特別企画
APO-LANTHARシリーズ×Z 7IIでポートレート撮影を楽しむコツ。河野流MF撮影術も一挙紹介
2021年8月16日 00:00
株式会社コシナが手がけるフォクトレンダーブランドのレンズは何かと話題になる製品が多い。そんな数多い個性的なレンズの中で、特に高性能な製品に与えられる「APO」を冠したレンズがあります。「APO-LANTHAR」(アポランター)がそれ。今回、Eマウント用にラインアップしている全4本をZマウントボディで使用する機会を得ました。ポートレート撮影でこれら4本がどのような結果を見せてくれるのか、河野流の活用ポイントを交えながら、さっそく紹介していきたいと思います。
シリーズ全てが味わえるのはEマウントの特権?
冒頭でAPO-LANTHARシリーズには焦点距離別に4本のレンズがラインアップされていると紹介しましたが、実は、これら4本すべてを楽しめるのはEマウントユーザーの特権でもあります。
レンズの登場順に見ていくと、まず「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」が2017年に発売。次いで同じくマクロタイプの「MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5」が2018年に発売されました。第3弾として登場した「APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical」はコシナの創業60周年によせたレンズで「フォクトレンダー史上最高の標準レンズ」というキャッチフレーズで2019年に発売。今年(2021年)にはVMマウント版が発売されました。そして今回、第4弾として「APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical」が登場。3月VMマウント版が4月にEマウント版が矢継ぎ早に発売されました。
正直なところ過去に一度、50mmをチラ見した程度の全くフラットな状態で、これら4本全てを試写できるのは河野の特権でしょうか(笑)。そんな興奮の極みを抑えつつ、じっくり外観から観察していきます。
冒頭でもお伝えしたように、今回使用するレンズはすべてEマウント版です。これらを劇的に見やすいZシリーズのファインダーと組み合わせることで、どれくらいポートレート撮影で使っていけるのかがサブテーマです。マウントアダプターはTECHARTの「TZE-01」(電子接点つき)と焦点工房の自社ブランド「SHOTEN」シリーズのSE-NZを使用しています。
ちなみにEマウント版はいずれも電子接点を備えているため、TZE-01を介することでExifの記録も可能となります。絞り値をメモする必要がないというのは、大きなメリットですね。
クラシカルなデザインは、昨今発売されている現代レンズとは一線を画し、性能の高さやレンズに対するこだわりを強く主張しているように感じます。肉厚な金属鏡筒はどのレンズも共通していて、フードまで金属製にするというこだわりよう。手にした重量感からも密度の高さを感じます。
フォーカスリングのトルク感もマニュアル派には嬉しいポイント。やや粘りがありながらも重すぎない適度さが素晴らしく、止めたいところで吸い付くように止められる印象を持ちました。絞りのクリック感も良く、マニュアルレンズの「触れて決める」という、最も基本的な要素をそれぞれクリアしています。さすがマニュアルフォーカスレンズに一家言あるコシナらしい仕上がり。どんな焦点距離であっても妥協を許さない本気度を感じます。ちなみに65mmで装着しているフードは試用機のため製品版とは異なるものとなっています。
35mm
APO-LANTHAR 35mm F2 Asphericalはシリーズ最新モデルで、外観やハンドリングは50mm F2に近いイメージです。特定の絞り値で絞りの形状が円形になる点も同じ。35mmと50mmで、完全に円形の絞り形状を開放側でなくても使用できるというのは、ポートレートを撮る立場からすると、まさにありがたいの一言。
こうした海面のキラキラした反射をいかしたい場面でもきれいなボケが得られます。ちなみに35mmの真円になる絞り値はF2、F2.8、F5.6、F16のとき。絞り羽根は35mmと50mmともに12枚です。
