写真展レポート

キャスティングも運営も全てモデル自身で。「山中夏歩 ポートレート写真展 テランセラ」

8年間・20名が撮影した作品 渋谷ヒカリエで6月21日まで

山中夏歩さん

ポートレートモデル 山中夏歩さんの写真展「テランセラ」が渋谷ヒカリエ8階の CUBE1,2,3で6月9日に始まった。会期は6月21日まで。

ポートレートモデルとして活動してきた8年間の集大成としてまとめた写真展で、プロ、アマ20人のカメラマンが撮影した。同じモデルを被写体としながら、カメラマン各人のコンセプトの違いで様々な彼女を見ることがでる。

カメラマンのキャスティングや会場選定、展示ディレクションなど、企画運営すべてモデル自身が手がけた点も珍しい。会場には、8年間カメラマンと共に真剣にポートレートに向き合ったという約90点が並び、大きな作品ではB0サイズのプリントも見ることができる。

「カメラマンの期待に応える気持ちを第一に」――山中夏歩

――自己紹介をお願いします。

ポートレートモデルを始めてちょうど8年目になります。今まではモデル活動をメインにしていて、毎日のようにモデルをしていました。最近はその経験を生かして、自分の会社でポートレートに関する事業をさせてもらっています。今回の展示も自分でディレクションをしましたが、今後は企画やキュレーター側としてポートレート業界に貢献して行きたいと思っています。

――今回の展示のきっかけは?

1人のモデルを複数のカメラマンが撮影した展示会は珍しくないのですが、カメラマンさん同士が費用を持ち合って主催するものがほとんどです。私の場合はお世話になっているカメラマンさんがあまりにも多く、その方法だと応募してもらうにも凄い人数になってしまいます。ご参加いただけないカメラマンさんも多く出てしまいますし、それで今まで写真展ができなかったんです。

ただ、この8年目のタイミングということで5年以上撮っていただいていているアマチュアの方と、ポートレート分野でもご活躍の特にお世話になったプロの方を組み合わせることで、誰が見ても納得のいく展示になると考えました。8年間活動する中で出会えた人達と一緒にやるには今しかないと考えました。

展示作品の一部

――写真を撮られる事への想いは?

撮られること自体も好きですが、写真というもの自体が好きなんです。撮ることもしますし、作品を見るのも大好きです。

モデルをやるうえでは、「写真が好きで、熱意をもったカメラマンさんの期待に応えたい」という想いが大きいですね。それから、ポートレート撮影というものが世間から変に見られることもありますよね。だから自分の行動はきちんとして、周りから誤解がなく、ちゃんと見てもらえるように活動しています。

――今回の展示で一番見て欲しいところは?

作品をしっかりと見ていただきたいと思ったときに、会場や展示方法など空間づくりにも拘りがないと、作品をみていただく以前にそういった部分に目が行ってしまうのではないかと思いました。今回はそうしたことのないように、大切な写真を集中して見ていただくため、備品や構成等々とにかく細かいところまで仕上げています。

また、ポートレートを知らない一般の方にも入りやすくわかりやすい美術展のような雰囲気づくりを考えました。そういった作品作りや空間作りなどの細かなこだわりを見て欲しいです。

展示作品の一部

――一番気に入っている作品は?

ちょっと選べないですね(笑)。むしろ、選べないようにやったという感じです。ポートレートの中の色々なジャンルで構成していますが、それぞれのジャンルの一番を20パターン揃えたという感じかも知れないですね。8年間で1,000人近くの方に撮ってもらったおかげで、様々な表現や写真について学ぶことができ、どれも選べないくらいの作品をつくることができました。

47都道府県全てで撮影した作品も

――印象に残っている撮影は?

やっぱり、47都道府県をまわって撮ったシリーズは自分でも凄いと思います。家族や恋人ならそういうのもあると思いますが、モデルとカメラマンという関係ですからね。それに撮影は全部日帰りなんです。泊りがけで行ったとなると、素直に作品を見てもらえなくなるかもしれない。そうならないように、敢えて日帰りにしています。私の理念である、ポートレートカルチャーの地位向上という観点でこだわった部分です。

天気によっても場所を急遽変えたりするので、飛行機で行くような距離の場所でも車で移動することもありました。例えば、鳥取県も晴れを狙うため8時間くらい掛けて車で行きました。ほとんどが1回のロケで1カ所の撮影です。撮り直しで複数回行っている場所もありますので、ロケはかなりの回数になりました。

展示作品の一部

――撮影の際に心がけていることは?

例えば月に1回以上といった具合に、家族や友達よりも会っているカメラマンさんもいます。すると、仲が良くなりすぎてモデルとしての仕事がなあなあになってしまいがちです。ですから、どんなに仲が良くても「疲れたからこのくらいでいいか……」というような妥協はせず、期待に応え続けられるようにと心がけています。

――ポートレートの写真展では立派な会場です。

ポートレートの知名度はまだまだ低く、実体もわかりづらいため一般の方に理解していただくのも難しい部分があると感じています。今回の展示はポートレートの認知度、地位向上を目指しました。一般の方も立ち寄りやすい会場を選定し、ポートレートを知らない方にも見ていただいて、健全な写真活動もあるのだと理解してもらえるようにしたいと思っていました。

そこで今回は写真のギャラリーと言うよりも、一般の方も来やすい場所をいくつも探しました。この場所は審査が必要なので、企画書を作るのも1カ月くらい掛かって大変でした。再審査も3回くらいに及びました。

――読者にひと言お願いします。

良い悪いは別にして、一般的なポートレート写真展とは違うコンセプトになっています。ですので、見ていただければ「こういうのもあるんだ!」とポートレートの見方が絶対変わると思います。ポートレートに携わる人には転機になると思うので、ぜひ来て欲しいと思っています。

図録も販売している
物販コーナーには各カメラマンの作品集も

展示概要

会場

渋谷ヒカリエ8/02/CUBE 1,2,3
東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8階

開催期間

2022年6月9日(木)~6月21日(火)

開催時間

11時00分~20時00分

入場料

無料

出展者(敬称略、順不同)

青山裕企
Ilko Allexandroff
小林修士
コバヤシモトユキ
コハラタケル
酒井貴弘
鈴木達朗
高橋伸哉
武井宏員
HASEO
haru wagnus
稲住清司
雅辺義則
白崎幸雄
中山文
橋野徹
濱道彦
日比野哲也
廣島淳
松金大樹

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。