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質実剛健・真面目な造りのカメラバッグ「GW-ADVANCE タンク」をレビュー

バックパックからショルダーまで、扱いやすいボックススタイルを追求

ハクバのカメラバッグ「GW」シリーズに新たなモデルが追加された。昨年の7月に新GW-PROシリーズが発売されたことは記憶に新しいと思うが、今回は新シリーズとなる「GW-ADVANCE タンク」から6モデル、同じく新シリーズとなる「GW-STANDARD リッジ」から5モデルの合計11モデルが新たにラインアップされた。

というわけで2回に分けて、これらの新ラインを解説したい。第1回目は「GW-ADVANCE タンク」を紹介していく。

GWシリーズとは?

1981年に誕生した「Godwin」シリーズから2003年に「GW-PRO」と名前を変え、今年で43年の歴史を持つカメラバッグシリーズだ。昨年、新GW-PROシリーズとして「マルチモードバックパック30/20」「リア/フェイスゲートバックパック20」「フェイスゲートローラーBP」「エアポートローラー」「マルチモードショルダーバッグ15」「スリングショルダー6」の8モデルが登場したことは記憶に新しいだろう。

新シリーズ「GW-ADVANCE タンク」の立ち位置

前述のGW-PROシリーズは「PRO」の名前が示す通り、プロ仕様のヘビーデューティーなハイエンドカメラバッグであるわけだが、その堅牢性や作り込みから価格も高くなっている。それに対し、今回紹介する「GW-ADVANCE タンク」シリーズは、機能性はしっかりと確保しつつ、価格をひとまわり抑えたセカンドラインの立ち位置となっている。

例えばハクバオンラインショップでGW-PROとGW-ADVANCE タンクの価格を比較してみると、同程度のサイズなら、GW-ADVANCE タンクのほうが2万円ほど安くなっている。

GW-ADVANCE タンクのラインアップ

そうしたコストカットに寄与している部分は多くあるかと思うが、わかりやすいところでいうと表地の生地の違いがある。GW-PROシリーズは耐水性、耐摩耗性、引き裂き強度に優れたDIMENSION-POLYANT社のX-Pac X50や高強度500Dナイロンを採用しているのに対して、GW-ADVANCE タンクシリーズではPUコーティングポリエステル、ナイロン、ターポリンといった比較的ベーシックな素材になっている。

とはいえ極端に弱いなどということはなく、触れてみた感触としては十分な強度があると感じられるものだ。むしろややツルリとした生地のため、ちょっとした汚れの拭き取りやすさに関しては、GW-PROシリーズよりも都合が良いかもしれない。

またGW-ADVANCE タンクの全モデルの底面には、水や汚れに強いターポリンとフットスタンドが装備されている。これはGW-PROと同じだ。

GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパックの底面。素材にはターポリンを採用。フットスタンドも備えている

GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック

ここからはGW-ADVANCE タンク各製品の特徴を見ていこう。まずは基本的なフロントアクセスのバックパックモデルから。

「GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック」は、26リットルモデルと17リットルモデルの2サイズで展開。基本的にサイズの違いのみで、主な仕様などは共通となる。

GW-ADVANCE タンク フェイスゲートバックパック。左から26リットルモデル、17リットルモデル

バッグは全体が黒で、控えめなサイズのロゴのみがグレーというシンプルかつシックなデザイン。曲線や凹凸も少ないボックス型のフォルムには、タンクという名にふさわしい潔さも感じられる。

現物を見た印象はそれぞれのリットル数から想像するサイズ感よりもひと回り大きく見えた。とはいえ背負ってしまえば日本人の体型に合わせて設計されたショルダーハーネスが肩にすっと馴染み、大きく重たいといった印象はない。

背面(26リットルモデル)
背負った状態(26リットルモデル)

カメラ収納部へのアクセスは製品名の通りフロントパネルを開ける方式で、全開にすれば気室全体に一度でアクセスできる。

収納部の深さは26リットルモデルで約170mm、17リットルモデルで約140mm。けっこう深めに設定されているので、たいていの小型の望遠ズームレンズや大きめの単焦点レンズもすっぽりと収められる。奥行きを抑えたバックパックが多い中、カメラバッグとして真面目な設計といえるだろう。

26リットルモデルでの収納力は、35mmフルサイズ機種の一般的なフルセットに加えて、予備カメラやストロボ、ドローンなどプラスアルファの機材も余裕で詰め込むことができる。冬季は防寒着などを入れてもいいだろう。

