新製品レビュー

ライカCL(外観・機能編)

高品位なミラーレスカメラの新顔登場 その魅力に迫る

ライカカメラ社のAPS-Cシステムに、ライカT/TLシリーズに加え、新たにライカCLが登場した。「CL」というと、かつてミノルタと共同で開発した「ライカCL」「ライツミノルタCL」を思い出す人も多いだろうが、それとは関係がなく、TLとCLの同じマウントで性格の異なる2種類、という関係だ。

ボディデザイン

アルミの塊から削り出した、繋ぎ目のないユニボディや、背面に操作部を持たない全面タッチパネルなど、斬新で個性的なライカT/TLシリーズと比べると、ライカCLはオーソドックスなスタイルを持つ。APS-CコンパクトのライカX1やライカX2に近いデザインだ。

それはスクリューマウントライカ(通称バルナック型ライカ)を彷彿させ、100年以上続くライカの伝統が息づいているのを感じさせる。ひと目でライカとわかる、アイコニックな形だ。

スクリューマウントライカ(左)のと比較

ここではライカCLと同時に登場した、薄型レンズのライカエルマリートTL f2.8/18mm ASPH.を装着した。ライカCLとのバランスは良く、レンズ交換式とは思えないほど一体感があり、ライカX1/X2を一層思わせる。

手にするとバルナック型ほどではないものの、APS-Cサイズ機としてはコンパクト。ラウンドした側面は手にフィットし、ライカらしさが伝わってくる。フィルムのライカMシステムに慣れている人にも馴染みやすいだろう。適度な重量感はありながら決して重すぎないため、軽快さと高級感がある。

生涯ライカを愛用したアンリ・カルティエ=ブレッソンは、ライカを「手のひらに収まる素晴らしい機械」と表現していたが、ライカCLを持つとその言葉を思い出した。

操作部

電源レバーとシャッターボタン、2つのダイヤルと動画ボタンしか操作部を持たないライカTL2と比べると、ライカCLはメニューボタンやファンクションボタン、十字キーなどを持ち、一般的なデジタルカメラらしい。

また上面に2つのダイヤルが並んでいるのはAPS-Cシステム共通のレイアウト。APS-Cシステムのプロダクトマネージャーである、マイケ・ハーバーツ氏のこだわりなのかもしれない。

ただしライカTL2と異なりダイヤルの上面は2つともボタンになっていて、左側のボタンは撮影モード選択、右側は機能の割り当てができる。また右側のダイヤルは、ISO感度やホワイトバランスなど8種類の機能から割り当てができる。

またライカCLはAPS-Cシステムとしては初めて、本体上面に液晶パネルを装備した。撮影モードや絞り値、シャッター速度、露出補正が表示され、撮影状態の確認が容易だ。なお電源を入れると、起動時に「Leica CL」の文字が表示され、ライカを手にしている喜びと、撮影へのテンションが上がってくる。

背面の右側はセレクターボタン(十字キー)と、その中央にセンターボタンがあるだけ。センターボタンはセレクターボタンや上面のダイヤルで選択した項目を決定する場合になどに使用する。各ボタンは決して大きくないが押し間違えもなく、適度なクリック感だ。

背面左側は再生ボタン、ファンクションボタン、メニューボタンが並ぶ。ファンクションボタンは、8種類の機能から割り当てが可能。私の場合、ホワイトバランスに設定した。

それぞれのボタンは大きくて使いやすい。多くの日本メーカーのデジタルカメラと比べると、背面はとてもシンプルだ。それでいて必要な機能はすぐ呼び出せるので、スムーズな操作が行えた。

撮像素子と画像処理関連

撮像素子はAPS-Cサイズの有効2,424万画素CMOSセンサー。これはライカTL2と同じだ。ISO感度はISO100~50000。

なおマウントは、ライカLバヨネットマウント。ライカT/TLシリーズだけでなく、35mmフルサイズミラーレス機のライカSLとも共通だ。そのためライカSLレンズをライカCLに装着することもできる。

