写真展レポート

コバヤシモトユキさんが“語りたい写真”とは——東雲うみさんと夢を描いた写真展「夢中夢 - Dream inside the dream -」

弘重ギャラリーで10日(日)まで

コバヤシモトユキさん(左)と東雲さん(右)

グラビアアイドル・モデルの東雲うみさんと、写真家のコバヤシモトユキさんの写真展「夢中夢 - Dream inside the dream -」が弘重ギャラリーで開催中だ。期間は10月10日まで。会場でお二人に撮影の裏話などを伺った。

東雲うみさんは、グラビアアイドルやモデルの他にプロを目指すモデラー(模型製作)としての顔も持つ。活動歴は1年ちょっととタレントとしては新人だが、学生時代にはポートレートモデルの経験もある。会場には自身が制作したガンプラも展示してあった。

雑誌のコンテストで東雲さんを見いだす

コバヤシモトユキ(以下、コバヤシ) :撮影に至ったきっかけですが、僕は以前、フォトテクニックデジタル誌の私的写真選手権というコンテストで審査員をやっていました。そこにプロになる前にモデルをしていた時の東雲さんの作品が応募されていたんです。

アマチュアカメラマンの作品なのですが、それを見た時に撮った人の夢が伝わってきて、僕がその夢を繋ごうと思ったんでしょうね。もっとみんなに見せられる形にして発表したいと。それで僕の方から彼女の事務所にオファーしたんです。

彼女がファッションアイコンとしてデビューして、仕事を広げて欲しいなというのが1つの夢。2つめの夢は、青空と雲と海という「東雲うみ」そのものを表現する写真が撮りたかった。謂わば「東雲うみの決定版」を絶対撮りたいという想いがあったんです。

東雲さんの夢やパワーを皆さんに届けるのが私の仕事。僕はグラビアはほとんどやったことがないんです。でもとにかく彼女のパワーが凄いので、それを自分が鏡になって皆さんに伝えようというという思いが今回強かったですね。

タイトルに込めた想いとは?

東雲うみ(以下、東雲) :「夢中夢」というタイトルなんですが、作品全体を通して夢というテーマをコバヤシさんと私で共有していて、それに関するタイトルとして付けました。私はいろんな趣味があって、ガンプラを作ったり絵を描いたり、写真を撮るのも元々好きなんです。夢中になることを忘れないで、応援してくれている皆さんと一緒に夢を見ているような写真展になれば良いなと思いました。

こういう大きな会場でいつか写真展をやってみたいという希望はあったのですが、実力不足と思って諦めていました。そんなときに、コバヤシさんからお話をいただいて夢が叶った思いで本当に嬉しいです。今でも実感が湧かないほどです。

今回は撮られるというよりは、コバヤシさんと一緒に作っていくというイメージを持っていました。そして撮影時にはロケーションに溶け込むことを大切にしました。普段のグラビアの仕事では、「誰かの恋人」や「読者が憧れるセクシーな女性」といったものを演じます。

一方で今回の作品は、その風景や場所の空気に如何に溶け込んで自分の物にできるか、ということを重視しました。なので今回はほとんど「素」なんです。ふとした一瞬なんかも撮ってもらっているので、そういう表情を一番見て欲しいです。

時間に追われた宮古島ロケ

コバヤシ :今回宮古島で撮ったのですが、最初はああしてこうしてというプランを立てていました。でも、途中から東雲さんのエンジンが掛かっちゃって、僕が追いかけるのが大変でした。海に行ってからは止められなかったですね(笑)。

ただ時間が無かった。現地入りが11時だったのですが、メイクや移動などで準備が終わったのが13時半でしたからね。それで、僕が現地に居られるのが17時までという……。

東雲 :最初は海から離れた場所で撮影を始めたのですが、時間が押していて日が暮れつつあり、海にたどり着けるか分からない状況でした。予定していた海の場所も見つからなくて、2時間くらい探し回りました。サトウキビ畑の奥にある海だったのですが、後になって分かったのはサトウキビが成長しすぎて道が分からなくなっていたんですね。

