PROGRESSIVE PRO LENS − 写真家がプロレンズを選ぶ理由
旅先での光景を大口径広角レンズの視点で切り取る…HARUKIさんインタビュー
2018年1月25日 17:00
研ぎ澄まされた眼で街の美しさを見定め、儚い一瞬をカメラテクニックですくい取る。自身の感性で旅情を表現する写真家は、レンズの持つ画角や被写界深度、画質といったキャラクターをどう考えているのか。
この連載「PROGRESSIVE PRO LENS」では、オリンパスPROレンズを使う写真家に、写真との出会いや被写体との向き合い方、そして使用機材についての感想を聞いている。
今回登場するのは、軽妙洒脱な写真と文章が本誌でもおなじみのHARUKIさん。最新の大口径広角レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」は、ベネチアの光景をどのようにHARUKI流の表現に仕立てあげたのだろうか。(編集部)
写真を撮り始めたきっかけは?
元々、子どもの頃から画家という職業に憧れていたのですが、どうしたら画家になれるのかわからないまま育ちました。きっかけは中学生の時、辛かったバレーボール部から逃げるように、友人から誘われるまま写真部へ入ったことです。家にあった古いカメラを使って写真を撮ってみたら、「絵を描くよりも早く結果が見られて楽しい」とハマったのでした。
現在、どのような写真の仕事をされていますか。
デビュー以来、タレントやミュージシャンのポートレートからヌードまで。企業広告や会社案内、新聞広告やポスター、PR誌など。企業の経営トップや政治家などの肖像写真も撮ります。テレビ番組のスチール写真も撮ります。CDジャケットや通販カタログまで、何でも屋です(笑)。カメラ専門誌などの仕事はまだ10年くらい、つい最近です。
影響を受けた写真家、写真集、メディアは?
10代前半の頃は何といっても植田正治さんの『童暦』を手にしたのが、この世界を目指したきっかけです。奈良原一高さんだと『ヨーロッパ・静止した時間』『王国』。土門拳さんは写真集では無く自伝的エッセイ『生きることと死ぬこと』、そして『鎌鼬』『薔薇刑』の細江英公さん、東松照明さんなど。
その後はアーヴィング・ペン、リチャード・アヴェドン、ギイ・ブルダン、操上和美さん、ヘルムート・ニュートン、アントン・コービン、鋤田正義さん、セルジュ・ルーテンス、ピーター・リンドバーグ、アニー・リーボヴィッツ、荒木経惟さん、森山大道さんなど、数え切れないほどいっぱいです。
旅・スナップにおける焦点距離35mmの魅力とは?
50mm前後が人間の眼に見える感覚に近い標準レンズだといわれていますが、旅写真やスナップショットなど動きを感じる被写体においては、35mmくらいが人の眼の視野に近い感じがします。ポートレートにおける50mmように、1本でいろいろな表現ができる。旅やスナップで1本だけ選ぶなら、35mmレンズが扱いやすいです。準広角レンズとして、あるいは中望遠レンズのような表現まで使い分けられることから、多くの写真家にとって人気の焦点距離です。
HARUKIさんの作品にとってボケとは?
主題をよりいっそう浮き立たせるために余分なモノを排除するケース。ボケている中から美しさや力強いものを感じるための要素としてのケース。あるいはボケそのもののマテリアルとしての表現。ボケ味が美しければ写真も美しく感じられるので、ボケ部分だけじゃ無く画面全体に影響する重要なファクターです。
M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PROについて。
自然なパースペクティブのまま、やや広めの描写ができる画角です。今回はスナップショットと風景をメインに撮影しましたが、ポートレートにも威力を発揮しそうです。機会があればぜひモデル撮影をしてみたいと思いました。
ホールディングバランスも良く、強力な5軸手ブレ防止機構との組合せもあり、日没後の夜景やブレなく風景を捉えることができました。操作性も以前使用したM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROと共通なため、初めて使ったとは思えないほどしっくりきました。
苦労したのは、明るい昼間での開放絞りF1.2。予想通り、撮影がチャンスが少なかったです(笑)
ベネチアでの撮影エピソードをお願いします。
今回で3回目の訪問です。前回(1998年前後)に訪れた時、イタリアの通貨はリラでした。今回は当然ユーロです。街中の標識や看板なども、イタリア語から英語併記が増えた印象です。
手に持っていた携帯電話もスマートフォンへと変わり、旅先でいまいる場所を紙の地図を広げて確かめることもなくなりました。同時に、失ってしまった旅情も含んでいるのかもしれません。寂しく思う一方で、もう昔には帰れない便利さには抗えませんね(笑)
ベネチアに限らず世界中にいえることですが、グローバルスタンダードがもたらす利便性と同時に、国や地域独自の歴史的な文化や特徴が薄れゆきつつある寂しさも感じます。
今後取り組みたいシリーズやテーマは?
この数年はスナップショットを中心に展開してきましたが、その要素を残しながらも本来のポートレート(旅先でのポートレートも、女性ポートレートの両方)にもう少し力を注げるようにしたいと考えています。
デジタルカメラマガジン2月号でもHARUKIさんが登場!
発売中のデジタルカメラマガジン2018年2月号では、HARUKIさんがM.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PROの使いこなし術を解説しています。あわせてご覧ください。(編集部)