新製品レビュー

ライカSL2

究極にシンプルな操作性 Mレンズの使い心地も検証

ライカSL2については、すでに本サイトでも試用レビューや旧モデルとの違いなどがレポートされている。そこで、今回はちょっと視点を変えて、個人的に感じた印象や、Mレンズを装着したときの利便性などについてレポートしてみたい。

まずはライカSL2の性能だが、4,730万画素のローパスレスCMOS、5軸のボディ内手ブレ補正機構、576万ドットOLEDを採用したEVF、4GBのバッファメモリー、1億8,700万画素相当のマルチショット、最高1/40,000秒の電子シャッター、USB Type-Cによる充電と給電、人認識AF、5K/30fps、シネマ4K/60fps、フルHD/180fps等々の動画性能など、スペック的にはかなりハイレベルにある。

もちろん、画素数だけ見ればもっと高画素な機種も存在するけれど、動画性能や電子シャッターを含めて網羅的にこれだけのハイスペックを備えている機種は現時点で他にない。他社の場合は動画に力を入れたモデルと静止画解像性能に力を入れたモデルを分ける傾向にあるが、ライカSL2はどちらの用途もこれ1台で満足させたいという意図があるようで、それゆえ全体としてのスペックがかなり高いのだと思う。

ならばライカSL2最大の特長はハイスペックであることなのか? 個人的には決してそうではないと思う。前モデルのライカSLが発売されたのは約5年前のことで、おそらくこのSL2もこれから5年くらいは現行機種として売られるはず。だったら5年たっても陳腐化しない仕様にしておこうという結果、このスペックになったに過ぎない。

ではライカSL2が他と異なる美点は何か?それは「究極のシンプルさ」であると強く思う。

背面。ライカM10とかなり共通化されたボタンレイアウト。
上面も操作部材は最低限に厳選されている。

ご覧の通り、ボタンやレバーといった操作部材がライカSL2は極端に少ない。

ライカ以外のメーカーの場合、エントリー機種では操作部材が少ない機種も存在するが、プロが使うような上位機種でここまで操作部材が少ないモデルはほとんどないだろう。これだけ操作部材が少ないと「使いにくいのでは?」という疑問も当然起こるだろうが、そこはさすがライカ。使いにくいどころか、むしろ使いやすく快適な操作性を実現しているのだ。

例えばライカSL2には、露出モードを切り換えるためのモードダイヤルが見当たらない。ではどうやってモードを切り換えるかというと、リア電子ダイヤルをプッシュすると露出モード選択状態になり、そのままダイヤルを回転させることでP→A→S→Mから選ぶ仕組みだ。これは前モデルのライカSLと同じなのだが、この仕組みに初めて触れたとき、思わず「頭良い!」と感動してしまった。これならカメラを構えたまま操作できるし、モードを選択した電子ダイヤルから指を離すことなく、そのまま絞りもしくはシャッター速度を設定できる。

露出モード変更は右手親指位置にあるリア電子ダイヤルをプッシュし、そのままダイヤルを回す。露出モードはこのように上面パネルに大きく表示されるほか、EVF内にも表示されるため、ファインダーを覗いたままでも問題なく行える。

他のカメラでも似たような操作系として、MODEボタンを押しながら電子ダイヤルで露出モードを選択するものが昔からあるが、それだとMODEボタンが必要になる。SL2の方式だとプッシュ可能な電子ダイヤルだけでモード選択が完了でき、余計なボタンを増やさなくて済むのだ。また、一般的なモードダイヤルは不用意に動いてしまうのを防ぐため、ほとんどの機種でロック機構を付けているが、ロックがあったらあったでスピーディな操作を行いたいとき障害となるため、ロック機構を解除する機能をさらに追加するなど、どんどん複雑化しているものも多い。ライカSL2のこの方式なら最初からモードダイヤルが無いため、そういった事案とまったく無縁なのも大いに感心するところだ。

他にもMENUボタンを押すとまず情報表示画面、いわゆるクイックメニューがまず表示され、さらにMENUボタンを押すとメインメニューに入り、そのままMENUボタンを押せばMENU画面のページ送りが行えるところも斬新だ。これならMENUボタンとは別にクイックメニューを呼び出すためのボタンを別に設ける必要がないし、MENUを呼び出すために押したボタンから手を離さずにそのままページ送りが行えるのも非常に合理的でムダがない。

