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桜を撮ったら次はRAW現像!「SILKYPIX Developer Studio 11」で試したい「桜フォト」のレタッチサンプル6選

長かった冬が終わり木々の緑は萌え花々が咲き誇る春。長い期間をコロナ禍の影響で思うように出かけることもできずに過ごし、また連日報道される不安定な国際情勢なども影響し気持ちも塞ぎがちだったことからも、この花の季節の到来は多くの人々がまさに待ちに待ったものとなったことだろう。特に桜が満開となったここ数週間は、その美しさを満喫することで少なからず気持ちも晴れやかになれたのではないだろうか。

そして美しく咲く桜の姿は、写真を楽しむ人にとっては見逃せない被写体でもある。きっとその美しくも儚い姿を写真に納めた方も多いことだろう。

春の風物詩として人々の目と心を捉える桜の花だが、実は被写体となるとその美しさを写真で表現することは意外と難しい。多くの桜の木は数mから十数mの高さの樹木であり、そこに広がるいくつもの枝に無数の小さな花が咲く。高い位置にあることから明るい空を背景とした逆光下での撮影となりやすいうえ、その花びらはとても薄く光が透け通るため淡いピンク色は白く表現されてしまう。そのためカメラで撮影した際には肉眼で感じた花の印象とは異なった写真となってしまいやすく、実際に目で見た際に感じた感動と撮影画像との間にギャップを感じてしまうことも少なく無い。

そこで今回は撮影後のRAWデータを調整・現像することで、撮影時の感動を再現する方法を考えてみたいと思う。

RAWデータに記録された情報から桜の魅力を引き出そう

まずは最初に、ここではデジタルカメラで撮影した際に記録される画像データについて簡単に説明しておこう。

現在一般的に販売されているデジタルカメラの多くは、撮影した画像をJPEG形式で保存するように作られている。JPEG形式は汎用性が高く、パソコンやスマートフォンなどほとんどの画像表示のための機器で再生することができ、通常使用の範囲であれば画像の質も十分に高い。

またデータの圧縮率も高く高画質な画像データであってもデータ量を比較的小さくすることができるため、インターネットを介しての送受信を容易にできるなどメリットが大きい。

ただし、データの圧縮を行なう際に一部の画像情報を間引く形でデータ量を小さくする方法を取るため、本来デジタルカメラが記録しているはずの、写真における明るさの階調情報や色の詳細な情報などの一部が省かれてしまっている。

もっともほとんどの用途では、これらの情報が省かれた画像であっても十分な画質と言えるのだが、今回のテーマである桜のように微妙な明るさの階調や色の情報などが必要な被写体の場合は、カメラで保存されたJPEG画像では若干物足りなくなってしまうことがある。

そこでこれらの画像情報を引き出すのに有効な方法がRAWデータからの現像処理である。

RAWデータとはその名の由来でもある「RAW=生」のデータであり、デジタルカメラがレンズを通してイメージセンサーで捉えた光情報をそのままデジタルデータに変換して保存記録したものだ。すなわちJPEG画像として生成する前段階のデータであり、データ量の圧縮による情報の間引きがまだなされていない状態のものである。

ただRAWデータ自体は本来画像としては表示ができないものなので、JPEGやその他の画像形式に変換・保存することにより、はじめて画像としてパソコン等で表示することができるものだ。この作業を指してデジタル写真に関わる世界では「RAW現像」と呼んでいる。

「SYLKYPIX Developer Studio 11 」でイメージを再現

さてここからは実際に市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフト「SILKYPIX Developer Studio 11」を使用して、桜の魅力を引き出す効果的なRAW現像の方法をご覧いただこうと思う。

SILKYPIX Developer Studio 11は数あるRAW現像ソフトのなかでも設定項目の自由度が高く、さまざまな項目において細やかな調整ができると定評のある製品だ。

