特別企画

オリジナルフォトブックに挑戦して「写真をまとめる力」をつけよう

家庭用プリンターでお手軽に作る方法、教えます

「写真は撮っているけど、作品になるような写真がありません」という声をよく聞きます。そんな方には作品づくりに向けた最初の一歩として「フォトブックをつくってみよう」と提案しています。

今回は、エプソンのインクジェットプリンター「Colorio V-edition EP-10VA」と、エプソンダイレクトショップで販売しているフォトブックキット「かんたん手づくりブック」を使って、自分でプリントした写真でオリジナルのフォトブックを作ってみます! 自分の選んだ用紙にプリントすることで、写真表現に紙の質感をプラスすることができることも楽しみましょう。

なぜフォトブックをつくるのか

私がなぜ、フォトブックの制作を勧めているのか。

それは、今まで撮った写真を見返しフォトブックを作ることで、改めて自分がどんな写真を撮っているのかを知り、写真を撮るテーマを見つけるきっかけにしてもらいたいからです。また、自分の見せたいもの・伝えたいことがフォトブックという1つのカタチとなり、自分の作品を人と共有できるようになると自分の目線や1枚の写真だけでは気が付かなかったことを知ることができます。

例えば、自分でプリントして作ったフォトブックを見てもらうことで、写真や撮影についてのアドバイスや意見だけではなく、作品として複数の写真をまとめるためのアドバイスや、紙選び・プリントに関する仕上げについての意見も聞きくことができるので、次の作品制作向上にも繋がっていきます。

まだ作品になるような写真がないという方は、何気なく撮った写真がほとんどかもしれませんが、フォトブックにするために写真を見返してみると好きでよく撮っている被写体や撮り方のクセに気がつくことができます。

「自分はお花をよく撮っている」、「いつも被写体が真ん中にきている」などなど、自分の写真がわかってくると、よく撮っている被写体(例えばお花など)がフォトブックをまとめるテーマになったり、次に撮影に出かけた時にはいつもと違う構図で撮るように心がけてみたり、というように一歩進んだ撮影もできるようになります。

また、セレクトした写真をデータで見るだけではなく自分の選んだ用紙にプリントしフォトブックにすることで、写真表現に紙の質感をプラスすることができることも、自分で作るフォトブック制作の大事なポイントです。

これが今回作るフォトブックです。

フォトブック自体を作るのはそれほど難しくありません。今回用意したフォトブックキット「かんたん手づくりブック」なら、

写真を選ぶ・まとめる
写真をプリントする
プリントした写真をすべて中綴じカバー(キットに付属)に挟む
中綴じカバーを表紙(キットに付属)にはめ込む

ことで、フォトブックが完成します。

では、順番に説明しましょう。

写真を「選ぶ」「まとめる」……その例

まずは、フォトブックを作るためにテーマを決めます

テーマという言葉を聞くと難しそうだと思ってしまいますが、写真を束ねるクリップみたいなものだと思ってください。難しく考えすぎる必要はありません。

「お花」「猫」など、よく撮る被写体でクリップしてみたり、色や構図などでクリップしても大丈夫です。写真をまとめるための“クリップになる言葉”を決めたら、その言葉に合うものを撮った写真から探してみたり、撮影に行ったりしてみましょう。

私の場合は、もともと漫画を描くための背景集めで写真を撮り始めたことから、背景となる写真を撮って、そこに絵を描き込むフォト・ドローイングという作品制作を行っています。そのため今回は、写真に絵を描く「フォト・ドローイング」をテーマに、写真をまとめてみます。

テーマをもとに撮影した写真をパッとみたときの写真の明るさや色味の違いなどで仕分けていきます。

さらに、今回は縦長のフォトブックを作るため、縦位置の写真に限定してセレクトしていきます。

私のフォト・ドローイング作品は、背景となる写真に想像する人物を描き込み完成します。写真(背景)と絵(人物・生き物)を結びつける要素にしているのが光と影です。背景に合わせた光と影を人物に描き込むことで写真と絵を融合させています。また、写真作品として見る人に想像を膨らませてもらうために、人物の顔は見えないようにしています。背景写真だけだと誰もが見つけることのできる日常の風景ですが、その中に自分が作り出した人物を埋め込むことで、自分だけにしか作れない物語の舞台写真に変わります。その面白さをいろんな方と共有したいと思い作品制作を続けています。

