特別企画

記録メディアにとって最も大切な2つのことを追求するプログレードデジタル。Refresh Proの必然性に迫る

カメラ用の記録メディアを真剣に選んだ事はあるだろうか。近年は特にハイエンド機を中心に最大連写コマ速度が向上し、また画質面においても1億画素機や高画素機が普及するなど、記録データサイズの拡大が顕著だ。そんなメモリーカードの選び方と運用について、プログレードデジタルが一石を投じている。今回は、そんな同社の製品ソリューションが提供しているメモリーカード運用における新しい視点とメリットについて掘り下げて紹介していきたい。

難しくなった記録メディア選び

本題に入る前にぜひ考えてみてほしい事柄がある。メモリーカードの選定に、読者の皆さんはどのような基準をもっておられるだろうか、ということだ。量販店などではカメラとともにオススメのメモリーカードが紹介されているので、特に迷わずに推奨されている組み合わせで撮影を楽しんでいる、という人もいるかもしれない。今回は、ちょっと立ち止まって、そんなカメラとメモリーカードの関係を見つめ直してみませんか、というお話だ。

現行のカメラ製品の多くはフラッグシップ機などのハイエンド寄りの一部製品を除いてSDカードが記録メディアの主流となっている。これらSDカードにはUHS-IとUHS-IIがあり、それぞれ最大読み書き速度に大きな差があることはご存知のとおりだ。

LUMIX S1Hのカードスロット。本モデルは両スロットともにSD UHS-IIに対応している

近年は「センサーの高画素化競争」や「4K・8K動画機能の実装」はやや落ち着いてきた印象はあるものの、それに合わせて記録メディアの容量や読込・書込性能における選択にも一定の結論が見えて来たように感じる。

センサーサイズに関わらず、普及グレードなら2,000万画素クラスが主力で、ここ数年内に発売された機種なら、4K 30Pへの対応が動画記録性能のひとつの基準となっている。このことから、記録メディアの選択基準としては、まずここがガイドラインになるだろう。

一方でハイエンドモデルでは、一部に8K動画や4K 120Pのようなハイフレームレート動画(=ハイスピードまたはスローモーション撮影)にも対応するようになってきており、画素数も4,000万画素を遥かに超える高画素センサーが主力商品となっている。これらのカメラは使用する撮影モードと特性に合わせて慎重に記録メディアを選ぶ必要がある。

むしろ、これらカメラの性能を最大限に引き出すためには、メモリーカードの選択が鍵を握っているとしても過言ではない。機種の開発コンセプトにもよるが、例えば高画素だがストリートスナップ向けにターゲットを絞った製品では、センサーの画素数に対してそれほど多くのバッファメモリを搭載せずにコストダウンを図るのが一般的だ。この場合、ユーザーとしては必要最小限の出費で使い方にマッチしたカメラを手にすることが出来るわけで、メリットが多いように感じるが、同じカメラで子どもの運動会やスポーツを撮影する、といった使い方をする場合は、書込速度に優れるメモリーカードを組み合わせてやるなど、バッファメモリの少なさを、ほかの手段で補う必要がある。

カードの状態を目視できるという安心感

難しさが増してきているメモリーカード選び。ここで筆者がどのような基準で選んでいるのかを紹介しておこう。

基本的な考え方は、特に理由がない限り大手ブランドの中から書込速度を目安に選択する、というのが筆者の流儀だ。ただし盲目的に信頼しているというのではなく、仕事用として購入したメディアについては、必ず本番の撮影で使用する前に実際の撮影モードで容量一杯までテストを実施するようにしている。つまり、所定の性能がキチンと発揮されているのかをチェックしているというワケだ。

ちなみにテスト時のチェック項目は、最後まで安定して書き込みができているかということと、その速度維持に問題はないかということの2点だ。これらを実測ベースで確認するようにしている。こうしたテストを実施している理由は、特に動画の場合だと撮影モードを高画質に設定するほど、毎秒の書込データ量が増加するので、連動して記録メディア側の連続書込性能が大変重要になるからだ。静止画に置き換えるならば、画素数とJPEGの圧縮率の組み合わせがイメージとして近い。