また手ブレ補正機構を搭載したレンズを装着した場合は、手ブレ補正効果が得られる。画像処理エンジンはLEICA MAESTRO II Generation。高画質と高速AFを実現しているとのことだ。

AF

AFは49点エリアAF。シングルポイントや顔認識AF、タッチAFやタッチAF/シャッターも可能だ。AF駆動はスピーディーで静か。位相差センサーは搭載していないが、シャッターボタンを半押しするとスッとピントが合い、ダルさは感じない。

AF時の例

連写性能

連写の最高速はメカシャッター、電子シャッター共に10コマ/秒。DNG+JPEGで33枚の連続撮影ができる。このスタイルのカメラとしては十分高速といえるだろう。

連写速度を中速や低速に落とす他、インターバルタイマーやオートブラケットもドライブモードから設定する。

ファインダー

ライカTL2と大きく異なるのが、ライカCLはEVFを装備していることだ。しかも、そのEVFの視認性がとても優れている。

EVFの視認性で高い評価を得ているライカSLの440万ドットと比べると236万ドットと数こそ少ないが、クリアで画面全体が見やすく、解像力も十分高い。

また丸形で大きなアイピースがライカSLのアイピース形状に近く、同じコンセプトで開発されているのを感じる。

液晶モニター

背面モニターは3型のタッチパネル。各設定の他、AFポイント選択や再生時の拡大、スクロールなどもタッチで行える。

さらに上下にスワイプすると画像再生ができ、左右にスワイプすると静止画から動画モードに切り替わる。ボタンやダイヤルを使う必要がないのは、背面が全面タッチパネルのライカTL2と共通だ。

ただ、ライカCLはタッチ操作でもボタン+ダイヤルでも同じ機能設定ができるので、好みや状況に応じられてより実用的だ。

さらにメニュー画面もライカT/TLシリーズを踏襲。メニューボタンを押すと、まず表示されるのが「お気に入り」の画面。自分がよく使う機能が登録できる。

それ以外の機能は「メインメニュー」を選択、あるいはメニューボタンを再度押すと表示される。よく使う機能を素早く呼び出せるのはとても便利だ。

動画機能

動画機能は、背面モニターを左右にスワイプの他、左ダイヤル上のボタンを押して、ダイヤルで設定することもできる。最大4K30pで記録が可能だ。動画ボタンは持たず、動画モードにしたらシャッターボタンを押して記録開始。再度シャッターボタンを押すと停止になる。

通信機能

今やデジタルカメラですっかりお馴染みになった通信機能はライカCLにも搭載されている。

スマホにライカCLアプリをインストールし、ライカCLの「ワイヤレスLAN」から接続する。初めて接続する場合は、液晶モニターにQRコードを表示させて、それを読み取る方法も可能だ。

ライカCLアプリでリモート撮影や撮影画像の再生、転送などが行える。

スマホによるリモート撮影の画面

記録メディアスロット

記録メディアはSDカード。バッテリー室にSDカードスロットを備える。SDカードはUHS-IIに対応する。連写や4K動画を使いたい人は、UHS-II対応カードがおすすめだ。

バッテリー

バッテリーはBP-DC12。これはライカQと共通だ。ライカT/TLシリーズのバッテリーのようなギミック(レバーによるリリース機構)は持たず、実用本位の雰囲気もライカCLの性格をよく表している。

バッテリーと充電器

まとめ

同じAPS-Cシステム機でも個性が強いライカTL2と比べると、ライカCLはオーソドックスなミラーレス機という印象だ。ただ価格はボディ単体で30万円台後半、18mmレンズのセットで約50万円。

ボディ単体で20万円台後半のライカTL2と比較すると高価だが、EVFを内蔵し、現代的な操作と伝統的なスタイルを併せ持つシステムカメラは、他の機種にはない魅力がある。

ライカTL2は高品位なユニボディや独特なストラップなどライフスタイルの一部として楽しむのに最適な仕上がり。それに対しライカCLは、ライカらしさを楽しみながら実用的に作品を撮りたい人に向いていると感じた。

次回の「実写編」では、実際にライカCLを使用した印象をお届けする。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。2016年9月より、デザインオフィス株式会社AQUAに所属。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。