新製品レビュー
Panasonic LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(前編:LUMIX S1編)
広角よりにシフトした軽快な標準ズーム
2020年6月29日 06:00
パナソニックからLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6が発表された。この製品はLマウント規格に準拠しており、同社のLUMIX Sシリーズはもとより、ライカ、シグマのLマウント採用ミラーレスカメラでも使用することができる、35mm判フルサイズセンサー対応の交換レンズである。
※撮影は緊急事態宣言解除後に身近な場所で実施。
広角側にシフトした標準ズームレンズ
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6は広角端20mmから望遠端60mmまでの標準域をカバーするズームレンズだ。一般的な標準ズームレンズは、広角端は24mmや28mmからスタートして、望遠端は70mmや105mmくらいまで、というモデルが多いのだが、このレンズはそれらとは異なり、「ちょっと広角寄りにシフトした」焦点距離となっている。
開放絞り値はズームで焦点距離を長くするに伴い絞り値が大きくなる可変開放絞りが採用されており、広角端20mmではF3.5、24mmでF3.8、35mmでF4.4、50mmでF5.3、望遠端60mmでF5.6となる。
鏡筒の大きさは最大径77.4mm、全長87.2mm(最短時)、フィルター径67mm。質量は約350gとなる。同じくパナソニックのLマウント用標準ズームレンズ LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.(最大径84mm、全長118mm、フィルター径77mm、質量約680g)と比較すると、大きさ・質量ともにかなりコンパクトかつ軽量であることがわかる。
写真はパナソニックのミラーレスカメラLUMIX S1(DC-S1)にS 20-60mm F3.5-5.6を装着したところだ。DC-S1はミラーレス一眼としては大きめのボディサイズであるが、このLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6との組み合わせもバランスが良い。組み合わせての質量はおよそ1,367gとなる(S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.との組み合わせはおよそ1,697g)。
レンズ鏡筒に設けられたAF/MFスイッチ。本レンズには手ブレ補正機構は搭載されていないこともあり、鏡筒にあるスイッチ類はこれだけ。
レンズ構成は9群11枚(非球面レンズ2枚、EDレンズ3枚、UHRレンズ1枚を含む)。レンズ表面には汚れの着きにくいフッ素コーティングが施されている。絞り羽根は9枚で、円形虹彩絞りを採用。最小絞り値はF22。
最短撮影距離は広角端で0.15m(撮影倍率0.34倍)、望遠端で0.40m(撮影倍率0.19倍)と短いので、被写体に近づいてのクローズアップ撮影も可能だ。なお最も撮影倍率が上がる焦点距離と撮影距離の組み合わせは、焦点距離26mmで最短撮影距離0.15mで、撮影倍率は0.43倍となる。
また本レンズは防塵防滴構造を採用しているうえ、さらに-10度までの耐低温仕様となっているので、アウトドア撮影においても安心感がある。なおこのレンズには手ブレ補正機構は搭載されていないが、装着するカメラがボディ内に手ブレ補正機構を搭載していれば、その効果を得ることができる。
遠景撮影で解像力を確認
S 20-60mm F3.5-5.6で遠景を撮影して、レンズの解像を確認する。焦点距離は広角端20mmと望遠端60mmそれぞれで、開放絞りから最小絞りまで絞りを1段ごとに変えて撮影した(使用カメラLUMIX S1、感度ISO 100)。
広角端(20mm時)
標準ズームレンズの広角端でありながら収差も歪曲も非常に少ない。20mmはもはや超広角域と呼べる画角だが、中央のみならず周辺の解像力も驚くほどに高い。中央部・周辺部共にF5.6〜F8が解像力のピークだが、さらに絞り込んでの撮影でも回折の影響は最小に留められている。開放絞りF3.5にてわずかに周辺減光がみられるが、実使用にはほとんど影響しない程度だ。
作例
S 20-60mm F3.5-5.6は超広角域となる20mmから標準域の60mmまでをカバーしたコンパクトで軽量なズームレンズだ。その特徴から日常的なスナップ撮影に適したレンズであると考え、今回は主にスナップ撮影を中心にテスト撮影を行い、その特徴と使い勝手を検証してみた。
強い風が舞う岬の海岸。打ち寄せる波にフォーカスを合わせて撮影。鈍色に霞む海の諧調も豊か。飛沫が風で舞う海辺の撮影では防塵防滴構造が安心感に繋がる。
沈みゆく太陽が東京湾の海面に輝きの道を架ける。波による細やかなテクスチャーは溶け合うことなく描写されている。
海沿いの公園の様子をF8まで絞り込み撮影。画面全域の解像感が上がり均一な描写となる。近景から遠景までとてもクリア。木々の葉までも一枚一枚しっかりと分解しているのが判る。
初夏を迎え緑に萌える木々。元気な枝葉の勢いある広がりを、レンズが持つ高い分解能が細かくくっきりと描写している。
60mmの最短撮影距離0.40mで、土から顔を出した朝顔の双葉を撮影。浅い被写界深度で双葉を浮かび上がらせる。ピント面からアウトフォーカスへの柔らかな遷移が絶妙。ただ普段105mmなどの中望遠レンズに慣れ親しんでいると、もう一歩近づければと思ってしまうが、そこは広角側にシフトしたこのレンズの特徴と割り切るのが良いだろう。
漁港の岸壁に積み重ねられた舫に近づき20mm開放絞りF3.5で撮影。フォーカスを合わせた部分はとことんシャープに、そこから先は極めて自然なボケ具合のグラデーションとなる。超広角の20mmでもボケ味を堪能できるレンズだ。
路面すれすれまでカメラを下げ、差し込む欄干の影をフレームに収める。超広角20mmの広い画角と強いパースペクティブを活かして画面を構成する。
明るい空に高く伸びる木の姿を収める。+2.0EVの露出補正をかけているが、枝葉を透ける光の滲みは見られない。非常に優れた耐逆光性能だ。
超広角20mmの広い画角を活かし、クルマの下でくつろぐ猫にぎりぎりまで近づきローアングルで撮影。大胆な遠近感と緻密な猫の毛並み、なだらかな背景へのぼけ味などが揃った一枚となった。
まとめ
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6はパナソニックがラインナップする、Lマウント用レンズのSシリーズの中でも、とりわけコンパクトかつ軽量なレンズだ。それでいて画質には一切妥協しておらず、高い解像性能を実現している。20mm〜60mmという焦点距離設定に最初は戸惑いがあるかもしれないが、20mmの広い画角とパースペクティブを使いこなせるようになれば、多くのシーンで画角の違いを効果的に活かした撮影ができるようになるだろう。
Lマウント用レンズは、同規格を採用するパナソニック製以外のカメラでも使用することができる。つまりこのLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6はシグマのLマウント規格のミラーレスカメラ「SIGMA fp」でも使用することができるのだ。そこで、次回後編ではSIGMA fpとLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6の組み合わせについて検証したいと思う。