特別企画

ワンアクションで組み立て完了!ロケ撮影に超絶便利なソフトボックスが誕生

「Profoto Clic ソフトボックス オクタ型」レビュー

ソフトボックスはやわらかな光質が魅力だ。ポートレートはもちろんのこと、料理や商品撮影など、幅広くさまざまな場面で活躍する。筆者も日頃からタフに利用している欠かせないアイテムのひとつだ。

しかし、一般的にソフトボックスは組み立てや片付け(ばらし)に時間がかかるのがネック。再度組み立てるのが面倒で、一度セットしたら撮影が終了するまで組み立てたままにしておくことも多い。

今回、Profotoから新たに発売されたProfoto Clic ソフトボックス オクタ型(以下Clicオクタ)はProfoto Aシリーズ専用アイテムとして、その面倒な作業を一気に取り払う画期的なものとなっている。折り畳み式とすることで、まるでアンブレラを使うときと同じような素早さでセッティング、持ち運びできるのだ。

ここでは、Clicオクタの具体的な使用感をポートレート撮影と静物撮影を題材にレビューしていく。

Clicオクタ。左が展開時、右が閉じた状態。ラベル付きの専用ソフトバックに収納できる

マグネットで簡単に取り付け可能

ClicオクタはProfotoがProfoto Aシリーズ(Profoto A1、Profoto A1X、Profoto A10)のために発売した新しいライトシェーピングツールだ。名称冒頭の「Clic」が、Aシリーズ専用であることを示している。ClicシリーズはAシリーズライトの機動力をより高めるために用意されたアイテムとも言えるだろう。

冒頭でも述べたように、ソフトボックスはやわらかな光質が特徴だ。ハイライトからシャドウまでを滑らかなグラデーションでやわらかく被写体を描き出してくれる。

ソフトボックス自体の照射範囲が狭いため、なるべく被写体に寄せて照射したほうがやわらかな光が利用しやすい。ポートレートでは目の中に印象的なキャッチライトを映し込めるのも魅力で、今回のような8角形のオクタ型の場合は、ほぼ円形に近いキャッチライトが挿入できる。

では新製品をチェックしてみよう。Clicオクタは発光面直径が60cmとコンパクトな形状で、移動の多いロケ撮影に最適な仕様になっている。被写体としてはバストアップのポートレートや小ぶりな静物・商品撮影で存在感を発揮する。気軽なフラットレイ(俯瞰)撮影などでも利用しやすく重宝するだろう。

やはりもっとも注目すべきは、ワンタッチで開閉が簡単におこなえることだ。この気軽さには驚愕する。本当に使いやすい。ライト取り付け部はマグネットになっていて、そのままストロボの発光部を取り付け部に近づけるだけで吸い付くように密着する。

Profoto A10に取り付けた状態。マグネットは強力で安定感がある。勝手に外れる心配はない
Clicオクタはハンドルとスタンドアダプターを搭載。ハンドル操作でチルト方向への調整が容易におこなえる。スタンドアダプターはネジ式になっている

ちなみにこれまではAシリーズで同サイズのソフトボックスを利用する場合、OCFアダプターを介し、OCFソフトボックス60cmオクタ(OCFオクタ60cm)を装着していた。

今回発売のClicオクタは、このOCFオクタ60cmと同スペック(発光面の直径、奥行き、重量)だ。つまり、OCFオクタ60cmと同等の光質で撮影できる。

左がClicオクタ、右がOCFオクタ60cm。発光面直径、奥行き、重さともにスペックは同じ

ディフューザーを1枚内蔵し、2枚のディフューザー越しに光を照射する仕様も同じだ。OCFのライトシェーピングツールは主にBシリーズ(Profoto B1X、Profoto B10Xなど)専用に作られている。

スタンドにセットして1灯ライティング

では実際にライティングしながら光質を見ていこう。

ClicオクタをProfoto A10(以下A10)に取り付け撮影していく。

まずは自然光の入る室内を使い、スタンドにセットしてストロボ光と馴染ませながら撮影してみた。

A10+Clicオクタ
EOS R6 / EF85mm F1.4L IS USM / F2.8 / 1/80秒 / ISO 200 / A10+Clicオクタ
A10(Clicオクタなし)
EOS R6 / EF85mm F1.4L IS USM / F2.8 / 1/80秒 / ISO 200 / A10
自然光のみ
EOS R6 / EF85mm F1.4L IS USM / F2.8 / 1/80秒 / ISO 200

