ソニー フルサイズミラーレスα7 IIIの実力をジャンル別に検証
【星景編】FE 24mm F1.4 GM × α7 III
高性能単焦点レンズとフルサイズミラーレスが変える星景写真の世界
2019年12月13日 12:00
ベーシックモデルの位置づけながら、その高性能ぶりが各方面で支持されているフルサイズミラーレスカメラ「α7 III」。このα7 IIIの実力を見る企画の第3弾として、今回は星景写真での実力をみてみたい。
星景写真を撮っていただいた写真家は、世界各地の星空を追いかけている北山輝泰さん。使用レンズは高い描写性能、特に点像再現の良さで知られ、カメラグランプリ2019で最も優れたレンズに送られる「レンズ賞」も受賞しているG Masterの単焦点大口径レンズ「FE 24mm F1.4 GM」だ。(編集部)
北山輝泰
日本大学芸術学部写真学科在学中、授業で天体望遠鏡を使った撮影を行なったことがきっかけで、天体写真への興味関心が強まる。卒業後、福島県鮫川村に移住し、天文台で星空のインストラクターをしながら、本格的に天体写真と星景写真を撮り始める。その後、星空の魅力を多くの人に伝えたいという想いから、天体望遠鏡メーカー「株式会社ビクセン」に入社する。2017年に星景写真家として独立。天文雑誌「星ナビ」のライターをつとめながら、世界各地で星空の撮影を行なっている。
星景写真とFE 24mm F1.4 GM
FE 24mm F1.4 GMで注目すべきところは、まずその開放値F1.4という魅力的なスペックであろう。星景写真の撮影では、F値が明るい方がいいのは間違いない。なぜならば、シャッタースピードを短くして撮影ができることで、赤道儀などの特別な機材を使わずとも、星空を肉眼で見ている状態に近い点像で撮影できるからである。
地球の自転は1時間に約15度動いており、星もそれに伴って動いているかのように見える。星空撮影において、この速さを意識することは重要だ。つまりシャッタースピードが長くなればなるほど星の軌跡が見えてしまい、点像で捉えることが難しくなる。よって点像で捉えたい場合はF値が明るければ明るいほど有利なのだ。
また、24mmという焦点距離も星景写真では非常に使い勝手が良い。広い画角の星空写真の代表的な構図を作ることができるからだ。夏の天の川のさそり座や、射手座付近などの銀河中心部分、そして冬の大三角形とオリオン座などの構図では、24mmを選択して撮影をすることが多い。
それらを踏まえた上で、FE 24mm F1.4 GMが開放F値以外で特に優れていると思う点を2点挙げていこう。
まず1つ目が軽量コンパクトであることだ。開放F値が明るくても重たければ機動力が落ちてしまい、撮影に気軽に持っていくという気にならないが、重量は445gと、同スペックのレンズと比較した時に約200g程度軽い。特に高い解像性能と美しいぼけ味が魅力のソニー最高峰レンズ「G Master」の中でもそのコンパクトさは際立っているので、小さなカメラバックでも収まりがよく、非常に使い勝手がよい。
2つ目が画質である。FE 24mm F1.4 GMは、超高度非球面XAレンズを採用していることで、サジタルフレアという点像がにじむような収差を抑制し、開放値F1.4から針で夜空に穴を開けたような鋭い点像で星を撮影することができる。さらにレンズ面にもナノARコーティングが施されているため、月明かりが明るい夜でも、ゴーストを抑えながら撮影することが可能だ。
雲間に一瞬現れたこと座のベガ。F1.4の開放F値のおかげで、目まぐるしく変わる空模様の中でもピント合わせと構図合わせをスムーズに終えることができた。信号機の灯りが雲に反射し、不思議な色合いの1枚となった。
南米のアタカマで撮影した南中する天の川の写真。軽量コンパクトなレンズは海外遠征の際には強力な相棒となる。ちなみに、山際にうっすらと写っている筋状の模様は大気光と呼ばれる発光現象だ。目に見えている通りに撮影することが難しい微細な現象をも、このコンパクトなレンズで捉えることができた。
モンゴルでゲルキャンプに滞在をしながらペルセウス座流星群を狙った。月明かりが照らす明るい夜空の中でも、美しい流星の軌跡を捉えることができた。雲のダイナミックな様子が分かるよう、速いシャッタースピードを選択した。
それからFE 24mm F1.4 GMの個性をさらに活かした星景写真を撮りたい方は、ぜひ星空の下でのポートレート撮影に挑戦してみて欲しい。α7 IIIは手ブレ補正も強力だし、瞳AFと高感度撮影を組み合わせることで、ストロボなどを使わず自然光のみで、人がぶれていない写真を撮ることができる。
優れた高感度画質と階調再現
