新製品レビュー

EOS 6D Mark II(実写編)

高感度も満足の画質 バリアングルモニターで撮影の幅が広がる

EOS 6D Mark II(実写編)

カメラとしてのスペックと画素数を抑える反面、最新画像処理エンジンを採用し実用域での使い勝手と高画質を狙ったEOS 6D Mark II。バリアングルモニターによる自由なアングルとライブビュー時にも素早いAF、そして約6.5コマ/秒の連写性能は十分以上に快適な撮影シーンを提供している。

画質面においては、高感度画質の良さが特筆に値する。狙い通り、満足度の高いカメラに仕上がっていることが実写でも実感できた。

ダイナミックレンジ

よく晴れた日にダイナミックレンジとオートライティングオプティマイザをテストした。数値としてのテストではなく、実写から予測できるダイナミックレンジは11段ほどはありそうだ。

林の日陰から、着陸する旅客機を撮影した。撮影はオート任せで露出補正はしていない。掲載は撮影したままのJPEG画像だ。

シャドウ部が潰れて見えるが、RAWデータで確認するとしっかり捉えられている。人間の見た目通りに近く、シャドウ部もよく見える再現が可能だ。

オートライティングオプティマイザについては、「標準」と「しない」を試した。差は少ないが「標準」のカットでは、ハイライトの伸びがよく、かつシャドウも若干描写されておりメリハリの良い画像となっている。

EOS 6D Mark II(実写編) オートライティングオプティマイザ:標準。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 53mm(画面内の白い線は凧の糸です)
オートライティングオプティマイザ:標準。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 53mm(画面内の白い線は凧の糸です)
EOS 6D Mark II(実写編) オートライティングオプティマイザ:しない。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 53mm
オートライティングオプティマイザ:しない。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 53mm

オートライティングオプティマイザの機能自体が、人にとって好ましい明暗の再現をするように画像を調整するものであるので、効果として確認できた。

露出は評価測光で行なっているが、非常によく躾けられており、暗い中から明るいところを見て、かつあまり大きくない白い被写体があるという難しい条件にも関わらず、白トビをしていない非常に良い露出となっている。RGB+IRセンサーの効果だろう。

高感度画質

常用感度の上限はISO40000であり、実写でもスペックから期待通りの高感度性能を示した。ISO40000は伊達ではなく十分に実用になる画質に仕上がっている。

しかし、ここでは少しばかり厳しめの評価をすることにした。筆者がまずピックアップしたのはISO12800だ。ノイズ感はあるものの超高感度とは思えない仕上がりで、解像感やダイナミックレンジの評価も合わせて、高画質であると言える。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/5秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO 12800 / 絞り優先AE / 24mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/5秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO 12800 / 絞り優先AE / 24mm

もう1点、ISO25600もチョイスしたが、ISO12800と比較してノイズが増え、解像感が薄れるものの、十分以上に実用的だ。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1.3秒 / F22 / -0.7EV / ISO 25600 / 絞り優先AE / 70mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1.3秒 / F22 / -0.7EV / ISO 25600 / 絞り優先AE / 70mm

掲載はしていないが、ISO40000ではカラーノイズを抑えるため、シャドウ部にまだら状のゆるやかなノイズが乗ってくる。おすすめではないが、フラットな被写体でなければ、緊急用ではなく実用できる画質であったことを申し添えておく。

連写

連写性能を見るため、着陸態勢の旅客機を撮影した。構図は固定し、旅客機が画面内に入って来てからシャッターを押しっぱなしにした。

UHS-I対応SDHCカードで、書き込み速度90MB/秒のものを用いた。画質設定はRAW(ラージ)+JPEG(ラージ/ファイン)とした。

以上の設定で、連続19枚まで秒6.5コマ/秒の撮影が可能であった。19枚以降も2コマ/秒強程度となるが、連続撮影が可能であった。速度、連続撮影コマ数とも十分であり、一瞬を捉える能力はAF性能と相まって非常に高い。

EOS 6D Mark II(実写編) 連写した中の1枚。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/2,000秒 / F4 / -0.7EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 70mm
連写した中の1枚。EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/2,000秒 / F4 / -0.7EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 70mm

4Kタイムラプス動画

通常の動画機能は最大フルHDサイズであるが、動画機能の中に「4Kタイムラプス動画」の機能が追加されたので、今回これを試した。

カメラでインターバル撮影をし、そのままタイムラプス動画として記録できる。この機能は、ライブビューを「動画」に切り替えないとメニューがアクティブにならないので、この点に注意が必要だ。

また、タイムラプス撮影ではあるが、この機能の時に記録されるのは動画であり、静止画は記録されない。作例では、露出をマニュアルで決め、ISO3200、F4、0.8秒とした。撮影インターバルを1秒として4分間の撮影をし、8秒の4K動画を得た。