筆者は慎重派を自身でも認めているが、今回プログレードデジタルの製品をテストさせて頂くことになり、使い手のことをよく考えた同社製品の仕組みに感心させられた。

プログレードデジタルの記録メディアについておさらいしておこう。同社のメモリーカードは純正のカードリーダーと専用ソフト「Refresh Pro」の組み合わせでメディアの書込寿命を測定したり、物理フォーマットに近い初期化「サニタイズ」が実行出来る点が特徴となっている。

ヘルスの測定では、書き込み耐久性が確認できる。ここでは新品のメディアを測定したので100%を示しているが、使用を重ねる事で耐久パーセンテージが変化する
ヘルス、サニタイズ、またはその両方の実行を任意で選択できる。大容量メディアを使用していて、データは残しつつ耐久性の確認だけを行う事もできる。複数のカードを同時にマウントしている際には、個別に操作が選べる点も便利だ

これまで筆者は、記録メディアの寿命に関しては、何となく3年くらいの周期が入れ替えのタイミングだと考えていたが、そうした曖昧な基準を設けなくても、その時点で「手元にある記録メディアがどのような状態にあるのか、寿命まであとどれくらい余裕があるのか」を都度知ることができるというわけだ。これは、たいへん合理的だし、よく考えられたメリットになっている。少なくとも、カード寿命に怯えながら運用を続ける必要がなくなるわけで、慎重派の筆者としては、この上ない安心感が得られると感じた。

また、記録メディアが本来有しているパフォーマンスを、その初期状態に復帰させることができるという「サニタイズ」機能も画期的なアプローチだ。

記録メディアをまっさらな状態にしたい場合は、物理フォーマットをかけるのが最も確実な方法だが、それに何時間もの時間と労力を割くことは中々できることではない。そうした意味で、カードに最適な初期化を物理フォーマットよりも遥かに短時間で完了してくれるサニタイズ機能は、実に嬉しい仕組み。物理フォーマットをかける手順よりもずっと手軽で、メディアの寿命チェックと同様に実行することもできるため、大切な撮影の前にはぜひとも実施しておきたい項目である。

LUMIX S1Hでテスト

では肝心のカードの性能はどうなっているのか。誌面上ではこれまでEOS-1D X Mark IIIやEOS R5、α7S IIIなど、それぞれに特徴的なカメラを用いて実測した例が紹介されているが、本格的に動画撮影に関する検証はされてこなかった。ということもあり、動画撮影を軸にしている筆者に白羽の矢が立ったわけだが、さっそく愛用しているLUMIX S1Hでのテスト結果をお伝えしていきたい。

同機はSD UHS-II対応のカードスロットをデュアル構成で搭載した機種。MOV形式であれば、最高画質3:2の6K 30P動画を4:2:2 10bitで記録し続けることができる。

まず某メーカー製のSDXC UHS-I V30 Class10(170MB/s)の製品で試したところ、45秒と21フレームで撮影が停止した。

テストした撮影モードは実際の使用を想定して、Cinema4Kの30P ALL-Intra 400Mbpsモード

次に同じメーカーのSDXC UHS-I V30 Class10(95MB/s)では、36秒と23フレームで撮影が停止。

これらは、ALL-Intraでの撮影用として購入したわけではないので、テストすること自体ナンセンスであることは承知の上ではあったが、それにしてもLong-GOPの撮影モードでは不自由しないSDカードでも、画質モードよっては全く役に立たないということが実感させられた。動画撮影が記録メディアを選ぶ上でのハードルになる訳である。

UHS-I SD(170MB/s)の場合
同(95MB/s)の場合

では、プログレードデジタルの製品ではどうか。テストしたSDカードは「SDXC UHS-II COBALT 256GB」と「同GOLD 256GB」の2種類。中でもCOBALTシリーズはSLCメモリを採用したカードで、書込速度と最低記録速度に優れることから、特に動画撮影でのマッチングが期待できる。

ちなみにCOBALTカードではSLCメモリとはフラッシュメモリが使われている。このメモリは一般的に書き込み耐久性が10万回ほどと高寿命であることが特徴で、たとえば常時録画記録が求められる監視カメラなどの産業用として普及している高品質なフラッシュメモリである。

