特別企画

人気の写真ジャンル “星景×鉄道” 写真家対談!

北山輝泰さん・山下大祐さんが「α7 III」の魅力を語り合う

撮影:北山輝泰(左) 山下大祐(右)

6月22日に公開した“ポートレート×ペット” 瞳AF写真家対談に続き、今回は星景写真と鉄道写真、それぞれのプロの写真家を招いて語り合ってもらいました。

対談いただくのはこのお二人。

左から山下大祐さん、北山輝泰さん。対談はオンラインで行ないました。

北山輝泰

1986年12月1日生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天体望遠鏡メーカー株式会社ビクセンで営業として勤務後、星景写真家として独立。天文雑誌のライターをしながら、全国で写真講師の仕事を行う。星景写真を始めとした夜の被写体の撮影について、座学・実習を通し学べる「ナイトフォトツアーズ」を運営中。

山下大祐

1987年兵庫県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業後、フリーランスのカメラマンとして活動する傍らロケアシスタントで多様な撮影現場を経験。2014年からレイルマンフォトオフィス所属。鉄道会社の広告・カレンダーや車両カタログ、カメラ広告、鉄道誌のグラフ等で独創性の高いビジュアルを発表している。日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。個展「SL保存場」富士フォトギャラリー銀座(ともに2018年)。

お二人ともソニー「α7 III」の実力を紹介する連載で、作品とテキストをご寄稿いただいています。

今回は「α7 III」でそれぞれ撮影いただいた作品をオンラインで鑑賞しながら、作品や機材について語り合いました。その一部をお届けしましょう。

「α7 III」はフルサイズミラーレスαのベーシックモデルという位置付けながら、拡張設定で最高ISO 204800、約10コマ/秒の連写性能、ボディ内5軸手ブレ補正など、星景撮影や鉄道撮影に必須のスペックを持つ。実勢価格は25万前後(税別)。
◇   ◇   ◇

星景と鉄道、カメラに重視するスペックは?

——撮影ジャンルがまったく違うお二人ですが、北山さんと山下さんは学生時代からのお知り合いとうかがいました。

山下大祐(以下、山下): はい。同じ大学で同級生でした。1年生の時からお互い知っています。最初はあまり親交がなかったのですが……

北山輝泰(以下、北山): その後、専攻クラスが同じになり親しくなりましたね。いまでもオンライン飲み会などで一緒になったりしています。

——お二人とも写真家の道を進まれています。学生の頃、今の職業を意識されて共通の目標など語り合ったりしたのですか?

北山: そういえば、山下君と将来の話をした記憶はないですね。そもそも学校で顔を合わすことがそんなになかったような……

山下: そんなことはないです(笑) その頃は互いに他愛のない話をしていましたね。

——卒業後はどのような経歴を経て現在に至るのでしょう。

北山: 写真で生計を立てる、とは考えていなくて、その頃は星に関する仕事につければと考えていました。念願かなって天体望遠メーカーの株式会社ビクセンに入社し、星を鑑賞する素晴らしさを製品を通して伝えることができました。その経験もあり、現在はフリーの写真家として活動しています。

山下: 私は鉄道写真を撮りたかったのですが、卒業直後は目当ての会社(レイルマンフォトオフィス)に就職できず、いったん営業写真館などで働き研鑽を積みました。いまは念願かなってレイルマンフォトオフィスに所属し、鉄道写真を撮っています。

——今回は「α7 III」で撮影された作品を見せていただきます。その前にお二人のフルサイズミラーレスαの使用歴を教えてもらえますか。

北山: 最初のフルサイズミラーレスαは「α7S II」でした。常用ISO感度が高くて、当時のフルサイズミラーレスカメラ市場のラインアップの中では圧倒的なスペック。それと純正レンズに「FE 12-24mm F4 G」があり、それが自分のよく使う焦点距離をカバーしていたのです。「α7S II」と「FE 12-24mm F4 G」の組み合わせで撮ってみたいと思ったことがソニーに興味を持った理由です。その後、「α7R II」「α7R III」も使い、現在は「α7 III」がメインになっています。

山下: フルサイズミラーレスαで最初に使用したのは「α7R III」です。発売されてしばらくの頃、カメラ誌に作品を提供したのがきっかけで使い始めました。「α7 III」も期間限定で使っていまして、現在は「α7R IV」も併用しています。

