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触ってきました「キヤノンEOS R」

EOS一眼レフの使い心地を継承 実機画像を多数掲載

EOS R+RF50mm F1.2 L USM

キヤノンが10月下旬に発売する「EOS R」の実機を手にする機会があったので、外観写真を中心にお届けする。

業界の注目を集める中、EOS Rシステムがお披露目された。

EOS Rは、キヤノン初となる35mmフルサイズフォーマットのミラーレスカメラ。新規のRFマウントを採用し、交換レンズ4本+マウントアダプターと共に発表された。

外観デザインは「R」のバッジがEOS-1D系のような緊張感を与える一方、肩のラインはEOS初号機の「EOS 650」のようであるという声も聞かれた。ボディは防塵防滴設計になっている。

EOS-1D系を彷彿させる配置の「R」バッジ。
RF24-105mm F4 L IS USMを装着したEOS R。

シャッターボタン周りの造形、全押しにクリック感がないシャッターボタンの押し心地、人差し指の位置にあるダイヤル、その隣にあるM-Fnボタンなど、このあたりはまさにEOS一眼レフカメラの中級機以上を使っている心地だった。

背面モニター横に置かれるのが基本だったサブ電子ダイヤルは、カメラの上面に移動。EOS M5のような造形で、いくぶん新鮮。ダイヤル上面のMODEボタンを押すと上面の小さな表示パネルに撮影モードが表示され、モードダイヤルとして機能する。

EOS Rの上面右手側には、小さな表示パネルが備わる。
MODEボタンを押すと、サブ電子ダイヤルがモードダイヤルとして機能する。
電源オフの状態。シャッター速度優先AEを示す。モードダイヤルのように、電源投入前から撮影モードを把握できるようにとの配慮。
新しい「Fv」モード。シャッター速度、絞り、ISO感度が全てオートになっていて、任意のパラメータを変更する。
電源スイッチ
底面
EOS Rは、電源をオフにするとシャッターが閉まる。レンズ交換時に「イメージセンサーがすぐ近くにある」という恐怖がいくらか軽減される。

新操作系「マルチファンクションバー」

マルチファンクションバー

EOS Rの新しい操作スタイルに「マルチファンクションバー」がある。これをタップするか、スワイプ操作のようにスライドさせると、各種設定項目や画像送りを操作できる。筆者の印象では操作に少し慣れを要するが、こうした新しいトライは歓迎したい。

デフォルトでは機能割り当てがオフになっているが、その理由は「あまりに場所が良いので、誤操作を防ぐため」とのことだった。EOS Rを手にするなら、是非とも使いこなしたい。

参考までにEOS Rのシャッターを切ってみたところと、マルチファンクションバーの操作を試しているところを動画で撮影した。筆者が実機を手に取ったばかりのため、カメラ操作がいくぶんスムーズではない点はご容赦いただきたい。

バリアングル式モニターとEVF

バリアングル液晶モニター
背面モニターは210万ドット。タッチの操作系もEOS Mシリーズなどで馴染みがある。

背面モニターは3.15型約210万ドット。近年は92万ドットや104万ドットという解像度が一般的だが、ニコンZ 7(チルト式3.2型約210万ドット)とキヤノンEOS Rは、どちらもその水準より高解像度になっている。

筆者の想像だが、ライブビュー撮影が前提のミラーレスカメラにおいては背面モニターも立派な「ファインダー」なので、それなりのスペックを持たせねばという判断なのだろう。

EVFは約369万ドットの有機ELで、スペック値、実際の見えともに不満のない仕上がり。

モニターとEVFのそれぞれで明るさと色味を調節できる。
ライブビュー表示で、滑らかさと省電力のどちらかを選べる。

RFレンズ

RF28-70mm F2 L USM

フルサイズ用でF2の標準ズームという強烈なインパクトがある。鏡筒は太く、気合いを入れて掴んで持ち上げるような格好になった。フィルター径は95mm。AFは決して遅くないが、中で重たいレンズが動いているのが伝わってくる。

RF50mm F1.2 L USM

ミラーレスカメラのAF精度を活かして絞り開放での撮影を楽しみたい。これもAF動作中には、中で大きなレンズエレメントが動いているのがわかる。

RF35mm F1.8 MACRO IS STM

最も身軽な単焦点レンズ。1/2倍まで対応するマクロレンズだ。

コントロールリングを装備。

RFレンズの新しい点には、新たに備わる「コントロールリング」がある。ズームリングでもフォーカスリングでもない、もうひとつのリングが搭載されている。これには微妙なクリック感があり、いくつかの機能を割り当てられる。

