イベントレポート

「プリントを1,000倍楽しむ!with Canon PIXUS PROシリーズ セミナー・体験会」レポート

見やすいフォトブックは正方形!? 写真セレクトのノウハウも披露

5月27日、神保町にあるインプレスセミナールームにて「プリントを1,000倍楽しむ! with Canon PIXUS XKシリーズ セミナー・体験会」が開催された。

講師を務めたのは写真家の米屋こうじさん。生活感のある鉄道風景のなかに人と鉄道の結びつきを求め、日本と世界で旅をつづける米屋さんの精力的な作家活動はよく知られたもの。

昨年、東京、大阪、名古屋のキヤノンギャラリーで開催された写真展「Hello Goodbye」や、近著である「ひとたび てつたび」、写真集の「I LOVE TRAIN-アジア・レイル・ライフ」などを通して、作品をご覧になった方も多いことと思う。

米屋こうじさん

1人1台のPIXUS PRO-100Sが用意される

用意されたプリンターは、キヤノンの「PIXUS PRO-100S」。8色染料インクのプロフェッショナル向けプリンターだ。1人の参加者につき1台が準備された。

PIXUS PRO-100Sは高画質であると同時に、プリントスピードが速く、「プリント待ち」によって貴重な時間を無駄にしてしまうこともない。

いつものように、交換インクやプリント用紙も十分に用意されていた。

PCはマイクロソフトのノートPCである「Surface Book」が用意されていた。

米屋さんに訊くプリントの大切さ

セミナー・体験会は、まず、写真をプリントすることの意味や大切さを、米屋さんご自身の体験から話してもらうことから始まった。

「写真のプリントは、面倒だったりお金がかかったりと、悪い面も確かにあります。でも、写真をプリントすれば、多くの人にしっかり写真を見てもらえたり、並べて見比べることで自分の作品の方向性が見えてきたりするなど、スマートフォンで画像を流して見るのとは全く違う、良いところがたくさんあります」と米屋さん。

実際に、米屋さんは撮影した作品は必ずプリントアウトして、ある程度作品が貯まると並び方を考えながら糊やテープを使って簡易的なフォトブックを作ることが好きなのだそう。

今回も「I LOVE TRAIN」と題されたお手製のフォトブックを披露してくれたが、これを見た某編集者と話が進み、後に写真集「I LOVE TRAIN-アジア・レイル・ライフ」の出版へと繋がったのだという。

また、「はるたび」と題したフォトブックをもとにして、写真展を開催することが決まったという。

さまざまな人にプリントを見てもらうことで、それがまた次のアクションに繋がっていくという、プリントすることの大切さがよく分かる話だった。

また、作品を掲載する誌面の構成や、写真展の構成を考える上でもプリントはとても役だってくれると言う。

「例えば、掲載誌にどんな大きさでどんな感じで並べるか、プリントがあれば実際に誌面を想定しながら並べ替えることができます。これをPCでやろうとすると感覚がつかみにくくて非常に難しい」。確かにプリントなら手で並べかえて、全体を目で見ることができるので実感が得やすいというものである。

内容盛りだくさんなプリント体験会

さて、ここまでの米屋さんのお話が進んだところで、「プリントしたらそれで終わりではない、という衝撃の事実をお分かりいただけたかと思います」と米屋さん。プリントは人に見てもらうためにするものなので、人に見てもらうに相応しい体裁を整える必要があるということだ。

米屋さんが写真学校(東京工芸大学短期大学部)に進学し、初めて先生に写真を見てもらうことになったときに学んだのが、フォトブック(この場合はポートフォリオ)に横と縦の写真が並ぶ場合、見る人がブックを回転させなければいけないような作り方は失礼ということだった。

そこで米屋さんが考え出したのが、正方形のプリント用紙(印画紙)に余白を作りながらプリントするという方法。これならブックを動かさずにページをめくることができる。

という訳で、この日の体験会で参加者の方々が行う作業は、プリントする用紙選び→インデックスプリントから写真をセレクトする→本番プリント→フォトブックの作成、だということが分かった。

つまりは人に見てもらうためのフォトブック製作が最終目的であり、限られた時間の中に実に多くの内容が盛り込まれているという訳である。

まずは米屋さんの作品を3種類の用紙でプリント

まず、最初に行う作業は紙質の異なる3種類のキヤノン純正用紙、「光沢 プロ [プラチナグレード]」、「微粒面光沢 ラスター」、「プレミアムマット」を使ってA4サイズにプリントすることである。

ここでプリントするデータは参加者個人のものではなく、米屋さんが事前に準備したもの。米屋さんの作品データ(6種類)は、参加者それぞれのPCに事前にインストールされている状態で、その中から気に入った1枚を3種類の用紙にプリントしてもらおうという趣向だ。

ちなみにこの日、画像の閲覧や(PC上での)セレクトに使うソフトウェアは「Digital Photo Professional 4」、プリントのために使うソフトウェアは「Print Studio Pro」だった。共にキヤノンの純正ソフトなので、作業を連携させることができ使いやすそうだった。Print Studio Proは、余白の大きさやプリント位置などをプレビュー画面で確認しながら設定できるのが便利。

