イベントレポート
「第2回PEN-Fオーナーズミーティング」レポート
カメラへの愛が止まらない! 自慢のカメラを持ち寄るファンイベントに潜入
2017年9月7日 13:55
オリンパス株式会社は8月26日(土)、「第2回PEN-Fオーナーズミーティング」を開催した。ミラーレスカメラ「PEN-F」のユーザーが集まり、愛機や写真プリントを持ち寄って、思い入れを語る趣旨のイベント。
会場は新宿にあるオリンパスプラザ東京のイベントスペース。当日はゲストとして写真家の大村祐里子さんと、コムロミホさんが参加した。
イベントではPEN-Fに関して話すお題をいくつか用意しており、参加者はそれぞれくじ引きで引いたお題について順番に話していく方式。参加者が持ち寄ったプリントを囲む形で順に話していく。
コムロさんが持参した愛機。黒檀製のグリップを取り付けてカスタマイズしている。
参加者がPEN-Fで撮影したプリント。1人1枚の持ち込みが必須。
オーナー同士の交流も盛んに行なわれていた。
PEN-Fは「こわいカメラ」
イベントの冒頭では、PEN-Fをテーマとした大村さんとコムロさんによる対談も実施された。
コムロ:PEN-Fは見た目もかっこいいし、ストラップやボディケースで独自のカスタマイズをされてる方も多いですが、今回のイベントの打ち合わせで、大村さんはPEN-Fを「原点に戻れるカメラだ」評していましたよね。どのあたりからそういう風に感じられたのでしょうか。
大村:自由にやっていい、とカメラに言われている気がするんです。仕事の話になってしまうのですが、街にスナップに行くにしても、どうしても仕事のことが脳裏によぎって、「これはどこかで使えるな」なんて思ってしまって(笑)。例えばホワイトバランスを青に寄せると、爽やかな表現ができる、といった趣旨の記事に使えるかも!なんて考えてしまうんですよね。これはある意味職業病で、自由にやっていいのに、自由ではなく、作品ではなく、作例を撮ってしまっている。PEN-Fを使っているときは、そういうのを全部無視して、純粋に、好きなものを撮るという気持ちで使える。個人的に、ほかにない魅力のあるカメラです。
コムロ:PEN-Fにも色々な機能がありますが、中でも「カラープロファイルコントロール」は独自性の高い機能だと思うんですよね。今回は会場でもカラープロファイルコントロールをお使いの方が多いようです。街を歩いていて最初に目に入るのって色だと思うのですが、この機能では個別の色の鮮やかさを変えたりできるので、街スナップをしていて楽しいです。自分で設定を細かく調整するので、撮っている感があるところが面白いところだと思うんですよ。
大村:私は初めてPEN-Fを使ったとき、「このカメラ、こわいな!」って思ったんです。例えば今「ヴィンテージ」とか自分のジーンズなんかを撮ってみても、それっぽく、かっこよく撮れてしまう。「これは私の力ではない。負けてはならん!」と思って、逆に頑張る気になりました。
司会:お二人にお伺いしたいのですが、PEN-Fを使っていて楽しいところは、どんなところなのですか?
大村:私もコムロさんも元々クラシックカメラが大好きなので、やっぱり外観のデザインは使っていて楽しい部分です。私は特に(ボディ上部の)ダイヤルが好きで、モニターを見ながら設定するよりも、ダイヤルを回して設定したい派なんですよ。
コムロ:直感的に操作できるのがいいですよね。私はスナップ撮影をするときに絞り優先モードを使っているのですが、絞り優先だとリアとフロントのダイヤルが、両方絞りの変更になってしまって、もったいないので、片方のダイヤルに露出補正を割り当てて使っています。スナップはとっさの操作がありますから、ファインダーを覗きながら直感的に明るさを変えられるのはすごく便利です。
ファンクションボタンのたぐいもたくさんあって、カスタマイズ性も高いので、自分なりの設定を組み上げる楽しさがあるカメラだと思います。
あなたのPEN-F、好きなところは、どんなところ?