収納部高は26リットルモデルで約500mm、17リットルモデルで約450mmあるので、仕切りを調整すれば超望遠ズームレンズを付けたままのカメラを収納することも可能。

26リットルモデルの収納例。VC-C4EM(バッテリーグリップ)とFE 24-70mm F2.8 GM IIを装着したα7 IV、FE 16-35mm F2.8 GM II、FE 70-200mm F2.8 GM OSS II、FE 35mm F1.4 GM、FE 50mm F1.4 GM、FE 90mm F2.8 Macro G OSS、HVL-F60RM2、α7 IVを格納した状態

GW-PROでもそうだったが、ハクバではカメラバッグの収納部へのさまざまなアクセス方法を模索し、製品に取り入れている。このフェイスゲートバックパックはフロントパネル開閉型のバッグではあるが、上位モデルのGW-PROと同じく「4方向マルチアクセス」仕様となっている。

フロントパネル開閉部を上部だけ開ければトップアクセス方式となり、レンズを付けたままのカメラを簡単に出し入れできる。

バックパックを下ろした状態で機材を素早く取り出せるトップアクセス

その際にファスナーが開きすぎないようにする、ファスナーストッパーも用意されているのがハクバらしい丁寧さだ。

ファスナーストッパーがあるので、上側を少しだけ開くような使い方も可能

バッグの側面にはカメラバッグを降ろさずに機材を取り出せるサイドアクセス機構を備える。左右の両側それぞれにだ。

サイドアクセス(26リットルモデル)

収納部幅は26リットルモデルで約320mm、17リットルモデルで約290mmあるので、70-200mm F2.8クラスの望遠ズームレンズを付けたままのカメラボディを収納可能だ。

なお、これだけ多くのカメラ収納部へのアクセスを備えているとバッグとしての強度が弱くなりそうだが、メイン収納部の両サイドにグラスファイバーフレームを内蔵することで、しっかりとした強度を保っている。

フロントパネル全開時にも蓋が開きすぎないように止められるベルトも装備。

一気に開かないようにするベルトを装備(26リットルモデル)

三脚は前面のセンター、または両サイドのポケットに収納可能。

三脚の装着例

ポケットも数多く用意されている。フロントパネル裏には中が見える半透明のポケットが2つ。

フロントパネル裏の大型ポケット

フロントパネル上部には中が細かく仕切られたポケット、中段には左右で独立したポケットが用意されている。

横から取り出せる中段ポケット
細かく仕切られた上部ポケット

また前面上部にはカラビナなどを取り付けられるデイジーチェーンも装備。小物をぶら下げてアウトドア感を演出するのも楽しそうだ。

デザイン上のアクセントともいえるデイジーチェーン。ポーチなどを装着できるなど実用性も高い

専用レインカバーも同梱されているが、構造がとてもユニークで実用的だ。一般的にバックパック用のレインカバーといえば、バックパック本体をスポッと覆うだけで、バックパックと背中の隙間には雨が入り込んでしまう。それに対し本製品のレインカバーは、カバー自体がショルダーハーネスまで伸びた形をしており、背中との隙間をカバーする構造になっている。

首元まで覆うレインカバーが魅力的。機材を守るだけでなく、バックパックと体の隙間に雨が極力入ってこないのはうれしい

GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック26/17

GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック。左から26リットルモデル、17リットルモデル

上記のフェイスゲートバックパックに対し、メイン開口部を背面側に設置したのが「GW-ADVANCE タンク リアゲートバックパック」。それ以外の機能は基本的に同じだ。デザインもほぼ同じ。開口部の構造が真反対になっているのに、よくぞここまで同じにできたな、と変な部分で感心してしまった。

リアゲートということで背中側が開く
26リットルモデルを背負った状態

上記フェイスゲートバックパックと同じく4方向マルチアクセス仕様となっているわけだが、背面アクセスの構造上、トップアクセスと背面アクセスが別の口となっている。そのためメイン開口部をフルオープンしたときにはフェイスゲートバックパックよりも箱感が強くより安心感があった。

収納例。入っている機材はフェイスゲートバックパックと同じ

GW-ADVANCE タンク レンズバックパック36

GW-ADVANCE タンク レンズバックパック36
背負った状態

その名の通りレンズ運搬に特化したモデルだ。想定される収納機材は、縦位置グリップ一体型ボディ+600mm F4の大口径超望遠レンズ+テレコンバーター。これらを装着した状態、取り出してすぐに撮影できる状態での収納が可能だ。GW-PROシリーズにはない製品ジャンルになる。