国内メーカー製であるだけにソフトの設定メニューや使用方法のマニュアルの文章がわかりやすい日本語であるところもポイントが高い。

なおSILKYPIX Developer Studio 11にはスタンダード版と機能が拡張されたプロフェッショナル版の2種類が用意されている。今回の作例の一部ではプロフェッショナル版限定の機能も使用しているが、基本的な操作はどちらでも共通したものとなっているので参考としていただけると嬉しい。

作例1:青空に広がる枝垂れ桜の立体感を堪能する

現像前
撮影:礒村浩一

とても大きく立派な枝垂れ桜の木。ただこの画像のままでは枝垂れ桜の広がった枝が立体的に見えず、また花の存在感も伝わりにくい。

主な調整項目

そこでまずは画像のホワイトバランスをオートから昼光(快晴)へ変更することで全体の色味をすっきりとさせた。

そのうえで全体の明るさ・コントラストを調整すると同時に、

ファインカラーコントローラで赤成分の色相をわずかにオレンジ方向へずらすと共に

彩度を上げて花の赤みを不自然にならない範囲で強調。

同時に背景となる青空の明度を下げると共に彩度を若干上げて、花との輝度差と色の分離を明確化。これにより、より枝と花が浮かび上がるように調整した。

その結果、目標通りに枝垂れ桜の枝の立体感が生まれ存在感を増すことができた。

現像前←→現像後

作例2:強い逆光にも負けない桜の美しさを見出す

現像前
撮影:礒村浩一

神社の鳥居を見守るように広がる桜の木。花の満開を迎えて生気にあふれる桜の姿を捉えたく仰ぎ見るように撮影したものの、明るい空による強い逆光で花びらに影のくすみがでてしまった。また鳥居や祠が空との輝度差の大きさにより暗くなってしまう。

主な調整項目

そこでHDR効果を利用してシャドウ部を明るくすると同時にハイライト部の明るさを抑えることで、輝度差を少なくし全体の明るさを整えた。

またファインカラーコントローラにてグリーンの明度を上げることで、シャドウ部の草葉を明るくしてある。

これら複合的な調整によって強い逆光であってもディティールを失うことなく輝くような桜の美しさを表現することができた。

現像前←→現像後

作例3:崩れたカラーバランスを整えてクリアで鮮やかな桜を再現する

現像前
撮影:礒村浩一

満開の桜が広がる枝の内側に入ってそっと花に近づき撮影。カメラのオートホワイトホワイトバランスが周囲の花の赤みに影響されグリーン方向にカラーバランスが崩れてしまった。

主な調整項目

そこでSILKYPIX Developer Studio 11のホワイトバランス調整で、色偏差の値をマゼンタ方向へスライドさせることで、桜の花が本来持つ赤みを取り戻した。

またハイライト部の階調を引き出すために、ハイライトコントローラにてダイナミックレンジ拡張を行ない白とびを抑えている。

加えて花の淡い赤みを引き立てるために空の青みをファインカラーコントローラを使用して、青を色域指定したうえで彩度の強調と明度の引き下げを行なってある。

最後に画像全体のメリハリをつける為に調子の設定値で白レベルと黒レベルを上げて、爽やかでクリアな印象の仕上がりとした。

現像前←→現像後

作例4:明瞭な色再現と新機能クリアビューが春の姿をリアルに描き出す

現像前
撮影:礒村浩一

春に咲く花の代名詞ともいえる桜と菜の花の競演。見るものの心を明るくしてくれる光景だが、いざ写真にすると目にした時と違い全体的にくすんだ印象となりやすい。

それを補うには撮影時に露出補正で明るめに撮影する必要があるが、補正値を大きくし過ぎてしまうと白飛びかつ色が飽和してしまう原因にもなってしまう。

そこで撮影時の露出補正は若干控えめにしておき、RAW現像時に画像の調子を確認しながら明るさと彩度を持ち上げるようにすると調整しやすい。

主な調整項目

ここでは現像時に露出補正を+0.4、シャドーを45まで上げたうえで、ホワイトバランスで色温度・色偏差を調整してカラーバランスを整える。

さらにファインカラーコントローラで背景となる空の明度を下げつつ青さの彩度を上げることで濃い青空とした。これにより桜の花と菜の花の鮮やかさがより引き立つようになる。