対してGOLDシリーズでは一般的に普及しているTLCメモリが用いられている。普及タイプとはいえ、TLCメモリも1万回以上の書込耐久性があるとされているので、Refresh Proを併用しながら、自身のカード運用を見直してみるのも良いだろう。

さて肝心のテスト結果だが、COBALTもGOLDもどちらもバッテリーが切れるまで、記録停止となることなく撮影を完了する事が出来た。記録メディアの買い換え時であった筆者としては、兼ねてより使用していたメーカーから、プログレードデジタルへの移行を検討しはじめたほどだ。

このテストでは筆者が強く導入を検討している「SDXC UHS-II COBALT 256GB」を使用。他社カードと同一テスト条件のCinema4Kの30P ALL-Intra 400Mbpsモードで記録した

この結果を踏まえると、例えば毎日のように動画も静止画も撮影する、というようなヘビーユーザーや、高画素数や高速連写を特徴とするハイエンド機のユーザーであれば迷わずCOBALTを、撮影は週に1度くらいで連写や高画質設定で動画の撮影はしない、というユーザーであればGOLDを、という選び方が良さそうだ。容量については撮影内容と予算に合わせて、といった具合。

SD UHS-II(COBALT 256GB)
同(GOLD 256GB)

同社ではCOBALTカードもGOLDカードも3年間の保証期間が設けられている。この安心感を背にして考えてみても、そう頻繁に買い換えの必要には迫られないだろうし、Refresh Proでカードの状態をチェックできるので、高パフォーマンスをより長く使っていくことができるだろう。

Refresh Proの効用

Refresh Proがもたらすメリットについて考えてみよう。同社製の対応カードの寿命チェックと物理フォーマットに近いレベルでのディープクリーンができるわけだが、撮影前のちょっとした時間でも処理が完了できるので、大切な記録メディアの保守管理をユーザー自身が実施できると考えれば十分に安い投資である。日常的に実施しているカメラやレンズのメンテナンスに、記録メディアのメンテナンスも加えてみるというイメージだ。

価格はサブスクリプション式で、年間費用は9,99USドル。日本円に換算すれば僅か1,000円程度の維持費で利用する事が出来る。無料で試用できる期間も6カ月間と長めの設定になっているため、同社製のカードとリーダーを有している人には、ぜひ一度試してみることをオススメする。

メモリーカードの寿命が気になっていた人はもちろん、これまでメモリーカードの寿命なんて考えたこともない、という人にとっても、プログレードデジタルの製品ソリューションがもたらす安心感と納得感は、多くのメリットをもたらしてくれることだろう。

一緒にテストしたカードリーダーについても少し書いておこう。今回はCFexpress Type BカードとSD UHS-IIカードのデュアルスロットリーダーを使用した。USB3.2 Gen2接続でCFexpress Type BカードとSDカードを同時にかつ高速にデータ転送できる。

本体裏面にマグネットを内蔵しているので、付属のメタルプレートをラップトップPCに貼りつけておけば、写真のように場所選ばずにカードにアクセスできる。例えば撮影帰りの新幹線の中などで、場所を取らずにデータのバックアップが出来るのはありがたい。外付けSSDなども全てこの仕様になってくれたらさぞかし便利になることだろう。

ちなみに、SD UHS-IIカードのダブルスロットモデルもあるので、撮影にSDカードのみを使用しているユーザーはこちらのモデルの方が便利だと思う。筆者は仕事で撮影していると、1日に128GBのカードを複数枚使用することもあるため、バックアップにとられる時間も比例して増大していたのだが、同時に読込が出来ればバックアップ中にカメラのメンテナンスを進めるなど、別の作業が出来るメリットもあるというわけだ。

SD/SD USB3.2Gen2ダブルスロットカードリーダー

これからのカード選びに向けて

さて、今一度カメラと記録メディアの関係性について理解を深めて行こう。静止画の撮影ではバッファメモリの容量不足を記録メディアの高速な書込性能が補ってくれるという話だったが、動画撮影においては、最大書込速度および最低書込速度が、記録画質の選択に直結してくる。