——星景写真、鉄道写真のそれぞれで重視されるカメラ・レンズのポイントを教えてもらえますか。

北山: 星景写真の場合、基本性能として重要なのが常用ISO感度の幅広さ、高感度時の画質、ダイナミックレンジの広さです。単純に画素数が高いと良いかと言われると、ダイナミックレンジと高感度画質とのバランスが重要ですね。個人的には最近、手持ちで星景写真を撮るため、手ブレ補正の性能も重視しています。私が今でもαを使う理由は高感度と手ブレ補正が優れていることも一つですね。

北山: よく使うレンズは、焦点距離が24mm以下、できれば開放F値が2.8以下の明るさ。ゴーストやフレアに対する耐性も重要です。それとソフトフィルターが取り付けられた方が良いでしょう。新しく出た「FE 12-24mm F2.8 GM」はリアフィルターを入れられると知り、非常に気になる存在です。

——山下さんはいかがですか?

山下: 私が重視しているスペックは、AFと連写性能です。AFを作動させ、追従させながら秒間何コマ撮れるかが最大に求める点。画素数を確保しながら約10コマ/秒で撮れるのがαを使っていて不足を感じないところです。同じ連写でも、約10コマ/秒と約5コマ/秒では世界が違います。鉄道車両は動いているものですから、切り取れる瞬間が多い方が狙い通りの写真に出会えます。あとは車体や景色を美しく残したいので、広いダイナミックレンジがあるとうれしいです。

山下: レンズで重要なのは、これもカメラボディと同じくAFの速さと正確さです。私は焦点距離は望遠に限らず、広角・標準のいわゆる大三元ズームを使っています。逆光に対する強さや解像感などの画質もそうですが、特にこだわっているのがズームリングの操作性。最近取り組んでいる動画での仕事では顕著に違いが感じられますし、スチルでもズーム間流しなどで使います。

星景写真家・北山輝泰さんの作品

——それでは「α7 III」で撮影されたお二人の作品を見てみましょう。まずは北山さんからです。

撮影:北山輝泰
α7 III / FE 20mm F1.8 G / 20mm / マニュアル露出(8.0秒・F1.8) / ISO 12800

北山: ニッコウキスゲを手前に配して天の川を撮影した作品です。三脚を一番ローアングルにして自分は匍匐前進(ほふくぜんしん)の姿勢。RAW現像はしていますが、それほどシャドウを起こしたわけではありません。富士見町の街明かりがニッコウキスゲを照らしてくれている状況ですね。

——撮影地はかなり暗そうですが、ここまで明るく写るものですね。

北山: 街明かりがあるとはいえ、そのままファインダーをのぞくと暗すぎてニッコウキスゲがどう映っているかわかりません。そこで「α7 III」の「ブライトモニタリング」を使っています。暗い被写体への露出を上げて明るくブーストして見せてくれる機能です。他メーカーのカメラにも似た機能はありますが、やはり撮影中に情景豊かに遅延なく見せてくれるソニーのフルサイズミラーレスαがいいですね。撮影時はほぼ100%使っているので、星景撮影ではなくてはならない機能です。

——ISO 12800という高感度での撮影ですが、高感度ノイズも目立たずきれいです。

北山: 星を点像で止めたいので、こうした高感度で撮影することが多いです。個人的には「α7 III」はISO 25600までなら抵抗なく使える印象を持っています。

——レンズは「FE 20mm F1.8 G」ですね。今年出たばかりですが、よく使われるのですか?

北山: このレンズはとにかく軽くて。バッグに入れても重さを感じません。隙間があったら詰めておくレンズです。20mmという焦点距離は使いやすく、画質も良いしF1.8と明るく、性能と比較して価格も安い。星景写真を撮りたい方は最初の1本でこれを買うことをおすすめします。

——山下さん、鉄道写真でこうした単焦点レンズを使うことはありますか?

山下: 鉄道写真だと焦点距離20mm自体は広角ズームレンズで撮りますが、単焦点レンズを用意することはなかったです。でも北山さんの話を聞いて、一度使ってみたくなりました。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / FE 20mm F1.8 G / 20mm / マニュアル露出(0.8秒・F1.8) / ISO 12800

北山: この写真は旅客機の中から撮影したネオワイズ彗星です。旅客機の中からの撮影なのでもちろん手持ち撮影で、手ブレ補正を信じて0.8秒で連写。機内ということでサイレント撮影にしています。こうした撮影がフルサイズセンサーでできるのはフルサイズミラーレスαの利点ですね。よしみカメラの「忍者レフ」を利用しています。あまり大きなレンズだと「忍者レフ」で使いにくいのですが、「FE 20mm F1.8 G」は小さくてしっくりきます。