EFレンズ用のマウントアダプターにも、このコントロールリングを搭載したものがある。

先端の赤ハチマキ側から、コントロールリング、フォーカスリング、ズームリング。写真はRF24-105mm F4 L IS USM。
ボタンのカスタマイズ性はかなり高い。
レンズもしくはマウントアダプターのコントロールリングの機能割り当て。
MF操作の敏感度設定が可能。
回転方向の変更も。
RFレンズは、デジタルレンズオプティマイザ(DLO)が基本的にONとなる。

新規マウントを採用

EOS Rでは、新規のRFマウントを採用。内径はEFマウントと同じ54mm。通信ピンは8本から12本に増えた。

RFマウント。内径はEFマウントと同じ54mm。

キヤノンのEFマウントは1987年に完全電子マウントとして登場したもので、例えばライバルのニコンFマウント(1959年登場。口径44mm)に比べれば基準が新しい。そのため、改めて大径化する必要がなかったのだろう。ニコンはZマウントで55mmに広がった。

※9月11日追記:当初ニコンFマウントの口径を46.5mmと記載していましたが、正しくは44mmなので修正しました(46.5mmはフランジバック)。

EOS RとEOS 80D(APS-C機)のマウント部。

RFマウントのフランジバックは壇上で公表されなかったが、説明員によると20mmだという。キヤノンではフランジバックというレンズマウントの機構的数値より、ミラーボックスがないミラーレス構造による「ショートバックフォーカス」(レンズ最後端と撮像面が近い)を実現できることが、レンズ設計の自由度を高めると説明した。

つまり、レンズ最後端と撮像面が近いことによる可能性を、ニコンは「ショートフランジバック」と表現し、キヤノンは「ショートバックフォーカス」と表現した。どちらも感じているメリットは同じということだろう。

ちなみにフランジバックは、先行するソニーEマウントが18mm、ニコンZマウントが16mmだ。必ずしも「フランジバックが短い=機能的優位」ではないが、その背景を無視した単純比較で“負けている”と判断されることを嫌って、キヤノンはあえてフランジバックの数値をアピールしなかったのだろう。

筆者の印象だが、フランジバックの数値を気にするのはマウントアダプターで古今東西のレンズを付けて遊びたいという趣味のユーザーだ。フランジバックが短ければそれだけマウントアダプターを間に挟む余地が生まれるので、レンズ遊びの可能性が広がる、という理由である。その観点では、よりフランジバックが短く、ボディ内手ブレ補正(α7シリーズは一部機種に限るが)も備わったソニーEマウント機やニコンZシリーズのほうが魅力的かもしれない。あとは、それぞれが採用するイメージセンサーの斜入射特性がどうかにかかってくるだろう。

RFレンズのロードマップ。ニコンZシステムが2020年には広角・標準・望遠のF2.8ズームを揃えると予告しているのに比べると、こちらは先が読めない。
新マウントの通信システム。
「レンズなしレリーズ」の設定がある。

マウントアダプター

ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R
回転機構が備わる。発売時はPLと可変NDを用意。

EOS Rは、マウントアダプター経由でAPS-C用のEF-Sレンズも装着可能。その場合は自動で1.6倍のクロップがかかり、撮像範囲がファインダーいっぱいに拡大される。記録サイズは12メガになる。1:1などを選ぶと、3:2のライブビュー画面内にガイドラインかマスクが表示される。

1.6倍クロップが可能。APS-C用のEF-Sレンズ装着時は自動でこれが選ばれる。
1.6倍(APS-C)クロップ時は12メガ記録。APS-Cクロップを更に1.6倍クロップすることはできない。
1:1のガイドラインを表示したところ。
RFマウントの指標は、EFマウント(赤丸)やEF-Sマウント(白い四角)と異なる。
マウントアダプター経由で「EF16-35mm F2.8L III USM」を装着したところ。

