交換レンズレビュー
ニコン NIKKOR Z DX 16-50mm f/2.8 VR
純正らしい解像力と自然なボケ描写 待望の大口径標準ズームレンズ
2025年12月20日 12:00
「NIKKOR Z DX 16-50mm f/2.8 VR」は、APS-Cサイズ相当のイメージセンサーを搭載するニコンDXフォーマットに対応したZマウント用の大口径標準ズームレンズである。35mm判換算での焦点距離は24-75mm相当となる。
DXフォーマットのニコン純正レンズとしては希少な大口径標準ズームレンズがようやく登場したわけだが、最新設計によるその描写性能は高く、使い勝手の良さも申し分なかった。
操作性
レンズ先端から順に「ズームリング」と「コントロールリング」を備えている。「コントロールリング」にはフォーカス(M/A)のほか、絞り、露出補正、ISO感度などを割り当てることができ、よく使う設定を手元で操作可能だ。
鏡筒本体にはボタンやスイッチ類が一切なく、極めてシンプルな構成。レンズ名称の通りVR(手ブレ補正機構)も内蔵しているが、その切り替えは原則としてボディ側で行う仕様だ。ただし、一般的な撮影なら、大きく不便を感じることはないだろう。
APS-C用の標準ズームレンズだけあって、全体のサイズ感は妥当なものといえる。幅広いシーンでの使い勝手の良さに直結し、操作性の面でもバランスよく扱いやすいと感じた。
同梱のレンズフードは花型の「HB-118」。ズームレンズ用のレンズフードは広角側に合わせて設計されるのが一般的だが、それにしてもこのフードは深く、造りもしっかりしている。
解像性能
広角端16mm(24mm相当)にして、あえて開放F2.8で建造物を撮影してみた。結果は極めて良好。絞り開放ながら中央はシャープで、周辺部も解像感を大きく損なっていない。画面全体として高いコントラストとシャープネスを維持しており、細部のレンガのパターンや窓枠のラインも明瞭に再現されている。
望遠端50mm(75mm相当)の絞り開放でも、画面全体で高い解像感が得られた。中央部から周辺部にかけての解像の低下はわずかで、広角端で優秀だった均質性は望遠端ではさらに高まっている。
近接撮影性能
広角端16mm(24mm相当)での最短撮影距離は0.15m。レンズフードを付けた状態では被写体に衝突しそうなほどの近接撮影が可能で、いわゆる広角マクロ的な撮影が楽しめる。花や小物を印象的に写し込み、背景の広い環境描写を活かした写真表現にも役立つ。
一方、望遠端50mm(75mm相当)の最短撮影距離は0.25mで、このとき撮影倍率は最大の0.24倍となる。1/4倍に迫る近接撮影性能を備えており、テーブルフォトや花の接写など、身の回りのものを大きく写すのに十分な性能といえるだろう。
作例
AFは特別に速いというわけではないが、一般的な撮影であれば応答速度は十分に良好で、かつ正確にピントを合わせてくれる。もちろん、今回使用した「Z50II」の被写体認識機能にも対応している。
大口径ズームレンズだけに、ボケ味の良否も気になるところだ。試写した印象としては、柔らかく溶けるように自然な印象だった。もちろんピント面は際立ってシャープであり、その対比を楽しめることだろう。
センサーサイズが小さいほど最短撮影距離を短くでき、本レンズも小さな被写体を大きく写すのが得意だ。おかげで小さなカタバミの花も、周囲の状況を含めてしっかり表現することができた。ピント面の被写体のエッジに素晴らしいキレがあることにも注目してほしい。
もちろん、スナップ撮影でも十分に活躍してくれる。明るい開放F2.8を活かせば、薄暗い路地や屋内でもISO感度を上げることなく、高感度ノイズが少ない作品を撮影できる。解像性能と大口径がもたらす余裕のある描写が、本レンズの活躍の場をさらに広げてくれるだろう。
まとめ
ニコンらしい確かなシャープネスとコントラストに加え、柔らかく美しいボケ味の共演は、まさに最新設計の大口径ズームレンズならではだ。サイズ感も妥当で、APS-Cサイズ用レンズを使うメリットを十分に享受できる。ズームリングとコントロールリングには適度なトルク感があり、使用感も上々といえる。
35mmフルサイズこそが上位と意識しがちだが、APS-CにはAPS-Cなりの多くのメリットがある。本レンズは、そんなAPS-Cの特性を最大限に活かせる1本といえる。さまざまなシーンで有効に使える、待望の標準ズームレンズがようやく登場したという感想だ。
