それにしても驚いたのはホントに色収差が抑えられていることです。僕もいじわるな状況で試しているのですが、こういった逆光条件だと、レンズによっては髪の毛のエッジや、波の玉ボケに赤紫色の輪郭が不規則に出るので、いわばレンズの第一関門ともいうべきチェック項目です。が、見事にクリアしていて確認できませんでした。
フレアやゴースト、コントラストの低下を「味」として表現に活用する懐の深さがポートレートにはありますが、数ある作品の中に1、2点そういったカットを入れるのであればわかりますが、全部が全部そうした写真ばかりだと、どうしても疲れてしまいますよね。まずは、キチンと写ることが第一ですから、APO-LANTHARの極めてクリアな描写は、まず見事と評価すべきでしょう。
寄り引きで得意なレンジが変わってくるレンズもありますが、この35mmはどちらも素直な描写が特徴だと感じました。背景のボケや見え方もどの距離で撮影しても見やすく、自然なつながりが素晴らしいです。
35mmで人物本位の撮影をする場合は、モデルをアップにして顔を端に寄せると外側に僅かに膨らむので、アップではセンター寄りに。ウエストアップくらいに引いて左右に寄せるなど、モデルの顔の膨らみや見え方に注意して配置を決めるのがポイントです。さらに極めたければ、どのくらい寄って中心からズラすと顔が膨らんで見えるのかなどを研究するのもオススメです。意識してそうした感覚を掴むようにすると、35mmで撮るポートレートが楽しくなりますよ。
夏のポートレートでありそうな絵作りで試してみました。ここではモデルの白いシャツを観察してみましょう。センサーの特性もあるだろうとは思いますが、僕の印象ではピントを合わせた部分はシャープで、一見コントラストが高めに見えますが、よく観察すると実は中庸なバランスであることがわかります。対象物の質感を最大限にとり込んでいる、と言えばわかりやすいでしょうか。胸元の白飛びはもちろん承知の上なのですが、その周辺の影との境や左袖、右袖の質感などがうまく再現できています。
次に背景が暗く落ちる場所で黒い衣装で撮影してみました。先述したように、コントラストの傾向が中庸ということは、黒の階調も情報豊かにとり込めるだろうと想像できます。モデルの右腕あたりの分離はもちろん、背景のシャドー部のディティール感や衣装のドレープ感も良く再現してくれています。ということはポートレートのモノクロ撮影にも適したレンズと言えるのではないかとも思います。機会があれば、ぜひモノクロオンリーでの撮影にもトライしてみたいですね。
50mm
APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalも、35mm同様にコンパクトかつ、しっかりと幅がとられたピントリングが特徴的です。撮影時は縦位置グリップを装着した状態(何度もお伝えしていることですが、Z 7II/Z 6IIでポートレート撮影をしている人は絶対に導入したほうがいいです。使い勝手が変わってきますよ)で試用していきました。
Eマウント版の最短撮影距離は0.45mです。VMマウント版が0.7mであることを考えると、あと1歩が実現できるイメージ。このカットでは左目中央にフォーカス。フォーカシング時の「ピントのあった感」はハンパない感覚で、“マニュアルフォーカスはピントが合わないから嫌だ”と今まで言っていた人をも唸らせるだろうほどの、ピントの山の見え方だと思います。マニュアルフォーカスならではの回転角度を最大限に使った、距離ピッチの幅は、ピント合わせに不慣れであっても、それをサポートしてくれる懐の深い設計になっていることが実感されます。ポートレート撮影の肝である「目にピント」も恐れることなく挑めると思います。
外観を見ただけだとバランスが悪く見えるかもしれませんが、鏡筒の過不足のない太さは、むしろハンドリングが良く、重心バランスも良好。レンズに手を添えるだけで、かなりの安定感が得られます。
シャキッとしたピント面や線の細さなど、解像感も素晴らしく、かといってカリカリ感はなく肌の質感もうまく表現できています。僕が考えるいいレンズの共通項とは、被写体の「湿り気」をうまく表現出来る事にあると思っています。この考え方は、もちろん主観的な要素が大きいのですが、このカットで言えば肌のモチモチ感や丸みの柔らかさがポイント。わかるでしょうか。ハイライト部も痩せて飛んでしまうことなく、白の中の白が表現できています。