オーナーズミーティングで用意された話題は、自身のPEN-Fにまつわるエピソードや想いを引き出す方向性のものが多かった。参加者の話をきっかけに、そこから派生して、大村さんとコムロさんのトークに繋がることもあった。以下は今回用意されたお題と、参加者による回答の一部。大村さんとコムロさんのコメントも抜粋して掲載している。
お気に入りのレンズは何ですか?
「一番使うのはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8です。軽くてさっと撮れるのが良いですね。最近はこれをずっとPEN-Fに着けています」
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROが好きです。シンプルによく写るので、最初に買いました」
「アダプター経由でオールドレンズを使うのにはまっています。普段は小さくて軽い、古いシネマレンズを使っています」
大村:オールドレンズにしかできないことってあるんですよね。変な言い方になってしまいますが、例えば、盛大にフレアが入ってほしかったり、独特の描写がほしいときに、優れたコーティングはむしろ不要で、それって現代のレンズではなかなか目指しにくい方向性ですよね。個人的には、カビててほしいとかも思います(笑)。
「私もオールドレンズなのですが、コンタックスの『Planar T* 50mm F1.4』とPEN-Fの組み合わせが気に入っていて、ほぼつけっぱなしにしています。元々、コンタックスのフィルムカメラを20年くらい使っていたのですが、それが壊れてしまって。それでも、どうしてもこのレンズを使いたかったので、これまでにもアダプター経由でいくつかのカメラに着けて使ってきました。そういった流れがあって、今はPEN-Fに着いています」
コムロ:外観のデザインとしてもクラシカルな雰囲気があるので、オールドレンズを着けても違和感がないですよね。PEN-Fは「レンズ情報登録」でEXIF情報を入れられるので、愛着のあるオールドレンズのメタデータも残せますし。
「私も何本か登録しているのですが、時々切り替え忘れて、違うレンズのメタデータが入ってしまうことはあります(笑)」
「普段は子どもの写真を撮っているのですが、M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8を気に入って使っています。実際に使ってみると、すごくよく写るレンズだな、と感心しました。もうずっとつけっぱなしです」
大村:私も、ポートレートを撮るならこれ、と勧められました。
コムロ:ボケ感が滑らかで、ピント面はシャープですし、お高いだけのことはあるレンズですよね。35mm判換算で150mm相当で長めのように感じますが、使ってみると意外にポートレートにも合うし、より遠くを見るように目線が変わります。私もお気に入りです。
お気に入りの機能はありますか?
「カラープロファイルコントロールと、モノクロプロファイルコントロールをよく使います。リアルタイムに一部の色の鮮やかさを変えられる機能はPEN-Fにしかないので、便利に使っています。もちろん、RAWで撮っておいて、後から編集することもできるのですが、その場の雰囲気を大切にして色を決めたいと思っているので、重宝しています」
PEN-Fユーザーになって変わったことはなんですか?
「以前よりもモノクロの写真を撮ることに積極的になりました。アートフィルターの中でも『ヴィンテージ』や『パートカラー』をよく使います。今日持ってきたプリントも、ラフモノクロームの写真です」
「長いことモノクロのモードを触らずにきたのですが、PEN-Fを使い始めたのをきっかけにモノクロームを使うようになりました。ずっとモノクロームに設定した状態でファインダー越しに見た街は、こんなに違う印象を受けるんだというのは、新しい発見でした」
コムロ:私は「パートカラー」をよく使いますよ。パートカラーの中にもI、II、IIIとあって、それぞれ色の抽出の仕方が違うんですよ。被写体に合わせて選べるようになると、結構いい感じに仕上がりますよね。
「PEN-Fは普段から持ち歩いて、街中でスナップする用途で買いました。それまではもう少し大きなフォーマットのカメラだけを使っていたので、そういう使い方はしにくかったのですが、PEN-Fを手に入れてからは、写真の撮り方そのものというか、撮影するために歩き回る範囲が拡がった感覚があります」
大村:私はこれまで、大きくて重いカメラばかり選んで使っていたこともあって、仕事をしないときにはあえてカメラを持ち歩かないようにしていたのですが、PEN-Fを使いはじめてからは、その軽さと使いやすさから、カメラを持ち歩くようになりました。なんで写真家なんかやってるんだよ、と言われてしまいそうですが(笑)、初めて、日常の風景を撮るようになったかもしれません。
「個人的な意見なのですが、PEN-Fは"モノ"としてしっかりしている、という感覚があります。実はほかのメーカーのミラーレスカメラも好きで、買って使っていたのですが、それらと比べると持って使っているときの気持ちが違うというか。上手く言葉にできないのですが、軽々しく扱ってはいけないような、ある意味の"可愛らしさ"を感じるカメラだと思っています」
あなたのPEN-Fを自慢してください!