筆者の知る範囲でしかないが、カメラは数年おきに新機種に買い替えるという人であっても、メモリーカードは年季の入った製品を使い続けているという人を見かけることがある。SDカードは特にカメラ製品での採用実績が長く、またスロットに下位互換性があることで、カメラにあわせてカード自体の入れ替えに投資をする事なく使いまわしていける、というのが主な理由となっているのだろうが、注意しておきたいのは、昨今のカメラは高速な書込に対応したメモリカードの使用を前提に設計されているケースがあるということ。あまりに年季が入ったカードだと、カメラ側の性能をフルに引き出せない場合がある、という点はぜひ覚えておいてほしい。

無論、静止画の撮影ではバッファメモリが解放されれば再び初期の速度で撮影を再開できるため、撮影者側でカメラの足りない部分をカバーしてやれば多少のストレスはあるかもしれないが、運用は可能だ。しかし動画の場合はそうもいかない。カード側の足りない部分は記録画質を落とすかフレームレートを落とすか、しか調整のしようがないからだ。画質を落とせば安定した撮影を継続できる可能性は向上するものの、しかしそれでは本末転倒。カード側がボトルネックになってしまうというわけだ。

ちなみに、最近よく目にするようになったALL Intraとは、ファイル自体は単一の動画形式で保存されるものの、その中身は1コマづつ圧縮された画像群で記録される方式だ。高速連写で撮影したJPEG画像が1ファイルにまとめあげられている状態をイメージしてもらえればわかりやすいだろうか。メリットはコマ間の画質がLong GOP方式のような補完型でないため、高い画質の維持が可能で、かつ静止画の切り出しに強いこと。デメリットは、データの圧縮に限界があるため、毎秒のデータ量が膨大になってしまうことだ。

LUMIX S1Hの設定画面。左が4K 30p ALL Intra、右が4K 30pでLong Gopに設定した場合

これは記録メディアの書込速度にそのまま依存する事柄で、高画質記録したければ高速書込に対応したメディアを用意する必要がある。例えば筆者の所有するカメラを参考に挙げれば、富士フイルム「X-T3」は最大で400Mbps=50MB/秒の速度が必要だし、LUMIX S1HやLUMIX GH5も最大で400Mbpsの記録モードがあり、それぞれコンスタントに50MB/秒の書込に対応したSDカードが必要となる。

要するに、動画撮影では静止画よりもより厳密に記録メディア側の性能をチェックしなければならない、というわけだ。だからこそ、筆者は仕事で使う記録メディアに関して実測レベルでの厳密なテストをおこなっている。現場で撮影に集中するためにも、カードに起因するトラブルだけは絶対に避けたいと思うのはプロ・アマ問わず共通の認識だろう。

とはいえカメラ本体価格の何割かに相当するような高価なメモリーカードの購入に躊躇してしまうことも確か。だが、高性能なメモリーカードに買い替える事でカメラ性能を最大限に発揮できるのであれば、やはりカメラの性能に見合った製品を選択する事をオススメしておきたい。

今回テストしたプログレードデジタルの製品については、ラインアップ全てが十分に高速な書込速度・耐久性を備えており、メンテナンスに至るまでよく考えられた製品となっている。おそらくハードに撮影をしている人ほど、そのメリットは高くなるに違いない。いわば理想的な記録メディアの姿のひとつである。

流通こそ限られているものの、メーカーホームページからAmazon.co.jp上の販売ページにアクセスすれば、間違いなく正規品にたどり着ける上、有名メーカーの同等品と比較しても、より安価な価格帯であるため、お財布に優しい点も見逃せない。同社がAmazon.co.jpに販路を絞っている理由も頷けようというものだ。高い性能と安心感が両輪となっている例は意外と少ないものである。

協力:ProGrade Digital

栁下隆之

写真家アシスタント、現像所勤務を経て、撮影機材を扱う会社で17年余り写真・動画機材の販売に関わる。2014年にビデオグラファーとして独立。その職歴から写真・動画の双方の機材に深い造詣を持つ。