特別企画
風景写真家・高橋真澄さんに聞く PENTAX一眼レフの魅力
信頼して使い込めるかは「道具」として扱えるかどうか
2018年12月3日 10:43
高橋真澄さんは、歴代PENTAXデジタル一眼レフカメラで富良野や美瑛の風景を撮り続けてきた写真家だ。この地を撮る写真家は数多いが、その中でも現役のベテランとして広く知られている。我々が見たことがあるいくつかのカメラのカタログや発表会での作例も、高橋さんが撮影したものだ。
リコーイメージング公式直販サイトやリコーイメージングスクエアで販売中の「2019年リコーカレンダー」には、高橋さんがこれまでPENTAXデジタル一眼レフカメラで撮りためてきた作品が収められている。使用したカメラはK20DからK-1までと幅広い。PENTAXデジタル一眼レフカメラの歩みを見ているような作品の数々には、いずれも高橋さんらしい真摯な美意識が現れている。
そのカレンダーで使用した写真の展覧会が12月5日から東京・新宿で開かれる。開催を間近に控えた11月下旬、高橋さんの富良野のアトリエで、作品のことやPENTAXのことを聞いてきた。
高橋真澄
1959年北海道生まれ。自然風景を撮り続けて26年。大学時代より北海道の山を中心に撮影し始める。丘をはじめとする美瑛・富良野の自然風景を独自の感性で表現し続けている。写真集「風雅」「サンピラー」など著書多数、70冊以上。北海道上富良野町在住。
※本ページ内で使用した作品画像には「2019リコーカレンダー」で採用された作品に加え、カレンダーに収録されていないものも含まれています。
上富良野町にある高橋さんが運営する「ノースランドギャラリー」。北海道らしい瀟洒な建物の裏手には、規模の大きな風景が眼前に広がる。山手線一円に匹敵する面積を一望できるというからすごいスケールだ。高橋さんはここで暮らし、ここを拠点にいまも毎日撮影を重ねている。
——撮影はこの付近が多いのでしょうか。
このあたり一帯で毎日撮影しています。環境的には恵まれていますね。家の前から撮った作品もいくつかあります。畝状の起伏が丘となり、それに空間が断ち切られているのが富良野・美瑛の特徴でしょう。そのため、余計なものを消して画面構成を工夫できる余地があります。道東や釧路湿原のようにただ広いだけだと、風景写真としては難しい。この地形が富良野・美瑛の魅力のひとつではないでしょうか。
——カレンダーには白虹の作品もあります。高橋さんといえばサンピラーやダイヤモンドダストでも有名ですが、こうした自然現象にもよく出会えるのですか?
この時期なら3日に1回は虹を撮っています。経験を積むことで、この時間でこういう状態ならこんな虹が出るな、その場合はどこにいけばどういう写真になる……というのはわかりますね。それに合わせて撮るだけです。自然現象は全てそうです。偶然に頼って撮る意識はありませんね。
——風景写真全般について、どのような意識で作品づくりをされているのでしょうか。
「色」と「形」と、あとはどう「繋がる」かだと考えています。「繋がる」が風景写真の本質だと考えています。作品を観る人それぞれの人生経験により変わるものですが、「繋がる」とは、作品を通じて観る人がどう共鳴していただけるかということです。日本の風景には言わなくてもわかる要素があると思います。観る人と繋がる要素をちりばめながら、それをどう入れ込むか。どう融合するかを心がけています。
——PENTAXのデジタル一眼レフカメラを歴代使われてきました。カレンダーにはかなり以前の機種で撮られた作品も混じっていますが、違和感はないですね。
カレンダーで一番古いのはK20Dですね。K-3 II、K-5、K-5 II、K-7もあります。その他にも色々な機種を使っていますが、全部そのときはこれで十分だと感じていました。
——その中でも逆光を活かした作品が特徴的です。どうやってフレアやゴーストを抑えているのですか?
