、一般的な観賞なら不足はないだろう。

作例を見ると銅像のディテールまでよく描写されており、クロップ時も十分な質を保っているのが確認できた。71mm相当まで対応できれば一般的な標準ズームのレンジはカバーできることになる。

広角スナップ

本機の面白さといえばやはり広角端。スナップ的にいろいろ切り取ってみたが、かなり広い範囲が写るので面白い。ほかのコンデジとは一味違う写真が撮れる。

キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/250秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 100
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/200秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 100

16mmという焦点距離は広角ズームレンズのワイド端として風景撮影などでも親しまれているが、この機動性なら山を歩いたりといった場合でも苦にならないのではないだろうか。

ポートレート

ポートレートも撮ってみたが、広角側では広い背景と一緒に写せるのでダイナミックな構図になる。また、自撮りの場合も手を伸ばせばかなり広く写せる。

画面周辺は歪みができるので、顔は中央に置くと良い
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/200秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 100
広角端で縦位置にすると空まで広々フレーミングできる
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/250秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 100
自撮りでもかなり広く撮れる
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/800秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 100

望遠端の50mmも試したが、こちらは標準レンズの画角ということで誇張感の無い自然な雰囲気で撮影できた。人物写真にも好適なレンジのズームレンズだった。

キヤノン PowerShot V1/25.6mm/絞り優先AE(1/100秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 100

マクロ

35mmフルサイズセンサーやAPS-Cセンサーを搭載するミラーレスカメラと比べると、マクロ撮影も得意な方だ。最短撮影距離は広角が5cm、望遠が15cmだ。今回は望遠端の最短付近で花を撮影して見たが、しべの詳細までかなりはっきり写すことができた。

キヤノン PowerShot V1/25.6mm/マニュアル露出(1/320秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 100

ボケ

1.4型という大きめのイメージセンサーということもあってか、想像するよりもボケが大きいように感じた。

キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/200秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 100
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/80秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 1600

2枚の作例はいずれも広角端の絞り開放だが、結構ぼかすことができている。2枚目のように玉ボケを作ることもできた。このあたり、なかなか作画の自由度の高いカメラに仕上がっている。

逆光

逆光撮影も試してみた。大きなコントラスト低下もなく、またゴーストやフレアもほとんど見られず、クリーンな描写だった。

キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/100秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 100

高感度

静止画時の最高感度はISO 32000で、拡張時が最高ISO 51200となっている。ここではよく使われるであろうISO 6400で夜景を撮影している。

キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/50秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 6400

等倍で見るとディテールの崩れもあるが、実用的なサイズの観賞ではノイズ感も含めて気にすることは無さそうだ。このくらいまでなら躊躇無く使える画質だと感じた。

まとめ

超広角といえばスマホの広角カメラでも撮れるが、やはりカメラのように構えてしっかり撮りたい場合や、スマホのように過度に加工されていない写真を撮りたいならPowerShot V1はライバル不在の選択肢となろう。

超広角はモノクロとも相性が良いので、積極的にモノクロ撮影もしたくなる
キヤノン PowerShot V1/8.2mm/絞り優先AE(1/125秒、F4.0、−1EV)/ISO 100

動画性能についてのアピールが大きな本機だが、写真でも本格的なマニュアル撮影が可能。ミラーレスカメラのように高度なクリエイティブにも対応できる。価格はそれなりにするが、超広角の高級コンパクトと考えると写真メインのユーザーにもぜひ試してみてほしい1台と言えそうだ。

モデル:進藤もも

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。