特別企画

40mm単焦点レンズの素晴らしさを伝えたい!【第6回】

パナソニック「LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.」編

LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.。実勢価格は4万円前後(税込)。装着ボディはLUMIX G9PROII

「40mm単焦点レンズの素晴らしさを伝えたい!」というわけで始まった本連載。今回は、パナソニックの20mm単焦点レンズ「LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.」をお届けします。

本レンズはマイクロフォーサーズシステム規格に準拠したレンズですので、焦点距離は35mm換算で40mm相当。前回のOM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」と同じく、40mm(相当)単焦点レンズの仲間というわけです。

発売時期が早く、現行の40mm単焦点レンズのなかでは古参になりますが、40mm(相当)単焦点レンズの素晴らしさを知るためのツボがしっかり押さえられた、なかなか粋な1本です。

外観・仕様

「LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH.」は、2013年7月に発売されたマイクロフォーサーズシステム規格の20mm(40mm相当)単焦点レンズ。薄型設計のいわゆるパンケーキタイプのレンズであることが特徴になっています。

コンパクトなパンケーキタイプであるにもかかわらず、開放絞り値がF1.7と明るいのは、マイクロフォーサーズ規格の利点がレンズ設計によく活かされたためでしょう。室内や夜間などといった暗所条件でISO感度を上げずにシャッター速度を稼いだり、背景を大きくボカしたりした撮影ができます。

外装に金属を採用した外観デザインはなかなか高級感があり、ボディと組み合わせた時の見栄えの良さからくる満足感は、比較的手に入れやすい本レンズの価格以上に感じます。

操作系・使用感

本レンズの最大径×長さは約63×25.5mm、質量は87gとなっています。同じ40mm(相当)単焦点レンズのパンケーキレンズである、第4回の富士フイルム「XF27mmF2.8 R WR」と比べると少しだけ大きく重くなっていますが、これは「XF27mmF2.8 R WR」の開放絞り値がF2.8であるのに対し、本レンズの開放絞り値はF1.7と明るいことに関係していると思われます。

スイッチ類やボタン類などはいっさい備えられておらず、フォーカスリングがあるのみという、いたってシンプルな操作系。この潔さは第2回で紹介したニコンの「NIKKOR Z 40mm f/2」にも通じるものがあります。

実は、本レンズ(H-H020A)には、光学系は同じで外観デザインの異なる前モデル(H-H020)がありました。現行モデルは鏡筒設計を見直すことで、質量比13%の小型化に成功しているとのこと。やはり、高機能であることよりも、40mm(相当)単焦点レンズらしく、気軽さや持ち出しやすさを大切にしているレンズのようです。

作例

最短撮影距離は0.2mで最大撮影倍率は0.13倍。最大撮影倍率は大したことがないように思えますが、35mm判で換算すると約2倍の0.25倍となります。クローズフォーカスを名乗る「ZEISS Batis 2/40 CF」(第3回参照)ほどではありませんが、かなり寄って大きく撮ることのできるレンズです。ここでも、マイクロフォーサーズシステム規格の長所を上手く活かしたレンズであることが分かります。テーブルフォトなどで便利に使えますね。

LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH./絞り優先AE(1/60秒、F1.7、+0.7EV)/ISO 250

絞り値をF4.0にして植物の群生を平面的にとらえてみました。F4.0でも35mm判換算だとおよそF8.0相当になります。開放絞り値から2段と少し絞っただけで、大変に良好な解像感と気持ちよく高いコントラストが得られます。パナソニックのミラーレスカメラが提唱する絵作り設定「生命力・生命美」によるものなのか、植物が生き生きと表現できているところも素晴らしい。風景写真やネイチャー写真などでも活躍してくれそうです。

LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH./絞り優先AE(1/60秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 1600

野性味あるイメージでネコを撮ってみました。今回組み合わせて使った「LUMIX G9PROII」に搭載されているフォトスタイル「LEICAモノクローム」が、見事にダイナミックなイメージを作ってくれました。本レンズはライカブランドではありませんが、当然のように使えますし、40mm(相当)での撮影スタイルとも相性が良い感じです。

LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH./絞り優先AE(1/60秒、F1.7、−0.3EV)/ISO 200

サボテンを立体感があるイメージで撮りたいと考え、絞り値をF2.8にして撮影しました。ほどよい前後のボケが、ピントを合わせたサボテンの存在感をイイ感じで演出してくれています。本連載で紹介する40mm単焦点レンズのなかでは、最も光学設計が古いためか、開放絞り値ではわずかに乱れていた解像も(拡大してようやく分かる程度です)、F2.8まで絞ると素晴らしく解消されます。最新のフラッグシップモデルとの組み合わせでも、十分に通用する性能にむしろ感心しました。

LUMIX G9PROII/LUMIX G 20mm / F1.7 II ASPH./絞り優先AE(1/60秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 200

まとめ

地味な40mm(相当)単焦点レンズのなかでも、さらにおとなしい存在という印象の本レンズですが、実はミラーレスカメラ用としては40mm(相当)単焦点レンズのパイオニア的な存在であります。そう考えると、パナソニックはスナップ撮影を含め、日常の身近なものを撮ることに理解あるメーカーなのだなと、しみじみありがたさが感じられてくるのだから不思議なものです。

そして、大切なのは3万円台前半で買える優しいお値段。この点でも「NIKKOR Z 40mm f/2」に通じるものがあるように思えます。

開放絞り値での描写が少しだけ甘いのがデメリットと言えばデメリットかもしれませんが、そこはパイオニアとして目をつぶることにしましょう。レンズの個性だと受け止めれば、大きく気にすることはありません。逆に、フルモデルチェンジなんてことになると、価格が跳ね上がってしまう可能性もありますので、LUMIXユーザーは今のうちに手に入れた方が吉かもです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。