私はこれを買いました!

メカニカルな凝縮感+官能的なシャッター音が写欲を刺激する

OLYMPUS PEN-F(宮澤孝周)

今年は35mm判フルサイズミラーレスカメラがキヤノンとニコンからも登場し、カメラ業界だけでなく経済紙などもにぎわせる年となりました。新しいマウントやシステムも大いに話題となりましたが、それはまた、小型かつ軽量なシステムの魅力に注目が集まったと言いかえることもできるのではないかと思います。

ところで、そうした小型・軽量性に着目したフォーマットといえば、マイクロフォーサーズ規格が想起されます。同規格が策定されたのは2008年8月5日のこと。ミラーレスの先駆けとなったシステムは今年で10周年を迎えることになります。

前置きが長くなりましたが、同システムの誕生10周年を個人的に記念して、「OLYMPUS PEN-F」を購入しました。一番大きな理由は、システムとしての拡張性の高さや持ち歩けるPhotoshopとも言える本機で、目の前の色を見てみたいと思ったためです。

もうひとつの理由は、ふだん使用しているカバンにそのまま放り込んで使いたかったから。クッションケースやポーチは高い機材保護性能が魅力ですが、入れもの自体が肥大化してしまって、取材時に邪魔になったりしていたのです。

これまでは、フルサイズ一眼レフカメラやフルサイズミラーレス機を無理やり入れていたのですが、どちらも、それなりのレンズを使うと、たとえ単焦点でも、それなりの大きさになってしまいます。これだと、さっと取りだしてスナップ撮影をする、というようなスピード感に欠けるところがひっかかっていました。

フルサイズミラーレスもボディ自体は軽量・コンパクト化していていいのですが、そのセンサー性能をフルに発揮するには、やはりそれなりのレンズが必要ですし、そうしたレンズは価格的にも、あまりラフに扱う気にはなれないもの。

そうした視点に立って、あらためて考えてみると、マイクロフォーサーズはシステムとして成熟しており、レンズラインナップも豊富。それに、レンズ自体も価格的に優しくて描写能力も高い、といいことずくめ。機材としてのトータルパフォーマンスの高さに改めて思いあたりました。

実際の使用感といえば、弊サイトでもすでに多くのレビューやイベントレポートがあがっているとおり、オリンパスのこだわりがぐっと凝縮されていることが実感されました。その一方で、できることの幅がとても広いため、未だに楽しい試行錯誤が続いています。

そして、いちばん気に入っているのが、シャッター音のキレ。同社のマイクロフォーサーズ機に限って言えば、既存のどのモデルにもない金属質の音に仕上がっています。その音はPENTAXのK-1 Mark IIのような、しっかりした動作を感じさせるものに仕上がっています。その「シャキン」という小気味いい音は、手はもちろん耳にも心地良い、実に官能的な魅力に結実していると感じています。

ダイヤル類が多い機種ではありますが、絞り込みボタンに拡大表示を、Fn1にピーキングをセットしたところ、驚くほどMF操作がしやすくなりました。クリエイティブダイヤルに注目が集まりがちですが、細かな操作性の面でもちょうどよい位置にボタンが配置されているなど、直感的な操作ができるようになっています。

あとは深度合成が実装されて、クリエイティブダイヤルがプログラマブルになれば言うことなしなのですが……。

果たして、孤高のマスターピースとなるのか。2019年に100周年を迎えるオリンパス、どんなサプライズを用意してくれているのか、そしてマイクロフォーサーズシステムの未来をどのように描き出していこうとしているのか、今からとても楽しみです。

作例

早朝の神田川を河川清掃船が下っていきました。神田川は昔は染物ができるほどにきれいな川だったといいます。使用したレンズはLマウント版のスーパーワイドヘリアー15mm。35mm判換算では30mmとなります。初代のものですが、絞り開放でもマイクロフォーサーズなら周辺光量落ちは見られません。

OLYMPUS PEN-F / フォクトレンダー スーパーワイドヘリアー15mm F4.5アスフェリカル / 1/250秒 / F4.5 / ±0EV / ISO 200 / 絞り優先AE

プロフィール & 近況報告

この8月に当誌へやってきました。と思った矢先にニコンがZシリーズを発表。キヤノンからもEOS Rが発表され、毎日がお祭りのような慌ただしさでした。来年はより一層読者の皆さんに喜んでいただける記事をお届けしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

本誌:宮澤孝周