高感度性能の良い本機では、夜間のインターバル動画が楽しい。星景インターバル動画にもぜひ挑戦してもらいたい画質だ。

作品

バリアングルモニターでライブビュー撮影をした。夕方近い時間帯だが、ホワイトバランスは「オート(雰囲気優先)」とした。路面の枯れ草や、垂れ下がった枝に、赤みが乗って傾いた日差しの色合いを狙い通りに表現できた。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 59mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 59mm

ちょうど日の暮れた頃、人懐こい野良猫と出会った。猫の目線に合わせるため、ライブビューでのローアングル撮影とした。ライブビュー時もAFが早いので、猫の動きに合わせて動きながらの撮影であったが、ストレスなく撮影できた。露光は空の明るさに引かれる分、+0.7段の補正とし、ピクチャースタイルはディテール重視とし、猫の毛並みの柔らかさと繊細さを写し止めた。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / +0.7EV / ISO 640 / 絞り優先AE / 70mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / +0.7EV / ISO 640 / 絞り優先AE / 70mm

砂浜にカメラを置いて、出来うる限りのローアングルにした。流木のディテールを捉えるため、ピクチャースタイルをディテール重視とした。ディテール重視では、ピクセル単位の細やかなディテールがしっかりと表現される一方で、輪郭の強調は抑えられる。自然な描写で好ましくあるとともに、JPEGであっても、レタッチしやすい描写となる。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 24mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 24mm

日暮れ直後のブルーアワー。ここではホワイトバランスを太陽光として、ブルーアワーらしい色合いを狙った。ここでもピクチャースタイルをディテール重視としたが、左のセメント工場のディーテールは注目ポイントだ。輪郭強調が弱い分、パッと見の印象は柔らかいが、より細かな部分に目を写すと細やかなディテールが描写されていることがわかる。直線を含む被写体であっても時間帯の雰囲気に合っているのはディテール重視であったと思う。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / -0.7EV / ISO 160 / 絞り優先AE / 70mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / -0.7EV / ISO 160 / 絞り優先AE / 70mm

月と飛行機をISO25600でとらえた。ノイズはしっかり感じるものの、この作品には粒状感として似合っている。ダイナミックレンジも十分で着陸灯に照らされた機体の一部が白トビしない露光となっているが、翼下側のシャドウ部も十分に描写された。何よりこの暗さでAFがきちんと働いてくれるのがありがたい。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO 25600 / マニュアル露出 / 70mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO 25600 / マニュアル露出 / 70mm

ピクチャースタイルをオートにした。コンテナの輪郭が強調され、解像力を活かした画像となった。露出もホワイトバランスもオート任せだが、日暮れ間際の色合いをとらえ、思い通りの描写と色合いになった。

EOS 6D Mark II(実写編) EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 24mm
EOS 6D Mark II / EF 24-70mm F4 L IS USM / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 24mm

まとめ

撮影のための1日、ストラップをつけずに持ち歩いたが、不安を感じることもなく、外観・機能編でも触れたとおり、持ちやすい大きさ、重さであることを再確認できた。

使いやすく手頃なボディサイズに最新となる画像処理エンジンの組み合わせは、作画に集中できて心地よい。結果として、ライブビューを多用したが、それもバリアングルモニターの使い勝手の良さ故だ。

一方で、光学ファインダーをのぞいた時のスッキリした視界とAFの速さは、一眼レフカメラを使っている実感とともに喜びでもある。その喜びがあるからこそ、繊細に構図を詰めてゆこうと思うのだ。

さて、肝心の画質であるが、結果は期待通り以上のものであった。ホワイトバランス、露出、ピクチャースタイルなど色とトーンに関わる機能の全てをオートにしていても、ほぼ狙った通りの、その場の光の色合いや明るさを生かした描写になっている。

ピクチャースタイルの筆者の好みはディテール重視であるが、35mmフルサイズが故の解像力の高さをしっかりと生かすことができる。ディテール重視では特にプリントに向いた画像を得ることができるので活用してもらいたい。プリントは大きさが決まってから適切なシャープネスを決めるので、輪郭が強調されないディテール重視が好都合なのだ。

実写全般で印象的なのは、やはり高感度の性能だ。ISO12800までならどんな被写体でも満足できる画質になる。それ以上でも表現として、あるいは被写体次第で十分に実用的だ。

以上が実写の感想であるが、想像通り高画質であり、現行のデジタル一眼レフカメラの中でも上位に位置する画質である。その高画質をリーズナブルなボディに実装した本機は、やはりお買い得なカメラであると賞賛したい。

茂手木秀行

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。