バッテリーはEOS一眼レフと共通

EOS Rの対応バッテリーは「LP-E6N」もしくは「LP-E6」。EOSデジタル一眼レフカメラのEOS 5D Mark II〜IV、EOS 5Ds/R、EOS 6DおよびMark II、EOS 7DおよびMark II、EOS 80D/70D/60Dなどと同じ、キヤノンユーザーにはお馴染みのバッテリーがそのまま使える。

撮影可能枚数はライブビュー表示を「なめらかさ優先」にした状態で約370枚。後日発売となる「USB電源アダプターPD-E1」を使用すると、LP-E6Nをカメラ内充電できるようになるという。

バッテリーはLP-E6NもしくはLP-E6。ミドルクラスのEOS一眼レフカメラと共用できる。
バッテリーグリップ装着例。
バッテリー室に差し込むタイプ。バッテリー2本で使える。
側面端子。USB Type-C端子がある。
シングルSDカードスロット。

メニュー画面

近年のEOSやPowerShotで見慣れた構成を継承しており、既存ユーザーにとってはストレスなく目的の項目を探せるだろう。もちろんタッチ操作も可能だ。

フリッカーレス撮影が可能。

シャッターの動作は、「LVソフト撮影」に注目した。デフォルトでは「モード1」となっている。これを「しない」にすると、シャッターの動作音が2つ聞こえる

・しない:完全メカシャッター
・モード1:先幕電子シャッター
・モード2:分離チャージ(シャッターボタンを離すと閉じたシャッターが開く)

このほか、完全無音となる「サイレントシャッター」もある。シャッター動作がない代わりにライブビュー画面の周辺部に白い枠が点滅し、撮影タイミングを知らせる。電子シャッターでの無音撮影を前提とした「ソニーα9」が“いつ撮れたかわからない”という不安を解消するべく、同種の工夫を取り入れていた。

また、一眼レフカメラに対するミラーレスカメラの絶対優位のひとつと言われているものに「瞳AF」機能がある。ソニーα7の最新世代は瞳AFの連写追従をウリにし、ニコンZシリーズには現状搭載されておらず、EOS Rでは顔優先のワンショットAF時のみ使える。

瞳AFのメニューがある。

新しいEF超望遠レンズなども展示

発表会には、同日発表されたEFマウント超望遠レンズ「EF400mm F2.8L IS III USM」と「EF600mm F4L IS III USM」も展示されていた。

大幅な軽量化と、シャッター速度5段分に向上した手ブレ補正機構が特徴の2本。フォーカスリングは電子式になり、敏感度をスイッチで3段階に変えられるようになった。

三脚座の脚部分は、底面積の小さい一脚用も付属している。サービスセンターに持ち込んで工賃1,000円を支払うとその場で交換してもらえる(紛失した場合は部品代もプラス)。

EF400mm F2.8L IS III USM
指を掛けているリング(従来の再生リング)を左に回すか右に回すかで、合計2点のフォーカスプリセットを記憶できる。
距離指標がレンズ前方に移動した。
EF600mm F4L IS III USM
ドロップインフィルター。
新規光学設計で実現した、大幅な軽量化が特徴。
EOS M用の大口径単焦点レンズ「EF-M32mm F1.4 STM」
レンズ鏡筒径は、これまでの全EF-Mレンズと共通。フィルター径も43mmで同じ。
EOS Rでも使える小型ストロボ「EL-100」。左右バウンスも可能になった。

まとめ

発表会では、税別23万7,500円というボディ価格に「安い!」という驚きの声が上がった。ニコンZ 7(4,575万画素)の“44万円前後”を見てしまった後だから安く感じるのかもしれないが、有効3,030万画素のEOS Rは「ソニーα7 III」や「ニコンZ 6」が直接のライバルと見られ、妥当な価格設定と感じる。

EOS Rというカメラ自体のパッケージングは、像面位相差AFや電子先幕シャッターなど、EOSの一眼レフカメラやミラーレスカメラでそれぞれ育んできた技術を結集したもので、とても手堅い印象。操作性と相まって、安心してEFマウントの一眼レフカメラと併用できそうだった。

製品発表会は「キヤノンのフルサイズミラーレスを待望する声に応えたカメラ」と締めくくられており、キヤノンユーザーにとって自然に使える仕上がりは、まさにその言葉通りと感じる。10月下旬の発売後、市場がどのような反応を示すか楽しみだ。

近日中にタッチ&トライの機会がある。

本誌:鈴木誠