ミニレポート

夕陽・夜景・LEDライトなどプロの技を体感。福島裕二の撮影現場に密着

「いのうえのぞみ×福島裕二写真展」新宿 北村写真機店で開催中

福島裕二さん(左)、いのうえのぞみさん(右)

写真家・福島裕二さんと、モデル・いのうえのぞみさんの作品撮影の現場にお邪魔した。今回は、新宿 北村写真機店がYouTubeで配信した「ヴィンテージカメラオンライン販売会Vo.2」にて、作例として紹介するための作品撮り。ここでは、どのように撮影が進められていたのかを簡単ながらレポートしたい。

この販売会は7月10日にライブ配信され、写真家の福島裕二さんがプレゼンターとなって、いのうえのぞみさんを撮影した作品を解説した。撮影に使用したレンズと同じタイプのものが北村写真機店から紹介され、購入できるという趣旨となっていた。

なお、新宿 北村写真機店では「いのうえのぞみ×福島裕二写真展-Y/N I/F-」が開催中だ。会期は8月21日まで。2019年から福島さんがいのうえさんを撮影した作品が並んでいる。会期中に4度の展示替えが行われ、今回撮影した作品の一部も展示される。

5人のチームで撮影開始!

撮影が行われたのは6月下旬で、場所は渋谷区神宮前のハウススタジオ。建物の9階に位置しており、眺めの良いスタジオだった。

当日のメンバーは福島さんといのうえさんの他に、福島さんの撮影アシスタント、ヘアメイクアーティスト、スタイリストの計5人。撮影は日が落ちつつある18時頃に始まった。この日、福島さんの機材はデジタルのM型ライカを中心としたものだった。

シーン1:夕暮れの逆光

福島裕二さん撮影

撮影に先立って、福島さんはあらかじめメイク担当に撮影のイメージを伝える。いのうえさんは、そのイメージに合うようにメイクをしてもらっていた。

最初のシーンはスタジオのバルコニーで夕陽をバックにしたもの。近すぎず離れすぎずといった自然な距離感で切り取っていった。細かくポーズを指示してフォームを決めて撮るというよりも、モデルが自然に動きつつ流れるように撮影が進んだ。

福島さんのスタイルとしては、撮影中にレンズ交換の必要がないように複数のカメラを用意。それぞれのカメラにあらかじめレンズを装着しておき、すぐに切り替えられるようにしている。

モデルの顔の高さを調節するために箱馬を活用していた。作品からは分からないが、このように現場では様々な工夫があった。

この日は、いわゆる「テザー撮影」が行われた。これは撮影画像をすぐにPCやタブレットに転送するもので、すぐに他のスタッフなども確認できて便利だ。

撮影した画像はすぐにモニターに映し出される。撮影中に福島さんがモニターを確認することはほぼなかった

撮影中はライカの「ビゾフレックス」(外付けEVF)が多用されていた。マニュアルフォーカスなのに加えて被写界深度が浅い設定が多かったが、淀みなくシャッターを切る姿が印象的だった。

シーン2:夕日の差し込む室内

福島裕二さん撮影

続いては室内に移動して撮影。時刻は18時30分頃。ブラインドを開け縞模様になる光をモデルに当てての撮影が行われた。

ブラインドで光の具合を調節

途中から真っ赤な夕陽が差し込んできた。福島さんはすかさずモデルに指示をし、差し込む光を生かした構図を作っていた。夕陽が差し込む時間はわずかなので、時間勝負といった緊迫感があった。

部屋に赤い光が差し込む。福島さんは急いでソファの向きを変え、いのうえさんに指示を出す

夕陽による撮影が一段落したところで、LEDライトを活用した撮影に移る。このライトは光を絞れるアクセサリーが付いており、例えば光をスポットにして白い物に当て、その反射光を利用するというテクニックを使っていた。

AputureのLEDライト。先端には光をコントロールするアクセサリーが装着されている
光を白い布に反射させている

また、LEDライトの光をモデルの背後に当てて逆光状態にしての撮影も行われた。ここでも光の大きさや位置などを細かく調整していた。

福島裕二さん撮影
LEDライトの光をいのうえさんの背中や手にあてている

シーン3:日没直後のシルエット

福島裕二さん撮影

ここでシーン1と同じバルコニーに出て、日没直後のマジックアワーを背景にした撮影が行われた。時刻は19時30分頃だ。

基本的な撮影スタイルはシーン1と同じ。モデルを箱馬に乗せて、アングルを探っていた。完全なシルエットではなく、わずかに顔のディテールが残っているのがポイントとのこと。絶妙な空のトーンも映える作品となっていた。

シーン4:室内でLEDライトのみ使用

福島裕二さん撮影

また室内に移動。今度は部屋の明かりを真っ暗にして、LEDライトのみでの撮影となった。撮影のイメージに合わせていのうえさんのメイクもチェンジ。

壁の前にモデルを立たせて長方形に光を当てる。「ドアから差し込む光」といった印象の作品になっていた。硬めの光ということで、モデルの影もしっかり出ていた。

また同じ場所では、チューブ型のLEDライトのみで照らす場面もあった。ここでは発光面をモデルと反対側にして反射光を利用している。

このチューブ型ライトは、モデルにダイレクトに当てることもあるそうだ。光に方向性が生まれるため、どのような角度で当てるかで光を調節できるとのこと。

シーン5:ガラス越しのライティング

福島裕二さん撮影

スタジオ内の別の部屋に移動し、ドアの窓ガラス越しにLEDライトを当てて撮影した。ガラスに模様があるので、面白い光がモデルに当たっていた。

室内の離れた場所から、ドアの窓ガラスに向けて照射している
窓ガラスの模様が“光の模様”となっている

今回の現場で福島さんは動画撮影はしていないが、照明は全てLEDだった。ストロボを使わないのは意外だったが、このようにライティングのイメージが常に見て取れるのは定常光のメリットだろう。

シーン6:夜景バックの室内ショット

福島裕二さん撮影

撮影も最後のシーンとなった。福島さんがよく行う撮り方で、部屋の照明を消して夜景を背景にして撮るものだ。撮影時刻は20時30分頃で陽は完全に落ちている。

状況カットでは室内が少し明るく見えるが、実際はほぼ真っ暗。ISO 800、三脚を使用して1/6秒というスローシャッターで撮影されている。被写体に当たるわずかな外光で人物のディテールを描いた作品となっていた。

写真展概要

会場

新宿 北村写真機店 6F イベントスペース
東京都新宿区新宿3-26-14

開催期間

2022年7月2日(土)~ 8月21日(日)

展示替え日程

パート1:7月2日~
パート2:7月11日~
パート3:7月25日~
パート4:8月8日~

開催時間

10時~21時

入場料

無料

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。