ちなみに本レンズではF2、F2.8、F5.6の3つの絞り値のときに絞りの形状が真円になります。ポートレートであればF5.6まであれば充分でしょう。逆光をものともしないコントラスト描写に目がいきがちですが、髪の毛のエッジに色つきが見られないことや、立体感も確認してもらえたらと思います。これが絞り開放で得られるのであれば、もはや開放だけでも良いのではないかと思ってしまうほど、その描写は上質です。とは言いつつも等倍で見ればそこは50mmの絞り開放なりの浅めな被写界深度ですから、どこまでフォーカスを合わせて見せるのか、ボケの形状を考慮しながら絞り値を決めるのが肝心です。
肌色の乗りも良く、スナップポートレートなどでも威力を発揮してくれそうです。ここでは反射のピークをモデルと重ねていますが、この反射のピークを画面に入れ込むことでコントラスト低下を抑えながらも、フレアを出すことができるので、幻想的なイメージに仕上げることもできます。
ピークを顔などの白っぽいところと重ねてしまうと、状況によっては顔が削られて見える場合もありますので、輪郭を確認しながらハイライトの位置を決めてみてください。素敵な仕上がりが期待できます。
他のカットでは絞り開放でもほとんど気にならなかった周辺減光ですが、さすがに単色の空などでは落ちこみが少し見てとれます。ただ、一段分の絞るだけで大きく改善していることが分かると思います。均一な仕上がりを狙うのでなければ、あえてこの周辺減光を活かして中心部へと視線を誘導するスポット効果として活用するのもアリ。どちらも絞りの形状が真円になりますから、まさに設計者の思うツボな使い分けということになるのでしょうか。それが可能になっているのも、高度な描写バランスがあってこそ。四隅の色が若干濃く出ている方が画面が引き締まりますから、対象物をより強める効果もあります。
65mm
MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Asphericalは、ハーフマクロ撮影ができる1本です。65mmというとかなり特殊な焦点距離ですが、50mmより寄れてボケも大きく、85mmほど拡大されない「余裕」を感じる画角が新鮮。
実はマニュアルフォーカス初心者の練習用レンズとしても向いている気がしました。その理由は50mm以上にピント面の動きが大きいので、「今どのあたりにピントが来ているか」が把握しやすく、またフォーカス位置に応じたボケ量の変化も探りやすいという点、85mmほどシビアなピント合わせが求められないので、失敗も少ないというのが理由です。
最短撮影距離は0.31m。レンズの全長は91.3mmですから、その数値以上に寄れる印象。引きからマクロ的な寄りまで自由自在にピント面を調整できる点も魅力です。マウント側が太めで、先端側に向けてゆるやかに先窄まりとなるデザインですが、フォーカスリングが大きくなる分、わずかに抵抗はあるものの動作は滑らか。
背景のボケは中望遠的な柔らかさで、ざわつくことなくピント面からのボケの繋がりも良好です。私見ですが、ピント面は35mmや50mmに比べてわずかにシャープで解像感も高い印象を受けました。しかし65mmも顔の影とハイライトなどをみればお分かりの通りバランスの良いコントラストが維持されていて、陰影の表現も自然です。
夕方で陽の角度が低くなってきた時間帯でのカット。木の影をうまく活かして光がレンズに直接入ってくることを防ぎながら、逆光によるボケの形状や髪の毛のエッジを確認してみました。濃いグリーンに重なっている光る髪の毛を見てください。どこをみても色収差が認められません。ここまで強い光が当たる場合、たとえ現代設計のレンズであっても、かなりの確率でフリンジなどの収差が発生するものですが、本レンズの描写性能もまた非常に高い次元にあることがよくわかります。
