特別企画

現場のプロはどこまで使ってる?ポートレート&ペット「瞳AF」写真家対談!

ソニーのミラーレスαユーザーのフォトグラファー2名に語ってもらいました

撮影:西尾豪
α7R IV / FE 85mm F1.4 GM / マニュアル露出(1/1,000秒・F2.0) / ISO 400 / モデル:白谷みさき

デジタルカメラに搭載され、いまやその使い勝手の良さから愛用者も多い「瞳AF」。人物や動物の瞳を認識してフォーカスを合わせることができる「瞳AF」は、進化した現在のデジタルカメラを象徴する機能です。

このページではプロフォトグラファーがどの程度「瞳AF」を信頼し、仕事で使用しているかを知るため、2名の写真家に「瞳AF」について対談してもらいました。

参加いただいたのは、ペット・子ども撮影の専門家である小川晃代さんと、ポートレート撮影をはじめとした企業依頼の仕事を多数こなす西尾豪さんです。

対談に参加いただいた小川晃代さん(左)と西尾豪さん(右)。どちらも業務でソニーのフルサイズミラーレスαを使い込んでいるフォトグラファーだ(対談はオンラインミーティングで実施しました)。

小川晃代

トリマー、ドッグトレーナー資格など動物資格を保持したペトグラファーの第一人者で、今までに3万匹以上のペット撮影を手がける。制作会社勤務を経て動物に特化した制作会社&写真スタジオ「アニマルラグーン」を設立。現在は写真教室の講師をはじめ、ペットイベントの企画運営・ペットモデルのコーディネーター等活動は幅広い。著書は「ねこの撮り方まとめました!」「ねこもふ。ごーじゃす」「ねこきゅう」「こいぬ」他多数。

西尾豪

奈良県天理市出身。コンピュータ関連企業のサラリーマンから、アルバイト生活を経て、写真家・鯨井康雄氏に師事。2004年に独立し、株式会社2405を設立。広告等で人物を撮影。最近は、一枚の写真で、人となりを表現するプロフィール写真に惹かれ、上場企業経営者、アナウンサーなど、プロフィール写真の撮影に力を入れる。公益社団法人 日本広告写真家協会会員。

「α7 III」はフルサイズミラーレスαのベーシックモデルながら「リアルタイム瞳AF」を搭載。人物にも動物にも対応する(※)。実勢価格は25万前後(税別)。
※人物と動物ではモードの切り替えが必要です。すべての動物が対象ではありません。

「リアルタイム瞳AF」を使わない理由はない!「常時ON」!!

——今回はお二人に集まっていただき、ソニーαのAF、特に「リアルタイム瞳AF」(以下瞳AF)機能についてお聞きしたいと思います。まずはこれまでのソニーαの使用歴など教えていただけますか?

小川:仕事で本格的に使い始めたのは「α7R III」からです。その後、動物対応のリアルタイム瞳AFを搭載した「α6400」「α7 III」を使用し、現在は「α7R IV」がメインのカメラです。

西尾:私はフルサイズミラーレスαの初代モデル、「α7」が最初ですね。その後は「α7 II」「α7R III」など使ってきました。今は「α7R IV」です。「α6600」も業務で使います。ちなみに個人的な撮影では「RX0 II」も愛用しています。

——お二人ともミラーレスカメラが主流になる前から、一眼レフカメラでフォトグラファーのキャリアをスタートしていますね。一眼レフカメラからミラーレスカメラに切り替えることについて抵抗はなかったですか?

小川:ミラーレスカメラに対して、一眼レフカメラに比べて不安に感じていたのはAFですね。「α7R III」を使い始める前に使ってみたミラーレスカメラだと、環境に左右されることが結構ありました。なので自分の中でミラーレスカメラはサブカメラの扱いだったのです。もちろんいまではそんな不安はありません。

西尾:初代「α7」が出た時、一眼レフカメラから一気に移行しました。当時、撮影現場で同業者からかけられた声は「仕事には無理でしょ」というものばかりでしたね。それがいまでは逆に「ソニーってどうなんだ」「フルサイズミラーレスαはどう?」と質問責めにあっています。周囲のαへの関心や評価も、ここ数年で大きく変わりました。

——現在主にお使いのレンズは?

小川:メインは「FE 24-70mm F2.8 GM」と「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」、それに加えて室内では単焦点の「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」を使います。

西尾:「FE 24-105mm F4 G OSS」を重宝していますね。人物を撮るときは「FE 35mm F1.8」「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」「FE 85mm F1.8」も。製品写真などではG Masterを使用することもあります。

——では本題に入ります。ポートレートやペットなどの動物の撮影で、ずばり「瞳AF」は使っていますか?

