特別企画
行楽シーズン到来!遊ぶ子供を撮るテクニックを紹介
デジカメで親子の思い出をしっかり残す
2018年5月14日 12:00
いよいよ夏に向かう行楽シーズンの到来だ。家族とともにアウトドアに出かける機会が増えることだろう。家族の行楽に夏冬は関係のないものだが、やはり家族の思い出は熱い日差しの中にあると感じる方も多いのではないだろうか。
ともあれ家族の記念写真は、写真を趣味としていても揃ってにっこりぱっちりになってしまいがちだ。それは必要な写真なのだが、そればかりではなく、もっと子供たちの自然な表情や何気ない1コマを残そう。そのためのヒントとテクニックを紹介しよう。
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リモコンを用意しておこう 〜家族全員で写る
まずは家族揃っての記念写真。「写真趣味あるある」なのは、家族揃っての記念写真なのに、いつもお父さんが居ないパターンだ。
周りの人にシャッターを頼む手もあるが、見知らぬ他人では子供の表情は硬くなりがち。そこで小さな三脚とリモコンを持って行ってみよう。掛け声をかけて皆で動作をすればゲーム感覚で楽しめるはずだ。
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三脚はカバンに入るような小さなもので十分。
構図を決めたらみんなでジャンプ。
カメラとリモコンの準備が整ったら、家族揃ってジャンプしてみよう。「ジャンプ」は笑顔を引き出す秘伝のテクニックだ。何十人といるような記念写真でも、ジャンプすると皆が笑顔になり、また笑顔のタイミングも揃うのだ。
アングルを工夫しよう 〜表情を捉える
どんな写真でもアングルを工夫することが大事なことだが、なぜアングルを工夫するのか目的を意識してみよう。
子供の写真ではその目的は単純明快、子供の表情を見せるためだ。見せたいものを見せるためにカメラの位置取りをすることがアングルの工夫なのだ。これを意識したらあとは足腰勝負で頑張ろう!
顔がわかるように正面に回ろう
子供たちが何かに興味を引かれた時は撮影チャンスだ。つい、脊髄反射的に後ろ姿を追いかけてしまうが、目的は子供の表情。テクニックは簡単だ。子供達が興味を持ったものを画面の端に捉えつつ、子供たちの前に回れば良い。ここは足で稼ぐのだ。
そしてもうひとつ、考えてみて欲しい。子供達が興味を持ちそうなものを先に見つけて、自分が動けばよりしっかりと表情を狙える。つまり状況判断だ。実はこちらの方が大事なテクニックなのだ。
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森の中には子供の興味を引くものがたくさん……。
目的は子供を撮ること。人形の顔は写らなくて良いのだ。
しゃがんで子供の目線にあわせよう
しゃがんで、子供の目の高さにカメラを合わせると、何かに真剣になっている表情と夢中になっているもの双方を捉えやすい。
また、空が多く入るので、画面を整理しやすく、子供の表情に目が行きやすい写真になるのだ。広角気味のレンズの場合、レンズの歪みがあるので見上げるようにならないよう注意しよう。顔が下ぶくれ気味に写ってしまう。
そしてもうひとつ。目線を合わせるときは背を丸めるのではなく、膝を折って腰を落とそう。真面目に腰痛予防になるし、しゃがんだままでも動きやすい。
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何かを手にすれば、自然と顔は下を向く。そんな時、表情は真剣だ。
子供の真剣な表情は愛らしい。笑顔だけが良い表情とは限らない。
時には下から見上げてみよう
しゃがむ場合と似ているが、下から見上げるときには広角レンズの歪みを避けるためにズームを望遠気味にしよう。すると画角が狭くなるので、より背景を整理しやすくなる。
木立が直線的な場合、直線が子供と重なって煩雑な印象になる。作例では日除けの茅を背景にした。これにより、背景が整理され、かつ暗くなったので子供達が浮き出る。ローアングルは動きを出すためにも使うが、背景の整理にも使えるのだ。
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子供の目線では、子供たちが見ている世界を知ることができる。
見上げる目線では、表情を捉えるとともに背景の自由度が増す。
構図を工夫しよう 〜状況を見せる
家族で遊びに行くなら、多くの場合標準ズームレンズを持って行くことだろう。ここでは焦点距離の効果と構図について考えてみよう。
構図についてはシンプルに子供達を画面のどこに配置するかで考えればいい。目的は状況を見せることだ。状況とは特定の場所やものだけではなく、意味合いであると考えよう。
どのような場所であったか、あるいはどのような光であったか、そのような意味合いだ。だからこそ、広角で背景を広く取り込むもよし、望遠で背景を整理するもよし、となる。
写真1枚で見るとそれらは相反することのように思えるが、どこかに出かければ複数の写真があり、それら複数の写真で出かけた場所全体の雰囲気を捉えられれば良いのだ
子供を中央から外してみる
子供達を狙っていると子供を中心にした写真が多くなる。それは悪いことではないが、少し広角気味で子供達を右下、もしくは左下に配置してみよう。すると背景の分量が大きくなり、どのような場所かわかりやすくなる。作例では、大きく森を取り入れたので、森の広さ、心地よさが伝わる写真になった。
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大きな岩の上は見晴らしが良く、子供達も大喜び。
森を大きく入れ、森の心地よさを取り入れた。
広角レンズで周囲を入れる
ズームレンズで人物を撮っていると、だんだんと望遠での写真ばかりになってしまいがちだ。気持ちの良い場所を見つけたら、一番広角にして全体を入れてみよう。居心地の良い場所には理由がある。その理由を取り込むのだと考えよう。
