新製品レビュー
FUJIFILM X-E3(実写編)
Xシリーズ最高の画質を小さなボディに凝縮
2017年10月6日 11:55
富士フイルムのXシリーズは、このFUJIFILM X-E3の登場により同レベルの画質で5機種がラインナップされることになる。 X-Trans CMOS IIIセンサーと画像処理エンジンX-Processor Proによる24Mピクセルは“X標準画質”と呼んでいいだろう。
簡単に整理すると、レンズ一体式のX100F、一眼スタイルのフラッグシップX-T2、その普及機であるX-T20、レンジファインダースタイルのフラッグシップX-Pro2、その普及機としてのX-E3となる。
ダイナミックレンジ
本機のダイナミックレンジ拡張機能は、100%、200%、400%、オートのうちから選べ、ISO800未満の場合は選べる数値に制約があるのはこれまでと同じ。
PROVIAと、わかりやすいようにACROSで、100%と400%を撮り比べてみた。ハイライトだけが拡張されシャドウに影響がないことと、100%でも十分にダイナミックレンジは広く、印象として美しいことに注目して欲しい。
※共通設定:X-E3 / XF60mmF2.4 R Macro / 1/10秒 / F11 / +0.3EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 60mm
誤解されがちだが、ダイナミックレンジは広ければいいというものではない。白飛びを怖がる気持ちはわかるが、ハイライトがリニアに明るくなっていくトーンのほうが自然で美しく見える状況は多い。
高感度画質
Xシリーズの高感度の画質については、きっぱり評価が分かれるようだ。ノイズリダクションが効きすぎているという意見と、自然さを保ったまま高感度まで実用になるという意見と。ピクセル等倍でチェックするのが好きな人と、プリントで写真を見る人との違いかもしれない。
最初に変化を感じるのはISO3200で、わずかにシャドウが浮きはじめノイズが加わるが不快なものではない。ISO6400になると解像感に影響が出て、カラーバランスに変化がある。
ISO12800が最高感度で、ISO25600とISO51200は拡張感度となっている。個人的には、ISO12800でも十分に実用に耐えると思う。
次のISO12800で撮った写真を見てもらいたい。これがノイズが気になって解像感が落ちていると感じるなら、ISO6400までにとどめておくほうがよいかもしれない。
連写
“AFが最大の弱点”と言われ続けてきたXシリーズだが、連続移動する動体に対してはX-T1の頃からずいぶん強化され、低輝度、低コントラストの被写体でも信頼性を増してきた。
あとは、不規則に動く被写体にどれだけ追従できるかがテーマだが、走り回るリスを一発で捉えることができた。絞り開放、AFターゲットはセンター1点のシングルポイントで撮っている。
4K動画
ただ4K動画が撮れるだけではなく、フィルムシミュレーションを駆使したX画質で4K動画が撮れるのがX-T2からのウリとなっている。
サンプルはVelviaモードで、十分に彩度が高いのに赤が飽和しておらず、デジタル臭がほとんど感じられないのが見事。
XF90mmF2 R LM WRを使用しての撮影だが、このレンズやF2シリーズ(XF23mmF2 R WR、XF35mmF2 R WR、XF50mmF2 R WR)などだと、フォーカス移動の駆動音もほとんどなくスムーズ。動画撮影に興味があるなら、組み合わせるレンズは慎重に選びたい。
作品
十分に鮮やかなのにフィルムライクな優しさを感じると称される画質は、本機にあっても最大の魅力。白の冴えと赤の鮮やかさ、定評ある緑とのコントラストが美しい。
アドバンストフィルターは従来と同じだが、積極的に活用したい機能。これは「ダイナミックトーン」で、無機物との相性は抜群。
多重露出で撮影した。ボディが小さく取り回しが楽なので、色々な遊びも気軽にできる。Xシリーズならではの操作体系が確立された感がある。
ホワイトバランスをタングステンにしての撮影。光源の違いに対するタフネスと、どんな組み合わせにしても色バランスが崩れないのは見事。
XFレンズでもっとも軽量なのがこのXF27mmF2.8だ。それでもまだX-E3に対して大きすぎると感じるが、気軽さは最高。ボディもレンズも出っ張りが少ないため、収まりも抜群。
X-E2になかったACROSモードが加わった。デジタル特有の「階調はなだらかだがメリハリに乏しい」モノクロとは違い、豊かな階調のなかにも引き締まったシャドウとハイライトの冴えがあるのが特長。やや露出アンダーにしてシャドウ域ぎりぎりで撮ったときのムードが好きだ。
目立った存在ではないけれど、実力があってファンに人気のレンズがXF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS。ズーム域が広く、絞り値や焦点距離に関わらず高い解像力を保ち、開放絞り値を抑えたことでコンパクトに仕上がっている。X-E3が約337g(撮影時)、このレンズが約580gなので、合わせて1kgもない。
まとめ
一眼レフスタイルのX-T20は、使い手や用途を選ばない何でもありの普及機にチューニングされていて、その結果としてベストセラーになっている。となれば、X-E3はそれよりソリッドなカメラになっているはずだ。
スペック以外の「魅力」を追求していると筆者は思っている。だがそれは“最高画質を気軽に”というコンセプトが実現されていてこそ。
繰り返すが、画質に関して数字に現れるような部分ではXシリーズの5機種には大きな違いはない。そこにあるのは個性の違いであり、実写性能が犠牲になっているようでは意味がない。今回のレビューで、X-E3が目指したものが体現されているのがお分かり頂けたと思う。