一般的な傘などをレンズの斜め前にかざし、完璧に光を遮蔽しています。そうしないとキレの良いダイヤモンドダストやサンピラーの作品はフレアが入って無理でしょう。このやり方はだいぶ広まりました。三脚を使うのはブレを抑えるためもありますが、片手で傘を使うためでもあります。効率よく遮光して撮るには三脚を使うことが必要です。
——どの作品も高精細です。何か秘訣があるのですか?
三脚を必ず使っていることと遮光、そしてK-1からは電子シャッターを使っています。メカシャッターだと、どうしても細かなブレが出る可能性がありますから、最高の1枚を得るためには、何枚も撮るしかありませんでした。何枚も撮れる状況なら良いですけど、そうでないときは当たるか外れるかの世界になってしまいます。それが電子シャッターなら歩留まり良く撮れるようになりました。
——よく使うレンズは?
フルサイズのD FAレンズでは、HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WRですね。APS-Cだとsmc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDMが好きです。解像度が高いすごいレンズです。ブレないようにシビアに扱う必要がありますが。
——PENTAXのカメラは風景写真にあっていますか?
ええ、まず色が良いですね。フィルムからの流れでみて、色に違和感がない。癖がなくて使いやすいのです。風景写真にはPENTAXの色が一番ですね。特に重要な緑の使い方が他のメーカーとだいぶ違います。抜けのいい、気持ちいい緑がPENTAXの良さの一つです。メーカーはそれを重視してバランスを考えていると思います。階調も良く解像感も高いところも風景写真向きだと思います。通常のシャープネスとは別に、ファインシャープネスがあるのもいいですね。精細感がきれいに出ます。
——リアル・レゾリューション・システムは使われていますか?
K-1で動かないシーンを撮影する場合、9割くらいはリアル・レゾリューション・システムを使っています。ファンクションボタンに割り当てています。
やはり解像感が全然違いますね。通常の撮影より時間がかかるので、シノゴ(4×5判)的な撮り方になってしまうのですが、すごいと思いますよ。プリントしても違いはわかります。精細で細かくキレが良くなりますね。雲のような被写体にも意外と似合います。
——冬はかなり寒くなると思いますが、ちゃんと動作するものなのでしょうか。
マイナス20〜30度でも全然問題はありません。レンズもちゃんと動きます。その場にずっといるわけではないのですが、寒さで動かなかったことはないですね。
冬に限らず、使っていて故障したことはありません。とにかく頑丈です。雨や雪にも強く、電池の持ちも良いです。持っていくバッテリーは、自分の撮り方なら1個でも大丈夫です。
——どういうカスタマイズでK-1 Mark IIを使っているのでしょうか。
シンプルな設定を心がけています。AFは中央1点に固定。それを親指AFに割り当てています。三脚に据えてライブビューを見ながら電子シャッターで撮る。良い風景に出会った場合、現場ではどうしても飲まれてしまいます。感動しなければならないし、感動しすぎて飲まれてしまってもダメ。どこかで冷めて冷静にならなくてはならない。自分を押し込みながら撮るのは結構大変なことです。そのためにはシンプルな操作と、設定を素早くスムーズに行える操作の導線が重要になると考えています。最高の作品を少しでも多く残すためにたくさん撮影したい。楽に、早く、簡単に撮れなくてはなりません。PENTAXのカメラはそういった操作の導線が練られていると感じます。
また、ワイヤレスリモコンがボディの前と後ろからの両方で使えるのも便利です。リモコンを前にかざして撮るなんて不便でしょう? そもそもメーカーによってはワイヤレスリモコンがなく、レリーズケーブルしかない機種もあります。レリーズケーブルよりもブレにくいので、ワイヤレスリモコンの方が望ましいのですが……。そういう細かいことも考慮してあるのがPENTAXのカメラです。
機械はそのひとの欲する何かを実現してくれるものであり、そういう意味では扱いやすいシンプルな「道具」であってほしい。そうなればなおさら信頼して使っていけますし、使って楽しいものになると思います。そういう意味で、K-1とその改良版のK-1 Mark IIは、私にとってペンタプリズムを搭載するカメラの中で一番良い機種だと思っています。