私はこれを買いました!

ハイパーラプス雲台と赤道儀、2つの機能をひとつに

ケンコー スカイメモS(茂手木秀行)

ケンコーのスカイメモシリーズは、1973年発売のスカイメモPからスタートした天文ファンには長らく定番のポータブル赤道儀だ。現行機種のスカイメモSも含め、昨今の星空雲台とは精度と強度で一線を画するものだ。

写真のように、D850と24-70ズームを搭載しても余裕のある大きさ。しかしながら、高感度性能が格段に良くなった最新のデジタルカメラでは、星空も数秒の露光で済んでしまうので、ポータブル赤道儀の意義は薄い。天の川や星雲などの淡いディテールを写したいときは低感度で長時間露光が必要なので、赤道儀は必須の機材といえる。この点、僕は他にも多くの赤道儀を持っているので、スカイメモSは必須ではない。それなのに、なぜ購入に至ったか?

それはスカイメモSをハイパーラプス雲台として使いたいからだ。ハイパーラプス作品はカメラを動かしながら、タイムラプス撮影をすることで得られるが、その最重要なのは、回転速度を選べること。スカイメモSでは7つの回転速度をダイヤルで選ぶことができる。ハイパーラプス作品で実質使える速度は5種類だが、日中風景のハイパーラプスも含め、必要十分なものだ。

右側面のダイヤルで、回転速度を変更する。赤い照明付きで、夜間も確実に確認できる。

実は、他にもハイパーラプス雲台をいくつか持っているのだが、それはより高機能で設置と設定に時間がかかる。そして赤道儀としての機能はない。ポイントとなったのはここだ。スカイメモSならハイパーラプス雲台と赤道儀を一つにまとめることができて、設置から撮影開始まで、普通に三脚にカメラを載せるのと大差ないシンプルさであることだ。つまり、機材を減らす工夫なのである。

先日も、マイナス20度の雪山でハイパーラプス撮影をする機会があった。まず、雪山に持っていける大きさ、重さであること。そして、悪環境で判断力が鈍るなかでも、確実な成果を得ることができること。購入動機として思い描いたことをしっかりと実現することができた。

ちなみに電源は単3電池4本のほか、USB給電が可能だ。寒冷地では、単3型リチウム電池、もしくはモバイルバッテリーで駆動するといい。条件が悪くなればなるほど、活躍してくれる頼もしい機材である。

プロフィール & 近況

すでにCP+の準備が始まっており、この年末年始も星景写真を撮りに行こうと思っている。CP+ではニコンブースに登壇予定だが、星空に限らず様々な作品をお目にかけるつもりだ。

茂手木秀行

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。