——恐ろしく綺麗に撮れています。フルサイズミラーレスαだと、手持ちでこういう写真が撮れるのですね。

北山: 三脚が必要ないので、撮る場所や構図から自由になるのが手持ちの星景写真です。ISO 12800でこの画質なら十分でしょう。高感度性能、手ブレ補正、小さな機材。この3つが私が最近ハマっている手持ち星景写真の条件と考えています。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(48秒・F1.8) / ISO 3200

北山: これもネオワイズ彗星です。この7月に広角レンズでもしっかり写るほど明るくなった彗星で、135mmの望遠レンズだとここまで大きくはっきりと写せました。この撮影では画角が狭いこともあり、赤道儀を使って追尾撮影してます。赤道儀を使うとき機材が重いと追尾ずれが起きてガイドエラーになってしまうことがありますが、「FE 135mm F1.8 GM」はそれほど重いレンズではなくうまくいきました。赤道儀との相性が良いレンズといえます。

山下: 赤道儀を使っているのに地上がぶれていないのはなぜですか?

北山: 8秒露出で6回撮影した後、地上景色を固定して加算平均合成をしています。地上景色がぶれても構わない作品のときは手を加えないこともありますが、肝心の星に目が行かなくなる恐れがある場合はこうした合成をおこなっていますね。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / 17-28mm F/2.8 Di III RXD / 28mm / マニュアル露出(10.0秒・F2.8) / ISO 800

北山: 日の出前に広がる雲海、薄明の空でのアルデバランと金星の接近を撮影したものです。雲の切れ目に入った瞬間に撮りました。一般的に星を撮るには晴れがベストと言われていますが、このシーンの場合は晴れすぎると他の星が主張してしまいます。雲が大きく出たこの日に撮れて良かったです。ここでも「α7 III」のダイナミックレンジの広さが生きます。明暗差が激しい薄明の時間帯でもRAW現像で撮影時に見たままの光景を再現できるのがいいですね。

——朝焼けの色が美しく出ています。星景写真にとって理想の色はどのように決められるものなのでしょうか。

北山: 私の場合は自分が天体好きということもあり、星自体の色をきちんと再現するようにしてます。例えばホワイトバランスを電球にして真っ青にするのは避けていて、撮りたい星の色が出るように調整しています。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / 17-28mm F/2.8 Di III RXD / 17mm / マニュアル露出(20.0秒・F2.8) / ISO 2500

北山: 富士山と天の川に加えて流星も写っています。夜景と星空の組み合わせがうまくいきました。このシーンも露出差が激しいのですが、特にハイライトの色がしっかり残っています。

——広いダイナミックレンジを得るために、段階露出した写真を合成することもあるのですか?

北山: この作品もそうですが、段階露出の合成やHDRモードは使用していません。1枚撮りからRAW現像で少し調整しています。「α7 III」のダイナミックレンジの広さがうかがえます。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1.0秒・F1.8) / ISO 25600

北山: これも手持ちです。ネオワイズ彗星と牧場の馬の組み合わせです。構図を探しながら走り回り、地面に寝そべって撮りました。三脚を使うと、こうはいきませんし、何よりカメラボディとレンズの組合せがこうもコンパクトで軽いと、こういった写真にも挑戦したくなります。ISO 25600ですがノイズは個人的に許容範囲です。

——手前の馬のシルエットが軽くぶれているのがいいですね。

北山: ぶれがないと馬の置物を置いたようになります。かといって馬だとわからないと意味がない。そこで馬の動きを止めるギリギリのシャッター速度、1秒にしています。なるべく肘を固定して安定させたいから、チルト液晶モニターを使いつつ自分も地面に寝そべって撮影しています。

◇   ◇   ◇

撮影:北山輝泰
α7 III / FE 20mm F1.8 G / 20mm / マニュアル露出(10.0秒・F1.8) / ISO 12800

北山: 上の作品と同じ撮影場所になりますが、レンズを変えています。「FE 20mm F1.8 G」と高感度の画質の良さをみて欲しくて選んだ作品です。天の川と周囲の星がきれいに写し撮れています。ダイナミックレンジも広く、ハイライトからシャドウまで階調が失われていません。「FE 20mm F1.8 G」はG MasterではなくGレンズに位置付けられていますが、画質に不満はありませんね。

