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D500とD7500の違いを見てみよう

ニコンAPS-C上級機対決 その差はどこにあるのか?

ニコンD7500はローパスフィルターレス有効2,088万画素CMOS撮像センサー、最新の画像処理エンジンEXPEED 5を搭載したDXフォーマット(いわゆるAPS-Cサイズ)のミドルクラス一眼レフカメラである。連写の高速化や高感度化、軽量化などがはかられているのが特徴だ。大手量販店の実売価格はボディ単体で税込16万円弱となっている。

一方のD500は、2016年4月に発売されたDXフォーマットのフラッグシップモデルであり、同時に発表されたプロ向けハイエンドモデルのD5と同等の153点測距AFのほか、10コマ/秒の高速連写や最高ISO1640000の超高感度といったハイスペックを誇る。原稿執筆時点での実売価格はボディ単体で税込24万円ほどだ。

両者の実売価格の差は約8万円。発売当初同士で比べると約10万円(D500は26万円弱だった)となる。下世話な言い方をすれば、その8万円ないし10万円の違いはどこなのか。というのを、同社のWebサイトに記載されている情報をもとに検証していこう。

D500
D7500
D500D7500
発売日2016年4月2017年6月
実勢価格税込24万円前後税込16万円弱
画素数2,088万画素
常用最高感度ISO51200
拡張最高感度ISO1640000
測距点153点51点
連写速度約10コマ/秒約8コマ/秒
カードスロットXQD、SDSD
マルチパワーバッテリーパックオプション有りオプション無し
外寸約147×115×81mm約135.5×104×72.5mm
重量(本体のみ)約760g約640g

測距点のカバー範囲に大きな差

いちばんにあげたいのは、AFのスペックだ。D500はD5と同じ153点測距で、うち99点が被写体捕捉能力の高いクロスセンサーとなっている。一方、D7500はD7200から受け継いだ51点測距(クロスセンサーは15点)を搭載する。D500も任意に選択可能な測距点は55でしかないので、数字上はたいした差はない。

ただし、画面に対して測距点がカバーするエリアはずいぶん違う。D7500は画面の左右に測距点のない空白地帯があるが、D500は画面の端に近い部分にまで測距点が並んでいる。それぞれの機種のWebページに掲載されている図からフォーカスポイント(測距点)のフレームの外側を基準にすると、D7500は画面の左右73%×上下46%をカバーしているだけなのに対し、D500は左右93%×上下61%という広い範囲をカバーしている。

D500の測距点

測距点のカバーエリアが広いほど動く被写体をとらえやすいし、動かない被写体を撮るときにもフォーカスロック後のフレーミング調整が少なくてすむなどのメリットがある。反面、AFセンサーモジュールも大型化するし、そこから出てくる情報の量も増えるので処理は大変になる。その分だけカメラは大型化するし、コストもかさむ。

なお、測距可能な輝度の範囲も、D7500は-3EVから19EV、D500は-4EVから20EVと広い。つまり、D500のほうが悪条件に強いということだ。

10コマ/秒か8コマ/秒か

連写性能も相応に差がある。D500は約10コマ/秒で14bitロスレス圧縮RAWでも連続200コマ(XQDカード使用時)撮れる。D7500は約8コマ/秒で連続50コマ、12bitロスレス圧縮RAW時は74コマとなる。

ちなみに、D7200は約6コマ/秒(1.3×クロップ時は7コマ/秒)で18コマないし27コマ(14bitないし12bitロスレス圧縮RAW時)なので、D7500も十分にパワーアップしている。D500と比べるから非力に見えるだけである。

連写速度を上げるには、パワーの大きなモーターや強度の高い部材が必要となるだけでなく、ミラーのバウンド抑制のためのメカも高度化しないといけない。また、連写可能な枚数を増やすにはデータを一時的に溜めておくバッファメモリーを大容量化する必要がある。このあたりは多分にコストがかかる部分であり、D500が高価になっている理由でもある。

もちろん、約10コマ/秒連写が誰にでも必要でないことは明らかで、D500をオーバースペックと感じる人もいるだろう。もっとも、D7500もD7200に比べてスペックアップしているのだから、そもそも連写自体はいらないという人にとっては、あまりうれしくない話かもしれないが。

ファインダーの「丸窓」にこだわるか?

