トピック

大量の機材をスムーズに運ぶなら…堅牢性と利便性を両立したローラータイプ

ハクバ新GW-PROカメラバッグの魅力を解説(その4)

左からGW-PROフェイスゲートローラーBP、同エアポートローラー

多機能で大容量、耐候性に優れキズにも強いヘビーデューティーなハクバのカメラバッグ「GW-PRO」シリーズ。2023年7月にフルリニューアルし、全8モデルがラインアップされている。どれも黒を基調とし、シックで落ち着いた雰囲気を持つ現代的なカメラバッグである。

最終回の今回は「フェイスゲートローラーBP」と「エアポートローラー」を紹介していこう。

ローラータイプに求められるものとは

今回紹介する両モデルとも、ローラータイプのカメラバッグである。一般ユースはそれほどないと思うが、出張ロケや大口径望遠レンズを使うスポーツ、ムービーや、中型以上のドローンなど、大量の機材を運ぶ必要があるプロカメラマンの利用が大多数を占める。

そんなプロユースのローラーバッグに求められるものとしては、まずは当然ではあるが大容量であることだ。それでいて大切な機材を預け荷物にするわけにもいかないので、旅客機での移動時に機内持ち込みできるサイズであることが求められる。

また移動中に機材が壊れるようなトラブルも避けたいので堅牢性も絶対条件である。

そうした点から今回紹介する両モデルとも、GW-PROシリーズ共通の「X-Pac X50」と高強度500Dナイロンを生地に使用しつつも、他モデルでは採用されていない耐水圧1,500mmのレインカバーを付属。さらなる機材の保護を実現している。

付属のレインカバーを装着したところ(フェイスゲートローラーBP)

また常時身につけているバックパックやワンショルダーバッグと違うため、防犯対策としてファスナーにはロックも装備されている。

両モデルともローラーは大型の2輪タイプで、一般的なキャリーバッグの4輪タイプとは安心感がまったく異なる。ハンドルも堅牢性の高い造りで、重たい機材を入れた際の操作性もしっかり確保されている。

ローラーからバックパックに早変わり…フェイスゲートローラーBP

GW-PROフェイスゲートローラーBP

「フェイスゲートローラーBP」は細かな配慮と、迅速な開閉による速写性が魅力の2Wayタイプのローラーバックだ。

外寸は360×540×240mmで、内寸は320×460×140~170mm。一般的な旅客機の機内に持ち込めるサイズに収まっている。ハンドル収納部があるため内部に凹凸があるものの、「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」を取り付けた「α7R V」がそのまま収納できる程度の奥行きはある。

RF200-800mm F6.3-9 IS USMを装着したα7R Vを収納。さらにボディ1台、レンズ5本を入れている

デザイン的には「フェイスゲートバックパック20」の横幅を広げたイメージで、フロント全面が開く1気室構造となっている。「フェイスゲートバックパック20」と同じく、ファスナーの上部だけを開いたトップアクセスも可能だ。

上部から機材を取り出すことが可能

一般的なローラータイプのカメラバッグは横倒しにしてファスナーを全開にしないと機材の出し入れができないが、「フェイスゲートローラーBP」なら、バッグを立てた状態で上から機材を取り出せるのはありがたい。

重量は3,600gで、ローラーとしては軽量な部類といえる。その理由としては製品名にBPとあるように、バックパックに早変わりする2Wayタイプだからだろう。

肩ベルトを引き出すことでバックパックにもなる

面ファスナーで閉じられている収納部を開くことで、すぐにショルダーハーネスが出てきてバックパックになる。かなり手軽な印象だ。ローラー状態だとショルダーハーネスはスッキリと収まっているので、バックパックに変身するとは一見してわからない。

収納する必要があるためか、同じGW-PROのバックパックモデルほどショルダーハーネスの厚みはない。しかし背負ってみると、流石は日本人体型に合わせて作られたGW-PROといったところ。フィット感はとても良いし、背面部のクッションもしっかりしている。想像以上に普通のバックパックに近い背負い心地が得られた。

ハンドルはシングルバーのT字タイプ。持ち手は緩やかなカーブを描き、指の股に当たる部分も丸く滑らかに仕上げられている。手に馴染む形状だ。バー自体も堅牢な印象で、重い機材でもしっかり引くことができる。

ホイールは全体のデザインに馴染む黒色でスマートな印象。TPU製のホイールの質は高く、引いているときの抵抗は少なくて音も静かだ。試しに筆者所有の2輪タイプの一般的なキャリーバッグと音を比べてみたが、走行音は半分かそれ以下だった。また振動も少ないように感じた。振動をあまり与えたくないカメラ機材には最適なホイールだろう。