——シビアな天体写真の世界だと、特定のデジタルカメラで「星が消える」という話がインターネットを賑わせたことがあります。

北山: 高感度ノイズ低減処理をした時に現れる「星食い現象」ですね。最近だと聞かなくなりました。「α7 III」も大丈夫です。星の色が失われることもありません。ただ、Hα線(エイチアルファセン)を発する赤い星雲の再現についてはイメージセンサー前についているフィルターの存在により不可能です。カメラを改造するか、特殊なカメラを使うかしないでしょう。

◇   ◇   ◇

鉄道写真家・山下大祐さんの作品

——では次に山下さんの作品を見ていきましょう。

撮影:山下大祐
α7 III / FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS+1.4X テレコンバーター / 840mm / マニュアル露出(1/1,600秒・F9.0) / ISO 800

山下: 7月1日から営業運転を開始した最新のN700Sです。1日2〜3回、多くても4回しか走っていない貴重な車両です。向かってくる車両ならある程度性能のある現在のカメラのAFで容易に撮れるのはわかっているのですが、逆に過ぎ去るところを撮る(バックショット)とき、どのくらい有効なのか試した結果です。バックショットは車両がフレームに入った瞬間にすぐAFの捕捉が必要になるため、向かってくる場合より難しいのです。「α7 III」のAFは優秀ですね。組み合わせた「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」のAF性能もAF追随の面で十分応えてくれました。

——他のカメラではどうなんでしょう。

山下: 「α7 III」は、最初のカットですっと捕捉する力が特に優れているようにも感じます。AF性能に自信のある製品でもわずかにもたつくことがあるのですが、「α7 III」はその点においては優秀だと思います。

——意外な結果ですね。それにしてもトンネルの闇の中から白い車両が浮かび上がるのがかっこよく、それでいてトンネル内部のシャドウの描写も保たれています。

山下: ダイナミックレンジが広いので、もっとシャドウを起こしてトンネル内の様子を見せることはできますが、自分の表現としてあえてコントラストを強めに設定し、車両が浮かび上がるように黒を落としています。

——「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」はG MasterではなくGレンズです。描写に不満はありませんか?

山下: まったくありませんね。この撮影では運転席の窓枠と車両下部の継ぎ目にワイドのAFエリアで合わせたのですが、ピントがあったカットはしっかり解像しています。操作感についてもバランスがかなり良いですが、特にインナーズームが扱いやすいと感じました。

◇   ◇   ◇

撮影:山下大祐
α7 III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/6,400秒・F1.8) / ISO 100

山下: 鉄道写真にぼけ表現を取り入れてみた例です。オーソドックスな構図ですが、「FE 135mm F1.8 GM」の絞り開放F1.8で撮ってみました。背景が軽くぼけることで、一般的な編成写真とは少し雰囲気が違う作品になったかと思います。ぼけ量を大きくできるフルサイズセンサーのカメラならではの表現だと思います。

◇   ◇   ◇

撮影:山下大祐
α7 III / FE 16-35mm F2.8 GM / 17mm / マニュアル露出(1/1,000秒・F 10.0) / ISO 400

山下: 画面に太陽が入る逆光の撮影で、ダイナミックレンジが試される逆光のシーンです。ひまわりの花びらに光を透過させるのも狙いのひとつです。太陽の周りのハイライトも階調が残っていますし、ハイライトからブルーまでのトーンも自然。本来影になる車両の側面も再現されていますね。とはいえ黒が締まっているのでHDRっぽさもありません。

◇   ◇   ◇

撮影:山下大祐
α7 III / FE 16-35mm F2.8 GM / 16mm / マニュアル露出(1/500秒・F 11.0) / ISO 100

山下: チルト液晶モニターを活用して手前の水面ギリギリにカメラを下ろして撮影しました。空や水面のトーンから、階調の豊かさがわかると思います。フレキシブルスポットAFを車両の通る道筋に置いて撮っているので、車両もしっかりと解像させています。AFの自由度が高いことにも救われます。

——撮影時はほぼAFですか? マニュアルフォーカスでの置きピンはもう使われないのでしょうか。

山下: 列車が真横を横切るようなときは稀に置きピンを使うこともありますが、私はほぼAFです。AFを食いつかせる場所においておき、車両が重なったらロックオンAFをONに。最新のAF技術を安定しないからと使わない、という考えも聞くことがありますが、置きピンであってもミスすることはあります。私の場合としては連写したどのコマにもピントが合っていることが理想ですし、カメラもそのように進化しています。私はなるべく新しいテクノロジーを使っていこうという考えですね。

——一方で星景・天体写真の北山さんはマニュアルフォーカスオンリーですよね。AFを使うことはまずない?