MENUボタンを押すとまず表示される情報表示画面。これはいわゆるクイックメニューでタッチ操作も可能。このままさらにMENUボタンを押すとメインメニューに入っていく。

ライカSL2にはこの他にも思わず目から鱗が落ちるようなアイデアに満ちた操作手順があちこちに配されており、知れば知るほど、使えば使うほど感心してしまう。操作部材が少ないといっても、機能を変更できるファンクションボタンは全部で6個もあるため、自分が使いやすいようにカスタマイズすることももちろん可能だ。

あまり操作性の話を続けてもクドいのでこの辺にしておくが、個人的にライカSL2のユーザーインターフェースは現行デジタルカメラの中では最良だと思っている。もちろん、ボタンやレバーを満載した操作部材がたくさんあるカメラを否定しているわけではないし、そういう操作系の方が好きだという人もいるだろう。でもなるべくシンプルな操作系を好む人にとって、このライカSL2はかなり魅力的な選択肢になるはずだ。

カスタマイズ可能なボタンは全部で6個ある。人によって必要度の高い機能は様々だろうが、これだけあれば足りるのでは?

作例

この画像はタテ位置で撮影したものからヨコ位置にトリミングしたものだが、これだけ大胆なトリミングでも1,500万画素ほどあり、A3プリントも余裕で行える。4,730万画素に高画素化されたメリットのひとつだ。

トリミング例。リンク先は等倍画像です。
トリミング前の元画像。
ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F4 1/2,500秒 ISO400 WBオート

AFは空間認識AF(DFD)で、像面位相差検出ではないが、動きモノに対する追従性能はなかなか高い。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/90mm ASPH. F3.2 1/1,250秒 ISO400 WBオート

ライカSL2の優れた操作性は慣れると本当に快適で、非常にスムースに撮影に集中できる。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F2.8 1/5,000秒 ISO200 WBオート

新しいアポ・ズミクロンSL 50mmの描写は素晴らしく、シャープさ、ボケの自然さ共にまったく文句はない。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F2 1/5,000秒 ISO200 WBオート

操作部材が少ないライカSL2は、カメラをどのようにホールドした場合でも誤ってボタンを押してしまうということが起きない。おかげでとってもリズム良く撮影できる。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F2 1/2,500秒 ISO200 WBオート

アポ・ズミクロンSLシリーズはどれも開放F値の割には大柄だが、絞り開放から合焦部のコントラストが極めて高く、被写界深度の調整以外に絞り込む理由はない。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F2 1/6,400秒 ISO200 WBオート

ここは少し深度が欲しいのでF5.6まで絞ったが、絞り開放時と変わらない繊細でシャープな描写だ。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F5.6 1/200秒 ISO800 WBオート

中距離くらいの被写体だが画面から浮き上がってくるような立体感がある。錆びのディテール描写も素晴らしい。

ライカSL2 アポ・ズミクロンSL F2.0/50mm ASPH. F2.8 1/640秒 ISO800 WBオート

ライカMレンズの使い勝手は?

ライカSL2の機能をフルに発揮させたいなら、組み合わせるレンズはもちろんSLレンズだが、なるべく軽快に使いたい人や、すでにMレンズをたくさん持っている人はライカSL2にMレンズを装着して使うことも視野に入れているだろう。

デジタルのM型ライカ各機ほどではないが、ライカSL2もまたセンサー前面のカバーガラスの厚みを極力薄くすることで、Mレンズの描写特性をなるべく損なわないように腐心されているし、何よりもボディ内手ブレ補正が搭載されたことで、Mレンズ使用時にも手ブレ補正の恩恵を受けられるのはM型ライカにはないメリットと言える。

また、ライカSL2は電子シャッターの最高速度が1/40,000秒まであるため、光量の多い明るいシーンでもNDフィルターに頼ることなく個性豊かなMレンズの開放描写を楽しめる可能性が高いなど、ライカSL2にはMレンズの優秀な母艦になり得る要素が盛り沢山だ。