作例では、森の中に大きく開けた空間でありながら、天を樹々が覆うため木陰が落ちる様子を大切にした。日差しと広さから、この日の涼やかな風を思い出せる写真になる。
広角で全体を入れる際は、構図が決まったところから、一歩前に出よう。背景はあまり変わらず、人物が大きくなってバランスが良くなるはずだ。
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心地よい場所であることがわかるが、何があるかはわからない。
広い画角で場所がわかる写真も撮っておこう。
ピントの合う範囲を調整しよう 〜背景の強さを加減する
あるところにピントをあわせたとき、絞りを開けるとピントの合う範囲は狭くなり背景はぼけ、絞りを絞るとピントの合う範囲が広くなって背景も細かく描写される。これはよく知られたレンズテクニックだが、目的は背景の描写を加減し、状況の取り込み具合を加減することにある。
写真を見る時の視線はシャープに描写されたところに向いてしまうので、主要な被写体である子供達に視線を向けさせるために背景をぼかすのだ。
しかし、一方でぼかしすぎると、状況がわからなくなってしまう。だから加減なのだ。望遠レンズの方がボケやすいので、ズームレンズならまずは望遠側で試してみよう。
背景をぼかして印象的に
背景をコントロールするときは露出を絞り優先モードにすると良い。使う絞りを意図して決められるからだ。絞りを開けると作例のように背景がボケる。柔らかくボケつつ、背景が森であることがわかるような絞り値に設定しよう。
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絞りを絞ったので背景もしっかり描写され、乱雑な印象に。
絞りを開けると、背景がぼけて子供達が浮き上がる。
母親と子供の両方にピント
家族の写真では子供にばかり注力してしまいがちだ。作例のように子供にだけピントがあったアップの写真を撮ってしまいがちだ。母親にもピントを合わせるためには、まずは絞りを絞ろう。絞りを絞るとピントの合う範囲が広くなる。F8くらいから試してみよう。
次に、ピントを合わせる場所だ。手前の被写体に合わせよう。作例の場合は母親が手前で子供が奥に配置されているので、母親の奥の目にピントを合わせた。アップの場合は、カメラの仕上がりの設定を「ポートレート」などに合わせておくと肌の色合いや描写も綺麗になるのでおすすめだ。
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娘だけシャープで母はボケた。母からは文句が出るかも。
母も娘もシャープになった。家族の写真としてはこっちだ。
乗り物に乗る子供を撮ろう 〜動きと表情を捉える
乗り物に乗る子供の表情はとてもフォトジェニックだ。真剣そのものであるし、うまく乗れると素晴らしい笑顔になる。そんな一瞬を捉えるのは写真の楽しみでもあるし、高画質と連写性を両立したレンズ交換式カメラならではの特権だ。
最新機種なら中級機でも秒5コマ程度、上級機なら秒20コマと動画にも迫る勢いだ。まずは、AFモードをAF-C(コンティニュアス)モードなどにしよう。コマ数を設定できる機種なら、最も早い設定を試してみよう。
連写で瞬間を逃さない
連写の時は、AFのモードとフォーカスエリアを確認しよう。AFはAF-C、フォーカスエリアは自動でピントを合わせる位置を選ぶオート(自動選択)にする。顔認識機能を備えた機種も多いので、それも確認しよう。
あとは被写体の動きを予測しながらシャッターを切ればいい。予測とは、被写体がどの位置に来たら良い構図になるかを考えることだ。その一番良い位置の少し手前から連写を始めると良い。
連写ではたくさん撮っておいて後から選ぶことになるので、メモリーカードの容量も確認しておきたい。さらには、メモリーカードの書き込み速度も重要だ。連写速度が早くても、書き込み速度が遅くてはその速度を生かし切れないし、連続してシャッターを切れる枚数が減ってしまうこともある。
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母も娘もうまく乗れるようになってきたので、真剣ながらも笑顔がこぼれ始めた。動きの中で表情を捉えるには連写がいい。
流し撮りでかっこよく
AFモードをAF-Cにしたら、流し撮りにも挑戦してみよう。流し撮りは主要被写体はシャープに止めて写し、背景はブレて写るようにするテクニックだ。動きの表現とともに背景の整理でもある。また、人間の目で見えているものとは違った効果であるので、かっこよく感じるのだ。
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早いシャッター速度では解像感の高い描写だがスピード感はない。
流し撮りでは背景がブレてスピード感がしっかりと出る。
流し撮りはシャッター速度を遅くして、動く被写体を追ってカメラを動かしながらシャッターを切るのが基本だ。カメラを被写体に合わせて動かすことに集中するために、以下のようにカメラを設定しよう。
ドライブモードは連写、AFはAF-C、AFポイント選択はオート、露出はシャッター優先モード、ISO感度オートだ。シャッター速度モードでは、シャッター速度を自分で選べるので、動きの表現に向いているのだ。まずは1/30秒前後のシャッター速度を試してみよう。これも連写して後から選ぶことになるので、上記同様メモリーカードの容量と書き込み速度に注意しよう。
家族で楽しみながら想い出を残そう!
今回紹介したテクニックは、ポートレートやウェディング、動体などで広く使える基本テクニックだ。各項でも述べたが、大切なのはテクニックそのものではなく、何を目的とするかを意識することだ。
その意味では家族写真で最も大切なことは、思い出を家族で共有すること。だから、写真を撮ることだけに専心してはいけない。家族で過ごす時間の中に、何気なくカメラを滑り込ませて欲しいと願う。
家族と出かけるとき、今日は自分の作品を撮りにきたのではない。子供達という、夫婦2人の作品を今日は鑑賞しにきたのだと意識してほしい。