写真展レポート

火将ロシエル×福島裕二写真展:秘録

コスプレイヤーが見せる“飾らない素の自分” 特大プリントを含む約60点を展示

火将ロシエルさん。お気に入りの作品と

写真展「火将ロシエル×福島裕二写真展 “秘録”」が6月18日より表参道近くのギャラリーAtelier Y-青山ではじまっている。普段コスプレイヤーとして活躍する火将ロシエルさんのいつもとは違った一面が見える写真展だ。ここでは会場の様子とともに、お二人へのインタビューをお伝えする。

会場には一般的な写真展では稀なB0プラスといった特大サイズのプリントも展示。作品数も計62点と比較的多く、大変見応えのある写真展となっている。ほぼノーレタッチという仕上げも興味深い。会期は6月27日まで。

「ここだけの空間を体験してほしい」――火将ロシエル

――簡単に自己紹介をお願いします。

普段コスプレイヤーとして活動しながらモデルやDJ、また「pretty noob」という音楽ユニットの活動もしています。コスプレがメインですが最近はグラビアもやっています。コスプレの活動はもう10年くらいになりますね。

――今回の作品撮影に至った経緯は?

同じ事務所のくりえみさんが福島さんと何度も写真展をしていて、そこで福島さんを知りました。その写真展にも行って、写真から伝わるメッセージ力がすごくて驚きました。私は話すのが得意な方ではないので、写真なら自分を伝えられると思ったんです。そこで福島さんと話をさせてもらって、じゃあやろうかということになりました。それが2020年の12月のことです。今年に入ってテストシュートから始めていきました。

――自身が被写体となる写真展は初めてだそうですね。

写真を撮ってSNSで見せることは多かったのですが、こうして大小様々なサイズにプリントされたものをこの空間で見ると自分でもすごく感動してしまいました。普段コスプレイヤーとしてはキャラクターを演じ切って“キメて”撮るので、今回は素の自分を切り取ってもらえたのが多く、とにかく感動です。

――一番見てほしいところは?

そうですね……飾っていない自分でかすね。ふとした瞬間というか、カメラを意識していないところを撮ってもらっていたので、そのあたりを見てほしいです。写真を見せてもらってから「あ、撮られてたんだ!」と気づくものがあったりして、どれも今まで見せたことのない表情なんです。だから、いつものロシエルと違うなと思ってもらえたら嬉しいです。

――お気に入りの1枚は?

夕焼けの海の写真ですね。すごく広い浜辺でぽつんと私がいて、生きててよかったと感じさせる写真です。足跡が波で消えていくところや、夕陽で海が染まっていたり儚い感じが気に入っています。

――撮影は慣れていると思いますが、今回は緊張しましたか?

自分の中で撮られたくない角度などもあったのですが、そういうのは取り除いてありのままの自分を撮ってもらうことに、ちょっとドキドキしました。この顔を見せて大丈夫なのかな、という不安もありました。でも、いざ作品を見たらそれも「意外と良いかも」という新しい発見があって自信に繋がりました。

――撮影のときに心がけていたことは?

コスプレ撮影ではそのキャラになりきることが一番なので、自分を消さないといけません。でも今回は、自分らしさを積極的に出していくことを心がけました。

――福島さんの撮影はどんな感じでしたか?

すっと喋ってくれていたので、面白くてすごく楽しかったです。福島さんは撮影のときにいろんな言葉を発するんですよ(笑)。今までは静かに撮られることが多かったので、結構新鮮でしたね。第二弾もやってみたいです。

――最後に読者に一言お願いします。

今まで見せたことのない姿や表情という、この瞬間しか味わえない空間を皆さんに体験してほしいです。気に入った写真はグッズにもなっているので、部屋に飾ることもできます。ここに来たら、ろしにゃんをもっと好きになってもらえる自信があるので、ぜひ皆さんに一度は来てもらいたいです!

「”僕から見た彼女”を撮りたかった」――福島裕二

――最初、ロシエルさんの印象は?

くりえみさんの写真展で初めて会ったのですが、Twitterでのイメージと全然違っていて「え、どうして」という。なんというか、フラストレーションみたいなものを感じたんですよ。コスプレの役になりきることを長くやってきた。でも僕が会ってみた火将ロシエルはそうではなかったんですね。コスプレイヤーではない彼女の魅力を誰も引き出していないと。

それで話をしていたら、撮る? みたいな話になったんですね。僕が撮るからいつもみたいな写真にはならないよと言いましたが、それでもチャレンジしてみたいということでこの企画が決まりました。

――作品のコンセプト・狙いは?

「僕から見た彼女」を撮りたいということです。これは彼女の素が撮りたいということともまた違うんですが、一度被写体をリセットするということ。「火将ロシエルはこうでなければならない」なんてことは無いと思うし、彼女のことを長く知っているファンでもない。だから初対面で感じた彼女の魅力を引き出そうと。誰もその栓を抜いてあげてないわけですから。別にエロく撮るとかそういうことではなくて、“生きている状態”にしてあげたかったんです。

福島裕二さん。「モノクロ専用機でしか撮れない」というお気に入りの作品と

――写真展のタイトルは「秘録」です。

彼女にタイトルを考えてもらいたくて、撮影後にポエムを送ったんですね。それは、「コスプレイヤーではない自分を出してきてくれるかな……出してくれたらいいな」、「すっぴんをやったことがないから、それに近いことはしてもらえるかな?」。そういう僕の期待と、二人で新しいものを作ろうという意味のポエムだったんです。

それを読んだ彼女から返ってきた言葉が「秘録」だったんです。秘密を記録していくというのはいいね、ということで決まりました。

――撮影で心がけていたことは?

上手い下手で撮っているわけではなくて、「僕にはこう見えている」というのを残したいと思いました。福島さんすごいねと言われるけれど、「そこに座ってて。カメラ構えるから。ピンと合わせるから。シャッターを切るね」と。そうするとこうなるんですよ。そんな感じで、僕がみている本当の彼女を表現できるんです。

――撮影機材について教えて下さい。

全部ライカで、M10-Rを2台とM10モノクローム、Q2、Q2モノクロームです。M10には50mmのアポ・ズミクロンと21mmのスーパー・エルマー。M10モノクロームにも50mmのアポ・ズミクロンです。レンズ交換はしたくないので、ボディを別々に用意しています。このうち3台で撮ることが多いですね。モノクロ作品はモノクロ専用カメラで撮影しています。カラーをモノクロにすることはしていないんです。

――照明はどうでしょうか?

あまり特殊な機材は使っていないですね。Litra(小型LEDライト)やスマートフォンのライトも使っています。あとは、昔の外光オートの小型ストロボも使っています。僕はいろいろなカメラを使っているので、TTL調光ではなくて外部調光なのがかえって使いやすいんですね。

――読者に一言お願いします。

ここの展示はガラスも入っていないので紙の肌も見えます。一度大判プリントというものをぜひ楽しんでほしいと思います。

図録、トートバッグ、Tシャツなど様々なグッズの販売も

写真展概要

会場

AtelierY -青山-
東京都渋谷区神宮前3-5-2 EFビル 地下1階

開催期間

2021年6月18日(金)~6月27日(日)

開催時間

平日:15時00分~20時00分
土日祝:11時00分~20時00分

休館

水曜日・木曜日

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。