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40mm単焦点レンズの素晴らしさを伝えたい!【第4回】

富士フイルム「XF27mmF2.8 R WR」編

XF27mmF2.8 R WR。実勢価格は6万3,000円前後。装着ボディはX-H2S

「40mm単焦点レンズの素晴らしさを伝えたい!」というわけで始まった本連載。第4回となる今回は、富士フイルムの27mm単焦点レンズ「XF27mmF2.8 R WR」のレビューをお届けします。

40mm単焦点レンズの特集なのに焦点距離27mmとは!? と思われるかもしれませんけど、これは富士フイルムXシステムのイメージセンサーがいわゆるAPS-Cサイズだからで、35mm換算ですと27mmは41mm相当≒40mmとなり、取り上げてきた他のレンズと画角はほぼ同じになります。

外観・仕様

「XF27mmF2.8 R WR」は、2021年3月に登場したAPS-Cサイズ対応の40mm単焦点レンズ。同じく富士フイルム製で2013年7月発売の「XF27mmF2.8」というレンズがありましたが、本レンズはその「XF27mmF2.8」のリニューアル版になります。違いはというと、新たに絞りリング(レンズ名称中のR)と防塵防滴機能(レンズ名称中のWR)を搭載していることで、基本的な光学系は同じです。

本レンズの特徴は、レンズの全長が短い薄型の、いわゆるパンケーキレンズであることにあります。かつては焦点距離40~45mmのレンズに多く設定されていたパンケーキレンズですが、同等の焦点距離で、AF機能をもつミラーレスカメラ用のパンケーキレンズと言えば、わずかに本レンズとパナソニック「LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.」の2つだけです。

初期のパンケーキレンズは、3群4枚のいわゆるテッサータイプのレンズ構成を採用することで薄型にしていましたが、設計技術の進歩した現在だけに、本レンズでは非球面レンズを含めた5群7枚というレンズ構成を採用することで、描写性能も本格的になっています。

その実力は確かなもので、同社の4,020万画素高解像カメラに対応した「40MP4推奨レンズ」のひとつに選定されているほどです。

操作系・使用感

外形寸法は最大径×長さは約62mm×23mm、質量は84gとなっています。さすが公式でパンケーキレンズを名乗るだけあって、とても薄く(長さが短く)、そして軽いです。「XF27mmF2.8」と比べると、長さは据え置きのままで、質量が6gだけ重くなっていますが、機能性を増しながらのことですから、実に細やかなことに過ぎません。

この薄型のパンケーキレンズに、フォーカスリングと絞りリングを搭載しているのですから大したものだと思います。2種類のリングは面積の制約からかなり幅の狭い仕様になっていますが、使っていても操作性に大きな不満を感じることはありません。ユーザーの使用感をよく配慮して設計されています。

ボタン類やスイッチ類はいっさい装備していませんが、XFレンズの広角から標準域のレンズは、どれもボタン/スイッチ類をほぼ搭載せず、ボディ側の設定で操作する仕様になっていますので、本レンズが幅の薄いパンケーキレンズだから、というわけではありません。

作例

紅葉シーズンに信州で撮った1枚です。仲間で連れ立っての撮影旅行でしたが、鄙に時折あらわれる美しい瞬間に感じ入り何気なく撮りました。何気なくではありましたが、逆光に浮かぶ里山の情景を階調豊かに捉えてくれたので、個人的なお気に入りの写真となりました。やはり、パンケーキレンズながら、本格的な光学性能を備えたレンズであると実感した次第です。

X-H2S/XF27mmF2.8 R WR/絞り優先AE(1/1,000秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 400

小さな池に写り込んだ風景を撮影しました。眼に止まったものを素直に切り撮ることができるのが40mm相当の単焦点レンズの良いところで(撮影者による個人差あり)、この写真も特に深くは考えず水面の反射をそのまま切り撮っています。撮影後にたくさん撮った写真を眺めるのも楽しくなります。

X-H2S/XF27mmF2.8 R WR/絞り優先AE(1/40秒、F5.6、±0.0EV)/ISO 400

キクの花の展覧会でしたが、良い光が差し込んでいたので撮ってみました。開放絞り値がF2.8と、単焦点レンズとしては暗めであるうえに、被写界深度がフルサイズより深くなるAPS-Cサイズ用のレンズですので、それほど大きなボケは望めませんが、ピントを合わせた被写体の立体感を強調するのには十分な効果を見せてくれます。薄型のパンケーキレンズとしては、二線ボケなども少なく素直で自然なボケ味です。

X-H2S/XF27mmF2.8 R WR/絞り優先AE(1/340秒、F2.8、−2.3EV)/ISO 400

人知れず気持ちよさそうに日向ぼっこをするネコを見つけました。富士フイルムのXシリーズカメラは、同社のフィルムを再現したり、特定の写真表現をイメージしたりした、色仕上げ設定のフィルムシミュレーションを搭載するのが特徴です。そのフィルムシミュレーションのひとつである「ノスタルジックネガ」が筆者のお気に入りで、本レンズでスナップ撮影をするときは好んで使っています。シャドウの色乗りが良く、優しいアンバーな色調が好きです。

X-H2S/XF27mmF2.8 R WR/絞り優先AE(1/12,000秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 1600

まとめ

パンケーキレンズである本レンズ「XF27mmF2.8 R WR」は普段から持ち歩くのにピッタリなレンズだと思います。

薄型設計だけに開放絞り値がF2.8と少し暗くなってしまうのがデメリットかもしれませんが、大口径ズームレンズと同じ明るさで、この携帯性を得られるというなら納得できるというものではないでしょうか。現行のデジタルカメラの高い高感度性能でしたら、シャッター速度が遅くなることに悩まされることもそれほどはありません。

実は本レンズ、筆者の愛用レンズでもあり、ここに載せた作例も普段持ち歩いて撮っている写真から選んだものです。絞り優先AE(モードダイヤルのA)で撮ることが多いので、絞りリングを操作するのがとても楽しい。絞りリングがあると不思議と撮影の楽しさを実感できますので、安くなっている「XF27mmF2.8」の中古よりも、現行の本レンズを求めるのが筆者としてはオススメです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。