見た目はかなり細長いが、背負ってみると超望遠レンズの重さも気にならない心地よいフィット感だ。中で機材がぐらつかないように固定用のベルトも装備されている。

収納例。VG-C4EMを取り付けたα7 IVに、FE 600mm F4 GM OSSを装着。これがすっぽりと入る

こうしたレンズバックパックは、一般的に中央付近にデッドスペースが生まれてしまう。が、本製品ではそのスペースを有効活用し、バッグ両側面に大きめのポケットを装備している。かさばる防寒着や携行食を入れておくのに良さそうだ。70-200mm F2.8クラスの予備レンズも入るが、クッションはないのでレンズポーチに入れたうえで収納しよう。

両側面に比較的大きな収納スペースを確保
外側からその収納スペースにアクセスできる
レインカバーも付属する

GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26

GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26

「GW-ADVANCE タンク ショルダーバッグ26」は“現場”を意識した大容量のプロ用ショルダーバッグだ。ショルダータイプながら26リットルの大容量で、35mmフルサイズのカメラボディと大口径ズームレンズのセット、サブ機やストロボなど多くの機材を一度に持ち運べる。

収納例。70-200mm F2.8がちょうど収まる高さだ

まさに持ち運ぶ、という点を非常に意識して作られており、肩にかけるショルダーハーネスとは別に可動式のトップハンドルも装備している。このトップハンドルは上面パネルではなくバッグ本体側に取り付けられているため、上面のジッパーを閉めていなくても持ち上げられるようになっている。機材をすぐに取り出せる速写性を確保しつつすぐに移動もできるという実に考えられた仕様だ。

トップハンドルが便利。上面を閉めなくても持ち上げられる

また本体の上面側両サイドにはキャリーハンドルも装備され、両手で持ち運ぶのも容易にしている。

上面パネルには透明で大きなポケットも装備されている。撮影のプログラム表などを入れておけば、すぐに確認できるようになっているのも使いやすいポイントだ。イベントやブライダルの撮影をする方なら同意してもらえると思う。

バックパックタイプにはない、外から見える大きなポケット。使い方はさまざまに考えられる

前面のポケットも大きく、中に仕切りも多いため撮影アクセサリーへのアクセスも良好。上面パネルのバックルと干渉しないよう設計されているのも、開閉の際に手間がなくて良い。

このポケットも大きく開いて使いやすそう

サイドには広い開口部のドローストリングポーチ(いわゆる巾着袋)が付けられている。開閉はループを引っ張るだけで良く、非常にスムーズで使いやすい。

側面に取り付けられる2種類のポーチが付属。そのうち1つは巾着タイプだ

なお両サイドはデイジーチェーン仕様となっているためポーチを付け外したり、他のアクセサリーをカラビナで吊るしたりと拡張性がある。

ショルダーバッグは片方の肩に負荷がかかる構造上、バックパックタイプに比べて肩が疲れがちだが、本製品のショルダーパッドは厚みのあるクッションが入っており、その負荷が最小限に抑えられている。

ショルダーベルトには大型のパッドを装備

またショルダーベルトは取り外しが可能なため、自分で気に入っている別のベルトに取り替えることができるのも良いポイント。

三脚の装着例。長い三脚の場合は、対角線上に斜めに取り付けるよう調整できる
背面にはキャリーハンドルに取り付けるためのベルトを装備
付属のレインカバーを装着

まとめ

GW-PROシリーズの弟分的な立場で登場したGW-ADVANCE タンクシリーズだが、「本当に弟か?」と思ってしまうほどの本気度で作られている。コストは抑えつつも撮影体験やユーザビリティーはしっかりと確保できるよう、基本設計を中心にしっかり仕上げられている点がとても良い。

全体的にシックなイメージのデザインといえるが、デイジーチェーンにちょっとアクセントになりそうなアウトドア用品を吊り下げるだけでも、もとがシンプルなだけに印象を大きく変えられるだろう。

こうしたボックススタイルで大容量のバックパックは、これまでカメラ用であまり見かけなかったタイプといえる。一方、純然たる箱形のショルダーバッグは、近年新製品がリリースされていなかったこともあり、現代的な素材や機能性をもったニューフェイスの登場を待ち望んでいたユーザーも多いのではないだろうか。

とがったプロ仕様を追い求めたGW-PROシリーズとは、異なる性格のGW-ADVANCE タンク。ニーズに合う撮影者がきっといるに違いない。

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。趣味はDIY。公益社団法人 日本写真家協会 会員(JPS)・石の湯ロッジ今浦友喜写真教室