特別企画

ペルセウス座流星群を撮ろう(前編):撮影に向けて知っておきたいこと。必要な機材と流星群の捉え方とは

天の川と火球。作例はペルセウス座流星群とは違う散在流星
Nikon D810A / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(24mm) / マニュアル露出(F2.8・13秒) / ISO 12800 / WB:晴天

8月13日未明にペルセウス座流星群が極大を迎える。極大とは時間当たり流星が飛ぶ数が最大になることだ。ペルセウス座流星群では1時間当たりおよそ50個ほどの流星を見ることができるのだ。夏の過ごしやすい時期であることとあわせ、天文ファンにとっては年間を通しての一大イベントである。流星群自体は毎月のように何かしらの流星群があるのだが、明るい流星が多いことから、流星の写真を撮りやすい。また、三脚さえあれば手軽に撮影できるものであるので、今夏ぜひ挑戦してみよう。

流星群とは

流星は地球近傍にある星間物質が地球の引力に引かれて落下する際、大気との摩擦によって発光する現象である。流星群は、主に彗星が公転軌道上に撒き散らしたダストが地球に落下することによって起きる。よって、流星の素となる天体(母天体という)の公転軌道と地球の公転軌道が交差した点で毎年起こる現象なのだ。なかでも1月4日頃のしぶんぎ座流星群、8月13日頃のペルセウス座流星群、12月20日頃のふたご座流星群は特に活動が活発でたくさんの流星を見ることができ、三大流星群と呼ばれている。流星に限らず星空を見たり撮ったりするには、月の明かりの影響を受けない闇夜であることが望ましく、今年の8月13日の月齢はおよそ4であり早い時間に月は沈み、流星観測に影響を与えない好条件であるのだ。深夜になってからペルセウス座が東から上ってくるためだ。

ちなみに極大は13日未明であるが、ペルセウス座流星群の期間は7月20日頃から8月20日頃である。ピークのような数は見られないものの、明るい流星を普段より多く見ることができるので、13日の天気が悪くても、しばらくチャンスはあるのだ。

母天体の公転軌道と地球の公転軌道が交差した点で、流星群となる

カメラの準備

冒頭に触れたが、用意する機材は究極的には三脚のみで良い。以下にあると便利な用品を優先順位順に並べるが、ことにレリーズがあるかないかで撮影方法が変わる。(後述)ただし、レリーズはケーブルタイプでロック機構付きが必要である。レンズは24ミリ以下が望ましい。ズームレンズでも構わない。

撮影機材の例。レンズヒーターとレリーズを取り付けている

用意しておきたいアクセサリー:優先順位第1位「ケーブルレリーズ」

ケーブルレリーズのコネクターはカメラ各社専用となるが、ニコン、キヤノンはコネクターの種類が2種存在し、カメラによって対応品が違っているので、自分のカメラに対応しているかよく確認しよう。無線や赤外線のレリーズはロックできないので不向きだ。

ケンコー製レリーズ。純正より大柄で夜間使用に向いている

あると便利:優先順位第2位「レンズヒーター」

レンズヒーターはネット通販の安いもので十分。モバイルバッテリーからUSB給電で使う。なるべくレンズ前端に取り付ける。

レンズヒーターの例。USBケーブルが付いている

表現の幅をひろげるために:優先順位第3位「星景撮影用フィルター」

各社から様々な効果のフィルターが発売されているが、例えばケンコー・トキナーの場合、「Starry Night」がよく知られている。この製品は光害を抑え、星空のコントラストを上げてくれる効果がある。「プロソフトン」は明るい星を少しぼかして星座をわかりやすくする。これにはAとClearの2種類があるが、夏の撮影には「プロソフトンClear」がおすすめだ。

ケンコーが販売する定番星景フィルター3種

撮影の知識

以下は星座ソフト「Stellarium」(Stellarium Astronomy Software)の画面である。無償でダウンロードでき、さまざまなOSにも対応している。タブレットやスマートフォンにおすすめのアプリは「SkySafari6」だ。こちらにも無償版と有償版があるが、無償版でも十分な機能を持っている。

SkySafari6

先に述べた通り、流星群は母天体のダストの中に地球が入っていく。その進行方向がペルセウス座にあるので、ペルセウス座流星群というわけだ。

その進行方向中心から放射状に流星が飛ぶので、その中心点を放射点と呼んでいる。上の図中でシアンの丸で示した部分が、ペルセウス座の肩あたりだ。そして、黄色の丸は放射点からおよそ50度ほど離れた場所で、流星を捉えやすいエリアを示している。当然、日周運動により地平線下から上り、時間と共に天頂に移動していく。その点も考慮しつつ、地上の風景との兼ね合いから構図を決めていこう。

狙う時間帯は深夜1時頃から夜明けまでだが、時間に余裕があるなら、12日の22時頃から撮影を始めると良いだろう。北の空と北東の空を中心に、カシオペア座、アンドロメダ座、ぎょしゃ座、すばるなどを取り込んで構図を決めると良い。事前に星座ソフトでシミュレーションしておくと撮影の流れもイメージできるので、後編の撮影編とあわせて、ぜひ活用してもらいたい。

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。