アップのカットでピントをより詳細に確認してみました。85mmよりわずかに短い分、ピント面はやや深め。みのあるピント面で、こうした傾向からもポートレートに向いていえます。解像感は先述した通り恐るべき高さでファンデーションなどメイクのムラ、瞼の質感やまつ毛、産毛までピント面ではハッキリ捉えています。さすがマクロレンズでもある65mmは緻密な描写が特徴的です。ポートレートではこの緻密な描写と50mmより大きく柔らかなボケを活かした少し引いたカットなどがおすすめです。
ちなみにポートレート撮影では、特にこのピント面の深さを知ることが上達の鍵になってきます。モデルとの距離をどれくらいとるか。パーツを見せたいのか、全体の雰囲気を見せたいのかなど、その時々で選ぶべきレンズを変えていくものですが、この距離とピント面の深さを掴んでいると、1本のレンズで表現しきることもできます。そういった意味でも
110mm
MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5は、シリーズ中で最も大柄なレンズ。等倍マクロ撮影にも対応していて、撮影倍率を上げるほどに全長が伸びる仕様。最大で6cm伸びます。
無骨な佇まいですが、そのレンズが描く世界はとても繊細。もちろんピント合わせは焦点距離なりにシビアになってきますので、急いだ撮影には向きません。ピント面は極めて浅く、画面に収めるモデルの大きさによっては多少絞った方が逆にスッキリ見やすくなる場合が多いと感じました。実戦に投入する際は、テスト撮影を行い、顔の見え方やボケ具合を確認して絞り値を設定すると、よりイメージに合った結果が得られると思います。
ポートレートの撮影としてはあまり選ばない背景ですが、芝に伏せてもらってウェストが入る位置まで引いています。さすがに110mmともなると、かなりモデルから距離をとることになりますが、かえって絞り開放でもピント面が広くなります。
ですから、フレーミングを決めたらテスト撮影でピント面を確認するようにクセづけておくことがポイント。モデルの目線を見ればお分かりの通り、僕も伏せた状態で撮影しています(チルトモニターを利用しても同じアングルはとれますが、目線は同じ位置にきたほうが自然です)。背景のボケは望遠レンズらしく、なだらかで自然なボケとなっていますが、面白いのは手前の前ボケが大きいために、ボケの繋がりが急峻になる加工をしたような見え方になっていること。これもアングルによる効果ですね。いつも同じアングルで撮るのではなく、色々なアングルからアプローチすると思わぬ見え方に出会えるかもしれません。
最近は135mmが再評価されていますが、はたしてこの110mmはどのようなシーンに向くのか、と疑問に思われるかもしれません。僕の考える使い所のポイントは、圧縮効果と深度の浅さ、そしてマクロという接近戦での強みを活かした作画の、それぞれのアプローチ。どうしても慣れるまではまるでレイヤーを重ねるように単純な背景ぼかしで使用したり、ドカンとパーツに寄ったりした使い方が多くなりがちなので、どうしてもでマンネリ感に襲われるかもしれませんが、被写界深度の浅さを活かした「繋がりを感じさせるボカシ」を意識すると使いやすくなると思います。
この作例のようにモデルの目にピントを合わせると、目→頬→肩→背景へとボケのつながりを作れますよね。こうした使い方を意識すると、ぐっと110mmの場面の幅が広がります。
パーツアップが撮りやすいのも等倍マクロならではの利点です。撮影者が感じるモデルの美しい部分を訴えたい・共有したい、というのが主な狙い所となるわけですが、僕はその中に表情を織り込みたいと考えています。
そのためには“ピントをどこに置くか”が重要。この作例では瞳の奥に感じる優しさを意識しています。そのためピントを少し奥におくり、瞳の中心からやや奥側で合わせています。
これを手前側に移すと、もっとシャープに見えたり意思の強さが感じられる絵になります。これは人それぞれなので同じ方程式を当てはめても上手くいくとは限りませんが、そのパーツを捉えるときに「どう見えるか・見せたいか」がピント位置を決めるポイントとなるということを、ぜひ覚えていっていただきたいと思います。それ次第で表現が変わってきます。
ちなみに、ここまでのアップになるとフォーカスリングの回転で合わせるよりも撮影者のほうで身体を前後に動かすことで微調整したほうが、微妙な加減はしやすくなります。
Eマウント版とVMマウント版に違いはある?
