My Favorite Leica
LEICA SL2(中井精也)
最新機能と"ライカの味わい"が両立した孤高のミラーレス
2019年11月29日 12:00
ライカのミラーレスカメラ「ライカSL2」が登場しました。発売よりひと足早い11月初旬に、ライカSL2で紅葉真っ盛りの秋田の鉄道を撮影することができましたので、作品とともにファーストインプレッションをお届けします!
こちらは先代のライカSLで撮った作品。僕がこのカメラにハマったきっかけになった作品の一つです。先代のライカSLが発売されたのは2015年末ですが、僕がライカSLを購入したのは最近で、2019年1月になります。きっかけは2018年末に「このカメラを首から提げて歩きたい!」というミーハーな理由でライカM-Pサファリ(Typ240)を購入したこと。
そんな軽い気持ちでライカデビューしたのですが、ちょっと撮影しただけで、その独特の描写力にあっという間に魅了されてしまいました。でもさすがにM型ライカだけで「動きモノ」の鉄道を撮るのは厳しそう……。そこで「仕事として使えるライカ」はないか探したところ、行き着いたのがライカSLでした。約11コマ/秒の高速連写と優れたAF性能は鉄道撮影にもまさに最適。そして2,400万画素のCMOSセンサーが生み出す写真は、M型ライカより高コントラスト、高精細ながらも、ライカらしい素朴さもしっかりとある描写で、すっかりお気に入りのカメラになりました。
上の写真は夕方の海岸線を走る八戸線を撮影したものですが、逆光の明暗差の大きなシーンで、列車がギラリと輝くドラマチックなハイライト部分はしっかりと出しつつ、海から暗い岩にかけてのシャドウの部分もきちんと描写されているのにとても驚かされました。こういうシーンはメリハリが効きすぎる傾向になりがちですが、メリハリがありつつも、しっとりと旅情感もプラスしてくれるライカSLの描写力に、すっかり惚れ込んでしまったのです。
僕が惚れ込んだライカSLの描写力は、ライカSL2になっても健在でした! こちらはライカSL2に標準ズームのVARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/24-90mm ASPH.で撮影した秋田内陸縦貫鉄道の作品。強烈なハイライトはドラマチックに見せつつ、ローキーでありながら暗部も潰さずに、列車の色までしっかりと認識できる描写力はさすがの一言。ドラマチックを演出する「メリハリ」と、旅情を感じさせる「しっとり感」をみごとに両立させたライカSL2の描写力は感動ものです。
この描写力を実現するには、もちろんカメラそのものの性能も大切ですが、ライカSLレンズの描写力の高さによるところが大きいと感じています。太陽の部分には懐かしい雰囲気のフレアがありますが、それでいて画面の隅々までビシッと描写され、歪曲収差がほぼ皆無なのも驚きを隠せません。これはレンズ硝材の品質の高さが、そのまま描写力の高さに直結しているのではないかと、僕は思っています。ライカのレンズの価格がほかに比べて高価なのは、売りやすさを度外視して品質を重視しているからなのだと、撮影するたびに実感しています。
こちらは紅葉真っ盛りの仙岩峠を越える、秋田新幹線こまち号。黄色が基調の紅葉がキレイでしょ? 列車が来るタイミングで雲が移動し、紅葉の山々にドラマチックな明暗差を生み出してくれました。ライカSL2は有効4,730万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載したので、かなり高精細な描写力を見せてくれます。木々を1本1本しっかりと描写しながらも、カリっとしすぎない「落とし所」は、さすがだなと感じました。
紅葉をバックに力走する秋田新幹線こまち号を、望遠ズームのAPO-VARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/90-280mmで流し撮り!このライカSL2を使うと、流し撮りの成功の確率が格段に高まったことを実感します。これはどっしりと手に馴染む重さとデザインによるものも大きいのですが、約5.5段分の補正効果を誇るボディ内5軸手ブレ補正の搭載によるものだと思います。もちろん流し撮りだけでなく、手ブレ補正機構を非搭載のSLレンズや、アダプターを介したM型ライカ用のレンズでも手ブレを気にせず快適に撮れるのは嬉しいところです。
標準ズームのVARIO-ELMARIT-SL F2.8-4/24-90mm ASPH.で真っ赤な紅葉を前ボケさせて撮影。ズームレンズとは思えない美しいボケが、列車をやさしく飾ってくれました。有効4,730万画素にグレードアップしたライカSL2は、ライカSLレンズのポテンシャルを余すところなく生かせるようになったと実感しています。イメージセンサーの高画素化は、ただ細部まで高精細に描写するだけでなく、ボケた部分に空気感や臨場感をプラスしてくれるのです。
この写真は山でどんぐりを探すクマのように(笑)山の斜面にへばりついて撮影しましたが、より持ちやすくなったライカSL2のグリップ形状のおかげで、長時間カメラを握っていても疲れにくくなりました。見た目はほとんど変わりませんが、持った瞬間に大きな進化を感じました。また、僕がライカSLを買う大きな動機となった美しいEVFもさらに進化。576万ドットの電子ビューファインダーは、もうEVFを見ているという感覚がないほど自然に撮影することができます。
ライカSL2ではメニュー内の「フィルムモード」からいわゆる"仕上がり設定"ような絵作りの微調整ができるので、プリセットの「VIVID」からコントラストや彩度を上げてメリハリをつけることも可能です。ここは秋田内陸縦貫鉄道の有名撮影ポイントである「大又川橋りょう」。背景になるのはデジタルカメラが苦手なシーンである雲ひとつない青空でしたが、ライカSL2は微妙なグラデーションも美しく描写してくれました。
バリバリの職業カメラマンが使っても不満が出ない最新の機能をしっかりと盛り込みつつ、ライカ特有の味わいも両立しているライカSL2は、今のミラーレス界で孤高の存在であると感じました。
協力:ライカカメラジャパン株式会社