最後に現像設定にてこのバージョンから新たに搭載されたデモザイクエンジン「クリアビュー」を適用させたことで、桜の木の解像感が向上。手前の菜の花のぼけとのメリハリでより遠近感が浮き立つ作品となった。

現像前←→現像後

作例5:柔らかな春霞に滲む桜の儚さを拾い上げる

現像前
撮影:礒村浩一

柔らかな日差しに照らされた満開の桜が春霞に霞む様子を撮影したところ、重なる花同士の影で木の下部が暗くなってしまった。

主な調整項目

そこで露出・明るさのシャドーを持ち上げると同時にハイライトとコントラストを下げて明るさを均等にする。

ただし霞による滲み具合は残したいので白レベルで画面全体の白霞の雰囲気を補完。

そのうえでこれらの調整で弱まった桜の色彩を取り戻すためファインコントローラにより赤みの彩度と明度を調整し

最後にシャープの輪郭強調を調整することで花ひとつひとつが分離するようにしてある。

これらの調整によって心象的な桜の光景として仕上げることができた。

現像前←→現像後

作例6:星空の下で撮影した夜桜の魅力を引き出す

現像前
撮影:礒村浩一

カメラを三脚に据え付け星空の下で咲く桜の姿を長秒撮影。夜空の星を点像として捉えたいと考えISO感度を12800まで上げて撮影した。

主な調整項目

撮影地の夜空は街明かりの色被りが強いため、SILKYPIX Developer Studio 11のホワイトバランス設定を3900Kに設定したうえで色偏差および暗部調整でマゼンタを加え色味を調整。

その後に夜空の星を際立たせるため調子設定の白レベル・黒レベルスライダーを組み合わせてメリハリを出す。

これらの設定で全体の露出バランスを調整できたところで明瞭度とかすみ除去で全体のクリア感を引き出す。

最後に暗部の高感度ノイズを目立たなくするために暗部ノイズ除去強度を強めに設定した。

なおSILKYPIX Developer Studioシリーズでは、高感度ノイズはカメラの設定感度に合わせて自動的にノイズ除去が行なわれるので、ほとんどの場合で手動でのノイズ除去は最小限の調整で十分だ。

現像前←→現像後

RAWデータが持つ情報を最大限に引き出して最適な状態に仕上げる

今回紹介した6例の画像仕上げは、いずれも桜の魅力を最大限に引き出すためにRAWデータが持つ情報を最大限に引き出して完成させたものだ。

現在販売されているデジタルカメラではJPEGで記録された画像でも十分に美しい写真を得ることができるが、撮影者の意図する表現をより明確にするには、やはりRAW現像を介して最適な仕上がりの作品とすることの意味は大きい。

RAW現像の手順に慣れないうちはなかなか思うように調整するのは難しいかもしれないが、まずはこの春に撮影した桜の写真の明るさや色味といった基本的な調整から初めてみよう。

今回RAW現像に使用したSILKYPIXシリーズの製品は、日本に暮らす人々のこころを癒してくれる、桜の色を魅力的に表現することを開発目標のひとつとしてつくられたソフトであるという。国産ソフトならではのコンセプトはご覧いただいた作品の仕上がりからも感じていただけたのではいないだろうか。

ここ数年はソフトの購入方法も多様化しており、毎月の支払いが発生するサブスクリプション契約の製品も増えているが、このSILKYPIX Developer Studioシリーズは、一度購入すればずっと使用できる買い切りタイプの製品となっており、トータルコストの面からもひとつのメリットとして数えられる。SILKYPIX Developer Studio11の最新バージョンは、体験版を公式サイトから無料で手に入れることもできるので、興味のある方はこの機会にぜひ桜の魅力を引き出す作品作りにトライしていただきたい。

制作協力:株式会社市川ソフトラボラトリー