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「FUJIFILM X-T4」詳報

静止画と動画が全方位で強化されたモデル その強化ポイントを整理する

富士フイルムは2月26日、APS-Cミラーレスカメラ「FUJIFILM X-T4」の発表にあわせて、都内で説明会を開催した。X-H1より強力になったという手ブレ補正機構の搭載のほか、どのような進化があったのかをお伝えしていきたい。

進化ポイント

2018年9月のX-T3発売から、約1年半という期間でのナンバー更新となったX-T4。写真家やユーザーから多数の要望が寄せられていたという手ブレ補正機構(IBIS)をX-Tシリーズとして初めて搭載しての登場となった。

X-T4。シルバーとブラック

まず、ハードウェア面とソフトウェア面の主な進化・変更点を整理すると次のようになる。

[撮影・操作関連]
・新開発のボディ内手ブレ補正ユニットの搭載
・新たなシャッターユニットを開発
・AFアルゴリズムの改善
・連写コマ数の向上
・EVF表示に3種類のブーストモード
・バッテリーを大容量タイプに変更
・動作モードに省電力の「エコノミー」を追加
・背面モニターがバリアングル式に変更
・静止画/動画切替スイッチを新設
・メニュー表示を静止画と動画で独立させた
・ボタン配置の変更
・アイカップの強度向上

[画質関連]
・フィルムシミュレーション「ETERNA ブリーチバイパス」の搭載
・オートホワイトバランスに2種類の項目を追加
・トーン設定レベルの細分化
・RAW記録に圧縮RAWを追加

[動画関連]
・電子手ブレ補正の搭載
・1,080P/240P FHD動画記録への対応
・動画記録ファイル形式にMP4、AACを追加

新しくなったボディ内手ブレ補正とシャッターユニット

ボディ内手ブレ補正機構は5軸で、シャッター速度約6.5段の効果があるとしている。レンズ内に光学式の手ブレ補正機構(OIS)を備えるレンズと組み合わせた場合は、協調動作となる。一例として、OISを搭載するズームレンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」を組み合わせた場合、6.0段の効果が得られるとしている。OIS非搭載レンズでは、その多くが6.5段の効果が得られるという。

ユニットの構造では、X-H1で搭載されたタイプがコイルスプリングを使用して制御していたのに対して、X-T4に搭載されたタイプでは磁力による制御に変更された。構造面ではセンサーの位置決めと補正制御を3カ所をそれぞれ別の磁石で行なっていたのに対して、X-T4では3つの共通の磁石で制御しているのだそうだ。

X-H1比で補正効果が向上している背景には、シャッターユニットを新たに開発したこともポイントになっているのだという。

新しいシャッターユニットで施された改良点は、衝撃吸収構造が採用されたこと。高トルクなコアレスDCモーターの採用や、構造・材質の見直しにより、シャッターの耐久性が従来の2倍(シャッター動作耐久30万回)となったほか、シャッター音をX-T3比で約30%低減することにも成功しているという。実機にてシャッターを切ったところ、衝撃や音が抑えられていることが実感できた。

また、X-T4では4種類のスプリングを用いて、上下左右、計5カ所でシャッターユニットを保持している。これも手ブレ抑制のポイントとなっているのだという。

説明会にて例示された、進化した手ブレ補正の効果。組み合わせるレンズによっても変わってくる部分だが、同社がラインアップする多くのXマウントレンズでX-H1以上の効果が得られるメリットは大きいと言えそうだ。

連写コマ数の向上とAFアルゴリズムの改善

シャッターユニットの新設計に伴い、X-T4ではメカニカルシャッターで約15コマ/秒の連写が可能となった。

高速連写時に15コマ/秒が選択可能に。電子シャッターで、かつ焦点距離1.25倍相当のクロップにすると連写コマ数は30コマ/秒まで設定できる。

LV連写では、フレームレートがX-T3の5.7fpsから8fpsに向上。ブラックアウト時間もX-T3から0.021秒短縮された0.075秒に改善されているという。

AFのアルゴリズムも改善された。AFの合焦速度が0.02秒に向上し、動体追従の合焦率も90%を超えるという。

トラッキングAF時には、被写体の色や形といった情報を用いることで、正確性が向上したという。また、これまで苦手としていた“遠ざかっていく被写体”を追いかける撮影シーンでの追従性が改善されているほか、連写時の瞳AFの検出精度も向上しているという。

EVFブーストモードの搭載

EVFは、0.5型の有機ELファインダーで約369万ドットの表示に対応。パネルと光学系はX-T3と同じだという。X-T4では、撮影シーンに応じて表示状態を3種類から選択できる、ブーストモードが搭載された。