ページの順番ですが、私はまず最初と最後のページにくるカットを選びます

最初のページは、今から物語が始まるような写真を置くことで、次のページに続いていくイメージにします。

最後は、フォトブックの締めくくりとして物語を読み終えたイメージにするために本を持った女の子の写真を選びました。

歩道橋の作りと、そこから見える建物の屋根がお城のように見えたことから、まるでゲームでいう「ダンジョン」のように感じ、プレイヤーである子供達がお城を目指して進んでいくイメージを描き込みました。RPGのようにゲームの世界で、子供達はそれぞれの役割を経て成長していく……。というかたちで背景写真を撮りながらストーリーを想像しています。

今回は同じテーマで制作した1枚完結の写真であることと、片方のページだけで見るフォトブックになるので、最初と最後のページを決めたら写真の方向性や色味の違いで並べていきます

ページの順番は、撮影したものによってはストーリーや時間の流れを考えて並べてみてもいいと思います。また、「寄りの写真」と「引きの写真」を混ぜて順番を考えることで、動きのあるフォトブックに仕上げることもできます。

データを見ながら写真の順番を考えるのは難しいので、セレクトした写真をL判程度のサイズにプリントし実際に並べてみましょう。

順番に重ねたプリントをめくりながら考えると決めやすいので、やってみてくださいね。

プリントと製本

写真を選び終わったら、プリントと製本をしていきましょう。

今回使用したのは、エプソンの「かんたん手づくりブック」です。エプソンのダイレクトショップのみで販売しています。

これは、自分でプリントした写真を一冊のフォトブックにまとめるのに必要な材料が揃っているキットです。

このキットの良いところは、写真をクリアファイルに入れるタイプのフォトブックと違い、プリントを直接触ることができるので、プリント用紙の手触りも楽しみながら写真を見返すことができるところです。

ハイグレードタイプとスタンダードタイプがありますが今回は、マットな質感のブックにしたかったのでハイグレードタイプの黒を選びました。

プリント用紙には、同じくエプソンの「Velvet Fine Art Paper」を使います。私の作品は写真に絵を描いて仕上げていくスタイルですので、画用紙のようにマットでテクスチャーのある紙を使うことで、写真と絵をよりなじませて見せることができるためです。

写真プリント設定

さっそく、セレクトした写真をプリントしていきます。

今回のフォトブックは、綴じるときに1cmほどが挟み込まれるのでA4サイズの用紙左側に3cmの白ふちをつけました。同じく右には2cm、上下にはなりゆきの白ふちをつけて、まず1枚プリントしてみます。

ちなみに、「Epson Print Layout」というブラグインを使うと、白ふちの設定ははじめとした各種設定が簡単に行えます。

プリンターの設定は次の通りです。

  • 給紙方法:背面トレイ
  • 用紙種類:Velvet Fine Art Paper
  • 印刷品質:きれい
  • 色補正:EPSON基準色(sRGB)※sRGBデータの場合

左が本に綴じた時に挟み込まれる分だけずらしたプリントで、右が天地左右で中央にくるようにプリントしたものです。

かんたん手づくりブック作業説明

プリントした写真をきれいにそろえて、中綴じカバーにはさみます。

ハードカバーの表紙に、先ほどの中綴じカバーをスライドさせるようにして綴じます。

中とじカバーが上下にずれないように、天地止めクリップを差し込んだら完成です!

ハードカバーの黒表紙なので、上品なフォトブックに仕上げることができました。

自分でプリントした写真でできたフォトブックなので、とても愛着が湧きますね! 今回制作してみて、一冊でひとつの物語になるようなフォト・ドローイングのフォトブックも制作もしてみたいと思いました。

和綴じのフォトブックに挑戦

もうひとつ、自分の手で製本するA5サイズの和綴じのフォトブックのつくり方を紹介します。

今回選んだ用紙について。写真の用紙は「イルフォード 和紙 鳥の子」、文字だけをプリントした用紙として「伊勢和紙Light雪色」を選びました。

柔らかい和紙にプリントすることでページがめくりやすく、プリントした写真も優しい表現になるのでおすすめです。

A5サイズの和綴じ帳なのでA4の用紙を半分に切って使用します。

今回は、私が行っているブッシュクラフトについての体験記録を和綴じ帳にします。焚き火の火をおこす材料など、学びながら撮影した写真をセレクトしてブックにしていきます。

プリンターの設定は次のようにしました。

  • 給紙方法:背面トレイ
  • 用紙種類:EPSONフォトマット紙
  • 印刷品質:きれい
  • 色補正:EPSON基準色(sRGB)※sRGBデータの場合

プリントした用紙に、糸を通すための穴をハンマーとキリであけていきます。その後、針に通したタコ糸で綴じれば完成です!

