ニュース

富士フイルムX-Tシリーズの違いを見てみよう(2020年春)

一眼レフスタイルの中核3モデルを比較・分析

富士フイルムのレンズ交換式Xシリーズには、X-Pro、X-H、X-T、X-E、X-Aの5つのシリーズがあり(以前はX-Mシリーズもあったが、現在はX-Aシリーズに統合されている)、それぞれに異なった個性が楽しめる。

そのうち、一眼レフスタイルを採用したX-Tシリーズは幅広いユーザー層から人気がある。X-Tシリーズには「1桁」「2桁」「3桁」の3タイプがあり、それぞれプロ〜ハイアマチュア向け、ミドル、エントリーに分類できる。

現行モデルは「1桁」がX-T4、「2桁」がX-T30、「3桁」がX-T200。エントリーのX-T200は富士フイルム独自のX-Trans CMOSセンサーではなく、一般的なベイヤー配列のCMOSセンサーを搭載しており、富士フイルムらしさの面では一歩下がる印象だ。

一方、X-Tシリーズの上位に位置づけられるX-Hシリーズもある。X-T4にボディ内手ブレ補正が搭載されたことでX-Tシリーズと統合されるのではないかとの声もあったが、聞くところによれば後継モデルの開発はつづいている模様だ。

ということもあり、今回はX-T4、X-T30およびX-H1の3機種にスポットを当ててみたい。

FUJIFILM X-T4

シリーズ最上位のX-T4は4月28日にブラックが先行で発売。シルバーは「十分な供給量を確保するため」という理由で5月21日に延期された。

大手量販店における実売価格は、ボディ単体で税込22万4,950円、XF 16-80mm F4 R OIS WR付きのレンズキットが29万950円となっている。

基本デザインは初代からの流れをくむもので、右手側肩にシャッターダイヤル、その同軸下部の静止画と動画の切り替えレバー(X-T3までは測光モード切り替えだった)、露出補正ダイヤル、左手側肩にISO感度ダイヤルとドライブモードダイヤルがある。

ボディサイズはX-T3に対して幅が2.1mm、奥行きが5mm増えている。これは手ブレ補正機構の内蔵やモニターのバリアングル化、大容量化したバッテリーの収容スペースの確保のためもあるだろうが、グリップの膨らみが増したことも大きい。

質量はバッテリーとSDカード込みで607g、ボディ単体では526gで、これはX-T3よりもそれぞれ68g、37g増している。

撮像センサーは有効2,610万画素のX-Trans CMOS4、画像処理エンジンはX Processor 4。この組み合わせは先代のX-T3と同じだ。

いちばんの見どころは、やはりボディ内手ブレ補正の有無だ。富士フイルムはレンズ内補正派だったが、単焦点レンズのほとんどは手ブレ補正を内蔵していないこともあって、ボディ内手ブレ補正が待たれていた。その後、X-H1でボディ内蔵化が実現した。

本機の手ブレ補正ユニットはX-H1に搭載されていたものより小型化。新開発された衝撃吸収構造のシャッターユニットの採用などのおかげもあって、補正効果はX-H1の5.5段から最大6.5段にアップしている。

新型シャッターユニットのメリットはメカシャッターでの連写速度の向上にも寄与している。最高速は15コマ/秒。電子シャッター時は20コマ/秒となる。連続で撮れる枚数は電子シャッターで79枚(JPEG)、36枚(ロスレス圧縮RAW)とまずまず。

被写体の動きを見ながら撮れるLV連写はX-T3の5.7コマ/秒から8コマ/秒に高速化。像が見えなくなるブラックアウト時間は0.096秒から0.075秒に短縮され、よりパワフルなスペックになった。

なお、メカシャッターの最高速は1/8,000秒までだが、電子シャッター時は最高1/32,000秒まで設定可能。動体歪みの問題は避けられないものの、晴天の野外でも明るい単焦点レンズの開放付近の絞り値が利用できるのはメリットだ。

AFは117点(横13×縦9点)のハイブリッドで、見た目としては従来どおりだが、アルゴリズムを改善して合焦速度が0.02秒に高速化。動体追従性能も向上している。被写体の色や形などの情報も利用することでトラッキングAFの精度向上に加えて、連写中の瞳AFの検出能力も改善したという。

EVFのスペックもX-T3と同じく、369万ドットの0.5型有機EL、倍率0.75倍相当(35mmフルサイズ換算)。3つのEVFブーストモードを備えているのが新しい点。夜景などに強い低照度優先、高精度なピント合わせが可能な解像度優先、動体撮影向けのフレームレート優先から選択できる。

モニターは3方向チルト式からバリアングル式に変更。この点については賛否がわかれるが、自分撮りが可能になったほか、三脚での俯瞰撮影やグリップを下にした縦位置撮影での利便性は向上している。