それで、そこからまた別の海まで移動しました。その間もどんどん日が暮れていったんです。途中で車がハマってみんなで押してみたりで、焦りましたね。

コバヤシ :海まで行けても20分しか撮れないだろうなと思っていました。その時に、別の車に東雲さんと一緒に乗っていたマネージャーさんが、「コバヤシさんの明日のスケジュールどうにかなりませんか」と言ってきたんです。実は翌日別の予定が入っていて、17時までに撮影を終えて帰らないとならない状況でした。

でもよく聞いたら、「コバヤシさんのスケジュールをなんとかしてでも海で撮りたいと、東雲さんが言っている」と。それで僕も、もうこれはやってやると(笑)。昔のギラギラしていた自分の気持ちが蘇ってきたようでした。

東雲 :そのときでもう16時くらいになっていたのですが、なんとしてもコバヤシさんに撮ってもらいたいと思っていました。撮影地が決まる前から「青空と海」で撮って欲しいと思っていたのですが、場所が宮古島と決まってからは、絶対にここで良い作品を作ると決心していたんです。

良い作品が生まれた背景には、東雲さんの強い想いがあった

コバヤシ :そんな感じのうみさんの想いがあったので、スタッフも全員団結して良い仕事をしてくれました。うみさんがいろんな夢を引き込んでいるんですね。これは彼女のパワーですし、いいタレントにはそれがあるんです。

東雲 :現場では1分も休みは無かったですね。結局撮影時間は4時間ほどしか無くて、それでも写真展をするだけの点数を撮らなければなりません。1カ所撮り終わったらすぐに着替えて次に進んで行きました。

コバヤシ :そんな状況だったので、彼女とほとんど話もしていません。本当に撮影の指示くらいですね。メイクの時間にすら撮って、使える写真を稼ぎましたからね(笑)。もちろんそれも展示してあります。

そんな撮影の集積がこの作品なんですよ。ジェットストリームに太陽があってという。もうこれが撮れたときには、満足しちゃって僕帰ろうとしていてね。そしたらまだ衣装が2着分残っていたのですが(笑)。それが17時少し前くらいですが、あの時刻だったからこそ太陽の位置がちょうど良かった。何かに導かれたような気がしました。この場所での経験が凄すぎて一生忘れられないですね。これが僕の代表作じゃないかな。もう自分の人生で語りたい写真だよね。

東雲 :後日データで見せてもらってびっくりしました。私も一番気に入っているのがこの作品です。青空が凄く綺麗で部屋に飾っておいても引き込まれるような作品です。大きなプリントを見るとまた素晴らしくて、紙にする良さも新しい発見でした。

コバヤシモトユキさんが“人生で語りたい写真”と評す作品の前で。ぜひプリントされた作品を会場でご覧いただきたい

ミラーレスカメラという新しい挑戦

コバヤシ :普段はライカを使っているんですが、今回はキヤノンのEOS R6を持っていきました。ライカで良い写真が撮れるのは分かっているんですが、撮影の時間帯を考えるとEOS R6を持っていけば暗い場所でも対応できるという読みがありました。広告の仕事でEOS-1D X Mark IIを使っていたので、同じように使えるというのも理由でした。

みなさんミラーレスカメラで撮るのは普通かも知れませんが、僕にとっては挑戦だったんです。EOS R6を使うのは、僕にとってライカより難しい。でも、時間内に撮り切るにはこれしか無かったですね。液晶モニターが動くのでアングルも自由ですし。これを持っていって良かったと思いました。レンズはRF28-70mm F2 L USMでほとんど撮りました。

読者へのメッセージ

東雲 :写真展を開催できたのは日々応援してくださる方のおかげなので、感謝の気持ちで一杯です。私のもう1つの夢は紙の写真集を出すことなので、写真展を終えたらそれに突っ走りたいと思います。それまでついてきてくださるとありがたいです。

コバヤシ :もうこの写真展は僕の自慢です。みんなと協力して作り上げた本当に誇れる作品です。

会場では図録や展示作品の販売も

写真展概要

会場

弘重ギャラリー
東京都渋谷区恵比寿南2-10-4

開催期間

2021年10月5日(火)~10月10日(日)

開催時間

12時00分~19時00分(最終日は17時00分まで)

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。