内容は、低照度環境で被写体の視認性を向上させる「低照度優先」と、ブツ撮りなど高いピント精度が求められるシーンに向く「解像度優先」、動体撮影時に向く「フレームレート優先」の3種類となっている。

各モードでは、EVFのフレームレートを落としたり(低照度優先)、逆にあげたり(フレームレート優先)して、見易さの調整が行われているとのことで、当然フレームレートを上げた場合は、撮影可能枚数が減ることになる。使い分け次第だろう。

バッテリーと背面モニターの仕様が変更

バッテリーは、これまでの「NP-W126S」から、より大容量な「NP-W235」に変更された。新たに搭載された省電力モードの「エコノミー」では、XF35mmF1.4 Rと組み合わせた場合の撮影可能枚数が約600枚(ノーマルモード時は約500枚)となる。

また、背面モニターはバリアングル式に変更。モニターを正面側から確認できるようになったことで、自撮りでの動画配信ユースへも向けて訴求する。

スイッチ・ボタン配置が変更

X-T3まではシャッタースピードダイヤルと同軸に測光の切り替えレバーが配されていたが、X-T4では、静止画と動画の切り替えレバーに変更された。また、あわせてAF-ON、AEL、Qメニューボタンの配置も変更となっている。

他に、シンクロターミナルのキャップが脱落しづらい形状に変更されたほか、アイカップの取りつけ部も強度の向上が図られているという。

静止画と動画の切り替えスイッチの新設にあわせて、それぞれのモードに合わせてメニュー内容が切り替わるようになった。静止画モードであれば静止画用の、動画モードであれば動画用のメニューが表示されるようになる。

Qメニューも静止画と動画が切り分けられた。

動画撮影時には、タッチパネルでの操作も可能となる。

左肩部のダイヤルは従来機と同様の操作体系となっている。

新フィルムシミュレーション、AWBの調整幅なども拡大

X-T3ではホワイトバランスロックが追加されたが、X-T4では、AWB(オートホワイトバランス)が3種類から選択できるようになった。既存の「AUTO」に加えて「ホワイト優先」、「雰囲気優先」機能が追加。ホワイト優先では、白熱電球下で白色が再現されやすくなるとしており、雰囲気優先では、より温かみのある雰囲気を出すことができるとしている。

この他、従来1段刻みとなっていた、ハイライトトーンとシャドウトーンの設定段数が「0.5段刻み」に細分化。より細かく調整できるようになった。

このほか、RAW選択時に「ロスレス圧縮」のほかに非可逆圧縮の「圧縮」を選択できるようになった。

フィルムシミュレーションにも新しく「ETERNA ブリーチバイパス」が搭載。「銀残し」を再現したというもので、彩度を低く抑えながらもコントラストの高い画が得られるという。

動画関連

動画面では、新たに1,080P / 240pのFHD記録に対応。10倍のスローモーション動画再生が可能になる。

また、動画撮影時のみ有効な機能だが、電子手ブレ補正機構を搭載。機能をオンにした場合、画面が10%クロップされる。さらにブレを抑制する「ブレ防止モードブースト」機能も備える。

このほか、撮影中にガンマカーブ(BT.809)を適用することで露出の確認ができる機能も搭載した。

記録メディアスロットについても、リグを装着した際のカード交換を考慮してカバーが完全に取り外せる仕様に。記録面では、2枚のSDカードに同じフォーマットの動画を同時記録できるようになった。これにより、バックアップをとりながらの動画撮影が可能になった。記録メディアはSDカード(UHS-II対応)。動画の記録ファイル形式はMOVに加えて、MP4、AACが追加された。

背面モニターがバリアングル式になったことを受けて、生産国表示がメディアスロット側になった

接続端子

左側面の接続端子類では、3.5mm径ステレオミニジャック、2.5mm径リモートレリーズ端子、HDMIマイクロ端子(Type D)、USB Type-C端子を備える。

本体側にはヘッドホン端子は備えておらず、使用したい場合は、USB Type-C端子にアダプターをかませて使用することになる。なお、バッテリーグリップ「VG-XT4」には3.5mm径のジャックが設けられている。

電源まわりは、USB Type-C経由で充電・給電双方に対応する。

ボディのサイズと質量は、X-T3よりも若干増加した。幅は+2.1mm、厚さが最大で+5mm、高さは変わらず、重量は68gの増加となった。

底面側からみたところ
内部構成。センサーに手ブレ補正機構が取り付けられている

本誌:宮澤孝周