ソフトボックスを外して直射したものと比較すると効果の違いは一目瞭然。肌の質感が滑らかに美しく再現されている。直射した作例では、顔の輪郭に合わせ鼻の下などに影がくっきり出ているのがお分かりだろうか。

Clicオクタはコンパクトで発光面はそれほど広くない。やわらかな光質を得たければ、なるべく被写体に寄せて使うことになるが、照射範囲が狭まるため、この作例のようにバストアップでの使用が適している。もちろん距離を設け全身に向けて光を照射することも可能だが、その分コントラストも上がってやや硬めの光になる。

手持ちで日中シンクロ

晴天下の屋外でスタンドを使わず手持ちでライティングした。A10+Clicオクタの状態でも片手で持てるほど軽い。撮影時の機動力が素晴らしい。

「Profoto Air Remote TTL」を利用することで、自動調光しながら直感的に撮影できた。モデルに近づき、正面上からストロボを照射している。

A10+Clicオクタ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F16 / 1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ
自然光のみ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F16 / 1/200秒 / ISO 100

なお、ここではハイスピードシンクロ(HSS)も試してみた。HSSは高速シャッターを利用しながら、ストロボが照射できる機能。背景を大きくぼかしたいときなどに用いるが、大光量が必要になるのが特徴的。最大発光量72WsのA10との組み合わせでも、ボックスをグッと近づけることで光量不足にならずにHSS撮影ができた。

A10(HSS)+Clicオクタ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8 / 1/4,000秒 / ISO 100 / A10(HSS)+Clicオクタ

専用グリッドを装着してみる

Clicオクタにはオプションで専用ソフトグリッドが用意されている。グリッドを装着すると光の拡散が抑えられ、照射範囲が狭まる。より指向性の高い光を作り出すことが可能になる。

Clicオクタ専用グリッド
取り付けはプルオーバー式。シャワーキャップを被せるように、サクッとセッティングできる

ここでは写す範囲を広げて、光の広がり方をグリッド有り無しで比較した。ソフトグリッドを装着した作例のほうが光の拡散が狭い。

このアイテムはコントラストが強まるのも特徴で、特定部分にハイライトを入れたい場面や、背後をなるべく暗く落としたい場面などでもよく使われる。

A10+Clicオクタ+専用グリッド
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F16/1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ+専用グリッド
A10+Clicオクタ(専用グリッドなし)
グリッド装着時と比べると、コートの裾まで光が回っているのがわかる
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F16/1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ

Profoto Clic色効果フィルターキットを併用

Clicシリーズには新発売のオクタ型ソフトボックスの他に、カラーフィルターやグリッドがラインナップされている。とくにカラーフィルターに関しては、Clicオクタのマグネットにそのままくっつけて使用できるので、非常に便利だ。

Profoto Clic 色効果フィルターキット
他にもアンバー系の1/1CTOや1/2CTOなどがあり、合計12種類から選択できる

今回はClicオクタにProfoto Clic 色効果フィルターキット(以下Clic 色効果フィルターキット)のひとつ、ピーコックブルーを装着。1灯でライティングしてみた。

半逆光気味に照射することで、顔と樹木のラインに合わせて、個性的な色合いを加え非現実的な描写を狙っている。

A10+Clicオクタ+Clic 色効果フィルター(ピーコックブルー)
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8 / 1/160秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ+Clic 色効果フィルター(ピーコックブルー)
自然光のみ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8 / 1/160秒 / ISO 100

なお、ClicオクタにClic カラーフィルターを装着する際はマグネットの強度がやや落ちるので注意したい。A10だけを装着した状態なら心配ないが、間にカラーフィルターを入れるとやや安定感が損なわれる。手持ちや動きながら撮るような場合には細心の注意を払おう。

ちなみに、カラーフィルターは二重にすることで個性的な色合いになるが、Clicオクタと併用する場合には、複数枚を重ねることは推奨されていない。マグネットの強度が落ちて、ストロボが外れやすくなるためだ。

リフレクター(レフ板)を併用

ポートレート撮影の締めくくりとして、リフレクター(レフ板)とも併用してみた。機動力の高いClicオクタと組み合わせるのに、リフレクターは最良のアイテムのひとつだろう。リフレクターを使って光を反射させることで、1灯でも2灯ライティングのように撮影できる。

ここでは逆光のシチュエーションを利用して、Clicオクタとリフレクター(ホワイト面)でモデルを上下に挟むようにライティング。顔全体にストロボ光を回し込みながら撮影した。

