写真展レポート

会場でしか見られないプライベートショットに注目。6年間共に歩んだモデルとカメラマンの初作品展

「JILL×湯澤祐紀写真展:BABY’FlashBack」 AtelierY -恵比寿-にて9月26日まで

コスプレイヤーのJILLさんと、カメラマンの湯澤祐紀氏による写真展「BABY’FlashBack」が9月11日からAtelierY -恵比寿-で始まった。ここでは写真展のコンセプトやエピソードをお二人に伺った。会期は9月26日まで。

会場には41枚の写真が並び、コマーシャルフォトのようなものからプライベートショットまで様々なJILLさんを見ることができる。2日間という短期間で撮られた作品だが、どれも見応えのある写真となっている。

特にJILLさんの自宅で撮影されたモノクロ写真は、図録にも載っておらず会場でしか見られないというファン必見の作品群となっている。

「色々なシーンをちりばめているのを見て欲しい」――JILLさん

――簡単に自己紹介をお願いします。

コスプレイヤー出身でモデルをしているJILLと申します。最近はグラビアのお仕事が多いですね。アパレルのプロデュースもしています。

――今回の写真展のきっかけは?

毎年、生誕祭のイベントをしているのですが、今年は一度に集まれないので、皆さんが好きなときに見に来られるように“代わりになるイベントを”と考えて、写真展が良いかなと企画しました。

――湯澤さんとの接点は?

湯澤さんはもともとコスプレのカメラマン出身で、お互いにコスプレの活動をしっかり始めようというときから撮影してもらっていいます。かれこれ6年くらいの付き合いになります。

――写真展は初めてですね。

そうですね。写真展の開催が決まってから作品を撮り始めたのですが、今撮っているものがきちんと組み立てられて形になるのか、撮影の時はそれが心配でした。

というのも、普段は同人誌という本の形で写真集を作っているのですが、写真展となると本とは見せ方がぜんぜん違うなと感じていました。

――写真を撮られることについては、どう考えていますか?。

自分のことが好きになれないところがあったのですが、写真を続けているうちに周りの人との繋がりが生まれてきて、その中で活動していけるのがすごく楽しいと思っています。

――今回見て欲しいところは?

同人誌などだと1つの場所で完結してしまったり、テーマが単発だったりするので、色々なシーンをちりばめるというのがやりたかったことです。色々な写真をご覧いただけるのではないかと思います。

それと、湯澤さんに自宅に来てもらって撮ったプライベートの写真も展示しています。モノクロの写真がそれで、ファンの方には見せることは無いだろうなと思っていたものを敢えて出しています。せっかくなので、来た人しか見られない写真をと考えてのことです。

――衣装は自分で決めたのですか?

はい。自分で全て用意しています。レンタルもしているので、その辺で売ってなさそうな服を着てみたりしました。

ちなみに極楽鳥花が写っている写真がありますが、この花も私が花屋で買ってきたものです。カッコイイ花だなと思って、花の間から目を出したショットを撮りたくて、そのシーンのためだけに買いました(笑)。

――撮影はどんな感じでしたか?

お互い一緒に成長してきた感じなので、2人でアイデアを出し合いながらやっていました。今回はアシスタントのカメラマンやメイクさんにも参加してもらって作り上げていきました。

特に緊張は無かったですが、自分が思っていることと湯澤さんが思っていることを共有していけるように考えながら進めました。

ただ、特別なことはせずいつも通りでいることも心がけました。その時自分が出せる良いところを見せていけるようにしました。

――撮影を終えての感想は?

今回、好きな写真も沢山あるのですが、まだまだ撮りたいと思いました。写真展をやると集大成みたいになってしまいますが、次にスタジオに行ったらあれやりたい、これやりたいというのがいっぱいあります。

今回の大きな発見は、水を使った撮影は皆で協力しないとしんどいということ(笑)。例えば、薄い生地には水をかけ続けないとシワが寄ってしまうといった苦労がありました。

――最後に読者にひと言お願いします。

今まで撮ってきたのがグラビアっぽい写真だったので、今回のような作品を出したら今までのファンが振り落とされてしまわないかとちょっと心配です(笑)。なので、しっかりついてきて欲しいですね。

「一番見せたかったのはプライベートショット」――湯澤祐紀

――なぜJILLさんさんを撮ろうと?

ちゃんとしたコスプレ写真の作品でも撮ってみようかというのがJILLさんを撮り始めたきっかけです。6年前に戻りますが、まだ知らない世界に足を踏み入れてみたいという思いが、お互いマッチしたのだと思います。それが長く続いたということですね。

JILLさんはしっかりしているようでかわいい勘違いがあったりと、そこのギャップがかわいいですね。しっかりしたお姉さんプラス、ドジっ子というか、そういう印象を持ちました。

――作品のコンセプトは?

今回はキメキメじゃないJILLさんを撮る、というのが念頭にあって撮影に臨みました。その通りにはなったかなと思っています。いつも通りのJILLさんの空気感を撮れたのではないかと思います。

JILLさんの家で撮ったモノクロの写真が好きで、これが今回一番見せたかった部分だと思っています。彼女のより素の部分に迫った写真が撮れたので、その特別感を見てほしいですね。

――新しいチャレンジはありましたか?

水撮影ですね。まだやったことが無かったのでぜひやってみたかった。やり方を福島(同じ事務所の福島裕二さん)に教えてもらったりしてという感じですね。とにかく現場で手が足りないという(笑)。手探り状態でやっていったので、勉強になりました。そうしたなかでもメインになる劇的なカットが撮れたのは良かったですね。

――撮影中に心がけていたことは?

「自然にしてていいよ」と伝えて、なるべく素に近いように撮ることですね。コスプレイヤーだからなのか、普段カメラを向けるとJILLさんはスッと顔を作ってしまうんです。そこをなるべく出ないようにしています。ちょっと抜けている感じの写真が多いのはそう心がけているからで、あまり見ない顔を撮らせてもらえたと思います。

――撮影機材は?

ライカのQ2を今回の撮影のために買いました。恋人関係に見えるというか、距離感の近いイメージを目指していたので選びました。JILLさんの家で撮ったモノクロ作品は全部Q2で撮っています。

Q2は28mmレンズでパースの付き方が大きい。風景やスナップなどを撮る方は多いと思いますが、ポートレート向けではないと思います。ですが、それを1人の人物にフォーカスすることで、プライベートスナップ風の作品が撮れたと思います。写真を見る方も被写体を近くに感じられるのではないかと考えています。

そのほか一部は普段の仕事カメラであるソニーα7R IVを使いました。レンズはほぼGMの35mm F1.4ですね。高画素機なので、クロップして50mmの感覚で撮ったものもあります。こちらは手に馴染んでいるので使いやすかったですね。

――照明は?

自然光に見えますが、HMIかLEDのライトを使ったものが多いですね。床に反射させたり、スポット状にしてみたりとドラマチックになるように工夫しました。ストロボは全く使っていません。

一方JILLさんの家で撮ったものは、その場にあったスタンドライトなどを使ってその場の光で撮りました。

――読者にひと言お願いします。

普段見れないJILLさんを見に来てもらえたらと思います。特にプライベートショットの部分は気合いを入れたので、JILLさんの新しいかわいさを見てもらえたら満足です。

写真展概要

会場

AtelierY -恵比寿-
※東京都渋谷区東3-25-6 楠ビル2階

開催時間

平日:15時00分~21時00分
土日祝:13時00分~21時00分

休館

9月21日(火)

入場料

無料

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。