α7 IIIで「リアルタイム瞳AF」が作動しているイメージ(画像提供:ソニー)

小川:ペットの撮影では、基本的に「リアルタイム瞳AF」は常にONにしています。ただ、フォーカスエリアを瞳に動かして撮ることにも慣れているので、「リアルタイム瞳AF」をONにしつつ、フォーカスエリアを手動で動かすのが基本ですね。といっても電源を入れてすぐに撮らないといけない時や、大きく前ぼけを入れる時など、瞬間的に瞳にフォーカスが合うのはすごく便利です。ダックスフントなどの鼻が長い犬の場合、一般的なAFでは鼻先にピントが合いがちですが、ソニーの「リアルタイム瞳AF」だとしっかり瞳にピントが合うので助かりますね。

西尾:私も「リアルタイム瞳AF」は常時ONです。特に記者会見などの仕事では全面的に頼っています。本職のモデルではない、例えば企業人を撮る時などではファインダーから目を離してライブビューで撮るのですが、そういったときも「リアルタイム瞳AF」を使えば、コミュニケーションに意識を向けながら撮影することができるので便利です。

——つまりお二人とも基本的には入れっぱなし、常時ONなのですね。

西尾:カスタムボタンに事前に割り当て設定をせず、シャッターボタンを半押しするだけで使えるようになってから(α7 IIIはソフトウェアアップデートVer.3.0以降で対応)は特にそうですね。それまではレンズのフォーカスホールドボタンなどに瞳AF ONを割り当てていたのですが、現場がバタバタするとどうしても忘れがちでしたから、このアップデートには助かっています。

撮影:小川晃代
動き回るやんちゃな仔犬。「リアルタイム瞳AF」が動物にも対応したおかげで、おもちゃで気を引いた一瞬を思った通りの構図で捉えることができた
α7 III / FE 70-200mm F2.8 GM OSS / 176mm / 絞り優先AE(1/1,000秒・F2.8・±1.0EV) / ISO 500
※人物と動物ではモードの切り替えが必要です。すべての動物が対象ではありません。

——ちなみに、ペットや人物を撮る際のお勧めの撮影設定を教えてもらえますか?

小川:ペットの場合、1頭の場合は絞り開放、複数頭の場合はF4程度まで絞ります。被写体が予想外の動きをするので、シャッター速度は最低でも1/200秒、走っているときは1/1,000秒以上にします。人間のモデルのように止まってくれず前後にも細かく動くので、基本的にはF1.4の単焦点レンズより、F2.8のズームレンズの方が使いやすいですね。

西尾:ポートレート撮影の時、絞りをどうするかまず決めます。私の場合は絞り開放にはあまりせず、半段程度は絞りますね。絞りの次は被写体の動きにあわせてシャッター速度を決める。速いシャッター速度を設定することもありますが、そこはISO感度で補います。以前と違ってISO感度を上げてもノイズにそれほど大きく影響がないので、活躍するシチュエーションの幅が広いです。

——AFを作動させるのはシャッターボタン半押しでしょうか、AF-ONボタンでしょうか。

小川:AF-ONボタンです。シャッターとAFが独立していた方が自分の撮りたいところで撮れる感覚があります。

西尾:フイルムカメラ時代からシャッターボタン半押しです。それで慣れていますので(笑)

撮影:西尾豪
動くモデルを水しぶきとともに写し止める。被写体が動いても高精度に追随する瞳AFと広くなった位相差AFエリアが自由度を与えてくれた。
α7 III / FE 70-200mm F2.8 GM OSS / 176mm / 絞り優先AE(1/1,000秒・F2.8・±1.0EV) / ISO 500 / モデル:大川成美

「リアルタイム瞳AF」はどこまで有効?

——「リアルタイム瞳AF」でもピントが合いづらいと感じたシチェーションはありますか?

小川:瞳が大きくて顔の毛が真っ黒なワンちゃん、つまり目と顔のコントラストの境がないと合いづらいときがありますが、光さえ当たっていればピントは合いやすいので、かなり速く動いても素早く追尾してくれます。

撮影:小川晃代
人懐っこい野良猫が近づいてくるところを先回りして撮影。かなり低い位置での撮影だが、瞳AFが近づいてくる野良猫の瞳にピントを合わせてくれた。
α7 III / FE 70-200mm F2.8 GM OSS / 179mm / 絞り優先AE(1/1,000秒・F2.8・±0.0EV) / ISO 500

——そのほか「リアルタイム瞳AF」の使いこなしにコツはありますか?

