特別企画
8月24日のブルーインパルス展示飛行を楽しむ方法
撮影アドバイスと、在宅で体感できるコンテンツを紹介
2021年8月20日 12:00
東京2020オリンピックに際し、開会式の7月23日に東京上空でブルーインパルスによる展示飛行が行われました。「時間が合わず見逃した!」という方も「撮れたけどイマイチで……」という方も、残念がることはありません。来る8月24日には、パラリンピックの開催に合わせて再びブルーインパルスの展示飛行が予定されています。
この記事では、今度こそカッコ良く撮りたい!という人のために、準備しておきたいことや撮影のヒントをお伝えします。たまたま「写った!」というところから、より狙いに近い形で「撮った!」となれば、素敵な思い出となること間違いなしです。
なお、防衛省もTwitterを通じて「遠方から県境をまたいで都内にお越しになっての観覧はご遠慮ください」とアナウンスしていますので、今回は展示飛行を直接見られないという方に向けて、ブルーインパルス豆知識や、Webの動画配信で楽しむ方法も紹介します。
[目次]
・7月23日の撮影を振り返る
8月24日はスマホやコンパクトデジカメでも撮れる
・撮影の前に……飛行当日までに準備しておきたいこと
事前に公開されている飛行ルートをチェックしよう
飛行する空を見上げてみよう
・カメラ設定のアドバイス
撮影モード
撮影状況に応じて「露出補正」しよう
ズームは決め打ちで
超望遠レンズが必要?
・今回は見られなくても……
ブルーインパルス豆知識
Webの動画配信も充実
7月23日の撮影を振り返る
8月24日はスマホやコンパクトデジカメでも撮れる
今回の展示飛行の見どころは「めったにない東京上空の飛行」、「カラースモークが使用される」の2つです。せっかく東京上空を飛ぶのですから、それが分かる風景や要素を画面に取り入れることをオススメしたいです。そうすれば、今の様々な感情や思い出も蘇る写真となるでしょう。
必ずしもレンズ交換が可能なカメラでなければ撮れないというわけではなく、コンパクトデジカメやスマホカメラでもじゅうぶん狙えます。以下に掲載した7月23日の写真は、リコーのコンパクトカメラ「GR III」(画角は35mm判換算28mm相当。スマホカメラの標準的な画角に近い)で撮りました。場所は当日用事があり出かけていた西新宿で、都庁舎を絡めて撮影してみました。
撮影の前に……飛行当日までに準備しておきたいこと
事前に公開されている飛行ルートをチェックしよう
当日の大まかな飛行ルートがすでに公開されています。自宅や職場が飛行ルートの近くなら、空を見上げるだけでブルーインパルスの雄姿を狙えるかもしれません。
引き続き積極的な外出はしづらい状況ですから、当日の自分の行動予定と照らし合わせて撮影場所を決めても良いでしょう。何にせよ、まずはブルーインパルスが東京のどこをどのような向きで飛行するのか把握しないことには始まりません。
7月23日の展示飛行では大空に五輪マークを描きましたが、8月24日のパラリンピック開会日での展示飛行では、シンボルを描くミッションはないそうです。
飛行する空を見上げてみよう
前回の展示飛行は、予行も本番もほぼ同じ12時40分頃から行われました。今回も開始時刻は直前に発表されますが、おそらく同じような頃と思われます (8月23日追記:24日の本番は14時00分〜14時15分頃と発表されました) 。その時間帯に、ブルーインパルスが通過すると思われる方角の空を確認してみましょう。建物や電線が画面内に見切れてしまうなど、ある程度の想像がつくと思います。
また、太陽の位置も確認しておきたい要素のひとつです。背景となる空がなるべく逆光にならず、青空が濃く見える方向で撮れることが好ましいです。理想としては、ブルーインパルスが遠くから近づいてくる様子がわかるような、空が少し開けた場所(大きな交差点の付近や公園など)で、かつ“思い出の写真”とするための要素としては、構図内に東京を象徴するような何かが絡められることを意識してみると良いでしょう。