もうひとつ、新型の大容量バッテリーが採用されたことも見逃せない。ノーマルモードで500枚(X-T3は390枚だった)、エコノミーモードで600枚の撮影が可能となり、長時間の撮影などで余裕ができるだろう。

FUJIFILM X-H1

クラスとしてはX-Tシリーズの上。2018年3月に発売された本機が最初のモデルであり、後継が開発中との情報もあるが、今のところ予定ははっきりしていない。

大手量販店の発売当初価格は8%の消費税込みで25万8,660円。Xシリーズでは最高価格だったが、現在は税込12万9,250円とかなり下がっている。

外観はX-Tシリーズのイメージを残しつつ、大型のグリップと、その上面の表示パネルが特徴的だ。また、露出補正ダイヤルが省略され、露出補正ボタンと電子ダイヤルによる操作系となっている。

シャッターボタンはグリップ上部の斜めにカットされた面にあり、これもほかのXシリーズとは異なる点だ。シャッターボタンは感触のよいリーフスプリング式スイッチを採用したもので、有償でシャッターストローク調整サービスも用意されている。

ボディ外装のマグネシウム合金カバーの厚みを25%増やして強度を2倍に向上。マウントまわりは内部にリブを設けるなどして剛性アップをはかっている。XF 200mm F2 R LM OIS WRなどの重量級レンズとの相性の面では有利と言える。

Xシリーズでは初となるボディ内手ブレ補正は、5軸補正でシャッタースピード5.5段分の効果を持つ。手ブレ補正を内蔵したレンズと組み合わせた際はレンズ側を優先した動作となり、おそらくはシフトブレとロールブレのみをボディ側で補う仕様となっている。

補正ユニットが大掛かりになったこともあって、ボディサイズはX-T4に比べて幅5.2mm、高さ4.5mm、奥行き21.7mmも大きく、質量もボディ単体で97g重い。それだけに、軽快さを重視している感のある富士フイルム機の中ではやや仲間はずれ的印象が強い。

撮像センサーの有効2,430万画素のX-Trans CMOS IIIと画像処理を受け持つX Processor Proの組み合わせはX-T2と同じ。X-T4に比べるとセンサー、エンジンともに一世代古いものと言える。

そのせいもあって値崩れ幅が大きいとも考えられるが、たとえば、ISO感度の上限は常用ISO 12800、拡張ISO 51200で同じなのを考えれば、極端な画質の差はないと言えなくもない。

EVFは0.5型の有機ELパネルを採用しており、解像度は369万ドット。倍率は35mmフルサイズ換算で0.75倍相当。アイポイント長23mmといったスペックはX-T4も同じだ。

液晶モニターは上下と右手側方向に可動する3方向チルト式。自由度ではバリアングル式に譲るものの、ロー/ハイアングル撮影への即応力の面では有利。この点を評価していた人にとってはX-T4よりも選びやすいかもしれない。

AFは91点(横13×縦7点)のハイブリッドだが、位相差検出の測距点は画面中央部の7×7点にかぎられる。左右の横3×縦7点のエリアはコントラスト検出のみとなる。X-T4は117点のすべてで位相差検出が可能なため、動体撮影時のフレーミングの自由度を考えると本機は不利となる。

連写最高速も電子シャッター時で約14コマ/秒、メカシャッター時で約8コマ/秒止まり。別売の縦位置パワーブースターグリップVPB-X-H1を装着するとメカシャッターで約11コマ/秒となる。スペックとしては決して低くはないものの、開発時期のより新しいX-T4との違いは無視できない。

なお、バッテリーは従来からのNP-W126Sを使用。撮影可能枚数はノーマルモードで310枚と、これもX-T4には水をあけられている。

FUJIFILM X-T30

X-Tシリーズのミドルレンジを受け持つ「2桁」モデル。「1桁」のX-T4などがヨーロッパ風のテイストを感じさせるデザインなのに対して、こちらは国産オールドカメラ的な風情がある。

発売は2019年3月。当時の大手量販店の実売価格は消費税8%込みで11万8,260円だった(ボディ単体)。

本稿執筆時点ではボディ単体が10万7,760円、XC 15-45mm F3.5-5.6 OIS PZ付きキットが11万4,870円、XF 18-55mm F2.8-4 R LM OIS付きキットが15万7,920円、XC 15-45mm F3.5-5.6 OIS PZとXC 50-230mm F4.5-6.7 OIS付きのダブルズームキットは14万1,380円(いずれも税込)となっている。

ボディサイズは幅118.4×高さ82.8×奥行き46.8mm。X-T4に比べるとずいぶんコンパクトだ。質量はバッテリーとSDカード込みで383g。X-T4に比べて224gも軽い。