プロの写真家の作品を、自身の手でプリントするという体験ができるとともに、ここで「用紙が変わると写真が変わる、設定や給紙方法も異なる」ことを学ぶことができる。

ここでプリントしたサンプルをもとに、本番プリントで自分が使う用紙を決めなければならないため、参加者の方は皆、真剣に出力したプリントを見比べていた。

自身の作品をインデックスプリント

本番プリントで使う用紙を何にするか決めたところで、今度はインデックスプリントである。

参加者の方々には、事前に20~30枚程度の画像テータを用意してもらっており、それらすべてを見比べやすいサイズでインデックスプリントした。

そして、ここからが、参加者のほとんどの方が体験したことのない作業。プリントアウトしたインデックスプリントをハサミで分離するという作業である。

ちょっとドキドキする作業ではあるが、これによって、写真を並べたり比べたり入れ換えたりしながら、フォトブックを作るための10枚の作品を選ぶことができるのである。

10枚の写真をセレクトする、選んだ10枚の並び順を決めるという作業は、思いのほか難しかったようで、多くの人が米屋さんのアドバイスを聞きながら決めていた。

フォトブックを作る

用紙を選び、10枚の写真を決めたところで、いよいよ本番プリントといきたいところであるが、今回は正方形の用紙に縦位置の写真と横位置の写真を、均等に揃えてプリントするのがお題である。

フォトブックの台紙はすでに正方形の用紙が差し込める既製品が用意されているのであるが(米屋さん推奨)、さすがに用紙の大きさやプリントサイズ、プリントの位置などを測って、完成状態を決定するには時間がない。

そのため、あらかじめ主催者サイドで出力設定を決めておき、参加者の方々にはそれに従ってプリントを進めてもらったのであった。

詳細な設定を乗り越え、ようやくたどり着いた本番プリント。Print Studio Proのプレビュー画面のまま出力された。

が、「プリントして終了ではない!」である。台紙のサイズに合うように、用紙が正方形になるように用紙の不要部分をカットする必要がある。こうした作業は別に特別なことではなく、暗室で焼いた写真などでも必要に応じて行っていた、いわば作品制作における作業なのだ。とは言え、初めてだと緊張するのも当然だ。

プリントおよび不要部分のカットが終われば、あとは用意された台紙に作品を差し込んで、フォトブックの完成。プリントはプリント自体よりも「どのように見せるか」を決める方が難しいことがよく分かった。

完成したフォトブックをみんなで見せっこ

参加者の方々それぞれのフォトブックが完成した後は、みんなで作品を見せ合い、米屋さんからの講評をもらう時間が設けられた。

写真は人に見てもらうことで上達する。そのためには写真をプリントする必要がある。プリントした作品は、見てもらう人のために最適な状態でなければならない。

限られた時間でのフォトブック制作は大変なことだったと思うが、誰もが米屋さんの教えてくれたプリントの大切さを十分に体験できたのではないかというのが今回の印象だった。

参加者の声

太田達哉さん

旅行にいって写真を撮るのが好きです。でも、スマホで写真を見せようとすると、探したりするのが大変ですし、もっとちゃんと見てもらいたいと思っていましたけど、意外にプリントを学ぶ機会は少ないので今回ぜひということで参加しました。

キヤノンのPIXUS XK50をもっていて、それもすごくいいプリンターなのですけど、やっぱりプロ用のPRO-100Sは色の出方が良い意味で違って驚きました。米屋先生にいただいたアドバイスでフォトブックを作ることまでできて、とても嬉しく勉強になりました。

桜井真一郎さん

写真の先輩からも「プリントしないと上手くならないよ」と言われていたので、いい機会だと思い参加しました。本格的なプリンターでプリントするのは初めてですけど、PRO-100Sの発色の良さや緻密な画質には本当に驚かされました。

米屋先生のセミナーについては、今までは自分が撮ったたくさんの写真の中から、プリントする作品を選ぼうとしても、選びきれなくて悩んでいたところ、今日みたいに小さく切って並べてみるという方法を教えてもらい役立ちました。家に帰ったら実践してみようと思います。

高草木裕子さん

以前から米屋さんのファンだったので今回のセミナー・体験会に参加しました。これまでも地元での展示会など自宅でプリントする機会はあったので、A3ノビをプリントできるプリンターももっています。

ただ、PRO-100Sは本当に本格的でわずかな色の違いなども正確に表現されます。きちんと設定すれば、挑戦できることが広がると言う意味で、「欲しくなったか」と聞かれればそれはもちろんです。

今日、米屋先生に教えていただいたことを大切にして、手間を惜しまずこれからもプリントしていこうと思います。

稲田匡孝さん

この春から色を扱う会社に入社したのですが、写真家の先生に教えてもらいながら本格的なプリンターが使えるということで、興味をもって参加しました。

これまではお店プリントを利用していましたけど、そこでは光沢紙を薦められてしまうので、以前からやりたいと思っていたマット系の用紙でプリントできてよかったです。やっぱり奥行きがあっていいですね。用紙の違いによる表現の違いを体験できました。

PRO-100Sは静かで正確な動きをしてくれるので、いいなと思いました。やっと社会人になれましたので、これからプリンターを手に入れてしっかり経験を重ねていくつもりです。

福島諒さん

まだ写真を初めて1年たったくらいです。35mmフルサイズのデジタルカメラを買い、広角レンズに憧れて買い、とここまで進んできましたが、プリントについて置き去りになってしまっていたので勉強しようと参加しました。

スマホやPCで見るのとは色の綺麗さや質感がぜんぜん違って、これからはそうした表現についても気にしていかなければいけないんだなと気づかされました。新たな発見です。PRO-100Sは細かいところまで色が出ていて、自分の思った以上の写真をプリントしてくれました。プリントにはまってしまいそうです。

鶴田直美さん

昔から米屋先生の写真がすごいなと思っていましたので参加しました。自分の写真がPRO-100Sだとこんなに綺麗にプリントできるんだということに驚きました。

今日は「微粒面光沢 ラスター」でプリントしましたが、今度はぜひ他のプリント用紙でも自分の写真をプリントしてみたいと思えるようになりました。他の参加者さんの熱意に励まされながら、すっかり楽しい時間を過ごすことができました。。

制作協力:キヤノン

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。