ハイテクな手段としては、前回の予行や本番飛行の様子がYouTubeなどで動画として視聴できます。ルートは違えど、飛行のスピード感などは参考になるでしょう。同様に、Googleストリートビューはバーチャルなロケハンに役立ちます。公開されている飛行ルートはあくまでも予定ですし、場所決めはある意味“賭け”ではありますが、闇雲に狙うよりはモノにできる確率が高まりますし、事前準備を経て狙い通りの写真が「撮れた!」時の喜びはひとしおです。
カメラ設定のアドバイス
撮影モード
空に向けてカメラを構えることに慣れていない人は、シャッター速度優先AE(ダイヤルにSやTvと書かれているモード)で、なるべく速く設定しましょう。1/1,000秒くらいまで速く(=時間を短く)しておくのが無難です。
連写が可能な機種では、高速連写でより多くの枚数を撮れるように設定しましょう。連写速度(=1秒間に何枚撮れるか)だけでなく、連続撮影可能枚数(=何枚まで連写を継続できるか)も重要で、これはカメラの機種だけでなく、使っているメモリーカードでも変わります。
連続撮影可能枚数がそこまで多くないカメラでは、早くからシャッターボタンを押し続けることでメモリーカードに転送する前の一時メモリーが埋まってしまい、しばらく撮影不能となることもあります。とてもざっくり言うと、プロ向けの高級なデジタルカメラはこういうところにも余裕が持たせてあります。
撮影状況に応じて「露出補正」しよう
空の状況に応じて画面全体の明るさを調整できるよう、露出補正の操作方法を確認しておきましょう。明るい屋外で画面が見づらい場合には、ヒストグラムを表示してみるのも手です。
本番でブルーインパルスが飛んでくる前にもテスト撮影をして、青空の濃度や景色の明るさが狙い通りか確認しておきます。太陽が画面内に入るような場合は、太陽の強い明るさに引っ張られて画面全体が暗めに写る露出制御となりがちです。
ズームは決め打ちで
例えば高倍率ズームレンズを使用すれば、様々なシャッターチャンスには強いですが、飛行する機体を捉えながらズーミングし、さらに短時間で構図を整えて撮影するには経験を要します。ズーム操作や構図変更に伴ってピントが外れたり、AFのサーチ駆動(カメラが被写体を見失って大ボケになること)に入ってしまいタイムロスとなるリスクを考慮すると、ズームレンズであっても構図やズーム位置はある程度決め打ちにしたほうが良い結果を生むでしょう。
超望遠レンズが必要?
航空機撮影といえば大きく高価な超望遠レンズが必須というイメージですが、今回の展示飛行は、必ずしも超望遠レンズを使わなくても撮影できます。もしそうしたレンズを買うとすれば、「今後もブルーインパルスを被写体として追いかけたい!」と心に決めてからで良いでしょう。
今回は都市上空が舞台となり、基地で行われる「航空祭」より高い高度を飛ぶため、600mmや800mmといった超望遠レンズを使っても、迫力を感じるほど大きく機体を写すことは期待できません。機体が頭上を通過する時間は長くても十数秒程度ですから、より画角の広い標準レンズや広角レンズのほうが、スモークも写しこみつつ、ファインダーや液晶モニターで捉えていられる時間も長くなり、多くシャッターを切ることができるのです。
今回は見られなくても……
ブルーインパルス豆知識
ブルーインパルスとは、航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)の第4航空団に所属する「第11飛行隊」の愛称。航空自衛隊の存在を多くの人々に知ってもらうために、航空祭や国民的な行事などでアクロバット飛行(展示飛行)を披露する専門のチームです。
基地での航空祭は人気が高いイベントで、都心から最も近い埼玉県入間市の入間基地航空祭は、1日の入場者が12万人を超えるほど(2019年実績)。現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、1年以上にわたり全ての航空祭が中止されており、展示飛行を見学できる機会は極端に少なくなっています。