撮像センサーと画像処理エンジンはX-T3、4と同じく有効2,610万画素のX-Trans CMOS 4、X Processor 4の組み合わせ。単純に考えれば画質は同等と言え、軽快さを重視する人にとっては本機が有力候補となるだろう。

ISO感度の上限も同じく常用ISO 12800、拡張ISO 51200。ボディ内手ブレ補正はない。純正レンズはズームのほとんどは手ブレ補正内蔵だが、単焦点は手ブレ補正なしがほとんどなので、単焦点レンズを好む人には不利となる。

EVFは0.39型の有機ELパネルを採用。解像度は236万ドット。倍率の35mmフルサイズ換算0.62倍相当という数字はミドルクラスのAPS-Cサイズ一眼レフとほぼ同等で、クラスから考えれば妥当と言える。

X-T4やX-H1と違ってファインダー部にストロボを内蔵している。ガイドナンバーは7(ISO200時)と小さいが、ファミリーユースにはありがたい。

液晶モニターは上下方向のみのチルト式であるため、縦位置でのロー/ハイアングルには対応できない。これも上級者には物足りない部分だ。

AFは位相差117点、コントラスト117点のハイブリッド。X-T4と共通するスペックだ。連写最高速はメカシャッターでは約8コマ/秒、電子シャッターでは約20コマ/秒と速い。ただし、連続で撮れる枚数はJPEGで32枚、可逆圧縮RAWで17枚と多くない(電子シャッター設定時)。本格的なスポーツ撮影では不満を感じるだろう。

なお、メカシャッターの最高速はクラス相応と言える1/4,000秒。が、電子シャッターでは1/32,000秒までカバーできるので、明るいレンズでの絞りの選択範囲は確保できる。

ややこしいのは、電子シャッター時に設定できるISO感度の範囲が狭くなること。メニューのシャッター方式で「電子シャッター」または「メカニカル+電子」時は常用感度範囲(ISO 160〜12800)に制限される。この点は本機以外の富士フイルム機も同様で、ほかのメーカーのカメラに慣れていると戸惑う部分だ。

記録メディアはSDカードのシングルスロット。X-T4とX-H1が右手側側面にデュアルスロットを備えるのと違って、本機は底面にバッテリーと同居スタイルとなる。なお、先の2機種と異なり、SDカードはUHS-Iまでの対応。動画の連続撮影可能時間にも違いがある。

バッテリーは従来どおりのNP-W126Sで、380枚の撮影が可能。同じバッテリーを使うX-H1に比べて70枚多く撮れるのはありがたい。

比較表

機種名X-H1X-T4X-T30
発売年月2018年3月2020年4月
※シルバーは2020年5月
2019年3月
実売価格(税込)12万9,250円22万4,950円10万7,760円
撮像センサーX-Trans CMOS IIIX-Trans CMOS 4X-Trans CMOS 4
ローパスレス
有効画素数2,430万画素2,610万画素2,610万画素
画像処理エンジンX Processor ProX Processor 4X Processor 4
ボディ内手ブレ補正5軸・5.5段5軸・6.5段
常用感度ISO 200〜12800ISO 160〜12800ISO 160〜12800
拡張感度ISO 100〜51200ISO 80〜51200ISO 80〜51200
EVF0.5型有機EL、約369万ドット0.5型有機EL、約369万ドット0.39型有機EL、約236万ドット
EVF倍率倍率0.75倍相当倍率0.75倍相当倍率0.62倍相当
液晶モニター3型・104万ドット、3方向チルト3型・162万ドット、バリアングル3型・104万ドット、上下チルト
AF測距点数位相差49点、コントラスト91点位相差117点、コントラスト117点位相差117点、コントラスト117点
シャッター最高速1/8,000秒(メカ)、1/32,000秒(電子)1/8,000秒(メカ)、1/32,000秒(電子)1/4,000秒(メカ)、1/32,000秒(電子)
連写最高速14コマ/秒20コマ/秒20コマ/秒
連写可能枚数40枚(JPEG)、27枚(RAW)79枚(JPEG)、36枚(RAW)32枚(JPEG)、17枚(RAW)
記録メディアSD×2SD×2SD
バッテリーNP-W126SNP-W235NP-W126S
撮影可能枚数310コマ500コマ(ノーマルモード)、600コマ(エコノミーモード)380コマ
動画解像度・フレームレート4,096×2,160ピクセル・23.98p4,096×2,160ピクセル・59.94p4,096×2,160ピクセル・29.97p
大きさ(幅×高さ×奥行き)139.8×97.3×85.5mm134.6×92.8×63.8mm118.4×82.8×46.8mm
重さ(電池・カード込み/単体)673g/623g607g/526g383g/333g

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。