「私はPEN-Fの外観に対して特にカスタマイズをしているわけではないのですが、銀塩時代にPENを使っていたので、PEN-Fをカタログで見かけたとき、これは買うしかないなと思って、気に入って使っています。銀塩のPENもお蔵入りしていたのですが、最近はメンテして一緒に使うようになりました」
「私はPEN-F用のカバンをレザークラフトで作ってみました。これから、カバン以外も色々作ってみたいと思っています。正直、そこまでやろう、と思ったカメラは久しぶりです。ただ、妻からは少し冷たい目で見られてしまっていますが(笑)」
大村:そうですね。これが人間なら、"いい女"に対する扱いですもんね。お洋服や家を買ってあげる、みたいな(笑)。
ポートレート撮影のコツ。女性は「好きな食べ物を聞くこと」、男性は「役割を与えること」
イベントでは、参加者が持ち寄った写真を全員で鑑賞する時間も設けられた。参加者が持ち込んだ写真については、写真家組が講評を行なう場面もあり、様々な視点から作品について話されたが、参加者が持ち込んだ女性のポートレート写真の講評では、自身の撮影業務で行なうポートレート撮影に対する考え方や、ちょっとしたコツも披露された。
コムロ:私は女性を撮るとき、どの角度から見たら一番素敵かな、と考えながら、いろんな角度で撮影をするのですが、大村さんの場合はいかがですか?
大村:カメラマンはモデルさんの表情を引き出さなければいけませんよね。そのために、よく、カメラマンはモデルさんとコミュニケーションを取ろう、という話を聞きますが、そう言われても、普通はどんな話をすればいいのかわからないと思うんですよ。私が仕事で絶対にやるようにしているのは、「好きな食べ物は何?」と訊くことです。モデルさんが若い子だったら大抵「肉!」と楽しそうに言うので、そのタイミングを狙って撮ります。
大村:人によっては「イカの塩辛」とか渋い趣味の方もいるので、そこに突っ込んでいくなどすると、コミュニケーションを取るきっかけになります。私も仕事ではまったく面識のない初対面のモデルさんを撮ることが多いのですが、やっぱり共通の話題もそうそうないですから、どうしたらいいんだろう?と苦悩した結果、「好きな食べ物の話から広げていく」やりかたを編み出しました。今では「あ、この人はきっと『肉』って言うだろうな」というところまで極まりました。7割くらいは「焼肉」って言います。残りの3割はそれぞれ好きなものを言う感じです。
コムロ:男性モデルの場合は、どうしていますか?
大村:男性の場合は、食べ物の話とかよりは、"役割"を設定するとうまくいくことが多いですね。例えば「好きな人を求めて歩いている」、「休憩している」といった風に、こういうシーンが見たいので、こうしてください、と指示するようにしています。
コムロ:私は女性に役割を指示することがあります。ポートレート写真に写る表情は笑顔がすべてではないので、例えば「恋しているような表情」とか、「ふと遠くを見つめてたそがれているような表情」とか。笑顔ではない、感情の機微を表現したいときに、いろんな言い方を考えています。目線の方向を指示することもありますね。
大村:もっと言うと、役者さんとモデルさんの撮り方も違っていて、例えば「ただ立っている」絵が撮りたい場合でも、役者さんの場合は100%役割を与えないといけないのですが、モデルさんの場合は「ただ立っているだけで絵になる」ように自ら演出してくれる。そういう違いがあります。