飛行しながら機体どうしの間隔を変化させたり、機体後部からスモークを出し大空に星やハートなどを描画する課目はブルーインパルスの得意技。急上昇、急降下、背面飛行、機体を何度も回転させたり、2機が至近距離ですれ違うなど、ダイナミックでスリル満点の曲技系の課目は何度見ても飽きることはなく、観客からも感嘆の声が漏れます。
ブルーインパルスのパイロットは、卓越した飛行技術で主力戦闘機のパイロットとして任務する精鋭の中から、さらに試験などを経て選ばれた隊員により構成されています。その人気の高さは、航空祭会場で行われるサイン会にできるファンの長い列からも伺えます。幼い頃に連れられて訪れた航空祭でブルーインパルスを知り、その後パイロットを目指して夢を叶えたというエピソードも実際に紹介されているほどで、今も昔も子供たちに夢を与え続けている憧れの存在と言ってよいでしょう。
パイロットの任期は3年間。初年度は展示飛行時に機体後席に乗務し、技を習得する訓練待機期間です。2年目は実際に操縦桿を握り展示飛行を行う期間で、3年目は主に訓練待機期間の新人教育にあたるという流れ。コロナ禍以前でも、航空祭やイベントでの展示飛行は年20回ほどで、それ以外は厳しい訓練で操縦技術に磨きをかける毎日です。
使用する練習機T-4の機体の形状がイルカに似ていることから、パイロットは“ドルフィンライダー”、飛行毎に欠くことのできない機体整備を担う隊員は“ドルフィンキーパー”とも呼ばれます。飛行前点検や離陸前に両者間で交わされるハンドサインや無駄の一切ない機敏な所作も、展示飛行の一部として見どころです。
航空祭の会場ではブルーインパルスの隊員により、当日の展示飛行を担当するパイロットの紹介や、演技・課目の説明、機体の会場進入時の方向を知らせるアナウンスが行われるなど、初めて観覧する人でも十分に楽しめるよう工夫されています。
また、本拠地である松島基地周辺まで行き、離着陸や飛行訓練を見学・撮影するファンも多く、基地のWebサイトでは基地上空で行われる訓練の予定日も公開されています(他の基地では、訓練予定は原則非公開)。
Webの動画配信も充実
オリンピック開会日と同様に、今回の展示飛行も後日の動画配信が予定されています。航空自衛隊のYouTubeチャンネルでは、都内各所で撮影された展示飛行の映像や、コックピット目線のVR映像も公開中。また、キヤノンはブルーインパルスの8K撮影も行っており、2021年末に映像が公開される予定だそうです。
まとめ:あらゆる面で魅力的な被写体
ブルーインパルスの展示飛行は、それ自体がフォトジェニックであると同時に、カメラのAF制御、露出制御、連続撮影といった総合性能や、レンズの描写性能をテスト・評価する被写体として向いています。それだけでなく、高速飛行をファインダーで捕捉・追従しながら的確なフレーミングを保って連続撮影する、撮影者のスキルを向上させるための被写体としても適しているといえます。
私自身もカメラ新機種や超望遠レンズなどのレビューのためにブルーインパルスを撮影したのが最初でしたが、被写体としての魅力を知るとともに、撮影やブルーインパルスそのものの奥深さも知るに至り、プライべートでも撮影するようになりました。
今まで計10か所の基地で航空祭や予行・通常訓練などを撮影させてもらってきましたが、まだまだ未踏の基地があり、撮りたい欲求が収まりません。航空祭が実施できない今は、ブルーインパルスにもファンにとっても忍耐の時期と思うしかなく、誰もが安心して楽しめる航空祭の再開が待ち遠しい限りです。
さる7月23日の展示飛行の際に、私が撮影していた西新宿では、展示飛行終了時に周囲の観覧者から自然と拍手が起きました。8月24日は私自身、近くに出かける用事がないためテレビやYouTubeで楽しむ予定ですが、お近くの方は空を見上げてみてください。