35mmと50mmはEマントとVMマウントの2種類があるわけですが、気になるのが、両者のどちらを選ぶか、ということ。Mマウントは今やマウントアダプターを介することで数多くのカメラに装着できるようになりました。Eマウントはそもそもがミラーレスカメラ用としてのマウントですから、マウントアダプターを介して使用できるカメラはZマウントだけとなっています。今回はZマウントでEマウント用の4レンズがどのように使えるのかを見ていくことが趣旨ということもあり、ZマウントはZ 7IIをメインに使ってきたわけですが、同じシチュエーションをライカM10で撮影すると、どのような表現になるのかという視点で両者のキャラクターの違いに注目しながらチェックしてみました。
ここでは、メインカメラとしているZ 7IIを基準に露出を決定し、ライカも同じ露出設定にして撮影する、という方法をとっています。
まずは、以下の2カットを見てください。ここまで大きく露出差が出たことに驚かされました。同じ状況なので、言うまでもなく光量は同じにもかかわらず、です。何度も確認しているので間違いはないと思うのですが、そのくらい大きな違いとなって表れています。M10の画像をZ 7IIと同等の露出まであげて細部を確認してみましたが、僕の目にはボケについては僅かにVMマウントで撮影したものの方が柔らかく感じられた。
ハイライトはZ 7IIが割とサッパリ目で暗部の粘りがあります。この絵づくりの特徴は定評のとおりで、僕の認識とも一致する結果になりました。対して、M10の方はハイライトもしっかりと拾っていて、暗部もより締まった仕上がりになっています。
ハイライトにあたる肌のトーンに大きな違いが見られました。Z 7IIは見たままの印象に近く、M10はハイライトを抑えつつも、更に肌の質感を拾っているような印象があります。これはどちらが良い悪いという話ではなく、機種ごとの方向性の違いと捉えるべきでしょう。仕事ではきっとZ 7IIの絵作りの方が僕には合っていると感じていますから、こちらを選択することになると思います。が、撮影から現像、プリントまで、しっかりと時間をかけて仕上げられる個人作品では改めて試してみたいと思わせられました。それくらいの面白さや可能性を感じています。
まとめ
今回はAPO-LANTHARシリーズ4本がポートレート撮影でどのような世界を見せてくれるのか、という趣旨のもと、Zマウントの特性をいかしてEマウント用レンズがどのように使えるのか、という点からアプローチしてみました。
Zマウントは現状の35mm判ミラーレスカメラの中で最もフランジバックが短く、マウント径が大きいという特徴があります。その特徴から、EマウントをZマウントに装着可能とするマウントアダプターがかなり早い時期から登場していましたが、今回実際に試してみて、本当に見える世界が広がると実感されました。「レンズ沼」と言う言葉がありますが、まさに沼にハマって溺れそうです(笑)。
メインカメラのZシリーズこだわりのファインダーが見えの良さ・快適さにつながるなど、カメラ側がサポートしてくれた側面も大きかったと思いますが、一方で質の高いマウントアダプターを使う必要もあると感じました。特に電子接点を持つアダプターを使うと絞りなどの設定値もExifに記録されますから、後のデータ整理でも有利なのは間違いないです。
65mmと110mmは少し特殊な焦点距離のレンズではありますが、筆者が考えるポートレート撮影で必要な焦点距離の中で、こんな個性的な2本が揃っているというのは実に嬉しいポイントでした。ここ最近のあちこちの記事で筆者の50mm好きをご存知の読者も多いとは思いますが、改めてAPO-LANTER 50mm F2 Asphericalは欲しいものリストに加えたいと思わされました。
やはりコンパクトであることや色ノリが良いこと、収差を不安視した光選びなどが不要になるほどの収差を排した設計など、シーンを選ばない使い勝手からくるメリットはとても大きいです。他の3本も同様。ポートレートで最も使いやすい画角帯が揃っていることと、マニュアルフォーカスであることがデメリットにならないくらい、幅広くとられた回転角が使いやすさに直結しています。
110mmのパーツアップでもお伝えしたことですが、ピント位置の微妙な違いで表情が変わってきます。そうした変化を自らレンズを操る中で探る楽しさもマニュアルフォーカスレンズならではの楽しさ。ただし基本は「カメラに近い方の目にピントを合わせる」ことはお忘れなく。
モデル:田口珠李