そして個人的にかなり気に入った点は、バッグ側面下部に内蔵されたホイールカバーだ。バックパックモードにしたときに衣服にホイールの汚れが付くのを防いでくれるアイテムだ。

ホイールカバーを引き出してタイヤを覆うと、衣服を汚れから守れる

ホイールをまるっとカバーできるのがいいし、手間なく瞬時に取り付けられるのもいい。また、めんどくさがり屋な筆者としては帰宅したときに、ローラーバッグのホイールの汚れを拭き取るか? いやこれくらいならいいか? などといつも悩むのだが、このホイールカバーがあればそんな悩みがなくなるのが地味にうれしい。

三脚はサイドに取り付け可能
側面には薄物が入る広いポケットを装備

造りの良さと堅牢性が光る…エアポートローラー

GW-PROエアポートローラー

もうひとつの「エアポートローラー」は、オーソドックスなデザインの強固なローラー。外寸は370×540×240mm、内寸は310×450×130~170mm。こちらも機内持ち込み可能サイズだ。重量は4,500g。

良い意味でカメラバッグ感がほぼなく、スタイリッシュなビジネス用キャリーバッグといった雰囲気だ。ファスナーにTSA対応のダイヤルロックがつくので、セキュリティー面でも安心感がある。

米国路線などで必要になるTSAロックを装備

ただし止水ファスナーではない通常のYKK製ファスナーとなるので、雨が降った際には、付属のレインカバーを使うようにしよう。

外装には保護板が入っており、非常に堅牢な作りだ。さらに各コーナー部にはプロテクターが、底面にはボトムプロテクターが装備され、バッグ自体の耐久性を高めている。

段差に強いプロテクターを底部に装備

ファスナーを開けると、一気にプロ用カメラバッグの見た目に。可変式の仕切りがこれでもか、というほど敷き詰められており多彩なカスタマイズを可能にする。フルサイズミラーレスカメラに交換レンズを10本程度入れられる内容量で、ドローンやストロボも詰め込みやすい。

FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSにα7R Vを装着して収納。さらにα7R IVとレンズ6本、クリップオンストロボを収納している

蓋部分には長さ調整可能な開き止めストラップも装備されており、不用意に全開するのを防ぐと同時に、最小限での開閉で作業できる。蓋内側の中身が見えるファスナーポケットも使いやすい。

メイン器材室の蓋は固定できる。蓋裏側のポケットも大きくて使いやすい

フロント面にはファスナーなしのポケットと止水ファスナー付きのポケットがあり、ノートPCや書類などが豊富に入る。メインの収納部は空港内や機内で開けにくいため、外側にこうした収納があるのはありがたい。

ハンドルはコの字の2本バータイプで、堅牢性や操作性に不満はない。ホイールは滑らかな動きで静音性に優れたTPU製。移動も快適だ。

なお裏技的な使い方だが、カメラ収納部をすっぽりとバッグ本体から取り外せる。すると、高品質な部類の一般的なキャリーバッグに早変わりする。

フロントからベルトを引き出すと、大型の三脚を装着できるようになる
側面にもしっかりした脚を装備

まとめ

ローラータイプのカメラバッグを「大量の機材を運ぶだけ」の存在に思っている方も多いかもしれないが、実は意外にも利便性は高い。特に「フェイスゲートローラーBP」はローラーとバックパックをシームレスに使い分けられる優れものだ。多くの機材を持ち運ぶプロユーザーはもちろん注目してほしいが、一般ユーザーでも、もし「重たい」という理由で使いたい機材や交換レンズを家に置いて撮影に出てしまっているなら、ローラータイプのカメラバッグを検討しても良いだろう。


さて、ここまで4回に分けてハクバの新GW-PROシリーズを紹介してきた。

大容量で多彩なカメラアクセスを可能にする、まさに全部入りカメラバッグの「マルチモードバックパック30」「同20」。

スマートなフォルムでも本格的に使え、拡張性もある「リアゲートバックパック20」。オーソドックスな使い勝手と速写性も両立した「フェイスゲートバックパック20」。

都会派だけど大容量な「マルチモード ショルダーバッグ15」と超軽量スタイルで撮り歩く「スリングショルダー6」。

そしてシームレスにバックパックモードに変身する「フェイスゲートローラーBP」と絶対的な安心設計の「エアポートローラー」。

計8種類という実に多彩なラインアップを展開しているGW-PROシリーズ。ぜひ店頭などで質感や機能性、背負い心地などを体感してみてほしい。きっと各スタイルのユーザーにマッチするカメラバッグが見つかるはずだ。

撮影:曽根原昇

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。