糸で綴じているので、後で写真を差し替えたり、ページをつけ足す時には糸を外して、綴じなおすことができます。

和紙にプリントしているので写真に撮影場所や撮影設定などを書き込むと、自分だけの写真の撮り方フォトブックも作ることもできるので、ぜひ楽しみながら作ってみてくださいね。

作品づくりにつなげるためのフォトブック

作品になる写真がないという方こそ、まずは今までの写真を見返してフォトブック作りに取り組んでみてください。

写真を振り返りながら自分がどんな写真を撮っているのかを知ることで、よく撮る被写体や好きな色など、作品をまとめるためのクリップとなるテーマを見つけることができます。

作品のテーマが見つかったら、フォトブックという1つの作品のカタチにして色んな人に見てもらいましょう。他の人に見てもらうことで自分の目線や、1枚の写真だけでは気が付かなかったことを知るきっかけになり、次の撮影や作品制作の向上にも繋がります。

さらに、自分でプリントして作るフォトブックの良いところは写真用紙を自分で選ぶことができることです。

樹木の写真を和紙の粗面(ザラザラした面)にプリントすれば樹皮の質感を表現することができたり、工場夜景をメタリックな光沢紙にプリントすることでパイプのテカリや質感を表現することができます。

プリントによって最後、写真表現に紙の質感をプラスすることで皆さんのフォトブックは一気にこだわりの一冊となります。フォトブックを作りながら作品のテーマを見つけ、写真撮影や作品制作のステップアップに繋げていきましょう!

思い出のシーンを大切に残すテクニックをご紹介!

プリンターの使いこなしや作品づくりの事例などがまとめられたエプソンのフォトポータルサイト。プリントに関する知識が得られるのはもちろん、様々なプリントについてのヒントが掲載されています。ぜひご覧ください!

エプソンのフォトポータル|プリント活用|エプソン

今回使用したのは……

エプソン「Colorio V-edition EP-10VA」
ハイアマチュアなど作品づくりにこだわりをもつユーザー向けの6色染料インクを搭載したインクジェットプリンターです。家庭用インクジェット複合機「カラリオ」シリーズの上位モデルですが、より色再現が拡大し高品質なプリントを実現するプリンターとなっています。A3サイズのプリントも可能で、本格的な作品づくりにも対応。それでいてL判約12.7円(税別)の低印刷コストも自慢です。さらに他のカラリオシリーズと同様、搭載されたスキャナーを使ってのコピー機能も利用できます。写真愛好家も満足できるプリント品質と、日常のプリントユースの両方をカバーする製品です。

エプソン「かんたん手づくりブック」
自分で作ると難しいと思われがちなフォトブック。それを文字通り「かんたん」に作成できる、フォトブック作成キットです。プリンターで印刷した写真をカバーに挟み込むことで出来上がるため、専門的な知識は不要です。A4サイズの用紙に対応します。

川本まい

1991年兵庫県生まれ。漫画を描くために、街や人を撮影していたのがきっかけで「写真」という表現方法に出会う。甲南大学理工学部在学中から写真館に勤め、人物撮影や学校アルバム編集に従事する。現在は波止場の写真学校 講師、メリケンギャラリーでは紙のソムリエとして在籍し、作品制作や用紙選びのアドバイスを行なっている。2016年6月には「写真に描く漫画展」を開催。2017年10月にはエプソンニューフォトフォーラム大阪会場にて写真に絵を描く「フォト・ドローイング」作品を発表。2018年3月にはCP+(シーピープラス)にて株式会社ワコムと共にフォト・ドローイングセッション〜写真にアートを取り込もう〜をスタートし、現在も活動を続けている。