ベーシックモデルではあるものの、α7 IIIは優れた高感度耐性を持っている。
私の感覚では、ISO 6400までは標準設定のノイズリダクションで十分作品として使うことができ、ISO 12800〜25600の領域なら、カメラ内のノイズリダクションに加え、RAW現像時にノイズ処理を施せば、実用的なレベルの作品に仕立てることができる。ISO感度を気にせず設定できることは、様々なシーンでストレスなく撮影するためには大事なことだ。
また、最大15ストップという広いダイナミックレンジを持っていることも特筆すべき点だろう。例えば、月明かりがない新月期に山並みとともに星空を撮影をした時に、山のディテールが出なくて困ったという読者もいらっしゃるのではないだろうか。
α7 IIIなら、一見潰れてしまっているような画像データでも、RAW現像時にシャドウ部を少し持ち上げることでディテールを復活させることができる。撮影の時に露出で考え込んでしまっては、貴重な星空を逃してしまうこともある。予期せぬタイミングで訪れる星空の変化に悩まずシャッターを切り、あとはRAW現像に任せてしまう判断も時には必要になる。
モンゴルの大草原に月が沈んでゆく。月明かりの影響で見えなかった星空が徐々に現れてくる光景に、私はただひたすら感動していた。
ゲルキャンプの独特な形を表現するために、あえてコントラストを高めにシルエットで撮影。広いダイナミックレンジのおかげで、ハイライト部分から夜空のシャドウ部分までのグラデーションを美しく切り取ることができた。
次は山形で行なった星景写真ワークショップでの一幕。雲に覆われていた夜空に急に晴れ間が現れた。私は大急ぎでセッティングを済ませ、撮影を行なっている参加者の様子を捉えた。撮影体勢としてはウェストレベルでの撮影だったが、チルト式液晶モニターのおかげで楽に構図決めを行うことができた。
もはや手放せないブライトモニタリング機能
私がα7 IIIで星景写真を撮影している理由の一つが、ブライトモニタリング機能の存在である。夜間の撮影でEVFや液晶モニターの明るさが足りず構図が確認しにくい時に、一時的に画面の明るさをブーストし、フレーミングしやすくすることができる機能のことだ。
通常表示のモニターで確認できなかった星空がパッと見えるようになるため、画角の中でどういった星座が写っているのか、また地上風景はどれくらいの割合で写っているかなど、色々な情報が一目でわかるようになる。
ここからピント合わせをしたい星を探して、ブライトモニタリングを一度切り、ピント合わせをしていくという流れになるが、ブライトモニタリング機能に出会う前の、何度も試し撮りをして構図を確認するという手間がなくなったため、本番撮影までの時間が大幅に短縮された。
FE 24mm F1.4 GMの使用時には、液晶モニター上で、天の川の存在と暗黒星雲とのコントラストまでもがはっきり見える。特に星景撮影者にとって一度使ってしまったら病みつきになる機能であることは間違いない。
海外遠征では、ほぼ必ずレンタカーを借りて移動をする。その際、星空と一緒に車を撮影することが日課となっている。この写真は、ブライトモニタリングを利用して構図を決めて、ブライトモニタリングが切の状態で、車にわずかにヘッドライトをあててピント合わせた。こういった作品が気軽に撮れるようになったのは、ブライトモニタリング機能を搭載しながら、高感度耐性に強いα7 IIIならではであろう。
今回訪れた南米で見た星空は、私が過去見た星空の中でも群を抜いて美しいものであった。この写真は、流れ星を狙うためにインターバル撮影している最中の一コマである。この時もα7 IIIの行き届いた仕様が生きた。α7 IIIは給電しながらの撮影もできるため、長時間の撮影でもバッテリー切れを心配することなく撮影することができる。
まとめ
国内での撮影から海外での撮影まで、気軽に持ち運べるサイズと重量でありながら、明るい開放F値F1.4と高い描写力を実現したFE 24mm F1.4 GMは、星景写真を撮る上で欠かせないレンズといえる。さらに、67mm径のフィルターを装着できるので、ソフトフィルターで星をにじませるテクニックも使える。これからの冬の星空を美しく撮りたいと思っている読者の方に、ぜひオススメしたい1本である。
一方ボディのα7 IIIは、幅広いダイナミックレンジに加え、高い高感度耐性を兼ね備えているため、星景撮影のあらゆる撮影シーンで安心して使用できる。また、コンパクトなボディーは、カメラバックの中での収まりも良い。星景写真を初めて撮るビギナーの方から、日常的に撮られているハイアマチュアの方まで、幅広いユーザーのニーズに応える1台である。
制作協力:ソニーマーケティング株式会社