一眼レフの場合、ファインダーにかかるコストも小さくはない。倍率やのぞきやすさ、ピントの見え具合などを追求すると、ペンタプリズムや接眼部の光学系を大掛かりにせざるをえない。ファインダーのスペックがカメラの大きさや重さ、実売価格にも跳ね返るのである。

D500、D7500ともに視野率は約100%だが、D500は倍率が1.0倍(35mmフルサイズ換算で0.67倍相当)。アイピースシャッターを内蔵する。D7500はD7200と同じ光学系を採用しているようで、倍率は0.94倍(同0.63倍相当)。アイピースシャッターは備えていない。

のぞきやすさの目安となるアイポイントの長さは、それぞれ接眼レンズ面中央から、D500が16mm、D7500が18.5mmとなっている。数字ではD7500が上だが、D500は高級機にだけ許される「丸窓」仕様である。のぞきやすさを比べれば、まず間違いなくD500に軍配は上がる。ファインダー性能で重視するのであれば、断固D500を選ぶべし、となるのは明白だ。

D500のアイピースは「丸形」
D7500のアイピースは「角形」

ただし、前述したとおり、大きさや重さ、価格のこともあるのと、それほど強くこだわらないのであれば、D7500の「角窓」でも不都合はない。

ボディの材質にも差

ボディの外装素材も見逃せない。D500は上面カバー、背面カバーにマグネシウム合金、前面カバーなどには高剛性炭素繊維複合素材を採用したモノコック構造としている。

D500は上面カバーと背面カバーがマグネシウム合金製

一方、D7500のボディについては「高剛性炭素繊維複合素材を用いたモノコック構造を採用」とWebページに記載されている。ようは、マグネシウム合金抜きということである。

D500がなかったら非金属化はなかっただろうと思う。強度や耐久性などの面では高剛性炭素繊維複合素材よりもマグネシウム合金のほうが上まわるのだろうが、極限的なタフさが誰にでも必要なわけではないし、ヘビーデューティーであることよりも軽快さを重視する層には、D7500のほうが歓迎されるだろう。

まとめ

そのほかD7500では、縦位置グリップ機能をあわせ持つマルチパワーバッテリーパックが用意されないこと、カードスロットが1つだけになったこと(D500はXQDカードとSDカード、D7200はSDカードのデュアルスロットだ)、プレビューボタンがないこと(同じ位置にFn1ボタンがあって、もしかするとプレビュー機能を割り当てられるかもしれないが)なども残念に思える点だが、これらはD500があるからこそ割り切れた部分でもある。

D500にはオプションのマルチパワーバッテリーパックが用意されている
D500はXQDカードとSDカードのデュアルスロットだ
D7500はSDカードのみ

D7500は、上位にD500というパワフルなDXフォーマットのフラッグシップ機が存在するという前提で開発されたカメラである。D500にない軽快さや価格の手ごろさを実現する必要があり、同時に、多くのユーザーからの、連写パフォーマンスや高感度性能の向上をはかるべく、機能の取捨選択を行なった結果、部分的にスペックダウンしたモデルである。そう受け止めるのが妥当だろう。

「スペックダウンしたくせにD7200より高くなった」と思う人もいるだろうが、連写や高感度の性能向上に加えて、モノコック構造の採用によって握りやすくなったグリップ、液晶モニター(RGBWからRGBに変更になった関係でドット数は減っている。解像度は同じだが)がチルト式になってタッチパネルが内蔵されたこと、ISO感度ボタンが右手側に移動して構えたまま操作しやすくなったこと、カメラの設定状況を把握しやすいインフォ画面が常時表示になったらしいこと(Webサイトに「ファインダーから顔を離すとインフォ画面が再点灯する」と書かれている)など、改善点も多いのだから、それで文句を言ったら罰が当たる。

ともあれ、DXフォーマットのフラッグシップたるD500の存在を背景に、DXミドルのあるべき姿を突き詰めた結果がD7500というカメラであって、機能や性能、軽さ、価格などのさまざまな面から見て、かなりバランスよく仕上がっていると言える。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら