ミニレポート

スマホカメラにピッタリ!「小さな万華鏡」を作ってみよう

今回はスマホで撮影するための小さな万華鏡工作の方法と、じっくり万華鏡写真を撮るための方法を紹介してみたい。子供の工作としても楽しめるし、クオリティーを上げれば作品制作も可能だ。

トイレットペーパーの芯サイズの万華鏡(スマホ用)と、チップスターサイズの万華鏡(デジカメ用)
iPhoneにガラス製表面反射鏡を着けて撮影

スマホカメラの利点は、レンズが小さいことと接写が利くことだ。レンズが大きければ万華鏡も大きくしなければならない。私が今まで工作してきたのはチップスターの筒に合うサイズの万華鏡だった。チップスターの筒の底は67mmのステップアップリングがぴったりハマるので、レンズ先端に装着することも可能。宙玉もチップスターで工作したし、私の工作の重要アイテムとも言える。

ラップフィルムで透明球を挟んで工作して作った宙玉
中に感熱紙を入れて撮影するアナログカメラ

しかし“スマホ用であればもっと小さくできる”ということで着目したのは、トイレットペーパーの芯だ。万華鏡の場合はある程度の数の模様が撮影できないとおもしろくないが、その点もオーケー。コンパクトで使い勝手のいい組み合わせと言えるだろう。

工作方法

万華鏡用のミラーとして向いているのは表面反射鏡だが、その中でも簡単にカットできるプラスチック製のものを利用した。表面反射鏡は傷つきやすく、保護のためにフィルムが貼ってあるが、それは途中まで剥がさず、傷や汚れが付かないように注意したい。

まず、トイレットペーパーの筒に合わせてミラーを3枚にカットする。ここでは29×111mmにしたが、手持ちの筒と合わないようであれば調整してください。カッターを使う際は自分の指まで切ってしまわないようにくれぐれもご注意を。カッターは刃を折り新しい状態で、少しだけ出して使う。定規は薄いものだと刃が乗り越えてしまうことがあるので、厚みのあるものを。刃の動く方向には指を置かない。一気に切ろうとせず、何回か刃を滑らせて切るようにする。

カットしたミラーをフィルム面を下にして並べる。そしてミラーの厚み分ぐらいの隙間をあけてテープで仮留めする。この時のテープはパーマセルやマスキングテープなど、剥がしやすいものが使いやすい。

3枚のミラーをテープで繋いだらひっくり返し、フィルムを剥がす。この後は鏡の表面に触ってしまわないように注意しながら作業をする。ホコリなどがあればブロアー等で飛ばし、三角柱状にしてテープで留める。

テープで留める時のポイントは、図のようにミラーをずらして、隙間が空かないようにすること。うまく調整できたら、補強のためのテープを巻いて固定する。

ミラーの三角柱ができたら、小さく切ったスポンジを使い、トイレットペーパーの筒の中に固定する。薄いプラスチックミラーの場合はあまりスポンジを詰めすぎると歪んでしまうので注意。

撮影方法

撮影は、ただ万華鏡をレンズのところにつけて撮るだけ。ポイントとしてはレンズがミラーの中心に来ることと、垂直になること。よく分からなければミラー側から覗き、レンズが中心になるようにすればいい。連続的に撮影するのであれば、テープを使って万華鏡に固定してしまってもいいでしょう。

筒はミラーの保護目的で使っているが、プラスチックミラーであれば、筒なしでスマホに固定する方法もありだ。ミラーがガラス製の場合は筒はあったほうがいいが、プラスチック製ミラーで簡易的に撮るのであれば、筒なしでもオーケー。

また針金を使った三脚を自作すれば、万華鏡を自立させて撮影することも可能。この三脚はビニール被覆の針金を3本より合わせたもの。素材はアルミのものが曲げやすくておすすめだ。

被写体は何でもいい。色鮮やかなものやキラキラするものが万華鏡映えするが、オモチャやアクセサリーなど、目についたものをどんどん撮影してみるといい。

ミニカー。iPhone+プラスチックミラー
小さなビン。iPhone+プラスチックミラー
アクセサリー。iPhone+プラスチックミラー

自由研究の課題

自由研究として工作をするのであれば、次のようなことを考察してみるといい。

どんな順番で反射してる?

万華鏡では鏡に映ったものが反射してパターンが出来上がるが、どんな順番で反射しているのだろうか? これは、反射を繰り返すうちに少しずつ暗くなるので、明るさが比較できるとわかりやすい。画像編集ソフトを使ってコントラストを上げてみたり、明るさの数値を調べたり。

なんでこんな模様ができるの?

