新製品レビュー
ライカCL(実写編)
渋く深みのある絵作り 充実のモノクロモードも活用したい
2018年2月7日 07:00
ライカCLは、ライカTL2と同じAPS-Cシステムカメラだ。マウントもライカTL2、さらに35mmフルサイズミラーレス機のライカSLとも共通のライカLバヨネットマウント。
しかしアルミのユニボディや背面前面タッチパネル、差し込み式のストラップなど個性が強いライカTL2とは異なり、100年以上続くライカの歴史を感じさせるデザインや視認性の高いEVF、必要最小限にまとめたダイヤルやボタン類など、ライカらしい実用性が感じられる仕上がりになっている。
それでは実写した結果はどうだろうか。解像力やダイナミックレンジだけでなく、色調再現やモノクロの階調再現にも注目したい。なおレンズはライカCLと同時登場した、エルマリートTL f2.8/18mm ASPH.のみを使用した。35mm判換算で28mm相当の広角レンズだ。
作品
ライカのAPS-Cサイズ機の写りで思い出すのが、レンズ固定式のライカXシリーズだ。標準では彩度が低めで、日本メーカーの色作りとは全く異なるのに驚いた。そしてライカT/TLシリーズでも、彩度はやや低め。ではライカCLはどうなのだろうと使用したら、やはり彩度はわずかに低い。これがライカの味付けなのだろう。
とはいえ彩度が低いから色が浅いのではなく、深みがあり、渋さを感じる仕上がりだ。しかも階調も豊かで、建物の陽が当たっているところと影になっている部分の明暗差はかなり大きいが、シャドーは潰れ過ぎずに残っている。またコントラストも適度で、見た目に自然な階調だ。
これを撮ったのは、東京に大雪が降った直後。住宅街を歩くと傘を干している姿を見かけた。ライカCLはダイナミックレンジとコントラストのバランスに優れているので、透過光を活かした透明感のある写真になった。
ライカエルマリートTL f2.8/18mm ASPH.と共にライカCLの解像力を見てみよう。拡大すると、建物の木目がはっきりわかる。また画面周辺部は中心部と比べると甘さを感じるが、四隅で像が流れることもなく、壁や電線は十分なシャープさを持っている。
薄型のパンケーキレンズでも携帯性のみではなく、画質も重視しているのを感じた。ちなみにこのレンズは、レンズフードは用意されていない。フードなしでも高い描写性能が得られるとのこと。たしかに逆光でもフレアやゴーストが出にくい。おかげで電柱の影を活かした写真が撮れた。
オレンジ色の派手な建物を見つけた。色彩を強調したいと思ったが、ライカCLはデフォルトではやや彩度が低い。そこでフィルムモードを標準からビビッドに変更。鮮やかな仕上がりになった。各フィルムモードはパラメーターで彩度やコントラストなどの調節ができるので、好みの仕上がりに追い込むのも使いこなしのコツだ。
高感度は、ISO800まではノイズ感がない。ISO1600でわずかに高感度らしさを感じ、ISO3200以降はざらっとした印象が強くなってくる。だが無理にノイズリダクションでノイズを消すことはしていないため、ノイズはあっても被写体のディテールの再現性が高い。
そのためよほど滑らかな写りを必要としなければ、ISO6400でも実用的だ。高感度の写りも日本メーカーとは異なる、ライカらしさがある。
ISO400で撮影。ノイズ感はなく、ベース感度のISO100とほぼ同じ仕上がりだ。ライカTLレンズには手ブレ補正はないため、街中を歩きながら撮影するスナップでは、積極的に高感度を活かすのがおすすめだ。
APS-Cサイズとはいえ、18mmでF2.8なので大きなボケは苦手だ。だが被写体に近づいて絞りを開放にすれば、しっかりボケる。ボケの形が崩れていないので、何がボケているのかはっきりわかるのがポイントだ。ピントを合わせた透過光の葉は手前に、ボケた植物は奥に感じるため、立体感のある写りだ。
ライカエルマリートTL f2.8/18mm ASPH.の最短撮影距離は0.3m。ライカCLの背面モニターをタッチAFにして、家の前に置いてあった瓶をクローズアップした。ライカCLのAFは速く、無限遠から最短まで一気にピントが来る。ライカXシリーズでAF速度が気になっていた人でも、ライカCLならストレスなく扱えるはずだ。
ライカCLはモノクロモードを2種類搭載している。1つは「モノクロナチュラル」、もう1つは「モノクロハイコントラスト」だ。
モノクロナチュラルは、その名の通りハイライトからシャドーまで自然な階調が得られるモード。しっとりした雰囲気にしたい場合は、明暗差が大き過ぎる条件などで適している。ここではベンチの階調が滑らかに再現された。インパクトを求めるより、落ち着いた仕上がりが好みの人に向いている。
モノクロハイコントラストは、明暗差を強調したい場合に向くモードだ。ここでは螺旋階段の金属の質感を狙った。また青空も適度に落ちて雲もはっきりしている。
ハイコントラストとはいってもガチガチになるのではなく、中間調もよく出ていて見た目の印象に近い仕上がりになった。メリハリのあるモノクロ写真が好きな人には、モノクロナチュラルよりこちらがおすすめだ。
高感度のノイズとモノクロモードを組み合わせると、フィルムの粒子を思わせる写真が撮れる。これはISO12500に設定し、モノクロハイコントラストにした。車の車体のノイズが粒子のようだ。
しかも、ライカCLは高感度でも解像感が高いため不自然さがない。ただあまりに感度を上げるとシャドー部の締りが弱くなるので、好みの仕上がりになる感度を探して、モノクロモードも両方試してみよう。これもライカCLを使う楽しさだ。
ライカCLは最大4K30pの動画撮影モードも搭載している。ボディに端子は何もないので、外部マイクの接続など本格的な動画撮影には向かないが、旅先の様子を高画質で記録したい場合などに有効だ。なお4K動画では、SDカードは高速のUHS-IIや、UHS-IでもUHSスピードクラスU3を使いたい。
まとめ
ライカCLはEVFを搭載したAPS-Cサイズ機としてはコンパクトで持ち歩きしやすかった。またラウンドした側面は手のひらにフィットし、ライカを使っているという実感が湧いてくる。またEVFの視認性の高さも特筆。これはEVFが外付けになるライカTL2とは異なる魅力だ。
シンプルながら使い勝手に優れた操作性は、ライカを単に所有するだけでなく、これで写真を撮りたいという気持ちにさせてくれる。また色調を含めた画質もライカらしさが感じられる。
今回は18mmしか使っていないが、他のライカTLレンズも装着して、バランスや操作性を試してみたくなった。ボディデザインからすると、やはり街のスナップが最も似合うように思うが、ズームレンズを装着して風景を狙ったり、大口径レンズでポートレートを撮ったり、システムカメラならではの多彩な表現を楽しみたい。