北山: 120%マニュアルフォーカスです(笑)。超望遠レンズで月を撮るときAFを使うことはありますが、それだってあえてAFを使う意義は薄いと思いますよ。撮影ジャンルによって、こうも違うのですね。

◇   ◇   ◇

撮影:山下大祐
α7 III / FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS / 271mm / マニュアル露出(1/6秒・F6.3) / ISO 1600

山下: シャッター速度を1/6秒まで下げ、かなり大きく流した流し撮りです。レンズは「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」。このレンズは5軸ボディ内手ブレ補正搭載のαボディと組み合わせることで、ボディとの協調補正が可能になります。さらに手ブレ補正モードスイッチを流し撮りモードにしています。おかげで大きく動かした割にはブレが少なく、窓から車両の内部や、外を眺める子どもの姿まで表現できました。

◇   ◇   ◇

撮影:山下大祐
α7 III / FE 70-200mm F2.8 GM OSS / 128mm / マニュアル露出(1/60秒・F3.2) / ISO 100

山下: 今度は車体の上方向から、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」でズーム間露光を使用した作品です。近づいている車両の大きさが変わらないよう、広角側にズームしながら1/60秒で撮影しました。ズーム間露光で重要なのは、ズームリングのスムーズな操作感だと思います。この作品で使った「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」や、最初にお見せしたN700Sの作品で使った「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」がそうなのですが、インナーズームはレンズ全長が変わらず、重心の変化も少ないという特徴もあるでしょう。

◇   ◇   ◇

作品づくりに活かせる十分な性能

——たくさんの作品を見せていただきありがとうございます。せっかくですのでこれから星景写真、もしくは鉄道写真を撮る方におすすめの撮影設定は教えてもらえますか?

北山: シチュエーションにもよりますが、星景写真を撮るときの基本設定としては、マニュアル露出・マニュアルフォーカス・絞り開放・シャッター速度30秒・ISO 1600といったところです。RAW現像をしない場合の絵作りは、クリエイティブスタイル: ビビッド・彩度: +2・コントラスト: +2・シャープネス: 0・ホワイトバランス: 蛍光灯(温白色)を基準にして好みに合わせて変えてみてはどうでしょう。「α7 III」ではブライトモニタリングをほぼ100%使っています。

山下: 私もマニュアル露出です。あくまでも自分の設定になりますが、AFはロックオンAFとフレキシブルスポットAFを使い分けています。AF-ONボタンのみにAFを割り当てる親指AFにしています。AF被写体追従感度は低めで。DROは1〜4をシーンに合わせて変えています。あと、ハイライトをゼブラ表示にしています。向かってくる新幹線がゼブラになっていたら瞬時に露出を下げるためです。

——今回は「α7 III」で撮影された作品を見せていただきました。「α7 III」は数あるラインナップ中ではベーシックモデルですが、上位機種よりも厳しい局面があるのでしょうか。

北山: ソニーは求める性能に合わせてボディをラインアップしています。画素数なら「α7R IV」「α7R III」、動体捕捉やスピード性能を最重視するなら「α9 II」「α9」、高感度なら「α7S II」と、最近発表されたばかりの「α7S III」。その中でも「α7 III」はバランスの良い万能選手で、画素数は必要十分だし高感度性能は条件によっては一部の上位機種より高い。初めてのフルサイズミラーレスとして勧められますね。

山下: 繰り返しになりますが、約10コマ/秒の連写性能を持っていることが大きいです。特にAFの一コマ目の捕捉速度がとにかく速い。決して動体捕捉性能で妥協したカメラではないと思います。EVFのドット数は比べてしまえば少なく感じますが、被写体を追いかける分には「α7R IV」「α7R III」と併用しても気になりません。マニュアルフォーカスで置きピンするときも拡大表示しますから、ほぼ問題はありませんね。絵作りの面でも不満はなし。

——これから買う人にとっては価格も大切な要素ですしね。

山下: 「α7 III」の約2420万画素という画素数が気になるのでしたら、有効約4240万画素の「α7R III」も現行機種のひとつですので、選択肢に入れるのも良いかもしれません。私も最新の「α7R IV」と一緒に使っています。

提供:ソニーマーケティング株式会社

デジカメ Watch編集部