これもどのように反射を繰り返しているのかを調べてみるといい。たとえば文字を撮影してみると反転して鏡文字になったりするので、考察がしやすい。

万華鏡の種類

今回紹介したのは正三角形のパターンの3ミラーシステムだが、万華鏡のミラーシステムにはさまざまな種類がある。それを調べて、ほかの万華鏡を作ってみてもおもしろい。

ミラーについて

万華鏡に向いているのは表面反射鏡だ。工作に向いているのはプラスチック製のものだが、反射率が低く、歪みが生じやすいというデメリットがある。ガラス製の場合は反射率が高くクリアな写真を撮影することができるが、ガラスをカットしなければならない。

以下が、プラスチックとガラスのミラーでの写りの違いだ。ちょっとした工作として楽しむレベルであればプラスチックでもオーケー。作品としてしっかり撮りたくなったら、ガラス切りにも挑戦してみてほしい。YouTubeではガラスの切り方動画などもアップされている。また今回紹介したトイレットペーパーサイズとチップスターサイズのガラス製ミラーは、Amazonで購入可能。

歪みのないクリアな写り。iPhone+ガラスミラー
iPhone+ガラスミラー
スマホ用の小さなミラーで撮影
デジカメ用の大きなミラーで撮影。三角形が大きいので、より広い範囲が写る

本格的に撮影してみる

以下は現在私が撮影している方法だ。もう何年も万華鏡写真を撮影しているので、少しずつ撮り方も変わってきた。まず、レンズへはチップスターの空き箱をステップアップリングで取り付け、真俯瞰で撮影を行う。俯瞰撮影にはLeofotoのギアセンターポール(GC-282AL)を使っているが、しっかりしていて扱いやすい。

ライティングはLED照明を使うか、窓際で自然光を使うか。自然光だと時間により変化してしまうが、撮っていて気持ちいいし、きれいに写るので自然光で撮ることが多い。透過光で撮りたい時にはNEEWERのLEDビデオライト(GL1)を利用している。ライトボックスでもオーケーだが、光量が少なかったり、フリッカーが発生したりでいい製品に出会わなかった。これは光量や色温度も変えられるので気に入っている。

そしてこのライトの上に少し浮かした状態で無反射ガラスを置き、その上に被写体を置いて撮影している。無反射ガラスを動かすと模様が変わるので、その変化を外付けのモニター(NEEWER NW-760)で見ながらリモコンでシャッターを切る。

無反射ガラスとライトの間に透明フィルムに画像をプリントしたものを挟めば、バックに変化を付けたものも撮影することができる。

透過光でなければ、バックはいろんなものを使うことができる。布地や千代紙など柄があるものを使ってもいいし、しわくちゃにしたアルミホイルとか、タブレットに映し出した画像などなんでもありだ。ルールは何もないので、それぞれのアイディアでぜひ独自の万華鏡写真を撮ってみてください!

水色の紙の上に被写体を置き、サイドからLEDの光を当てる。反対側にアルミホイルを置いて、光を反射させる。

デジカメでの撮影例(OM-1+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8)。広角レンズだと三角形のパターンが増える
バックに黒い紙を敷きサイドからライトを当てた。OM-1+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8

「宙玉アワード2022」作品募集中

現在、「宙玉アワード2022」の作品募集中、と言っても指定のハッシュタグをつけてTwitterかInstagramに写真をアップするだけだ。本年度後半の課題は「光の軌跡」。ペンライトや花火を動かしてみてもいいし、カメラ側を動かしてもいい。私は以前紹介した「手ブレ増幅装置」と宙玉の組み合わせで現在撮影中。手ブレ増幅装置もコンパクトになり扱いやすくなってきたので、いずれお披露目したいと思っている。アワードでは課題作以外に自由作も募集しているので、新機軸の宙玉写真が撮れたら、ぜひお見せください!

この夏の暑さを宙玉の中に閉じ込めてみた。OM SYSTEM OM-1+M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8+ZENJIX Soratama Lensball Filter
手ブレ増幅装置と宙玉を組み合わせるとこんな写真が撮れる。ソニーα6500+E 30mm F3.5 Macro+ZENJIX Soratama Lensball Filter

(うえはらぜんじ)実験写真家。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。著作に「Circular Cosmos まあるい宇宙」(桜花出版)、「写真がもっと楽しくなる デジタル一眼レフ フィルター撮影の教科書」(共著、インプレスジャパン)、「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)、「改訂新版 写真の色補正・加工に強くなる〜Photoshopレタッチ&カラーマネージメント101の知識と技」(技術評論社)などがある。撮影や工作に関する情報は上原ゼンジ写真実験室にまとまっている。