ライカ純正のMアダプターLを使えばレンズ側の6bitコードがボディへ伝達される。

ちなみにライカSL2にMレンズを装着する場合は、できればライカの純正マウントアダプターが望ましい。ライカ純正マウントアダプターはMレンズ側の6bitコードをボディ側へ伝達する仕組みになっているため、その情報を受け取ったボディ側で装着レンズに適切な画像補正を行うことが可能になるほか、Exif情報にも正確なレンズ名が記されたり、焦点距離に最適化された手ブレ補正動作になるなど、いろいろなメリットがあるのだ。

もちろん、ライカSL2にはライカMレンズの補正情報が内蔵されているので、6bitコードに頼らなくても装着レンズをリストから選ぶだけで同様のことは可能であるが、レンズ交換する度にリストから設定し直すのは意外に手間だし、設定を忘れてしまって別のレンズのプロファイルで撮影してしまう間違いも犯しやすく、そうなると手ブレ補正の効果も期待できない。サードパーティ製のマウントアダプターに比べるとライカ純正はやや高価だが、それだけの利点はある。

実際に6bitコードを使ってどんな補正が行われているかは、ライカの開発責任者ステファン・ダニエル氏が"歪曲と周辺光量の補正"とインタビューで語っている通りだ。ただし、フィルムカメラで使われることを前提に設計されているMレンズの歪曲収差は元々かなり少ないわけで、どちらかというと周辺光量の補正が主だろう。

そこで、どのくらい周辺光量が補正されるのかをズミルックスM F1.4/50mm ASPH.とズミルックスM F1.4/75mmという2本のレンズで試してみたところ、なかなか興味深い結果となった。

ズミルックスM F1.4/50mm ASPH.
補正オン
補正オフ

まずはズミルックスM F1.4/50mm ASPH.だが、こちらは6bitコードによる画像補正をオンにした方が周辺光量低下が少なく、オフの方は周辺光量落ちが大きいという順当な結果となった。とはいえ、オンでも周辺光量落ちは僅かにあり、完全には補正されていない。あまり完全に補正してしまうと平面的になってしまうことも多いから、このくらいの補正量に抑えられている方が個人的には好みだ。恐らくフィルムで撮影したときの結果をシミュレートしているのではないだろうか。

ズミルックスM F1.4/75mm
補正オン
補正オフ

次にズミルックスM F1.4/75mmだが、こちらは逆に画像補正オンよりもオフの方が周辺光量低下が少ない。つまり、画像補正を入れると周辺光量が僅かだが落ちるという予想外の結果になった。これはライカSL2のセンサー前面にあるマイクロレンズの特性上、広角に比べて入射角の穏やかな中望遠レンズでは逆に周辺光量がありすぎることを鑑みた処理と理解したが、こちらもフィルム使用時と同じような結果を得るための策なのかもしれない。

Mレンズ作例

あえて逆光で撮影し、フレアによる浮遊感のある写りにしてみた。

ライカSL2 ズミルックスM F1.4/75mm F1.4 1/500秒 ISO100 WBオート

シャッター速度は1/13秒だが手ブレはしなかった。Mレンズ使用時でも手ブレ補正の恩恵があるのは心強い。

ライカSL2 ズミルックスM F1.4/75mm F1.4 1/13秒 ISO100 WBオート

絞りはF2.8まで絞ったがシャッター速度は1/10,000秒となった。メカシャッターの最速1/8,000秒を超えてもシームレスに最速1/40,000秒までの電子シャッターに引き継がれるのは便利だ。

ライカSL2 ズミルックスM F1.4/75mm F2.8 1/10,000秒 ISO100 WBオート

前モデルのSLでもEVFはかなり見やすかったが、さらにドット数が増え、OLED化によってコントラストが上がったSL2のEVFは本当にピントピークが見極めやすく、MFが苦にならない。

ライカSL2 エルマリートM F2.8/28mm ASPH. F8 1/13秒 ISO800 WBオート

約60年前のライカレンズ、エルマーM F4/135mmで撮影。このレンズについては以前にも本サイトで紹介したことがあるけれど、本当に60年前のレンズなのか?と思うほどよく写る。このカットは135mmでシャッター速度1/20秒なので、ライカSL2の手ブレ補正に助けられていると思う。

ライカSL2 エルマーM F4/135mm F4 1/20秒 ISO1600 WBオート

河田一規

(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。ライカは80年代後半から愛用し、現在も銀塩・デジタルを問わず撮影に持ち出している。