Clicオクタ+リフレクター
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8/1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ+リフレクター
リフレクターのみ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8/1/200秒 / ISO 100 / リフレクター
自然光のみ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F2.8/1/200秒 / ISO 100

手持ちで俯瞰撮影に挑戦

小型軽量のClicオクタはちょっとした小物や料理の撮影にもぴったりのアイテムだ。場所を取らず簡単にセッティングできるため、気軽に静物の撮影がおこなえる。

ここではまずフラットレイ(俯瞰)撮影を手持ちライティングで実践してみた。右サイドの窓際から入る自然光をベースに、Clicオクタを被写体に向け、光のあたり具合をその都度確認しながら撮影をおこなった。最終的には向こう正面上から照射したものを掲載している。

こうした試行錯誤が容易におこなえるのもClicオクタの魅力だろう。ソフトボックスから照射されるやわらかな光によって、コントラストをきちん出しながらしっとりとした質感で被写体が撮影できた。

A10+Clicオクタ
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F8.0 / 1/30秒 / ISO 400 / A10+Clicオクタ
窓際の自然光のみで撮影
EOS R6 / EF24-70mm F2.8L II USM / F8.0 / 1/30秒 / ISO 400

スタンドにセットした2灯ライティング

手持ちライティングは直感的な撮影を可能にするが、例えば複数灯を使ったライティングなどはスタンドにセットして光の状態を吟味したい。ここでは料理のイメージカットを2灯のA10を使って撮影した。

被写体に対し左真横にA10+グリッド付きのClicオクタをセット(A)。右奥の斜め上からA10+Profoto Clic カラーフィルターフルCTO(以下Clic カラーフィルターフルCTO)をセットした(B)。

グリッド付きのソフトボックスでややコントラスト強めにストロボを照射しながら、暗部を少しだけ起こす意図でもう1灯を後方から照射。黄色みの強いフルCTOのカラーフィルターを使ったのは、カヌレやパンに温かみのある色合いをプラスするためだ。最終的に手前右にレフ板を入れて、さらに暗部を起こしている。メインライトのClicオクタに対し、後方からの1灯は3段ほど光量を落としている。

A+Bの2灯ライティング
EOS R6 / EF100mm F2.8L Macro IS USM / F8.0 / 1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ+専用グリッド(A) & A10+Clic カラーフィルターフルCTO(B)
Aのみ(左)Bのみ(右)
EOS R6 / EF100mm F2.8L Macro IS USM / F8.0 / 1/200秒 / ISO 100 / A10+Clicオクタ+専用グリッド(A)
EOS R6 / EF100mm F2.8L Macro IS USM / F8.0 / 1/200秒 / ISO 100 / A10+Clic カラーフィルターフルCTO(B)

こうした静物もProfoto AシリーズとClicシリーズのライトシェーピングツールの組み合わせで、クリエイティブな描写がさまざまに展開できるのだ。

まとめ

ということで、ひと通りさまざまなシチュエーションで撮影してきたが、Clicオクタの圧倒的な機動力と使いやすさに度肝を抜かれた。

まず、軽い! とにかく軽い! それでいて光の質もOCFシリーズの60cmオクタと変わらない印象を受けた。簡単に組み立てられるからといって、光の部分で妥協していないのがProfotoらしい。

筆者はロケ撮影がとにかく多いため、アンブレラも使うのだがやはり人物撮影ではソフトボックスを多用する。これまでは一度セットすると、ずっと組み立てたまま移動していて、これが結構かさばって大変なのだ。

しかし、今回登場したClicオクタはまさしくそんな自分に対する救世主になりうるアイテムだ。間違いなくヘビーユースすることになるだろう。つまり、実践的なのだ。

今後はビューティーディッシュやもう少し大きなサイズのソフトボックスなどでも同タイプのものが出てくることを期待する。いずれにせよ、Profotoはいつもワクワクするアイテムを出してくれる。フォトグラファーの好奇心をくすぐって離さないブランドだ。

モデル:MoMo
ヘアメイク:Luna Yoshikawa
制作協力:プロフォト株式会社

フォトグラファー。1976年東京生まれ。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。著書としてこれまでに40冊以上を手がける。最新著書に『まねる写真術』(翔泳社)、「一生ものの撮影レシピ」(日本写真企画)、『デジタル一眼カメラ 知っておきたい撮影の基礎知識200』(玄光社)。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など、写真展も多数。Profoto公認トレーナー。日本写真芸術専門学校講師。