ミニレポート
厚さ2mmの大冒険。ニコン Z fcでソニーEマウントレンズを動かす
「Megadap ETZ21」実機ハンズオン
2022年6月28日 07:00
焦点工房が6月9日に発売したマウントアダプター「Megadap ETZ21」のハンズオンレポートをお届けする。
本製品は、ソニーEマウントレンズをニコンZマウントボディに装着し、AFや手ブレ補正などを利用できる電子マウントアダプター。新たにAPS-CのZマウント機でも使用できるようになったため、筆者私物のニコン Z fcに組み合わせるべく、焦点工房に実機を借りて試してみた。
ソニーEマウントとニコンZを比べると、フランジバック差が2mmしかない。マウントアダプターは2つのマウントとフランジバックおよびマウント径の寸法差を利用するが、更に本製品はカメラとの通信のために電子接点と基板も配置する必要がある。これをレンズ保持の機構と強度を持たせながら実現しているのは、単純にスゴいと思う。
ちなみに、2010年の本誌記事を遡ってみると、Eマウントの“E”は当時最短だったフランジバック18mmにちなんだ“Eighteen”から名づけられていた。ニコンZマウントは2018年の登場で、フランジバックは16mm。
さてここでは、筆者私物やたまたま編集部で借用していたEマウントレンズを、いくつか取り付けてみた。ソニー純正、ツァイス、シグマとそれぞれだったが、以下に挙げたレンズでは危なげなくAFが動作した。電子マウントアダプター自体は以前から存在するし、そういう意図の製品なので動いて当然でもあるが、改めて感心してしまう。
これも、電子マウントアダプターが登場した頃(キヤノンEF→ソニーEマウントアダプターがポピュラー)から現在までの間に、様々なノウハウが積み重ねられてきた証だ。メーカーの研究開発と先人ユーザーの人柱精神に敬意を表しながら試用した。
以上のようにニコン Z fcで、スナップ撮影を想定したAF-S(シングルAF)撮影を行ってみたが、スムーズに合焦するのが心地よい。もちろんETZ21はAF-C(コンティニュアスAF)や瞳AFにも対応しているものの、スピードや確実性を求めるようなシビアな状況では、あくまで冷静に、ネイティブマウント同士の組み合わせを推奨しておきたい。
これは今回のMegadap製品がどうという話ではなく、マウントアダプターというアイテムには「相性」が付きものであり、あくまで「お得」や「絶対」を求めず、冒険的な楽しみを基本として考えてほしい。これは何事も“至れり尽くせり”な時代だからこそ強調しておきたい点だ。記事末に焦点工房の製品情報ページのリンクを入れておくので、購入前には必ず「注意事項」を一読してほしい。
余談になるが、デジタルカメラ時代のマウントアダプター事情を簡単に振り返ってみたい。ミラーレスカメラ登場以前はキヤノンEOSデジタル一眼レフ(一眼レフの中で比較的フランジバックが短かった)をベースとし、そこに他の一眼レフカメラ用レンズを装着することが多かった。
その後、フランジバックが短いミラーレスカメラ(マイクロフォーサーズ)が2008年に登場すると、一眼レフ用ではないライカMレンズなども装着できるようになり、“往年の名玉がデジタルで蘇る!”と注目される。2010年にAPS-CフォーマットのソニーNEX(後のミラーレスα)が発表されると、より本来の画角に近い撮影ができると歓迎された。
2013年にはソニーα7/α7RやライカM(Typ240)の登場で、いよいよ35mmフルサイズでのライブビュー撮影が可能になる。そして、かつては憧れの的だったフルサイズ機も、ソニーαが市場を牽引して10万円台から楽しめるようになり、さらに他社からも35mmフルサイズミラーレスや中判ミラーレスが登場して選ぶ楽しみが増えたというのが、大まかな業界の流れだ。
なお焦点工房によると、本製品は発売と同時に大人気となり、本稿執筆時点では品薄だという。オンラインでの購入時には、それが正規の価格であるか念のため確認してほしい。本製品は国内正規品の希望小売価格が税込3万8,500円で、焦点工房のWeb直販価格は税込3万3,300円だ。
おまけ:Mマウントアダプター「TTArtisan M-E 6bit」と二段積み
焦点工房のオススメで先のETZ21と一緒に借用したのが本製品。ライカMレンズの6bitコードを読んで、ソニーEマウントのカメラボディ側に装着レンズ情報を伝えることで、ボディ内手ブレ補正を利用する際の焦点距離手動設定が不要になるというアイテムだ。
これを、先に紹介した「ETZ21」と二段重ねにして、Zマウント機に装着する。
ここでは手ブレ補正が大事ということで、ボディ内手ブレ補正機構をもつニコン Z 6を同僚に借りて試してみた。レンズは6bitコードがついているものとして、ライカのズミルックスM f1.4/50mm ASPH.を用意した。
6bitコードとは、電子的な連動を持たないライカMマウントで、装着レンズをライカMデジタル機に伝えるための仕組み。これによって、使用レンズ名などをExifデータに書き込むほか、周辺光量などのレンズ補正も行っている。なお、ライカのフルサイズミラーレスカメラ「ライカSL」(Lマウント)シリーズ用の純正M→Lアダプターにも6bit読み取り機構が備わっている。
なお、本製品を使う上で大事なポイントとして、「6bitコード付きレンズをアダプターに取り付けてから、カメラに取り付ける」という順序を守る必要がある。これを無視してアダプターを先にカメラに装着してからレンズを装着したところ、正しいレンズ情報がカメラに伝達されなかった。至れり尽くせりの時代でも、付属の説明書ぐらいは読みましょう(自戒)。