西尾:被写体の動きがあまりにも不規則だったり回転したりすると、当然カメラから瞳を見失うことはありますよね。でも顔と瞳を認識しさえすればすぐに復帰するので、シャッターボタンを半押しし続けることによって捉え続けた方が結果シャッターチャンスを逃さず撮影できると思います。「リアルタイム瞳AF」に頼ると決めたら頼りきった方がいい。

小川:私はFn(ファンクション)ボタンで人物と動物の瞳AFを切り替えられるようにしています。仕事で子どもの撮影もしますので、割り当てですぐに切り替えられるのは便利です。

撮影:西尾豪
太陽光とダウンライトのミックス光のもとで、どのような結果になるかリアルタイム瞳AFを試してみた。横顔にも関わらず瞳にピントがしっかり合った。
α7R III / FE 85mm F1.8 / マニュアル露出(1/200秒・F3.5) / ISO 2500 / モデル:大川成美

「瞳にピント」は基本だが、テクニックが必要だった

——おふたりともαの「リアルタイム瞳AF」に対し、かなり信頼を置かれているようお見受けします。やはり瞳にピントが合うことは重要なのでしょうか。

西尾:どこにピントが合っているか、どこからぼけているかを表現することはフィルムの時代からある重要かつ基本的な要素です。気持ちとしては他の要素が良くてもピントが思うところに合っていないと作品として出しづらい。ピント精度には特にこだわりを持っています。意図的に瞳にピントを当てないときもありますが、基本的なポートレート撮影では「瞳にピント」は基本だと思います。

小川:動物でも瞳にピントが合っていないと作品全体がぼやけた印象になりますから、瞳にピントを合わせることは作品の質を上げるためにも重要ですね。瞳にピントを合わせることで表情をしっかり表現することができます。

撮影:小川晃代
撮影者の気配に気づき、一瞬だけこちらを見た瞬間。構図に対して被写体は小さいが、きっちり瞳にピントが合っている。
α7 III / FE 70-200mm F2.8 GM OSS / 200mm / 絞り優先AE(1/640秒・F3.2・±0.0EV) / ISO 500

——「瞳AF」が「リアルタイム瞳AF」に、さらには人物だけでなく動物にも対応と、実用的になったことで、ご自身の撮影が何か変わりましたか?

小川:単純に撮り逃しが少なくなりました。AF速度と追随性能の足りなさが理由の撮影を諦めることが少なくなり、好きな時に好きなものが撮れるようになったのはありがたいですね。

西尾:ピント合わせへの意識が解放されるのが何よりも大きいです。背景に気を配ったり、周りを見れるようになりました。構図の中央以外もしっかり見て追い込むようになり、作品力を高める気持ちにしてくれますね。ほぼ確実にピントが合っていると保証されるのは、プロだけでなくカメラ初心者にとっても自信につながるのではないでしょうか。

小川:ペット写真教室で生徒さんに教えているのですが、初心者の場合、ピントを合わせているうちにペットが動いてしまい、1枚も撮れないものです。それが「リアルタイム瞳AF」の動物対応を搭載したαを使うと、電源を入れシャッターボタンを押すだけで撮れるように。初心者にこそ必要な機能かもしれません。

撮影:西尾豪
モデルの口元が隠れた状態でも、瞳AFはぴったりと合ってくれた。前ぼけが大きくあるようなシチュエーションでも煩雑な操作は必要なく、シャッターボタンを半押しするだけ。
α7R III / FE 24-105mm F4 G OSS / マニュアル露出(1/160秒・F4.0) / ISO 200 / モデル:大川成美

——小川さんも西尾さんも「α7R IV」と並行してベーシックモデルの「α7 III」も使われていますが、「瞳AF」以外に「α7 III」の気に入っている部分はありますか?

小川:大人のモデルと違い、ペットや子どもは言うことを聞いてくれるとは限りません。たとえ座っていたとしても、細かく動いて止まってくれないのです。そのため、1、2回のシャッターチャンスで決める必要があります。そこで私はカメラの性能で重要なものとして、AF精度と最低でも約7コマ/秒の連写性能を挙げています。「α7 III」はそういった自分の及第点をクリアしています。ピントが合うまでのスピードや追随性能は申し分ないですし、連写性能も最高約10コマ/秒(※)ですから。

*1 連続撮影モード「Hi+」時に最高約10コマ/秒、 連続撮影モード「Hi」時に最高約8コマ/秒の高速連写が可能です。撮影設定によって最高連写速度が異なります。

西尾:SDカードのスロットがダブルスロットなのも嬉しいですね。片方にはUHS-IIのSDカードが使えるのもポイントでしょう。

小川:実際、ペット写真教室の生徒に勧めるのは「α7 III」です。コストパフォーマンスに優れていますし、追加のレンズを考える余力もできるかもしれません。ペットを撮る人の中には走っている姿の撮影はピント合わせが難しいので自分では撮れないと思っている方も多いと思います。でもαの「リアルタイム瞳AF」を使えばそれも簡単になるので、ぜひ挑戦して欲しいですね。

対談を終えて(編集部から)

お二人の対話で印象に残ったのは、フォーカスエリアの操作に慣れたプロでも「瞳AF」は「常時ON」であること。そして「瞳にピントを合わせるのが写真の基本」であるということです。

フォーカスをカメラに任せ、代わりに構図や被写体とのコミュニケーションなどに注力。結果的に作品の質が上がる……プロも認めるαの「リアルタイム瞳AF」を活用しない手はありません。ポートレートやペットの撮影を諦めていた人こそ挑戦してみてはいかがでしょうか。

制作協力:ソニーマーケティング株式会社

デジカメ Watch編集部